19 / 78
コロシアムの道化(前編)
しおりを挟む
居候をしている、『黄金の騎士団』の本拠地。
そこの私室に戻ったギュンターは、乱暴に扉を閉めた後で、苛立たしげに声を漏らす。
「たかが子爵の分際で……。伯爵家の次期当主に逆らうとは……」
だが、ここは彼らの領地だ。
いくら伯爵家であっても、その威光は通じず。
最悪の場合は、ひとまず暗殺して、ダンジョン内で行方不明と、実家に連絡される恐れもあるのだ。
ドサッと、チェアに座り込んだギュンターは、自身の計算違いを嘆く。
「あの女……。今に見ていろ?」
予定では、自分が姿を現せば、ランストック伯爵家の次期当主として、歓待されるはずだった。
このような粗暴な地に高貴な自分、それも独身で婚約者のいない若者が、わざわざ訪ねたのだ。
そうなって、当然。
ところが、全く相手にされず、それどころか、追放したはずのジンが件の令嬢と親しげに話しているではないか!
あわや毒牙にかかりそうな令嬢をお助けする、ナイトの役目を果たそうとしたものの――
「耐えがたい屈辱だ! ……あいつめ!」
どれだけ激怒しても、彼らが見ている前で叩きのめされた事実は、なくならない。
その汚名を雪がなければ、この街すら、まともに歩けないだろう。
立ち上がったギュンターは、決意に満ちた表情で、外へ歩き出す。
――団長の執務室
「ジン君と決闘をしたい……。君は、そう言いたいんだね?」
ロワイド・クローは、うんざりした表情で、役員机の向こうに立っているギュンターを見た。
力強く頷いた彼は、意気揚々と語り出す。
「ああ! ペルティエ子爵令嬢を誑かし、この私を侮辱した以上、その名誉を回復しなければならない。……貴様らには、とうてい理解できんだろうが?」
いちいち毒舌を吐いてくるギュンターを受け流しつつ、ロワイドが答える。
「あー、そうだね……。参考までに、どういう形をイメージしているんだい?」
「むろん、公開での決闘だ! 誰の目にも明らかで、私の強さを証明しなければ!!」
溜息を吐いたロワイドは、顔も見たくない人物に答える。
「ここを統治しているのは、ペルティエ子爵家だ。僕の一存では、貴族同士の話に介入できないよ? 僕からペルティエ子爵に、事情を説明する。君も、実家のランストック伯爵に話してくれ! 『黄金の騎士団』は、君の世話をするよう言われているが、後見人じゃない。そこは承知するように」
満足そうに頷いたギュンターが、傲慢に応じる。
「うむ! 貴様も少しは作法を知っているようで、安心した……。では、失礼する」
――1週間後
迷宮都市ブレニッケにある、コロシアム。
剥き出しの地面となった丸いグラウンドを囲むように、階段の観客席。
娯楽に飢えている人々はこぞって押し寄せ、ギュウギュウ詰めで座っていた。
「さー! 賭けるなら、今のうちだよ!」
「焼き鳥は、いかが? 熱々で美味しいよー!」
イベントの会場としても使われるが、今回は貴族の決闘だ。
様々な業者が練り歩き、自身の商品をアピールしている。
人が集まる場所には、活気がある。
冒険者のように、明日も知れない生活をしている連中は金離れが良く、狙い目だ。
その一方で、ギュンターは急所だけを守るように工夫した歩兵用のプレートアーマーを着込み、万全の状態。
これから出場する選手の控室で、ランストック伯爵家から送られてきた魔剣を見る。
青白い光を放つ、見るからに尋常ではない、ロングソードだ。
「ククク……。これがあれば……」
鞘に納め、左腰に吊り下げる。
憎きジンを叩きのめし、この機会を最大限に利用するのだ。
たとえば、そう……莫大な利益を上げている、迷宮都市ブレニッケを手中に収めるとか。
「私の実力を知らしめれば、全員の態度が変わる……。全員がな?」
