剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~

初雪空

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よく考えたら杠葉とは何なのか?

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「鉱石が全くない!? ……それは、本当か?」

『黄金の騎士団』の団長、ロワイド・クローの気迫に、オーク族のジャンニは首をひっこめた。

「あ、ああ……。間違いない! 上の3階層だけじゃなく、この5階層の鉱脈でもだ……。線で引いたような跡から、あの野郎がやったと思うが」

 言いながらも、ジャンニに勢いはなし。

『黄金の騎士団』が手を回して、ダンジョンを見張っていたのだ。
 物理的に、あり得ない。

 ドワーフのカリュプスが、鉱物の専門家として口を挟む。

「儂も現場を見た。こやつが言うように、ジンがやったのだろうな……。けれど、証拠がなく、実行も不可能じゃ! 少なくとも、他のクランには説明のしようがない」

 採取した鉱石の収入を当てにしていた『黄金の騎士団』は、この時点で大赤字が確定。

 おまけに――

「ここに来るまで、階層ボスが全くいなかった……。他のモンスターも異常なまでに少ない。魔石による収入もダメか……」

 憔悴しきったロワイドは、声を絞り出した。

 集まった幹部が見つめる中で、彼は決断する。

「ジンを呼んでくれ……。それと、例の魔道具も」


 ◇


 ロワイドが、幹部用の天幕の中で、上座に座っている。

「わざわざ、すまないね? だが、この遠征で大事なことを確認したく、君を呼び出した。……杠葉ゆずりはは、来る必要がないのだけど」

 ほほ笑んだ杠葉は、あっさりと言う。

「お前のところの幹部と手下が、ジンに因縁をつけたからな? その苦情も、言っておきたい」

「それは、すまなかったね? ジャンニたちに、後で注意しておくよ……。その件にも関係するのだが、3階層とこの5階層にある鉱脈で、ごっそりと採掘されていたんだ。痕跡があまりに綺麗で、以前にジン君がやった行為に似ていた。それで、何か知らないかと、事情を聴きたいわけさ!」

(よく言うぜ……)

 呆れた俺は、張り付けた笑顔のロワイドを見た。

 失言を誘い、ダンジョンから帰った後で、型に嵌める気だな……。

 周囲に張り巡らされた、発言の真贋を見抜く魔力を感じながら、俺は魔法を発動させた。

 ――周囲の魔法を解析

 ――反応する条件や、タスクを処理するフローを一時的に改ざん

「何を聞きたいんだ?」

 俺の発言に、ロワイドは頷いた。

「君は、3階層と5階層で事前に鉱石を採掘したのか?」
「していない」

 ロワイドは、傍に立つ女へ注意を向けた。

 けれど、何も合図がなかったようで、少し焦った表情に。

「そ、そうか……。では、道中に階層ボスがいなかったことや、モンスターがいないことで、知っていることを全て話してくれ」

「モンスターを倒せば、魔石が残ることだけ、知っている。だいたい、階層ボスは、何のことだ?」

 質問で返したら、ロワイドは混乱した様子に。

「ジン……。君は、僕たちを困らせたいのか?」

「質問の意味が理解できない。ただ、そこで睨んでいる豚野郎は、ぶん殴ってやりたいぞ? お前も、いきなり呼び出されて胸倉をつかまれたら、同じことを思うだろ? 謝るどころか、また喧嘩を売ってやがるし……。さっきの勢いはどうした? 今は団長さまの前で、叱られるのが怖いか?」

 激怒した奴が、組んでいた両手を下ろしたことで、ロワイドが叫ぶ。

「やめろ、ジャンニ! ……杠葉、君はどうなんだ? これまで、僕たちは君のクランを長く支援してきた! その恩を仇で返すのかい?」

 肩をすくめた杠葉は、冷たい視線。

「それは、こちらのセリフだ……。この遠征で、下っ端の団員ですら、『おい、こら!』と言ってきたことで、そちらの本性がよく分かった。『黄金の騎士団』に対する認識を改めさせてもらう」

「呼びに行かせた団員のことか? 彼については、すぐに――」
「不要だ! 今ここに呼び出せば、そいつは保身のために何でもするだろうよ? そして、他の奴らがまた同じことをする……。私は、『黄金の騎士団』の態度を問題にしている」

 杠葉の発言に、ロワイドは黙り込み、他の幹部たちは殺気立った。

 けれど、ロワイドが片手を上げたことで、踏みとどまる。

「幹部だけの場とはいえ、そこまでコケにされては僕の立場がない……。杠葉! この場で選んでくれ……。僕たち『黄金の騎士団』と、ジン君のどちらかを!」

 悲壮な覚悟で叫んだロワイドに対して、杠葉はあっさりと返す。

「お前は、少し頭を冷やせ……。行くぞ、ジン!」

 俺は、発言の真贋を知るための魔力を元に戻した後で、杠葉の後を追う。

 一触即発の空気だが、ひたいに手を当てて悩んでいるロワイドに気を遣い、幹部たちが手を出してくることはなかった。

 こいつらは平常運転だが、ロワイドがここまで杠葉に譲歩する理由は何だ?

 他のクランの手前もあるだろうが……。

 明らかに、異常すぎる厚遇だ。
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