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うちの屋敷の開かずの間
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で、もう片方の箱には、ちゃんと洋服が入ってた。
ごく普通の少女服の他、下着や寝間着、レースの付いたメイド服に、靴やアクセサリーも揃ってる。つまり服屋としての仕事も、あの商人はちゃんとこなしてくれたわけだ。
……まあ確かに。俺も代金を支払った時、なんだか高いと違和感あった。
だけど俺も、この世界の正しい金銭感覚が、まだ身についてないのである。ほとんど苦労せず、大金を手に入れてしまったせいだろう。
今まで屋敷とマリオン以外、高い買い物なんてした事ないしね。一番近い店に行って、必要な物を手にとって、言われた金額を出してるだけ。だから今回も、深く考えなかったわけなのだが……うかつだった。
マリオンは、箱の中身を一通り検分した後で、一着を引っ張り出す。
「えーっと。……よし、これにするか。ジュータ、着替えるから一人になりたい」
若干、心配していたが……どうやらマリオンは、女の服に抵抗ないようである。
きっと今の身体になった以上、その辺はもう諦めてるんだろう。まあ、どこからどう見ても女の子なマリオンが男物を着ても違和感あって変なだけだし、奴隷服のがよっぽど恥ずかしいので、その判断は正しいと言える。
俺は、服の入った箱を持ち上げて言う。
「じゃあ残りの服は、マリオンの部屋に運んでおくから」
というわけで、俺はマリオンが着替えてる間に、洋服をマリオンの部屋へと運んでやった。
戻ってくるとマリオンの服装は、白いブラウスにきれいめシルエットの藍色エプロンドレスになっていた。脚は黒タイツに包まれて新品の革靴を履き、髪もしっかり整えてリボンでまとめてある。
え……っていうかマリオン。
まともな服を着ると、めっちゃ可愛いぞっ!
ボサボサ髪に奴隷服の時は意識してなかったが、これは俺が知る中でもトップクラスの美形じゃないか?
ま、中身は残念なおっさんだけど。それを、残念筆頭の俺が言える立場じゃないけども。
泣くと、急に子供っぽくなるしなぁ。でも、時折みせる包容力は、さすが年上って感じもする。
なにより楽しくエロゲトークできるし、性癖は明らかに男のそれだしね。
だって幼女はニコニコしながら、「やっぱ、おっぱい小さなロリキャラが好き! 膨らみかけの胸とか、もうサイコー!」とか宣言しないだろ?
あっ、もちろん二次元限定の話ですよ。ちなみに俺は巨乳もいけます。
うーむ。だけど、内面には俺と同種の『男の精神』を感じるのに、外見はとびきりの美少女っていうのは、今さらながら変な感じだ。
えっ、というかマリオン……マジで可愛いな!?
俺がそんな事を考えながら見つめていると、マリオンは頬を赤らめ俯いて言う。
「えと、あの……き、綺麗な服だよな、これ……?」
あれ、さっきまで平然としてたのに。
なんだかちょっと、恥ずかしがっていらっしゃる?
ヤバい、ジロジロ見過ぎたかも知んない!
問われた俺は、焦り気味に答える。
「そ、そうだね! よく似合ってて、綺麗だと思う」
それはもちろん、服がって意味だけど……。
なんだか照れてしまい、俺は視線を逸らした。
俺とマリオンは、部屋に散らかった怪しい品々を拾い、大きな箱に戻していく。マリオンは時々、大箱を見ては困った顔をし、それから不安そうに俺を見る。俺はその度に苦笑し、「だから、誤解だっての!」と言う。
で、しばらくしてから片付けが終わったが……部屋の真ん中にでーんと鎮座した大箱は、重すぎて2人じゃ運べない。
俺は少し考えて、マリオンにひとつの鍵を手渡した。
「マリオン。これ、あげるよ」
マリオンは受け取って、首を傾げる。
「なんだ、この鍵……?」
俺は自分のミスで怖がらせた事を、申し訳なく思いながら言う。
「それは、この部屋の鍵だよ。大箱を持ち出すのは、俺らだけじゃ無理だ。でも、そのままにしておくのも不安だろ? だから、この鍵を渡しておく。鍵を掛けて閉ざしてしまえば、もうマリオンにしか開けられない。合鍵はない、嘘じゃないよ……信用してほしい」
マリオンは、俺の顔をじっと見てから大きく頷く。
それから、鍵をエプロンドレスのポケットに突っ込んだ。
「わかった。これは、素直に受け取っておくよ。でも、そうだよな。襲う気なら、とっくに襲ってるもんな。オレも、ちょっと怖がりすぎた。……なあ、疑われて、気分悪かったろ? ごめんな……許してくれ、ジュータ」
