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「数年後にユニオンで!」によって感動の再会、死亡フラグと
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見間違いだった、という強引な結論で、警官2人には帰還してもらった。
書類にサインしたのは、レジデンスに常駐している受付だ。
こんなことで、俺たちのサインは渡せない。
「はあ~っ! 疲れたわ!」
レジデンスのエントランスホールで応接用のソファに座ったままの咲良マルグリットが、後ろにもたれつつ、息を吐いた。
いっぽう、同じ側に座っていた悠月明夜音は、離れていた受付を呼び、手短に指示を出していく。
「先ほどの警官2名を……いえ、念のために全員の素性を洗ってください! どこと繋がっているのか……。しばらく監視を行い、私たちに接近しないようにしてください」
「承知いたしました、お嬢さま」
会釈をした女が立ち去り、カウンターのほうで話し始めた。
座り直した明夜音は、視線で着席をうながす。
俺と未来の娘である咲良一舞は、彼女たちの向かいに座った。
明夜音が説明する。
「メグの父方の祖母が、地元の政治家やお抱えの弁護士と押しかけてきました……。とりあえず、その地元へ飛ばしたので」
「入れたのは……。こっちのテリトリーで分からせるため、か?」
俺の質問に、苦笑した明夜音が肯定する。
「はい! あの政治家は野党で、室矢家に食い込むキッカケが欲しかったのでしょう」
「非公式とはいえ、俺が与党の一部ってのは周知の事実だものな……。メグは、どうしたいんだ?」
後ろにもたれたまま、ひらひらと片手を振ったマルグリットが、気だるげに答える。
「べーつーにー? 血が繋がっていようが、ギラギラした目つきの連中と来た時点で二度と会いたくない! 私はとっくに成人して、既婚者よ! 初対面で『一緒に暮らせ』とほざく乞食なんて、見たくもない」
明夜音が、補足する。
「メグの祖父母ですが、『地元の家で暮らすか、嫌ならここに住まわせろ』という主張。ついでに、結婚というか、再婚相手の打診も……」
「偽者ではないんだな?」
「はい、それは事実でしょう……。重遠の意見は?」
警戒した明夜音に、俺は首を横に振る。
「メグが嫌なら、それでいい! ただ、ここで突き放すのなら、中途半端はなしだぞ? さっきの祖父母や親族がどうなってもいいよな、メグ?」
上体を起こしたマルグリットは、少し悩んだあとで、首肯した。
「ええ、そうね……。明夜音? そういうことでお願い」
「分かりました」
結論が出たことで、全員が息を吐いた。
けれど、マルグリットが驚く。
「ところで、その子は? また引っかけてきたの!? 詩央里が怒るわよ?」
「お前の未来の娘だ」
口を半開きにしたマルグリットが、一舞を見た。
一舞も、彼女を見る。
「か、可愛いいいいいっ!」
「ママも、可愛いいいっ!」
立ち上がった2人は、ローテーブル越しに手を取り合った。
急に騒ぎ出す。
(あー、確かに母娘だな……)
納得していたら、いつの間にか離れていた明夜音が戻ってきた。
「重遠? ユニオン大使館から、『円卓のシャーリー卿から重遠卿へ決闘を申し込みたい。数年前の約束を果たすように』とありましたが」
来たか……。
ついに……。
「準備ができ次第、その決闘に応じる。と返事をしてくれ……。ただし、殺し合いになるため、在日の大使館に立ち寄らず、ユニオンへ直接向かうとな? プライベートジェットの用意をしておけ」
息を呑んだ明夜音は、畏まりました、とだけ答えた。
離れた受付へ向かう彼女を見送りつつ、呼びかける。
「カレナ?」
いつの間にか現れていた少女が、すぐに答える。