彼の頭の中には、ジンを切り伏せ、その勝利による賛美と、万雷のような拍手が降り注ぐ光景だけ。
◇
コロシアムの観客席。
その中でも、周囲から隔離されたバルコニーのような場所に、貴族たちの姿。
上には、直射日光を遮るための日よけ。
1人用の椅子に座っているのは、娯楽と聞きつけた、貴族家の方々だ。
夫人と令嬢が集まっているスペース。
優雅に、丸テーブルのお茶会だ。
運ばれてきたワゴンから、白い陶磁器によるポットや、職人による菓子が並ぶ。
テーブルの中央にはタワーのような銀食器があり、その三段ぐらいのお盆に、様々な軽食が置かれている。
若い令嬢の1人が、楽しそうに話しかける。
「ねえ、エルザ? どうなの、ギュンター様とは?」
それを皮切りに、他の令嬢たちも騒ぐ。
「館に押しかけて、熱弁したそうじゃない! ロマンチックよねー!」
「でも、近衛騎士団のテストでボロ負けしたって、聞いたわよ?」
「伯爵家の跡取りだし、顔も悪くないけど……」
招いたエルザ・ド・ペルティエは、言いたい放題の少女たちに微笑んだ。
「ランストック様とは、何もございませんわ……。ただ、『家の名誉がかかっている』と申されて、お父様がこの場を設けました」
「ふーん?」
「まあ、こんな機会でもないと、私たちが騎士の戦いを見られないか」
「自分から言い出せば、悪い噂が立つものね」
そこの私室に戻ったギュンターは、乱暴に扉を閉めた後で、苛立たしげに声を漏らす。
「たかが子爵の分際で……。伯爵家の次期当主に逆らうとは……」
だが、ここは彼らの領地だ。
いくら伯爵家であっても、その威光は通じず。
最悪の場合は、ひとまず暗殺して、ダンジョン内で行方不明と、実家に連絡される恐れもあるのだ。
ドサッと、チェアに座り込んだギュンターは、自身の計算違いを嘆く。
「あの女……。今に見ていろ?」
予定では、自分が姿を現せば、ランストック伯爵家の次期当主として、歓待されるはずだった。
このような粗暴な地に高貴な自分、それも独身で婚約者のいない若者が、わざわざ訪ねたのだ。
そうなって、当然。
ところが、全く相手にされず、それどころか、追放したはずのジンが件の令嬢と親しげに話しているではないか!
あわや毒牙にかかりそうな令嬢をお助けする、ナイトの役目を果たそうとしたものの――
「耐えがたい屈辱だ! ……あいつめ!」
どれだけ激怒しても、彼らが見ている前で叩きのめされた事実は、なくならない。
その汚名を雪がなければ、この街すら、まともに歩けないだろう。
立ち上がったギュンターは、決意に満ちた表情で、外へ歩き出す。
――団長の執務室
「ジン君と決闘をしたい……。君は、そう言いたいんだね?」
ロワイド・クローは、うんざりした表情で、役員机の向こうに立っているギュンターを見た。
力強く頷いた彼は、意気揚々と語り出す。
「ああ! ペルティエ子爵令嬢を誑かし、この私を侮辱した以上、その名誉を回復しなければならない。……貴様らには、とうてい理解できんだろうが?」
いちいち毒舌を吐いてくるギュンターを受け流しつつ、ロワイドが答える。
「あー、そうだね……。参考までに、どういう形をイメージしているんだい?」
「むろん、公開での決闘だ! 誰の目にも明らかで、私の強さを証明しなければ!!」
溜息を吐いたロワイドは、顔も見たくない人物に答える。
「ここを統治しているのは、ペルティエ子爵家だ。僕の一存では、貴族同士の話に介入できないよ? 僕からペルティエ子爵に、事情を説明する。君も、実家のランストック伯爵に話してくれ! 『黄金の騎士団』は、君の世話をするよう言われているが、後見人じゃない。そこは承知するように」
満足そうに頷いたギュンターが、傲慢に応じる。
「うむ! 貴様も少しは作法を知っているようで、安心した……。では、失礼する」
――1週間後