こうして、うちの屋敷の一階には『開かずの間』ができたのだった。
ごく普通の少女服の他、下着や寝間着、レースの付いたメイド服に、靴やアクセサリーも揃ってる。つまり服屋としての仕事も、あの商人はちゃんとこなしてくれたわけだ。
……まあ確かに。俺も代金を支払った時、なんだか高いと違和感あった。
だけど俺も、この世界の正しい金銭感覚が、まだ身についてないのである。ほとんど苦労せず、大金を手に入れてしまったせいだろう。
今まで屋敷とマリオン以外、高い買い物なんてした事ないしね。一番近い店に行って、必要な物を手にとって、言われた金額を出してるだけ。だから今回も、深く考えなかったわけなのだが……うかつだった。
マリオンは、箱の中身を一通り検分した後で、一着を引っ張り出す。
「えーっと。……よし、これにするか。ジュータ、着替えるから一人になりたい」
若干、心配していたが……どうやらマリオンは、女の服に抵抗ないようである。
きっと今の身体になった以上、その辺はもう諦めてるんだろう。まあ、どこからどう見ても女の子なマリオンが男物を着ても違和感あって変なだけだし、奴隷服のがよっぽど恥ずかしいので、その判断は正しいと言える。
俺は、服の入った箱を持ち上げて言う。
「じゃあ残りの服は、マリオンの部屋に運んでおくから」
というわけで、俺はマリオンが着替えてる間に、洋服をマリオンの部屋へと運んでやった。
戻ってくるとマリオンの服装は、白いブラウスにきれいめシルエットの藍色エプロンドレスになっていた。脚は黒タイツに包まれて新品の革靴を履き、髪もしっかり整えてリボンでまとめてある。
え……っていうかマリオン。
まともな服を着ると、めっちゃ可愛いぞっ!
ボサボサ髪に奴隷服の時は意識してなかったが、これは俺が知る中でもトップクラスの美形じゃないか?
ま、中身は残念なおっさんだけど。それを、残念筆頭の俺が言える立場じゃないけども。
泣くと、急に子供っぽくなるしなぁ。でも、時折みせる包容力は、さすが年上って感じもする。
なにより楽しくエロゲトークできるし、性癖は明らかに男のそれだしね。
だって幼女はニコニコしながら、「やっぱ、おっぱい小さなロリキャラが好き! 膨らみかけの胸とか、もうサイコー!」とか宣言しないだろ?
あっ、もちろん二次元限定の話ですよ。ちなみに俺は巨乳もいけます。
うーむ。だけど、内面には俺と同種の『男の精神』を感じるのに、外見はとびきりの美少女っていうのは、今さらながら変な感じだ。
えっ、というかマリオン……マジで可愛いな!?
俺がそんな事を考えながら見つめていると、マリオンは頬を赤らめ俯いて言う。
「えと、あの……き、綺麗な服だよな、これ……?」
あれ、さっきまで平然としてたのに。
なんだかちょっと、恥ずかしがっていらっしゃる?
ヤバい、ジロジロ見過ぎたかも知んない!
問われた俺は、焦り気味に答える。
「そ、そうだね! よく似合ってて、綺麗だと思う」
それはもちろん、服がって意味だけど……。
なんだか照れてしまい、俺は視線を逸らした。
俺とマリオンは、部屋に散らかった怪しい品々を拾い、大きな箱に戻していく。マリオンは時々、大箱を見ては困った顔をし、それから不安そうに俺を見る。俺はその度に苦笑し、「だから、誤解だっての!」と言う。
で、しばらくしてから片付けが終わったが……部屋の真ん中にでーんと鎮座した大箱は、重すぎて2人じゃ運べない。
俺は少し考えて、マリオンにひとつの鍵を手渡した。
「マリオン。これ、あげるよ」
マリオンは受け取って、首を傾げる。
「なんだ、この鍵……?」
俺は自分のミスで怖がらせた事を、申し訳なく思いながら言う。
「それは、この部屋の鍵だよ。大箱を持ち出すのは、俺らだけじゃ無理だ。でも、そのままにしておくのも不安だろ? だから、この鍵を渡しておく。鍵を掛けて閉ざしてしまえば、もうマリオンにしか開けられない。合鍵はない、嘘じゃないよ……信用してほしい」
マリオンは、俺の顔をじっと見てから大きく頷く。
それから、鍵をエプロンドレスのポケットに突っ込んだ。
「わかった。これは、素直に受け取っておくよ。でも、そうだよな。襲う気なら、とっくに襲ってるもんな。オレも、ちょっと怖がりすぎた。……なあ、疑われて、気分悪かったろ? ごめんな……許してくれ、ジュータ」
こうして、うちの屋敷の一階には『開かずの間』ができたのだった。
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