剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~

初雪空

文字の大きさ
上 下
10 / 78

逃げることも戦術の1つ

しおりを挟む
 図書館のような、『叡智えいちの泉』の本拠地。

 小人数だけあって、それぞれに個室。
 俺にも、一人部屋が与えられ、意外にプライバシーがある生活。


 ダイニングテーブルを囲み、台所で調理した料理をいただく。

 ここで、団長の杠葉ゆずりはが、食事の合間に、話題を振る。

「さて、お前たち……。ダンジョンの探索で頭が一杯だろうが、大事な話だ! 私たちは現在、『黄金の騎士団』と完全に敵対している。前々から、奴らは陰で悪口を言っていたわけだが、私の発言もあって、全面対決になった。……黙っていたほうが良かったかもしれんな? すまん」

 望乃ののが、真っ先に否定する。

「いいえ! そもそも、今までが弱腰すぎました!! 私たちもクランである以上、どれだけ大手でも、譲れないラインはあったはず! 遅かれ早かれ、独立か、吸収されるかの二択でした。下請けとして吸収されれば、もっと酷い毎日になったでしょう!」

 小人族だが、望乃より大人っぽい衣緒里いおりも、同意する。

「ええ……。それを考えたら、ジンが来てくれて、まだ選択肢があるといった感じですね?」

「俺のせいで、いきなり敵対した流れだ。そこは、責任を感じているよ」

「前からの積み重ね、と言っているだろう?」
「そのうち、望乃が馬鹿にした女を殴っていたと思います!」
「責任を感じているのなら、私たちが尊厳を守りつつ生き延びる道を探りましょう」

 3人から、言い返された。

 そこで、疑問に思う。

「なあ、杠葉! 奴らは、すぐに仕掛けてくると思うか? いずれは『黄金の騎士団』を潰すか、俺たちが出ていく結末になるだろ?」

 手を止めた彼女は、難しそうな顔で首肯した。

「そうだな! ロワイドの性格では、すぐに仕掛けてこないだろうが……。身内だけの場で、団員の不始末とはいえ、あれだけメンツを潰された。報復せずは、あり得ない! 最終的なゴールとして、私たちが新天地を目指す……となるだろう」

「潰すのは無理か?」

 俺のほうを向いた杠葉が、苦笑した。

「この迷宮都市ブレニッケの秩序を維持しているのは、奴ら……。そういう側面もあるんだ。仮にロワイドを殺しても、他の幹部は残っているから『先代の報復』になるだけ! だいたい、この4人でどうやって潰す? 奴らが、『叡智の泉』に物を売るな! と言えば、すぐに生活が成り立たなくなるぞ?」

「ここから出て行くことに、何か障害は?」

「冒険者ギルドでクランの解散を申請……。逃げていく先によっては、これを無視できる。やっぱり、『どこへ逃げるのか?』だ! この迷宮都市ブレニッケは、ダンジョンからの収益が大きく、周辺への影響力が大きい。賞金をかけられるか、ヒットマンを寄越す恐れもある!」

 悩み始めた3人を見た俺は、提案する。

「とりあえず、ダンジョンに潜って、金を稼ぐしかないか……」

 3人娘は、無言で、一斉に頷いた。


 迷宮都市ブレニッケ。

 その主な収益源であるダンジョンは、冒険者ギルドが管理しているものの、「勝手に入って勝手に出てこい」という方針だ。

 言い換えれば、無法地帯。
 中で脅しや殺し、強奪があっても、それが発覚することは少ない。

 いずれかのクランに参加する理由の1つが、常に数人が固まることで、他の奴らに襲われないか、されても返り討ちにするため。


 ◇


 俺は、望乃と一緒に、街を散策していた。
 冒険者ギルドを覗くついでに、中央の綺麗なエリアを歩き続ける。

 身長が低いため、望乃は少しだけ早足だ。

「ここは、人気があるレストラン! 正装なら、私たちでも入れます! それで――」

 観光ガイドのごとく、次々に話す。

 それを聞きながら、合間に尋ねる。

「望乃? お前たちの装備だが……。俺が作ってやろうか?」

 ピタリと、望乃の足が止まった。

 俺のほうをジーッと、見上げる。

「ジンが?」

「ああ、そうだ……」



 ――数日後

「おお~!」

 望乃は、大袖がある、前で閉じる黒い着物で、感嘆の声を上げた。

 腰の辺りで太い帯を巻きつつ、下半身は動きやすいデザインだ。
 足元は、雪駄せった


「悪くないですね……」

 衣緒里は、青の着物だ。

 ちなみに採寸は、見ただけで合わせ、本人に着てもらいつつの調整。

 その技術だけで、体に触れられたくない貴族の御用達になれるぞ? と、杠葉に突っ込まれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...