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6.変化
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装甲車は、月明かりにてらされキラキラ光る砂の上を走っている。
運転席にクリス、助手席にジンそして、後部座席には僕とアーチャが乗っていた。
隙間から見える夜空はとても綺麗で、今が戦争中だと言うことを忘れさせてくれる。
しかし、そんな束の間の平和を満喫できるほど戦場は甘くなかった。どこからともなく聞こえてくる砲弾の飛行音、それがみるみるうちに近づいてきて、装甲車の脇へ落ちる。
怒涛の轟音を立てて弾ける砲弾に、装甲車のハンドルは取られ左に弧を描いた装甲車の軌道はやがで大きな岩にぶつかり止まった。
衝撃で開いた装甲車の後部扉から僕とアーチャは放り出され、砂漠と化した大地に落ちた。
「うう……」
アーチャは小さく唸っているが、砂漠の砂がクッションになったのか、命に別状は無いようだ。
「ジン!おい、ジン!しっかりしてくれ……くそっ、くそーーーっ」
クリスの声が砂漠の真ん中で虚しく響いた。
「ゼロ、無事ね……よかった。早く機能のチェックしないと……」
アーチャが僕を見るなり、銀色の器具を手に取り起き上がる。足を引きずりながら、僕に向かって来た。
「アーチャ!」
車から降りて来たクリスがアーチャに向かって叫んだ。
「ジンが死んだ……」
「な、何ですって……」
クリスの言葉にアーチャは立ち尽くしていた。クリスはジンの亡骸を車から引きずり出して、暫く立ち尽くし、ジンの亡骸を見ていた。
「ジンが死んで、その役立たずはピンピンしてるのかよ。逆なら良かったのにな!」
クリスは僕を見て言い放った。顔は鬼のような形相になっていた。
「クリス!やめて!……ゼロは、ゼロは関係ないじゃない 」
クリスがものすごい勢いで走って来た。僕の胸ぐらを掴むと、砂漠の砂に僕を押し倒す。
鬼のような形相だった、クリスの表情が次の瞬間一気に物悲しいものになり僕に訴えかけた。
「なぁ、ゼロ助けてくれ。早くこの戦争を終わらせてくれよ…… お前いつまでそんな出来損ないのポンコツみたいにしているんだ?早くお前の最終兵器を使ってくれ。なぁ、頼むよ」
クリスは僕を強く掴んでいた手を緩めると、うなだれ、涙を流し始めた。
アーチャがそばまで寄って来て、クリスの肩に手をかける。
「クリス、ゼロはまだ調整中なの。本格的に機能を発揮できない状態なのよ。もう少し調整が必要だわ」
アーチャの言葉にクリスは「くそっ……くそっ」と呟いて何度も砂漠の地面を殴っていた。
最終兵器?調整中?何だよ、まるで僕は物みたいじゃないか……
僕は起き上がり、手を見る。大丈夫正常だ。足もちゃんとついている。耳も聞こえる。どこもおかしいところは無い……はずだ。待てよ、僕はどんな顔だ?見た事ないぞ。……アーチャ僕は人間だよね?
そう思いアーチャを見た。アーチャは悲しそうな顔で僕を見ている。
「ゼロ……ごめんね。ごめんね」
アーチャはなぜか僕に謝る。よしてくれ、やめてくれ、なぜ謝るんだ。僕は人間だ……
僕は……僕は本当に人間なの……か……?
遠くからまた砲弾の飛行音が聞こえた。アーチャとクリスが慌てている。
僕を気遣うアーチャ。涙を流しながらアーチャの手を引っ張るクリスが見える。
飛行音は僕らの側まで飛んで来て弾けた。僕の体は宙を舞い、ゆっくりとしたスローモーションでも見ているかのように、見ている景色がゆっくり変わる。空が見え、地面が見え、クリスとアーチャが見えた。
宙を舞っている僕の視界に、突然赤色のメッセージが表示される。
(激シイ加速度ヲ確認 エマージェンシーモードニ移行 補助動力ヲ作動 各機能ノ制限ヲ一時的ニ解除)
(最終兵器ノ使用ヲ認メマス 各端末ノ判断デ使用ヲ許可 タダシ使用ハ敵地ノミトスル)
……大丈夫。落ち着け。落ち着くんだ!僕は…僕は
運転席にクリス、助手席にジンそして、後部座席には僕とアーチャが乗っていた。
隙間から見える夜空はとても綺麗で、今が戦争中だと言うことを忘れさせてくれる。
しかし、そんな束の間の平和を満喫できるほど戦場は甘くなかった。どこからともなく聞こえてくる砲弾の飛行音、それがみるみるうちに近づいてきて、装甲車の脇へ落ちる。
怒涛の轟音を立てて弾ける砲弾に、装甲車のハンドルは取られ左に弧を描いた装甲車の軌道はやがで大きな岩にぶつかり止まった。
衝撃で開いた装甲車の後部扉から僕とアーチャは放り出され、砂漠と化した大地に落ちた。
「うう……」
アーチャは小さく唸っているが、砂漠の砂がクッションになったのか、命に別状は無いようだ。
「ジン!おい、ジン!しっかりしてくれ……くそっ、くそーーーっ」
クリスの声が砂漠の真ん中で虚しく響いた。
「ゼロ、無事ね……よかった。早く機能のチェックしないと……」
アーチャが僕を見るなり、銀色の器具を手に取り起き上がる。足を引きずりながら、僕に向かって来た。
「アーチャ!」
車から降りて来たクリスがアーチャに向かって叫んだ。
「ジンが死んだ……」
「な、何ですって……」
クリスの言葉にアーチャは立ち尽くしていた。クリスはジンの亡骸を車から引きずり出して、暫く立ち尽くし、ジンの亡骸を見ていた。
「ジンが死んで、その役立たずはピンピンしてるのかよ。逆なら良かったのにな!」
クリスは僕を見て言い放った。顔は鬼のような形相になっていた。
「クリス!やめて!……ゼロは、ゼロは関係ないじゃない 」
クリスがものすごい勢いで走って来た。僕の胸ぐらを掴むと、砂漠の砂に僕を押し倒す。
鬼のような形相だった、クリスの表情が次の瞬間一気に物悲しいものになり僕に訴えかけた。
「なぁ、ゼロ助けてくれ。早くこの戦争を終わらせてくれよ…… お前いつまでそんな出来損ないのポンコツみたいにしているんだ?早くお前の最終兵器を使ってくれ。なぁ、頼むよ」
クリスは僕を強く掴んでいた手を緩めると、うなだれ、涙を流し始めた。
アーチャがそばまで寄って来て、クリスの肩に手をかける。
「クリス、ゼロはまだ調整中なの。本格的に機能を発揮できない状態なのよ。もう少し調整が必要だわ」
アーチャの言葉にクリスは「くそっ……くそっ」と呟いて何度も砂漠の地面を殴っていた。
最終兵器?調整中?何だよ、まるで僕は物みたいじゃないか……
僕は起き上がり、手を見る。大丈夫正常だ。足もちゃんとついている。耳も聞こえる。どこもおかしいところは無い……はずだ。待てよ、僕はどんな顔だ?見た事ないぞ。……アーチャ僕は人間だよね?
そう思いアーチャを見た。アーチャは悲しそうな顔で僕を見ている。
「ゼロ……ごめんね。ごめんね」
アーチャはなぜか僕に謝る。よしてくれ、やめてくれ、なぜ謝るんだ。僕は人間だ……
僕は……僕は本当に人間なの……か……?
遠くからまた砲弾の飛行音が聞こえた。アーチャとクリスが慌てている。
僕を気遣うアーチャ。涙を流しながらアーチャの手を引っ張るクリスが見える。
飛行音は僕らの側まで飛んで来て弾けた。僕の体は宙を舞い、ゆっくりとしたスローモーションでも見ているかのように、見ている景色がゆっくり変わる。空が見え、地面が見え、クリスとアーチャが見えた。
宙を舞っている僕の視界に、突然赤色のメッセージが表示される。
(激シイ加速度ヲ確認 エマージェンシーモードニ移行 補助動力ヲ作動 各機能ノ制限ヲ一時的ニ解除)
(最終兵器ノ使用ヲ認メマス 各端末ノ判断デ使用ヲ許可 タダシ使用ハ敵地ノミトスル)
……大丈夫。落ち着け。落ち着くんだ!僕は…僕は
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