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新人への洗礼

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 ――翌日

 自分に宛がわれた女を抱くことなく、普通に目覚めた。

 ゲスト用の部屋なのか清掃が行き届いていて、家具も一式だが、生活感なし。
 本当に寝るだけの個室ゆえ、外に出て、共用の水場などで準備。


「俺たちは、すぐに役立ちますよ!」
「二次試験なんて面倒な真似は、止めてもらえないですかね?」

 案内された方向へ進んだら、昨日に見覚えのある奴らが、イケメン王子ことロワイド・クローに絡んでいた。

 屋内に作られた円状のコロシアム。
 周りは階段状になった観客席。

 その金髪碧眼の男は、余裕がある笑み。

「まあ、そう急がないでくれ……。すぐに準備ができるはずだ」

 偉そうな態度に、いきり立つ入団希望者。

「俺らは強いっすよ?」
「二次試験で、お前と戦っても――」
「ロワイド! 準備ができたぞ……何だ、お主ら?」

 身長が低いものの筋骨隆々のドワーフは、ロワイドに話しかけた後で、眉をひそめつつ、近くで立つ入団希望者をジロジロ見た。

「言っておくが、ロワイドは儂よりも強いぞ?」

 見た目は、ただの優男だし。
 タネが分からなければ、そうは思えんよな。

 絡んでいた入団希望者たちは、恐る恐る、金髪碧眼のロワイドに視線を移す。

「おい。まさか……」
「じょ、冗談だよな? い、今のは、本気で言ったんじゃ――」

 慌ててご機嫌を取り出すバカを無視して、ロワイド・クローが、ドワーフに返事をする。

「ありがとう、カリュプス! じゃ、始めるか……」

 ロワイドは、朝礼で使いそうな壇上へ登る。

「さて、諸君! いよいよ、うちに入れるかどうかを決める二次試験だ! このクランでは、僕が団長をしているが……これは実力によるものだと自負している! 外見で差別する者は、トップクランである『黄金の騎士団』にいないと信じているが……」

 言葉を切ったら、観客席に集まった団員が一斉に、さっきまで団長に絡んでいたバカ共を睨んだ。

「うっ……」
「お前らも、内心では思っているだろうが……」

 その数人は、もはや立つ瀬がない。

 仮に入団できても、先輩に目をつけられ、割に合わない仕事か、ダンジョンの中で殺されるのが関の山だ。

 ここで、ロワイドが明るく言う。

「彼らはまだ、ここの流儀を知らなかった! ゆえに、その暴言を許すよ」

 その言葉で、ホッとする馬鹿たち。

(お前ら……。団長をコケにされた時点で、他の奴らが許すわけないだろ?)

 心の中で突っ込んだ俺は、観客席からの敵意をひしひしと感じる。

 今回の入団希望者、という括りにされたらしい。


 ロワイドは、説明を続ける。

「さて! 本題に戻ろう! ……二次試験ではウチの団員と戦ってもらい、その内容で合否を決める! 勝敗=合否ではない点に、注意してくれ! ただし、幹部とだ」

 その発言で、他の入団希望者がざわつく。

 どうやら、ここの幹部は強いらしい。


 最初は、団長をバカにした一号。

 順番に行うらしく、他の入団希望者は見学だ……。

 これは、『黄金の騎士団』の強さをじっくりと教え込むため。


 バカ一号の脇腹に、硬そうな爪先がめり込み、蹴られた方向へ吹っ飛んだ。

 剥き出しの地面で跳ね、そのまま円の外周にある壁に衝突。

「おらああっ! ロワイドを馬鹿にした根性は、どうしたああっ!!」

 対戦相手はパワータイプで、格闘がメイン。
 腕と足を守る防具――こいつの場合は、武器も兼ねている――で、殴る蹴る。
 シンプルだが、それだけに対応しにくい。

 意外にも、スピードで勝負するスタイルだった。

 密着しての攻防となれば、俺でも苦戦するだろう。
 手の内を隠したままでは……の但し書きがつくけどな?


 命に別条がない重傷を負わされ、主要な骨を折られたバカ一号。
 屋内のコロシアムの中で、無様に倒れ伏したまま、痛みと屈辱で泣き続ける。

 それをクスクス笑うか、指をさして馬鹿にするギャラリー。


 ここで、ロワイドが歩み出た。

「勝負はついた! すぐに治療しろ!」

 待機していた医療班が駆け寄り、バカ一号を運び出す。


 入団希望者は、同じスペースで待機中だ。

 模擬戦に使うための、刃を潰した剣や革鎧、盾を貸してもらう。

 入ったら仲間になる団員とバトル。
 遺恨になる結果は好ましくないのだろう。

 団員の暗殺を防ぐという意味でも……。
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