迷宮都市ブレニッケにある、コロシアム。
剥き出しの地面となった丸いグラウンドを囲むように、階段の観客席。
娯楽に飢えている人々はこぞって押し寄せ、ギュウギュウ詰めで座っていた。
「さー! 賭けるなら、今のうちだよ!」
「焼き鳥は、いかが? 熱々で美味しいよー!」
イベントの会場としても使われるが、今回は貴族の決闘だ。
様々な業者が練り歩き、自身の商品をアピールしている。
人が集まる場所には、活気がある。
冒険者のように、明日も知れない生活をしている連中は金離れが良く、狙い目だ。
その一方で、ギュンターは急所だけを守るように工夫した歩兵用のプレートアーマーを着込み、万全の状態。
これから出場する選手の控室で、ランストック伯爵家から送られてきた魔剣を見る。
青白い光を放つ、見るからに尋常ではない、ロングソードだ。
「ククク……。これがあれば……」
鞘に納め、左腰に吊り下げる。
憎きジンを叩きのめし、この機会を最大限に利用するのだ。
たとえば、そう……莫大な利益を上げている、迷宮都市ブレニッケを手中に収めるとか。
「私の実力を知らしめれば、全員の態度が変わる……。全員がな?」
彼の頭の中には、ジンを切り伏せ、その勝利による賛美と、万雷のような拍手が降り注ぐ光景だけ。
◇
コロシアムの観客席。
その中でも、周囲から隔離されたバルコニーのような場所に、貴族たちの姿。
上には、直射日光を遮るための日よけ。
1人用の椅子に座っているのは、娯楽と聞きつけた、貴族家の方々だ。
夫人と令嬢が集まっているスペース。
優雅に、丸テーブルのお茶会だ。
運ばれてきたワゴンから、白い陶磁器によるポットや、職人による菓子が並ぶ。
テーブルの中央にはタワーのような銀食器があり、その三段ぐらいのお盆に、様々な軽食が置かれている。
若い令嬢の1人が、楽しそうに話しかける。
「ねえ、エルザ? どうなの、ギュンター様とは?」
それを皮切りに、他の令嬢たちも騒ぐ。
「館に押しかけて、熱弁したそうじゃない! ロマンチックよねー!」
「でも、近衛騎士団のテストでボロ負けしたって、聞いたわよ?」
「伯爵家の跡取りだし、顔も悪くないけど……」
招いたエルザ・ド・ペルティエは、言いたい放題の少女たちに微笑んだ。
「ランストック様とは、何もございませんわ……。ただ、『家の名誉がかかっている』と申されて、お父様がこの場を設けました」
「ふーん?」
「まあ、こんな機会でもないと、私たちが騎士の戦いを見られないか」
「自分から言い出せば、悪い噂が立つものね」
207
お気に入りに追加
542
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない
相藤洋
ファンタジー
異世界のヨーロッパ風国家「グランゼリア王国」を舞台にした合理主義冒険ファンタジー。
主人公レオン・クラウゼンは、冷静な判断と効率重視の性格を持つ冒険者。彼の能力「価値転換(バリュー・シフト)」は物や素材の価値を再構築するもので、戦闘向きではないが経済的な可能性を秘めている。パーティーから追放されたレオンは、自身の能力を活かし「FIRE(経済的自立と早期退職)」を目指す人生設計を実行に移す。
彼が一人で挑むのは、廃鉱での素材収集、不動産投資、商業ネットワークの構築といった経済活動。次々と成功を収める一方で、魔獣の襲撃や元パーティーとの因縁など、様々な試練が彼を待ち受けることになる。
「戦わずして生き抜く」レオンが描く、冒険者とは一線を画す合理主義の物語。追放を前向きに捉え、自らの手で自由を掴む彼の成長と活躍をお楽しみに!
この作品は「カクヨム」様にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる