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一章 云わば、慣れるまでの時間
48. 3人の呼び名を決めなくては
しおりを挟むオルトン氏の依頼により、本人はもちろん屋敷で働いていた者は消え、彼の一族もほぼ犠牲となった。消えなかったのは遠縁の親戚。
──大きな買い物だったというわけだ。
もちろん、最初からここまでの望みは口にしていない。最初に欲しかったのは、好き勝手出来る少女1人のみ。それだけならば、オルトン氏は全ての犠牲を払わずに済んでいる。
そうさせなかったのは言葉による誘惑だ。
高い戦闘能力があれば、警備兵を雇う必要はないだろう。家事が得意であれば、メイドだって必要ないだろう。──それならば、もういっそ万能な少女はどうだろうか。
値段は変わらないと言えば、すぐに目の色を変えてきた。・・・・・・今回は金目的ではないので、結局貰わなかったが。
私の特殊能力は、対象が欲しいと思わなければ発動しないもの。強制的に言わせたとしても、その交渉は無効となる。
そこで私は対象がソレを求めるように仕向けた。別になんてことは無い、ただ単に〝提案〟しただけだ。
そして、狙い通りに交渉は成立。彼自身だけでなく親族まで代償として消えたのは予想外だったが、その件と私とを繋げることは難しいだろう。
(そして商品の所有権は私へと移った・・・・・・これで、ここを任せられる)
早速彼女らに指示を出そうとしたが、ああそうだ、と言葉を飲み込む。そういえば、名前をまだ決めていなかった。
「──3人の呼び名を決めなくては」
そう言った途端、ばっと3つ子から期待の眼差しを向けられた。・・・・・・本当によく似ている。が、纏う雰囲気は僅かに異なっていることに私は気づいていた。
(短めで呼びやすく、可愛らしい名前・・・・・・)
パッと思いついたものでいいか。私はそれぞれの顔を見て言う。
「右から、ヒイ、フウ、ミイ。これでいいか?」
一瞬の間の後、パァァと顔を輝かせる3つ子たち。言ってから、申し訳なさが押し寄せてきた。
・・・・・・これは本当に申し訳ない。他に思いつかなかった私のセンスを責めてほしい。
それでも喜んでくれたのが、私にとってはとてもありがたかった。
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