「分かっておる……。マルグリット! お主、ユニオンにも母方の祖母がいるぞ? ついでに会っておくか?」
「えっ!? そうね……。考えてみれば、あっちにもいるか……」
先ほどより悩んだマルグリットは、先送りする。
「んー? とりあえず、私も同行するわ! 決めるのは、後でいい」
「私も、私もー!」
◇
ポーン♪
『空港へ着陸するので、立っている方は最寄りのシートへお願いします』
キィイイインという音が響く中で、小さな窓からの視界が変わっていく。
雲の下へ。
長い滑走路が近づいてくる。
下に触れた感触と、高速走行をしている状態。
やがて、プライベートジェットは完全に停止した。
ゆっくりと向きを変えて、滑走路を空ける。
側面のドアから空港へ続く通路を進めば――
頭にティアラをのせた、カジュアルな正装の女子が待っていた。
立ち止まった俺たちに、スカートの両端をつまんでのカーテシー。
「私は、アドラステア・リーディ・シェラフィール……。ユニオン王族の末席にいる者で、ラウンズの正騎士の1人です! あなた方の案内を任されました」
スッと姿勢を戻したアドラステアは、王女らしくない、年齢相応の笑みを浮かべた。
「久しぶりですね、重遠?」
「アドも、元気そうだな?」
えへへと恥ずかしそうにしたアドラステアは、さらっと告げる。
「私、もう縁談がないんですよ……。重遠が、もらってくれませんか?」
無言で後ろを向いた俺の肩に、南乃詩央里の手が置かれた。
「逃げないでくださいね、若さま?」
観念して、アドラステア王女と数年ぶりに向き合う。
彼女は、仕切り直す。
「では、もう一度……。ようこそ、Lancelot du Lac(湖のランスロット)! 私たちは剣聖レノックスを倒した重遠と戦い、その称号を取り戻さなければなりません」
アドラステアは、笑顔のままで続ける。
「ユニオンに……。ラウンズの本拠地へ招く以上、あなた方には相応の覚悟をしてもらいます。発言には、注意なさってください」
すくすくと育った死亡フラグは、ユニオンにいたようだ。
あるいは、複利で膨れ上がった借金と言うべきか……。
書類にサインしたのは、レジデンスに常駐している受付だ。
こんなことで、俺たちのサインは渡せない。
「はあ~っ! 疲れたわ!」
レジデンスのエントランスホールで応接用のソファに座ったままの咲良マルグリットが、後ろにもたれつつ、息を吐いた。
いっぽう、同じ側に座っていた悠月明夜音は、離れていた受付を呼び、手短に指示を出していく。
「先ほどの警官2名を……いえ、念のために全員の素性を洗ってください! どこと繋がっているのか……。しばらく監視を行い、私たちに接近しないようにしてください」
「承知いたしました、お嬢さま」
会釈をした女が立ち去り、カウンターのほうで話し始めた。
座り直した明夜音は、視線で着席をうながす。
俺と未来の娘である咲良一舞は、彼女たちの向かいに座った。
明夜音が説明する。
「メグの父方の祖母が、地元の政治家やお抱えの弁護士と押しかけてきました……。とりあえず、その地元へ飛ばしたので」
「入れたのは……。こっちのテリトリーで分からせるため、か?」
俺の質問に、苦笑した明夜音が肯定する。
「はい! あの政治家は野党で、室矢家に食い込むキッカケが欲しかったのでしょう」
「非公式とはいえ、俺が与党の一部ってのは周知の事実だものな……。メグは、どうしたいんだ?」
後ろにもたれたまま、ひらひらと片手を振ったマルグリットが、気だるげに答える。
「べーつーにー? 血が繋がっていようが、ギラギラした目つきの連中と来た時点で二度と会いたくない! 私はとっくに成人して、既婚者よ! 初対面で『一緒に暮らせ』とほざく乞食なんて、見たくもない」
明夜音が、補足する。
「メグの祖父母ですが、『地元の家で暮らすか、嫌ならここに住まわせろ』という主張。ついでに、結婚というか、再婚相手の打診も……」
