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高校を卒業した主人公
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与党の政治パーティー。
壇上にいる偉そうな男が、演説する。
『本日は、この日本を動かしている皆様方にお会いできて光栄――』
バンッ!
パーティーホールの大扉が、蹴り開けられた。
ズカズカと入ってくる、1人の青年。
その両手には、肩付けされたアサルトライフル。
警備についていた警視庁警備部のSP(セキュリティ・ポリス)が、すぐに拳銃を抜き、青年に向ける。
「何者だ!」
「銃を捨てろ!」
壇上のVIPにも、盾となるSP。
それを見回した青年は、声もなく笑った。
「どいつもこいつも……」
まだ銃口を下げていることから、1人のSPが後ろから近づき、肩に手をかける。
「もう逃げられんぞ? 大人しく銃を捨て――」
ドゴッ
片手で裏拳。
顔面に食らったSPは、鼻血を流しながら倒れ伏す。
「気安く触れるな」
「貴様ァ!」
「公務執行妨害の現行犯で――」
動きやすい服を着た青年の左胸には、特徴的なエムブレムと黄金色の葉っぱ、黄金の二本線。
同じく肩章も。
それらを見たSPは、ギョッとした顔で呟く。
「け、警部!?」
それを聞いたSPが驚く中で、青年は両足を決めつつ、スッと銃口を上げた。
パパパン!
乾いた銃声が響き、正装した男の胸に数発がヒット。
その部分が赤く染まりつつ、着弾の衝撃で後ろへ倒れ込む。
「キャアアアッ!」
ドレス姿の女性が叫び、それをキッカケに、参加者が一斉に出口へ走り出す――
パパパパ!
天井へ向けて発砲された小銃により、制止された。
「動くな!」
「全員、床に伏せろ! 紛らわしい行動をとるな!」
出口から殺到した兵士の銃口で、恐怖に顔を歪めつつ、座り込む面々。
先手を打たれたことで、SPたちも拳銃やサブマシンガンを置き、うつ伏せに……。
青年が、別のターゲットへ銃口を向けた。
トリガーに力を加える。
パパパ!
再び悲鳴が上がるも、絶命した男は倒れつつ、拳銃を落とした。
絨毯の上ですら、ガシャンと、鉄の音。
「国家の犬が!」
「虐げられた我々に真の自由を!」
慌てて、別の数人が小銃を取り出すも――
予め知っていたように、青年が次々に撃ち抜いた。
「俺は、警察じゃねえよ……」
銃口を下ろした青年は、息を吐く。
「お願いします」
「ハッ! この場を調べろ!」
指揮官は、部下に命じた。
途端に動き出す兵士たち。
ドスン!
テーブルクロスに隠された下から、小銃や爆発物が入った木箱。
呆れた兵士が、ぼやく。
「よく、これだけ持ち込んだ……」
床に座り込んだまま、目を丸くする参加者たち。
立食パーティーの会場を歩いていた青年は、顔を伏せたままの参加者を見回す。
とある場所で、立ち止まった。
視線を感じた男が、おずおずと顔を上げる。
「ど、どうも――」
パンッ!
銃口を向けた青年は、躊躇わずに発砲。
額に穴が開いた男は、驚いた顔のまま、後ろに倒れた。
近くにいた女が悲鳴を上げるも、男の袖口からギミック式の小型拳銃が飛び出す。
「硝煙の臭いは、けっこう残るんだぜ?」
パーティー会場に潜んでいた反乱分子は、制圧された。
スリングで小銃を肩掛けした青年に、1人の貫禄がある男が近づく。
「すまないね、室矢くん!」
振り返った青年は、笑顔で返す。
「いえ。桔梗さんが無事で、何よりです」
高校を卒業して、名実ともに原作の【花月怪奇譚】を終えた室矢重遠だ。
大学生となり、世間でも大人と見なされる。
彼を縛るものは存在せず、地上にいる神格としての日々。
桔梗巌夫は、元首相。
今でも、与党の重鎮だ。
室矢家に隠し子を嫁に出したことで、今回のテロを防げた。
息を吐いた巌夫は、周りを見た。
「内通した輩は、こちらで対処するよ……。娘の麗は?」
気になるようだ。
向き合った重遠は、言葉を選びつつ、答える。
「麗は、別動隊を追っています。……大丈夫ですよ! ウチのメンバーがついていますから」
平気で人を殺せるグループとの戦闘。
万が一も、あり得るだろう。
父親として心配する巌夫は、重遠を見た。
「そうか……。あの子が選んだ道だ」
「今回のテログループも、所詮はコマですか……」
彼らを使っている存在こそ、本当の敵だ。
そう言いたげな重遠に、巌夫は苦笑した。
「君は……政治に向かんな? 優しすぎる」
笑みを浮かべた重遠が、すぐに返事。
「自覚しています……。ゆえに、表舞台から消えました」
室矢家は、一代限り。
それを知る巌夫は、嘆息した。
「羨ましいよ……。私には、その選択が許されん」
「そうですか……」
貴族の悩みは、平民に分からず。
逆も、然り。
まして、地上にいる神格ともなれば……。
婚姻による義理の親子と言えど、この2人には奇妙な友情があった。
ともあれ、かつての主人公は、いよいよ大学生に!
室矢重遠は心身ともに充実しており、今度こそ平穏な生活に――
「き、桔梗さん! 外務大臣の姿が見えません! 先ほどまで、いたはずですが……」
ため息を吐いた重遠は、巌夫を見た。
「どうやら、今回の手引きをした人間が見つかったようですね?」
壇上にいる偉そうな男が、演説する。
『本日は、この日本を動かしている皆様方にお会いできて光栄――』
バンッ!
