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最初の犠牲者になりそうな奴

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 風鳴かざなり学院との話し合いだ。

 ロッジ竜宮りゅうぐうの食堂に、制服姿の防人さきもりが集合。
 本当は会議室で話したいが、山奥の寒村にある民宿に望むべくもない。
 
 宿泊する部屋も無理!

 消去法で、洋風のダイニングリビングにある、大勢で座れるソファーへ。

 男女の高校生が集まり、合コンのような光景とも言えるが――

「東京のもんが、ここに何の用だ?」

 ゴツい男子が、腕組みをしたままで、脅してきた。

 本人的には、普通に聞いたのかもしれん……。

 いっぽう、俺たちを引率している相良さがら音々ねねが、毅然と答える。

「東京国武こくぶ高等学校に届いた荒神退治の依頼で、来ました」
「いらねえよ! 余所者は、とっとと帰れ!」

 息を吐いた音々は、妥協する。

「邪魔をする気はありません。今は、お互いが動きやすいよう、話し合いの場を設けていると思いますが?」

「ほー? 殊勝なこった……。じゃあ、そっちの女子2人は俺につけ! お前は勝手にしろ」

 ニヤニヤした男子が、俺たちに命令した。

 閉口した音々を見て、俺が言い返したほうがいいな、と思い――

「いい加減にしてください、水島みずしまくん……。あなたに、他校へ命令する権限はありませんよ?」

 文系のお嬢さまという感じの女子が、言い捨てた。
 風鳴学院の制服だ。

 長い黒髪で、まとめるためか、ヘアバンドも。
 海のような青色の瞳で、アンダーリムの眼鏡をかけている。

 俺たちの部屋まで呼びに来た女子生徒。

(上にいる雰囲気だったが、実際にそうだったと)

 俺が感心していたら、その水島は苛立った様子に……。

「うるさいぞ、久世くぜ!」
「あなたも、後がないことを自覚してくださいね? 私をどうにかしても、同じことです」

 顔の上半分に影が差しているような凄味で、久世と呼ばれた女子が言い切った。

 水島は、顔を歪めたまま、反論する。

「お、俺がいなければ――」
「であれば、私たちは帰るだけ……」

 沈黙。

 すると、木のトレイを両手で持った管理人、田村たむら東助とうすけがやってきた。

「コーヒー、いかがでしょうか? サービスですよ」

 30代と思われるが、ずいぶんと達観している感じ。

 場の雰囲気が和んだ。

 久世が代表して、答える。

「ありがとうございます」

「はい」

 各自の前にあるテーブルに、コーヒーカップが置かれていく。
 個別包装のお菓子を添えつつ。

 不貞腐れた様子で、水島が立ち上がった。

「俺はいらん!」

 ドスドスと足音を響かせつつ、リビングダイニングと廊下をつなぐドアから出ていった。

 気まずい空気になり、久世がすぐ謝罪する。

「申し訳ありません。あとで、言っておきます……」
「いえいえ! 私も、学生のときにヤンチャしましたから! ハハハ」

 空気を読んだらしく、管理人は奥のキッチンへ引っ込んだ。
 
 夕飯の仕込みをしているようで、包丁とまな板がぶつかる音や、グツグツという音が聞こえてくる。

 気を取り直した久世が、俺たちを見た。

「うちの水島が失礼しました……。打ち合わせを続けても?」

「は、はい! どうぞ……」

 こちらの先輩である音々は、何とか反応した。

 お互いの自己紹介を済ませ、さっそく意見交換。

 久世果歩かほは、風鳴学院の代表。
 ただし、先ほどの水島空太くうたが、荒神退治における最大戦力だそうだ。

「水島は、流水系のスキルを持っています。そのため、ここの湖……というか沼や、渓谷の中を調べさせる予定です」

 音々が、問いかける。

「相性がいいと?」

「はい! この柳ヶ淵りゅうがぶち村には天女伝説がありますが、他と比べて異質です」

 果歩の説明によれば、なぜか人魚と混ざっているそうだ。

「羽衣を奪われた天女が村で子供を作り、飢饉に苦しむ人々を救うために湖へ身を投げ、そのまま人魚になったとか……」

「そこは、溺れて死んだほうが、綺麗にまとまると思うけどな?」

 思わず、口を挟んでしまった。

 全員の視線が、俺に集まる。

 座ったままで身じろぎした果歩が、フォローする。

「そうですね……。ともあれ、その天女の自己犠牲により、村は豊作となり救われました」

 ここで、大人の男の声。

「ええ、人魚伝説とも言われています。ウチから見える湖、いえ沼がそうですね!」

 ここの管理人だ。

 どうやら、俺たちの話が聞こえたらしい。

 果歩は、管理人に尋ねる。

「田村さん? 過去にやってきた防人は、あの沼に潜りましたか?」

「いえ……。まったく整備しておらず、とても泳げる場所ではありません! 間違っても、入らないほうがいいですよ?」

 観光客の死亡事故もあった。

 それを聞いた果歩は、質問を続ける。

「どうして、湖から沼に変わったんですか? 伝承では――」
「田村さん……。あなたが犯人ですね?」

 俺の発言に、誰もが唖然とした。

 言われた本人は、口を半開き。

「謎は全て――」
 パアンッ!

 スリッパで、頭をはたかれた。

 痛みを感じつつ見れば、隣に座っている西園寺さいおんじ睦実むつみの仕業だ。

「ほんとーに、すいません! ほら、謝って!」

 ぐいぐいと頭を押さえつけられ、仕方なく謝罪。

「すみません……。つい最近に、こういうペンションに泊まる殺人事件のゲームをやっていたんで」

「ア、アハハハ! びっくりしましたよ! あそこは溜め池みたいなもので、予算と人手不足で放置した結果ですわ! 私も、せっかくの風景で人魚の住処だから、底を漁って綺麗にしてやりたいとは思っているんですけどねえ」

 動揺したのか、最後には愚痴も言いながら、奥のキッチンへ戻っていく管理人。
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