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村社会では水源のために人が死ぬ
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村の中で決め、片付けていた時代。
古めかしい古民家が、ポツポツと立ち並ぶ。
同じく古いデザインの着物による女子が、立っていた。
かろうじて湖と呼べるぐらいの水面だ。
片手の延長線には、上からの日差しを受けて輝く金属。
「くっ!」
少女は、水面に立っていた。
滑るように移動しつつ、いきなり出現した水柱へと、その刀で斬りかかる。
「たぁああああっ!」
濡らすことが厳禁の刀身は、別の水に包まれていた。
振り抜きによる水流が、姿を現した水龍によるブレスとぶつかり合う。
昔の防人だ。
よく見れば、遠巻きに見守っている村人と比べて、立派な装束。
年貢で搾り取られる百姓に、ツギハギのない服はあり得ない。
超常的に授かる御刀は錆びず、折れず、曲がらず。
少なくとも、同格以上の武器でなければ……。
彼女の刀剣解放は、水を生み出し、さらに操るようだ。
その湖にいた水龍は、自身の半分もない小娘によって滅ぼされた。
けれど、激闘を繰り広げた少女も、傷だらけ。
片手で持ち上げた刀を振り下ろして、血振り。
「はあっ……。はあっ……」
肩を上下するも、最後の力を振り絞り、地面へ戻った。
歓声を上げながら、取り囲む村人。
長老である村長が、歩み出た。
「ありがとうございました……。本当は、水龍さまにもご理解いただきたかったのですが」
「いえ……」
湖のほうを向いて、村長が説明する。
「この村では、水源が枯れましてな? 水龍さまのお力で、何とか田畑を維持していたものの……」
釣られて、水面を見る少女。
「その水龍が生贄を求めてきたと?」
「はい……。ひとまず、村の危機は去りましたの」
「私は、これで――」
「いえいえ! 今晩は泊まっていってください。夜道は危険です」
「ご心配なく……。旅に慣れていますから」
「そう仰らず! あなたも、そろそろ1つの場所に落ち着きたいとは思いませんか? 余所者は、しょせん余所者! 今のあなたには分からないでしょうが、いつまでも若く、健康とはいきませぬ」
困惑した少女は、ギリギリの戦いの直後で頭が回らない。
村長は、反論しない少女にアピールする。
「この村には、若い男が多いですよ? どいつも働き者で、あなたに選ばれれば喜んで夫になるでしょう。本当は掟破りですが、もう意中の女がいましてもワシが通しますぞ? まあ、若い連中は全員が夜這いすると思いますが」
「そういうことは求めていないので! 失礼しま――」
フラついた村長が倒れそうになり、傍に立っていた少女が空いていた片手で支える。
風を切る音と、硬い物がぶつかる音。
◇
俺は一足先に、荒神退治の依頼が出ている柳ヶ淵村の隣にある、佐木霜村にいた。
村で唯一の食堂に集まっている地元民。
家庭料理としか言いようがないメシを食いながら、話し合う。
「ふーん? お隣さんとは仲が悪いんだ?」
古びたテーブルを挟み、向かいに座っているオッサンが頷く。
「んだ! 昔っから、水源を巡ってな?」
昼から酒を飲んでいる連中も、それに同意する。
「あっちが上流だから、すんげー偉そうで」
「今は、水道だけどよ」
「つっても、あいつらとは顔も合わせんわ!」
「そういえば、柳ヶ淵に天女伝説があると聞いたが?」
「あるには、あるぞ?」
「銀山で働いていた男どもと、相手をしていた芸者を始末したって曰くつきだけどな?」
「でっかい沼には人魚だしなあ……」
「伝説で人を呼ぶにしても、盛りすぎじゃね!?」
俺の感想に、集まっていた面々が一斉に頷いた。
「んだ」
「東京の人でも、そう思うかー!」
「あんたも大変だな? わざわざ、あいつらのために……」
その時に、昼食を口に運んでいた駐在が、口を開く。
「柳ヶ淵は、これまで地元の防人さんが来たんですけどね……。どうも、行方不明になっているらしくて」
「は!? それ、大事になるんじゃ……」
制服の駐在は、俺の顔を見たあとで、頷いた。
「昔はあっちも担当していたけど、今はこの村だけですわ! どうやら、ヤバいことがあったらしくて……。今じゃ、通報がない限りは、足を踏み入れません」
「何があっても、村ぐるみで隠されたら不明だと?」
言いにくそうな駐在が、首肯した。
「はい……。上が敬遠していて、私みたいな下っ端じゃ、どうにも」
現代日本で、そんな場所があるんだな。
変な部分に感心していたら、ブロロと車の音。
解放されたままの土道があるほうを見ると、この山奥に不釣り合いなワンボックスが2台、その後から男女の高校生が乗っている車が1台。
「何だ?」
俺の独白に、地元民が答える。
「柳ヶ淵で探検をするんだろ!」
「そんなに、怖いものを見たいんかねえ?」
「隣には、ホラー好きな観光客が来るんだよ。一度にあれだけは、珍しいけど」
俺のスマホが鳴り、よく聞いた声で苦情を言われた。
「あい! すぐ合流する」
スマホを仕舞い、残った料理をかき込んだ。
「じゃ、俺も化け物退治に行きますかね!」
古めかしい古民家が、ポツポツと立ち並ぶ。
同じく古いデザインの着物による女子が、立っていた。
かろうじて湖と呼べるぐらいの水面だ。
片手の延長線には、上からの日差しを受けて輝く金属。
「くっ!」
少女は、水面に立っていた。
滑るように移動しつつ、いきなり出現した水柱へと、その刀で斬りかかる。
「たぁああああっ!」
濡らすことが厳禁の刀身は、別の水に包まれていた。
振り抜きによる水流が、姿を現した水龍によるブレスとぶつかり合う。
昔の防人だ。
よく見れば、遠巻きに見守っている村人と比べて、立派な装束。
年貢で搾り取られる百姓に、ツギハギのない服はあり得ない。
超常的に授かる御刀は錆びず、折れず、曲がらず。
少なくとも、同格以上の武器でなければ……。
彼女の刀剣解放は、水を生み出し、さらに操るようだ。
その湖にいた水龍は、自身の半分もない小娘によって滅ぼされた。
けれど、激闘を繰り広げた少女も、傷だらけ。
片手で持ち上げた刀を振り下ろして、血振り。
「はあっ……。はあっ……」
肩を上下するも、最後の力を振り絞り、地面へ戻った。
歓声を上げながら、取り囲む村人。
長老である村長が、歩み出た。
「ありがとうございました……。本当は、水龍さまにもご理解いただきたかったのですが」
「いえ……」
湖のほうを向いて、村長が説明する。
「この村では、水源が枯れましてな? 水龍さまのお力で、何とか田畑を維持していたものの……」
釣られて、水面を見る少女。
「その水龍が生贄を求めてきたと?」
「はい……。ひとまず、村の危機は去りましたの」
「私は、これで――」
「いえいえ! 今晩は泊まっていってください。夜道は危険です」
「ご心配なく……。旅に慣れていますから」
「そう仰らず! あなたも、そろそろ1つの場所に落ち着きたいとは思いませんか? 余所者は、しょせん余所者! 今のあなたには分からないでしょうが、いつまでも若く、健康とはいきませぬ」
困惑した少女は、ギリギリの戦いの直後で頭が回らない。
村長は、反論しない少女にアピールする。
「この村には、若い男が多いですよ? どいつも働き者で、あなたに選ばれれば喜んで夫になるでしょう。本当は掟破りですが、もう意中の女がいましてもワシが通しますぞ? まあ、若い連中は全員が夜這いすると思いますが」
「そういうことは求めていないので! 失礼しま――」
フラついた村長が倒れそうになり、傍に立っていた少女が空いていた片手で支える。
風を切る音と、硬い物がぶつかる音。
◇
俺は一足先に、荒神退治の依頼が出ている柳ヶ淵村の隣にある、佐木霜村にいた。
村で唯一の食堂に集まっている地元民。
家庭料理としか言いようがないメシを食いながら、話し合う。
「ふーん? お隣さんとは仲が悪いんだ?」
古びたテーブルを挟み、向かいに座っているオッサンが頷く。
「んだ! 昔っから、水源を巡ってな?」
昼から酒を飲んでいる連中も、それに同意する。
「あっちが上流だから、すんげー偉そうで」
「今は、水道だけどよ」
「つっても、あいつらとは顔も合わせんわ!」
「そういえば、柳ヶ淵に天女伝説があると聞いたが?」
「あるには、あるぞ?」
「銀山で働いていた男どもと、相手をしていた芸者を始末したって曰くつきだけどな?」
「でっかい沼には人魚だしなあ……」
「伝説で人を呼ぶにしても、盛りすぎじゃね!?」
俺の感想に、集まっていた面々が一斉に頷いた。
「んだ」
「東京の人でも、そう思うかー!」
「あんたも大変だな? わざわざ、あいつらのために……」
その時に、昼食を口に運んでいた駐在が、口を開く。
「柳ヶ淵は、これまで地元の防人さんが来たんですけどね……。どうも、行方不明になっているらしくて」
「は!? それ、大事になるんじゃ……」
制服の駐在は、俺の顔を見たあとで、頷いた。
「昔はあっちも担当していたけど、今はこの村だけですわ! どうやら、ヤバいことがあったらしくて……。今じゃ、通報がない限りは、足を踏み入れません」
「何があっても、村ぐるみで隠されたら不明だと?」
言いにくそうな駐在が、首肯した。
「はい……。上が敬遠していて、私みたいな下っ端じゃ、どうにも」
現代日本で、そんな場所があるんだな。
変な部分に感心していたら、ブロロと車の音。
解放されたままの土道があるほうを見ると、この山奥に不釣り合いなワンボックスが2台、その後から男女の高校生が乗っている車が1台。
「何だ?」
俺の独白に、地元民が答える。
「柳ヶ淵で探検をするんだろ!」
「そんなに、怖いものを見たいんかねえ?」
「隣には、ホラー好きな観光客が来るんだよ。一度にあれだけは、珍しいけど」
俺のスマホが鳴り、よく聞いた声で苦情を言われた。
「あい! すぐ合流する」
スマホを仕舞い、残った料理をかき込んだ。
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