上 下
28 / 58

ここは地獄の一丁目

しおりを挟む
 なんとか時間稼ぎをしようと、俺はシャルロットに声を掛ける。

「な、なあ……シャルロット。いくらなんでも、いきなり斬りつけるのは乱暴じゃないか?」
「しかし、こやつは王国の平和を乱そうとする敵です!」

 相変わらず殺気を放出するシャルロットに、疑問を呈するように俺は言う。

「それ、本当かなぁ? 殺した後で間違えましたじゃ、取り返しがつかないぜ? まず、しっかりと確かめた方がいいんじゃないか?」

 シャルロットは顎に手を当て、考えるポーズで言う。

「ふーむ、一理ありますね。では、どうしたらよいでしょう?」

 やった、乗ってきた!
 俺は動物をなだめるみたいに、手でシャルロットを制しながら、マリオンの隣へと移動する。

「よーし、よしよし……どうどうどう。……そうだな。まず、尋問だよ……尋問をしよう! なっ? マリオンも、それでいいよな!?」

 マリオンは、おずおずと頷いた。
 シャルロットは俺らに剣を向けながらも、従う態度を見せる。

「なるほど、尋問ですか……いいでしょう! ただし、ジュータ殿! あなたは操られてる恐れがありますので、尋問は私が単独で行わせていただきます!」

 俺はホッとした。とりあえずこれで、時間を稼げそうだ。
 俺とマリオンは、並んで床に正座する。
 もしもシャルロットが斬りかかったら、俺は身をていしてでもマリオンをかばうつもりだった。
 覚悟を決めつつ、俺は頷く。

「よし、始めてくれ!」

 シャルロットは仁王立ちになり、剣を床に突き立てると、柄に両手を乗せた。
 こういうポーズを取ると、凛々しくも美麗な女騎士様に見えるから不思議である。やってる事は、アホ丸出しなのになぁ。
 シャルロットは、よく通る声で威張って言った。

「嘘を言ってると判断したら、即座に断罪させていただきますよ! では、尋問を開始します!」

 それからマリオンへと視線を向ける。

「ナゴヤ・ニャアコっ! あなたは、先ほど世界征服を口にした! ……間違いありませんねっ?」

 マリオンがうつむいたまま、ボソボソと言う。

「ええっと、あの。……まず、誤解があって。オレは、マリオン……坂口真利雄って名前であって、名古屋ニャア子じゃないんだけど……」
「は? 意味がわかりませんねっ! あなた、自分でナゴヤ・ニャアコと名乗ってたではありませんか!?」

 マリオンは耳まで真っ赤にして、居心地が悪そうにモジモジし始める。

「そ、そうなんだけどぉー。……アレは、ただぁー……そういうフリをしてたっていうかー。あのう……コ、コスプレって言ってぇ……成り切って遊んでただけであってぇ……?」

 ……い、いやーっ、これは恥ずかしいよな!?
 でも、がんばれ、マリオンっ!
 あと頼むから、もっと堂々と受け答えしてくれ!

 案の定、シャルロットは答えが気に入らなかったらしく、剣を少しばかり持ち上げると、威嚇いかくするようにズガンッ! と床に突き立てて、大声で一喝する。

「意味がわかりませんッ!」

 マリオンが、ビクリと身をすくませる。
 俺は慌てて、マリオンに囁いた。

「マ、マリオン! そういう態度は、なんか嘘くさい! シャルロットの目を見て、もっとハキハキと答えるんだ!」
「あ、ううっ。で、でも、オレぇ……。女の人が怖くってぇ……あいつ、めっちゃオレを見てくるし……」

 シャルロットが、殺気を含んだギラギラと血走った目でマリオンを睨んでいる。
 うわーっ。確かにこええわ! なぜ初対面の人間に、こんな失礼な視線を堂々と向けられるんだ、こいつは!?
 と、シャルロットが口を開いた。

「名前が不明なので、あなたを『幼女』と呼称します! ……よろしいかっ!」

 メイド服姿のマリオンは、身体を縮こまらせて頷いた。

「う。は、はい……。とりあえずもう、それでいいです……」

 姿形と口調だけは立派なポンコツ女騎士、アホのシャルロットによる地獄の尋問は、まだ始まったばかりである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

地球からきた転生者の殺し方 =ハーレム要員の女の子を一人ずつ寝取っていきます

三浦裕
ファンタジー
「地球人てどーしてすぐ転生してくんの!? いや転生してもいいけどうちの世界にはこないで欲しいわけ、迷惑だから。いや最悪きてもいいけどうちの国には手をださんで欲しいわけ、滅ぶから。まじ迷惑してます」  地球から来た転生者に散々苦しめられたオークの女王オ・ルナは憤慨していた。必ずやあのくそ生意気な地球人どもに目にものみせてくれようと。だが―― 「しっかし地球人超つえーからのう……なんなのあの針がバカになった体重計みたいなステータス。バックに女神でもついてんの? 勝てん勝てん」  地球人は殺りたいが、しかし地球人強すぎる。悩んだオ・ルナはある妙案を思いつく。 「地球人は地球人に殺らせたろ。むっふっふ。わらわってばまじ策士」  オ・ルナは唯一知り合いの地球人、カトー・モトキにクエストを発注する。  地球からきた転生者を、オークの国にあだなす前に殺ってくれ。 「報酬は……そうじゃのう、一人地球人を殺すたび、わらわにエ、エッチなことしてよいぞ……?」  カトーはその提案に乗る。 「任せとけ、転生者を殺すなんて簡単だ――あいつはハーレム要員の女を寝取られると、勝手に力を失って弱る」 毎日更新してます。

【R18】TSエロゲの世界でチョロインになった件

Tonks
ファンタジー
バーチャルエロゲにログインしたらログアウトできなくなり、そのままTSヒロインとして攻略対象となる物語です。タイトル通りTS後の主人公は基本チョロインです。18禁エロ描写中心。女性化した主人公のディープな心理描写を含みます。 ふたなり、TS百合の要素は含まれておりません。エロ描写はすべて「女になった元男が、男とセックスする」ものです。ただし相手の男はイケメンに限る、というわけでもないので、精神的BLの範疇からは逸脱しているものと思われます。 lolokuさんに挿絵を描いていただきました。本作にこれ以上の挿絵は世界中どこを探しても見つからないと思います。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...