パーティーホールの大扉が、蹴り開けられた。
ズカズカと入ってくる、1人の青年。
その両手には、肩付けされたアサルトライフル。
警備についていた警視庁警備部のSP(セキュリティ・ポリス)が、すぐに拳銃を抜き、青年に向ける。
「何者だ!」
「銃を捨てろ!」
壇上のVIPにも、盾となるSP。
それを見回した青年は、声もなく笑った。
「どいつもこいつも……」
まだ銃口を下げていることから、1人のSPが後ろから近づき、肩に手をかける。
「もう逃げられんぞ? 大人しく銃を捨て――」
ドゴッ
片手で裏拳。
顔面に食らったSPは、鼻血を流しながら倒れ伏す。
「気安く触れるな」
「貴様ァ!」
「公務執行妨害の現行犯で――」
動きやすい服を着た青年の左胸には、特徴的なエムブレムと黄金色の葉っぱ、黄金の二本線。
同じく肩章も。
それらを見たSPは、ギョッとした顔で呟く。
「け、警部!?」
それを聞いたSPが驚く中で、青年は両足を決めつつ、スッと銃口を上げた。
パパパン!
乾いた銃声が響き、正装した男の胸に数発がヒット。
その部分が赤く染まりつつ、着弾の衝撃で後ろへ倒れ込む。
「キャアアアッ!」
ドレス姿の女性が叫び、それをキッカケに、参加者が一斉に出口へ走り出す――
パパパパ!
天井へ向けて発砲された小銃により、制止された。
「動くな!」
「全員、床に伏せろ! 紛らわしい行動をとるな!」
出口から殺到した兵士の銃口で、恐怖に顔を歪めつつ、座り込む面々。
先手を打たれたことで、SPたちも拳銃やサブマシンガンを置き、うつ伏せに……。
青年が、別のターゲットへ銃口を向けた。
トリガーに力を加える。
パパパ!
再び悲鳴が上がるも、絶命した男は倒れつつ、拳銃を落とした。
絨毯の上ですら、ガシャンと、鉄の音。
「国家の犬が!」
「虐げられた我々に真の自由を!」
慌てて、別の数人が小銃を取り出すも――
予め知っていたように、青年が次々に撃ち抜いた。
「俺は、警察じゃねえよ……」
銃口を下ろした青年は、息を吐く。
「お願いします」
「ハッ! この場を調べろ!」
指揮官は、部下に命じた。
途端に動き出す兵士たち。
ドスン!
テーブルクロスに隠された下から、小銃や爆発物が入った木箱。
呆れた兵士が、ぼやく。
「よく、これだけ持ち込んだ……」
床に座り込んだまま、目を丸くする参加者たち。
立食パーティーの会場を歩いていた青年は、顔を伏せたままの参加者を見回す。
とある場所で、立ち止まった。
視線を感じた男が、おずおずと顔を上げる。
「ど、どうも――」
パンッ!
銃口を向けた青年は、躊躇わずに発砲。
額に穴が開いた男は、驚いた顔のまま、後ろに倒れた。
近くにいた女が悲鳴を上げるも、男の袖口からギミック式の小型拳銃が飛び出す。
「硝煙の臭いは、けっこう残るんだぜ?」
パーティー会場に潜んでいた反乱分子は、制圧された。
スリングで小銃を肩掛けした青年に、1人の貫禄がある男が近づく。
「すまないね、室矢くん!」
振り返った青年は、笑顔で返す。
「いえ。桔梗さんが無事で、何よりです」
高校を卒業して、名実ともに原作の【花月怪奇譚】を終えた室矢重遠だ。
大学生となり、世間でも大人と見なされる。
彼を縛るものは存在せず、地上にいる神格としての日々。
桔梗巌夫は、元首相。
今でも、与党の重鎮だ。
室矢家に隠し子を嫁に出したことで、今回のテロを防げた。
息を吐いた巌夫は、周りを見た。
「内通した輩は、こちらで対処するよ……。娘の麗は?」
気になるようだ。
向き合った重遠は、言葉を選びつつ、答える。
「麗は、別動隊を追っています。……大丈夫ですよ! ウチのメンバーがついていますから」
平気で人を殺せるグループとの戦闘。
万が一も、あり得るだろう。
父親として心配する巌夫は、重遠を見た。
「そうか……。あの子が選んだ道だ」
「今回のテログループも、所詮はコマですか……」
彼らを使っている存在こそ、本当の敵だ。
そう言いたげな重遠に、巌夫は苦笑した。
「君は……政治に向かんな? 優しすぎる」
笑みを浮かべた重遠が、すぐに返事。
「自覚しています……。ゆえに、表舞台から消えました」
室矢家は、一代限り。
それを知る巌夫は、嘆息した。
「羨ましいよ……。私には、その選択が許されん」
「そうですか……」
貴族の悩みは、平民に分からず。
逆も、然り。
まして、地上にいる神格ともなれば……。
婚姻による義理の親子と言えど、この2人には奇妙な友情があった。
ともあれ、かつての主人公は、いよいよ大学生に!
室矢重遠は心身ともに充実しており、今度こそ平穏な生活に――
「き、桔梗さん! 外務大臣の姿が見えません! 先ほどまで、いたはずですが……」
ため息を吐いた重遠は、巌夫を見た。
「どうやら、今回の手引きをした人間が見つかったようですね?」
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