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ストロベリーは食べごろになったー②

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 姿を現した天ヶ瀬あまがせうららは、実弾のアサルトライフルを数発で指切りしながらも、歯噛みする。

「メグさん……」

 片膝をついたまま、廊下の先にいる男たちに撃ち続け、応戦されたことでの弾丸がヒュンッ! シュッ! と近くを通りすぎ、もしくは、壁や床に当たって破片を飛ばしてくる。
 歩兵のヘルメットは、この破片を防ぐため。

 先ほど、機動捜査隊の2人が耳にした音は、咲良さくらマルグリットが乗っていた車両が撃たれ、爆発した音だった……。

 不安でしょうがない麗に、ミーティア女学園の超空間を利用したリアルタイムの戦術データリンクで、マルグリットの声。

『聞こえる? こちらは全高4mのMA(マニューバ・アーマー)に襲われたわ! 車両は爆散! 手持ちの装備だけで対応して! 少なくとも2機! そちらにも行くと思う。制限なしで戦いなさい! 生け捕りの必要はなし』

「全力の制圧、了解! ……MAか」

 麗は、立ち上がった。
 FPSのように相手を見たまま、横移動。
 
 相手の射線を切った。

 マンションの壁を背にしたまま、小銃の空マガジンを下へ落とし、次のマガジンをめて、片手でチャージングハンドルを引く。

 そのハンドルが戻りつつ、シャカッと装填された。

 データリンクで、問いかける。

「MA? どこの勢力ですか?」

『分からない! ただ、動きが良すぎるし、全体のデザインも……。こっちは集中するから、後でね!』

「はい!」

 バババと、うるさい小銃の音が消えて、軍靴ぐんかのような足音が重なる。

 全員が走っており、10人前後。
 遠ざかるように、どこかを目指しているようだ。

 対する麗は肩付けしたアサルトライフルを両手で持ち、銃口を下げた状態。

 すでに制限はなく、殺して構わない。

 銃口を上げ、トリガーを引くだけで撃てるまま、呼吸を整えた。

 自分を向いている銃口2つに気づき、そちらを見る。

 片手で上下に開いた手帳を見せていた中年男が、パタンと閉じて、上着のポケットに仕舞った。
 空いた手は、グリップを包み込むように添える。

「警察だ! 銃を捨てろ!」
「頼むから、指示に従ってくれ」

 麗は、その雰囲気から、刑事のようだと思う。

 一般人にしてみれば、刑事と機捜きそうのどちらでも同じ。

 ふーっ! と息を吐いた麗は、グレーのシューティンググラス越しに、何もない方向を見た。
 そのまま、視線で追う。

 動かない少女を見た櫻井さくらいは、銃口を向けたまま、部下に命じる。

影山かげやま!」
「ハッ!」

 影山は拳銃をホルスターに収めて、背中側のベルトから手錠を取り出す。

 相手が両手で抱えたままの小銃を取り上げようと――

「早く逃げないと、死にますよ?」

 銃口を向けた男2人がいるのに、少女は関心を払わない。

 それに答えず、影山は上から小銃を押さえようとするも、クオンッ! と不思議な音がして、同時に突風。

 思わず固まった男2人が改めて見れば、一瞬で遠ざかった少女は窓があった部分から外へ飛び出す。

「ここ、10階だぞ!?」

 櫻井が叫んだ。

 異能者でも耐えられないことから、2人は急いで駆け寄り、そちらを見た。

 けれど、下に目立つストロベリーブロンドの髪はなく、地面に叩きつけられるドシンという音もない。

「外を伝って、逃げたか?」

 櫻井は拳銃を持ったまま、首を巡らせる。

 だが、どこにも見えず。

 他の建物も廃墟で、割れた窓ガラスから内部へ入り込むことは容易だ。

「しくじった――」
 タタタンッ!

 アサルトライフルの発砲音だ。

 周囲に反響していて、くぐもった様子はない。

「屋上!? チッ! さっき逃げた連中のほうか……。行くぞ!」
「は、はいっ!」

 櫻井と影山は、上へ続く階段を目指す。


 ◇


 廃墟のマンションから飛び出した麗は、室矢むろや家の嫁データリンクによる共有で魔法を発動。
 重力ベクトルを逆にする。

 上へ落下していった麗は、ボロボロの屋上にいる男たちを見た。

 両手でアサルトライフルを構え、今度は下へ落下しつつ、パパパと連射。

 日光で輝くピンク色の髪と、はためく淡い色のワンピースに対し、眼下のテロリスト集団は頭を撃ち抜かれた。

 弾丸が抜けた側に大きな穴で、崩れ落ちつつ、一部の男は無意識にトリガーを引き、明後日のほうへ銃撃。

 重力とベクトルを制御した麗は、ふわりと、屋上に降り立った。

 残弾はあるが、マガジン交換。
 金属の擦れる音。

 次の瞬間に横へ飛び、魔法で身体強化をしたのか、驚くほどの距離を移動した。

 そのすぐ後に、さっきまで立っていた屋上が崩れ落ち、内部の鉄骨やらを剝き出しに……。

 両足でブレーキをかけた麗は、低い姿勢のまま、敵がいる方向を見た。

 チュイイイインッ! ドガガッ!

 近くの屋上を滑ってきた巨人が、両足で下を凹ませつつ、停止した。

 4mのMAだ。

 両手で艦砲のようなマシンガンを持ったまま、紫で塗装された機体の頭で、目のような部分を光らせた。

 マルグリットが乗っていた車を破壊したうちの、1機。

 駆動部分を凍らせようと、麗が魔法を発動させようと――

 MAは甲高い音を立てながら、両足で立ったまま、滑り出す。

「えっ!?」

 瞬く間に、MAは距離を詰めた。
 ロボットの動きではない。

 ドドドと、マシンガンがうなり、麗に襲い掛かる。
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