「偽者ではないんだな?」
「はい、それは事実でしょう……。重遠の意見は?」
警戒した明夜音に、俺は首を横に振る。
「メグが嫌なら、それでいい! ただ、ここで突き放すのなら、中途半端はなしだぞ? さっきの祖父母や親族がどうなってもいいよな、メグ?」
上体を起こしたマルグリットは、少し悩んだあとで、首肯した。
「ええ、そうね……。明夜音? そういうことでお願い」
「分かりました」
結論が出たことで、全員が息を吐いた。
けれど、マルグリットが驚く。
「ところで、その子は? また引っかけてきたの!? 詩央里が怒るわよ?」
「お前の未来の娘だ」
口を半開きにしたマルグリットが、一舞を見た。
一舞も、彼女を見る。
「か、可愛いいいいいっ!」
「ママも、可愛いいいっ!」
立ち上がった2人は、ローテーブル越しに手を取り合った。
急に騒ぎ出す。
(あー、確かに母娘だな……)
納得していたら、いつの間にか離れていた明夜音が戻ってきた。
「重遠? ユニオン大使館から、『円卓のシャーリー卿から重遠卿へ決闘を申し込みたい。数年前の約束を果たすように』とありましたが」
来たか……。
ついに……。
「準備ができ次第、その決闘に応じる。と返事をしてくれ……。ただし、殺し合いになるため、在日の大使館に立ち寄らず、ユニオンへ直接向かうとな? プライベートジェットの用意をしておけ」
息を呑んだ明夜音は、畏まりました、とだけ答えた。
離れた受付へ向かう彼女を見送りつつ、呼びかける。
「カレナ?」
いつの間にか現れていた少女が、すぐに答える。
「分かっておる……。マルグリット! お主、ユニオンにも母方の祖母がいるぞ? ついでに会っておくか?」
「えっ!? そうね……。考えてみれば、あっちにもいるか……」
先ほどより悩んだマルグリットは、先送りする。
「んー? とりあえず、私も同行するわ! 決めるのは、後でいい」
「私も、私もー!」
◇
ポーン♪
『空港へ着陸するので、立っている方は最寄りのシートへお願いします』
キィイイインという音が響く中で、小さな窓からの視界が変わっていく。
雲の下へ。
長い滑走路が近づいてくる。
下に触れた感触と、高速走行をしている状態。
やがて、プライベートジェットは完全に停止した。
ゆっくりと向きを変えて、滑走路を空ける。
側面のドアから空港へ続く通路を進めば――
頭にティアラをのせた、カジュアルな正装の女子が待っていた。
立ち止まった俺たちに、スカートの両端をつまんでのカーテシー。
「私は、アドラステア・リーディ・シェラフィール……。ユニオン王族の末席にいる者で、ラウンズの正騎士の1人です! あなた方の案内を任されました」
スッと姿勢を戻したアドラステアは、王女らしくない、年齢相応の笑みを浮かべた。
「久しぶりですね、重遠?」
「アドも、元気そうだな?」
えへへと恥ずかしそうにしたアドラステアは、さらっと告げる。
「私、もう縁談がないんですよ……。重遠が、もらってくれませんか?」
無言で後ろを向いた俺の肩に、南乃詩央里の手が置かれた。
「逃げないでくださいね、若さま?」
観念して、アドラステア王女と数年ぶりに向き合う。
彼女は、仕切り直す。
「では、もう一度……。ようこそ、Lancelot du Lac(湖のランスロット)! 私たちは剣聖レノックスを倒した重遠と戦い、その称号を取り戻さなければなりません」
アドラステアは、笑顔のままで続ける。
「ユニオンに……。ラウンズの本拠地へ招く以上、あなた方には相応の覚悟をしてもらいます。発言には、注意なさってください」
すくすくと育った死亡フラグは、ユニオンにいたようだ。
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