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ダンスはお楽しみの時間
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魔法による準備。
――身体強化
――相手の体の動きによる、未来予知
戦闘モードになってみれば、やはり、これだけでは終わらず。
「貴様アァアアアアアアッ!」
立ち上がったギュンターは、ブンブンと子供のような動きで、左右の拳を交互に繰り出す。
後ろに下がりつつ避けて、片方の拳が伸びきった状態で、逆に前へ出る。
驚いた顔の奴に構わず、その片手を制しつつ、ローキックで相手の脛を蹴り上げた。
「ぐっ! 貴様――」
痛みで硬直したギュンターが叫ぶも、つかんでいる片手で、その手首の関節を決めたことで、再び苦痛の声に。
膝の後ろを蹴って跪かせ、つかんでいる片手を後ろでねじり上げ、その上に乗っかる。
「貴族たる私に、このような真似をして――」
「あとは、我々が引き受けます!」
近づいてきた警備兵を見た後で、ギュンターの上から退く。
数人がかりで囲み、両腕を取り押さえたまま立ち上がらせて、強引に会場から連れ出していく。
「は、離せええぇえええっ!? 貴様ら、この私を――」
エルザの名前も呼んでいるが、その当人は他の令嬢たちの場所で背中を向けたまま。
バタン
ホールの大扉が閉められ、平穏な時間が戻った。
気を取り直すかのように、楽団の演奏が再開される。
壁際に避難していたカップルが、我先にと、良い場所に陣取っていく。
相手が見つからなかったか順番を待っている若者は、壁際で待つ。
やれやれ。
ようやく終わったか……。
思わぬバトルが終わって、息を吐いた。
義理の父親だったランストック伯爵が、平身低頭でペルティエ子爵に言い訳をしているようだ。
次期当主の息子が、他の貴族も集まっている場でこれだけの醜態をさらした。
爵位に関係なく、ランストック伯爵家のメンツは丸つぶれ。
貴族の社交場では、末代まで陰口を叩かれて、馬鹿にされる。
追放した義弟にボロ負けしたギュンターを採用する騎士団はなく、それどころか警備兵も無理だろう。
「終わったな……。追放してくれて、逆に良かったか!」
俺が魔法でこっそりとバフをかけていたにせよ、これだけ愚かで鍛錬をしないようでは時間の問題だった。
となれば、奴のミスを押しつけられ、ランストック伯爵家にいる俺が暗殺か処刑されていた未来まで。
「ペルティエ様。どうか、私の手を取っていただきたく……」
「先約がございます。次の機会を楽しみにしておりますが、この場は失礼いたしますわ」
聞き覚えのある声で、そちらを見れば、どこかの令息らしき男に誘われたエルザ・ド・ペルティエがやんわりと断っていた。
その後に、ツカツカと歩いてくる。
笑顔だが、少し怒っている様子。
寄り添ったエルザは、俺の耳元で囁く。
「人をエスコートしておいて、放置するな!」
同じように、彼女の耳元で囁き返す。
「さっきの今だぞ? ギュンターはいなくなったし――」
溜息を吐いたエルザに引っ張られ、ダンス会場となった空間へ。
開けた場所で、ペアになった男女がお互いの手を取り合ったまま、待機する。
楽団の演奏がスタートしたことで、周りとの距離を気にしつつも、ゆっくりと踊り出す。
俺のペアは、このパーティーの主催者の娘、エルザだ。
ランストック伯爵家でダンスのレッスンも受けたが、いきなりで上手く動けない。
手を繋いでいるエルザは、クスクスと笑いながら、囁く。
「お可愛いですね……。あなたも、最近までランストック伯爵家にいたのでしょう?」
「俺は、汚れ仕事のために飼われていただけ! ダンスの練習は、本当に最低限だった。社交界に出る予定はなかったし……」
同じように囁いたら、リードしているエルザが正面から抱き合うように密着しながら、甘い吐息を漏らす。
「貴族は、かなり厳格だから……。こうやって若い男女がくっつく機会は、そうありませんのよ?」
「家族か夫婦でなければ?」
顔が近いエルザは、肯定しつつも、意味深に言う。
「相手がいないか、デビュタント前の内々のお披露目では、年の近い兄や姉がエスコートする場合が多いですわ。だけど、パーティーのダンスは例外……。普段は館の自室に閉じ込められ茶会で同性の友人に会うか庭を散策するのが精一杯でも、このダンスだけは『どれだけ異性と体が触れ合っても言及しない』という、治外法権の時間です」
抱き合っては離れるエルザについていきながら周りを見れば、同じようにこの曲が終わるまでの逢瀬を楽しんでいるようだ。
グイッと引き寄せられ、エルザのほうに顔を向けさせられた。
「あまり、他を見ないでくださいまし……。視線はすぐ気づかれるうえ、彼らに疚しいことがなくても逆恨みされますわ! 私たちのように囁き合っていて『今の会話が聞こえたのか?』と疑われたら、終わりです。もっと直接的な睦言も、珍しくありませんから」
「それは悪かった……と?」
ちょうど、曲が終わった。
