上 下
58 / 67

強襲! US特殊部隊!!-②

しおりを挟む
 軍事衛星から見下ろす、白黒の映像。
 今は夜で、シンプルな画面だ。

 室矢むろやカレナの自宅がクローズアップされ、熱源として赤の人型。

 カレナとスティアの名前があって、ゲームのよう……。

 そのモニターを眺めているのは、様々なスイッチがあるコンソールに向かっているオペレーター。

 壁際の席で、横に2名。
 その服装と室内の雰囲気は、まさに軍事基地だ。

 よく見れば、すぐ上のモニターは詳細な地形と、ターゲットの位置を示している。

 内側のドアが開き、1人の男が入ってくる。

 オペレーターの2人はそちらを見たが、作業を続けろと命じられ、正面のモニターに視線を戻した。

「状況は?」

「スティア、カレナ共に、動きなし! 自宅に留まっています」
「警察への通報、外部への電話もありません」

 その士官は、IGUイグー(無限の剣の部隊)を指揮している。

 狭い空間に立ったまま、オペレーターの後ろで覗き込む。

「接触していたケイシーとハニガンは?」
「尾行を警戒して、遠回りで合流する予定です」

 オペレーターの返事に、士官はうなずいた。

「よし! 彼らが戻り次第、ブリーフィングを行う。ガンキャリア4機、ナイトアイ3機の空挺降下と併せての突入だ!」

「サー! 本当に実行するので?」
「MA(マニューバ・アーマー)を出せば、言い訳できません。ウチの員数外いんずうがいとはいえ、完全閉鎖のモビル・ストライカーが12人もいるのですし……」

 オペレーターたちの疑問に、士官は首を横に振った。

「ウチの存在が知られた以上、やるのなら徹底的にだ! カレナの実力は不明だが、『あの室矢を名乗っている以上、それに見合った力を持つ』と考えなければ……。スティアについては、言うまでもない! 彼女が街中へ移動すれば、この機動部隊を使えず、いざという時に困るだけ」

「イエッサー!」
「了解」

 士官は、納得したオペレーター2名に確認する。

「上空の無人航空機は?」

 モニターに向き直った1人が報告する。

「順調です! 衛星とのリンクも正常で、予定通りなら、作戦終了まで飛行可能!」

「分かった。引き続き、よろしく頼む……」

 ねぎらった士官は、テレビ局の中継車にも見える指揮車両の外へ出た。

 すぐ後ろに停車している、窓の中が見えない大型バスへ乗り込こんだ。


 ケイシーとハニガンが戻ったことで、士官は大型バスの中央にある通路で前方に立った。

『諸君! 残念ながら、スティアを説得するプランは失敗した! これより、突入プランについて説明する!』

 それぞれの座席にいる隊員が有線でつないだ端末に、カレナの自宅を上から見た、衛星の写真。

『突入場所は、ここ! 事前の偵察を含めて、防衛する部隊や搬入された重火器はないようだ。周りの住宅と離れており、思う存分、攻撃できる!』

 次に、建物の間取りと、周辺の映像。

 室矢カレナ、スティアの顔写真と、それぞれの履歴。

『ターゲットは、第一目標「スティア」、第二目標「カレナ」とする! 優先順位を間違えるなよ? ……我々は「スティア確保」のため、やってきた。彼女の打撃力を考えれば、日本であろうと他国の手に渡るのはマズい。その場合は、「対象の無力化」に切り替える! 何か質問は?』

「目標への攻撃はどの程度、許されますか?」
『殺す気でやれ! それぐらいで死ぬのなら不要だ』

「周囲にバレることや痕跡を気にしないで、撃ちまくれと?」
『そうだ! 今回は、MAをあるだけ出す!!』

 大盤振る舞いに、ヒューッ! と口笛が鳴った。

 説明している指揮官は、それをとがめず。

『このミッションを完遂すれば、お前たちは晴れて、IGUの正隊員になれる! ただちに装甲服を身に着け、作戦開始を待て! 以上!』


 観光バスのような座席からIGUの隊員が立ち上がり、順番に外へ出ていく。

 別の車両で宇宙服をスリムにしたような装甲服を受領して、上の視界をさえぎった場所において装着。
 ヘルメットは、直前にかぶる。

 各自で座り込み、紫煙をくゆらしたり、仲間と喋り、最後の時間を過ごしていた。

 ケイシーは、ハニガンに話しかけられる。

「……隣、いいか?」

 首肯した彼女を見て、ハニガンは座った。

 地面に腰を下ろしているケイシーは、夜空を見たまま、ため息を吐いた。

「昼の神社だけではなく、夜の2人も楽しそうだったわ! 話ができれば、USFAユーエスエフエーに協力してもらうていで穏便に済んだかもしれないのに」

「駐在武官から、手紙が届いたはずだ……。俺たちの所属と名前を言ったうえで突っぱねていたし。奴らの自業自得だ! それに消耗品のままじゃ、戦闘薬の投与が続いて廃人か、くたばっちまうぜ? 今回限りで、そんな生活とおさらばだ!」

 やがて、戦闘準備の号令がかかり、2人とも正面がバイザーになっているヘルメットを被った。
 完全閉鎖で、宇宙服と同じ。

 並みの異能者を一撃で吹っ飛ばせる、専用の重火器を受け取り、今度はアサルト用の車両に搭乗していく。

 向かう先は、室矢カレナが暮らしているペンションだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?

中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。 殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。 入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。 そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが…… ※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です ※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

処理中です...