剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~

初雪空

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男子だけの空間は平和の一言

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 短い黒髪のイケメンで神経質そうな男子が、イケボで話しかけてくる。

「まあ、何だ……。お前も大変だったな?」

 何とも言えない目つきの彼に、応じる。

「分かってくれて、助かったよ……。てっきり、こちらの話を聞かずに全力で潰すと思った」
「何だ、それは?」

 フレムンド学院の食堂で、俺は正面に座っている男子に突っ込まれた。

 座り直した男子は、言い直す。

「事情を確認せずには、しないぞ? 元貴族の家系でドラゴアム共和国の議員の息子と言っても、俺は三男だし」
「いや、そこは大事だろう?」

 俺のツッコミに、話している男子が肩をすくめた。

「次男はスペアだがな? 三男の俺に、居場所はないさ! 政略結婚で第三王女のフランベル・デ・レオルミナスに婿入りできるだけ、恵まれている」
 
 はい!
 こいつが、フランベルの婚約者であるティジャン・シュトロイベルです!!

 いやあ、紹介された時には死を覚悟しましたよ!

 ククク……。

 やはり、俺はツイているではないか?

 ジト目になったティジャンが、突っ込んでくる。

「よく知らんが……。お前がロクな死に方をしないだろうことは、分かるぞ?」

「フッ! そんなに褒めるな」
「褒めていない」

 真顔で答えた、ティジャン。

 しかし、不思議そうな表情に。

「お前がフランと何でもないことは、理解した! ここは男女別で暮らすし、お前から口説かない限り、もう言う気はないが……」

「ないが?」

 オウム返しの俺に、ティジャンが尋ねる。

「そういうお前は、どうなんだ? 許嫁いいなずけや婚約者は?」

 離れた場所に住んでいる小人族3人の中で、望乃ののを思い出す。

「……後方正妻面をしている、子供みたいな外見の女がいる」

 今までの仕返しとばかりに、テーブル越しに身を乗り出すティジャン。

「そうか、お前はロリが好みと……。フランも童顔だし、注意しないとな!」

「勘弁してくれ」

 ティジャンが笑ったところに、ベルント・フォン・グラプシュ辺境伯令息の姿。

「楽しそうだね! 何の話だい?」

「ベルントか……。いや、ジンがロリコンだと白状したのでな?」
「やめろと言っただろ?」

 セルフサービスのため、両手で持つトレイを机に置きながら、ボックス席に座る。

 俺とティジャンが動きつつ、3人に。

 食事をしながら、ベルントが話す。

「婚約者といえば……。僕の婚約者も、この学院の聖女科にいるんだ! みなに紹介したいけど」

 彼は、言葉を濁した。

「どうも、知り合いのユズリハという人物から手紙をもらったらしくて。それ以来、『いえ、私は遠慮しておきます』としか言わないんだ」

 やべえ、杠葉ゆずりはが何かやっているよ!

 首をかしげたティジャンが、心配する。

「大丈夫か? そのユズリハに脅されている?」
「いや、大丈夫だ! 気遣わせて、すまない」

 笑顔で、ベルントが答えた。

 気づいたように、話題を変える。

「ジンが馴染んでくれて、嬉しいよ」
「世話になった、本当に……」

 辺境伯令息のベルントが王侯貴族科で紹介してくれたおかげで、ティジャンとも和解。

 爵位としては、子爵ぐらいの扱いだ。

 食事を済ませたティジャンが、話す。

「静かでいいな! ここは男子だけ……。それも、王侯貴族科の専用エリアだ」

「やっぱり、騎士科は荒っぽいのか?」

 俺の質問に、苦笑するティジャン。

「まあな……。卒業後はともかく、在学中はでかい面をしているよ」
「ティジャン?」

 ベルントにたしなめられ、ティジャンは口を閉じた。

 しかし、すぐに新しい話題を振る。

「そういえば、聖女科にいるフランは『騎士組』と言われているようだ」

「は?」

 俺が声を漏らしたら、ティジャンは説明する。

「要するに、蔑称べっしょうだな! 聖女科はお嬢様ばかりで、そこに馴染めない女子が一緒くたに言われている」

 言い終わったあとで、ため息をついた。

 ベルントが、すぐにフォローする。

「昔は聖女がドラゴンを倒したとか、あったそうじゃないか?」
「眉唾ものだろう……。昔に、フランのような女子がいたにせよ」

 考えたベルントが、ティジャンの話に続く。

「女子が直接倒したとは、信じがたいね……。今の教えのように、祈りによる奇跡じゃないか?」

 俺は、ふと疑問に思った。

「すまん! どうして『騎士組』になるんだ?」

 こちらを見た男子2人は、それぞれに説明する。

「高位貴族の令嬢か、それに準ずる女子は、全て聖女科に入るんだ」
「あまり言いたくないが、騎士科に上位の家はいない」

「へー! あれ? 聖女科のカリキュラムはどうなっている?」

 ティジャンが、分かりやすく告げる。

「ざっくり言うと、王侯貴族科の女子バージョンだ! 個人が好きに受講するが、優雅な講義は『騎士組』が受けにくい」

「ハブられていると?」

「よく言えば、住み分けだ! フランの話では、剣の扱いなどをやっているらしい。それもどうかと思うけどな?」

 ティジャンいわく、女子の友人はできたようだ。

 同じ騎士組として……。

「今の聖女は、教会の影響で『祈る者』という側面が強すぎる……。本来の姿が歪められているよ」
「ベルント? その辺にしておけ」

 周りをうかがうティジャンを見る限り、今の発言はマズいらしい。
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