それぞれにピタッと止まり、ポーズを決めている。
少し遅れて、俺たちも停止。
――身体強化
――相手の体の動きによる、未来予知
戦闘モードになってみれば、やはり、これだけでは終わらず。
「貴様アァアアアアアアッ!」
立ち上がったギュンターは、ブンブンと子供のような動きで、左右の拳を交互に繰り出す。
後ろに下がりつつ避けて、片方の拳が伸びきった状態で、逆に前へ出る。
驚いた顔の奴に構わず、その片手を制しつつ、ローキックで相手の脛を蹴り上げた。
「ぐっ! 貴様――」
痛みで硬直したギュンターが叫ぶも、つかんでいる片手で、その手首の関節を決めたことで、再び苦痛の声に。
膝の後ろを蹴って跪かせ、つかんでいる片手を後ろでねじり上げ、その上に乗っかる。
「貴族たる私に、このような真似をして――」
「あとは、我々が引き受けます!」
近づいてきた警備兵を見た後で、ギュンターの上から退く。
数人がかりで囲み、両腕を取り押さえたまま立ち上がらせて、強引に会場から連れ出していく。
「は、離せええぇえええっ!? 貴様ら、この私を――」
エルザの名前も呼んでいるが、その当人は他の令嬢たちの場所で背中を向けたまま。
バタン
ホールの大扉が閉められ、平穏な時間が戻った。
気を取り直すかのように、楽団の演奏が再開される。
壁際に避難していたカップルが、我先にと、良い場所に陣取っていく。
相手が見つからなかったか順番を待っている若者は、壁際で待つ。
やれやれ。
ようやく終わったか……。
思わぬバトルが終わって、息を吐いた。
義理の父親だったランストック伯爵が、平身低頭でペルティエ子爵に言い訳をしているようだ。
次期当主の息子が、他の貴族も集まっている場でこれだけの醜態をさらした。
爵位に関係なく、ランストック伯爵家のメンツは丸つぶれ。
貴族の社交場では、末代まで陰口を叩かれて、馬鹿にされる。
追放した義弟にボロ負けしたギュンターを採用する騎士団はなく、それどころか警備兵も無理だろう。
「終わったな……。追放してくれて、逆に良かったか!」
俺が魔法でこっそりとバフをかけていたにせよ、これだけ愚かで鍛錬をしないようでは時間の問題だった。
となれば、奴のミスを押しつけられ、ランストック伯爵家にいる俺が暗殺か処刑されていた未来まで。
「ペルティエ様。どうか、私の手を取っていただきたく……」
「先約がございます。次の機会を楽しみにしておりますが、この場は失礼いたしますわ」
聞き覚えのある声で、そちらを見れば、どこかの令息らしき男に誘われたエルザ・ド・ペルティエがやんわりと断っていた。
その後に、ツカツカと歩いてくる。
笑顔だが、少し怒っている様子。
寄り添ったエルザは、俺の耳元で囁く。
「人をエスコートしておいて、放置するな!」
同じように、彼女の耳元で囁き返す。
「さっきの今だぞ? ギュンターはいなくなったし――」
溜息を吐いたエルザに引っ張られ、ダンス会場となった空間へ。
開けた場所で、ペアになった男女がお互いの手を取り合ったまま、待機する。
楽団の演奏がスタートしたことで、周りとの距離を気にしつつも、ゆっくりと踊り出す。
俺のペアは、このパーティーの主催者の娘、エルザだ。
ランストック伯爵家でダンスのレッスンも受けたが、いきなりで上手く動けない。
手を繋いでいるエルザは、クスクスと笑いながら、囁く。
「お可愛いですね……。あなたも、最近までランストック伯爵家にいたのでしょう?」
「俺は、汚れ仕事のために飼われていただけ! ダンスの練習は、本当に最低限だった。社交界に出る予定はなかったし……」
同じように囁いたら、リードしているエルザが正面から抱き合うように密着しながら、甘い吐息を漏らす。
「貴族は、かなり厳格だから……。こうやって若い男女がくっつく機会は、そうありませんのよ?」
「家族か夫婦でなければ?」
顔が近いエルザは、肯定しつつも、意味深に言う。
「相手がいないか、デビュタント前の内々のお披露目では、年の近い兄や姉がエスコートする場合が多いですわ。だけど、パーティーのダンスは例外……。普段は館の自室に閉じ込められ茶会で同性の友人に会うか庭を散策するのが精一杯でも、このダンスだけは『どれだけ異性と体が触れ合っても言及しない』という、治外法権の時間です」
抱き合っては離れるエルザについていきながら周りを見れば、同じようにこの曲が終わるまでの逢瀬を楽しんでいるようだ。
グイッと引き寄せられ、エルザのほうに顔を向けさせられた。
「あまり、他を見ないでくださいまし……。視線はすぐ気づかれるうえ、彼らに疚しいことがなくても逆恨みされますわ! 私たちのように囁き合っていて『今の会話が聞こえたのか?』と疑われたら、終わりです。もっと直接的な睦言も、珍しくありませんから」
「それは悪かった……と?」
ちょうど、曲が終わった。
それぞれにピタッと止まり、ポーズを決めている。
少し遅れて、俺たちも停止。
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