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一章 云わば、慣れるまでの時間
19. 注意事項は以上で大丈夫ですか?
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◇◇
「・・・・・・、これはふざけているのですかな?」
「いえ、全く」
きっかり1時間後。柱時計が時を刻んだ所で、ジェラトーニは戻ってきた。期待に満ちた表情で羊皮紙を覗き込むと、その顔を酷く歪める。
険しい顔を向けられたが、私は大輪の花のような満面の笑みで受け答えをする。
「そもそも、私はこの世界の言葉の読み書きができません。──他の転生者とは違うのですよ」
「・・・・・・、なるほど」
そうは言うものの、納得のいかない表情だ。白い髭を弄りながら、全ての羊皮紙をまじまじと見つめている。
・・・・・・そう何度も見たところで結果は変わらないだろうに。
大きくため息を吐き、まあいいでしょう、と羊皮紙を懐にしまった。
「次は別館で身体能力を測ります。説明は移動しながら致しましょうかな」
「はい」
別館は実戦用の特別製で、武器訓練の為のスペースはもちろん、魔法の練習の為に結界を何重にも張った特別なスペースもある。他にも、実戦形式での試合を行う専用の広い部屋も用意されている。
もしもの為には、別館の隣には医療室も用意されているのだから相当な贅沢だといえよう。
(・・・・・・本当に国は力を入れすぎだな)
隣で自慢げにペラペラと話す老爺に適当に相槌を打ちながら、見えない所で小さく息を吐く。
しかしまあ、仕方ないのかもしれない。
たかが学園だろうが、これが他国との戦争の際には役に立つ兵士を育成していると考えれば、国自らが相当な金を援助するのも納得がいく。
「──さあ、着きましたよ」
この学園がいかに優れているかについて一通り聞いた所で、到着の声を聞く。見ると石造りの建物が見えた。校舎に負けず劣らずの大きさである。
こちらはあまり装飾はなくシンプル。見るからに頑丈そうな建物だ。
「・・・・・・ここで何を行うのです?」
学園長は歩きながら説明すると言ったものの、実際には学園の自慢話を聞かされて終わってしまっていた。説明とは何だったのか。
しかし、学園長は「なあに、簡単なものですよ」と言うだけで詳しくは教えてくれない。
そうして通された場所は一面白で埋め尽くされた部屋。十分に動き回れるくらいの広さはある。
「ここでは瞬発力を試させていただきます」
「瞬発力・・・・・・」
「ええ、時間は1時間。最初は1個、それから5分毎にペイントボールを投げ込みますので、それに当たらないようにして下さい。ボールはランダムに反射されるよう、天井や壁、床には凹凸があります」
なるほど。身体能力はスキルのお陰でそこそこ強化されたはず・・・・・・これはいけるのではないか? エネルギーの無くなったボールはその場に留まるはずだ。
だが、学園長の次の言葉で雲行きが怪しくなった。
「因みにペイントボールは、いつまでもはね続けることが出来る材質で作られていますのでお気をつけて。もちろん、当たると色が付きますので・・・・・・」
嫌な笑みを浮かべる彼に対し、私は冷静に問いかける。
「注意事項は以上で大丈夫ですか?」
「え? ええ・・・・・・ペイントボールに当たらなければ大丈夫です」
その言葉を聞いて口角が小さく上がった。──言質はとった。ペイントボールに当たらなければ良いのである。
「・・・・・・因みに、あの3名はどこまでいきました?」
「40分くらい・・・・・・ですね。かなり優秀ですよ」
40分となるとボールは計9個。動き回れるくらいのスペースはあるものの、決して広くはないここで避けるのはかなり難易度が高いだろう。
一般男子で15分程度。トップクラスでも30分程度しかもたないと言う。私と違ってあの女神から色々貰っているであろう彼らなら、有り得る話だ。
・・・・・・私と違ってな。
一通り話し終えたジェラトーニは「では、開始します」と一声かけて部屋を出る。同時に天井の一部が開き、そこからピンク色のボールが落ちてくる。
──さあ、始まりだ。
◇◇
「・・・・・・、これはふざけているのですかな?」
「いえ、全く」
きっかり1時間後。柱時計が時を刻んだ所で、ジェラトーニは戻ってきた。期待に満ちた表情で羊皮紙を覗き込むと、その顔を酷く歪める。
険しい顔を向けられたが、私は大輪の花のような満面の笑みで受け答えをする。
「そもそも、私はこの世界の言葉の読み書きができません。──他の転生者とは違うのですよ」
「・・・・・・、なるほど」
そうは言うものの、納得のいかない表情だ。白い髭を弄りながら、全ての羊皮紙をまじまじと見つめている。
・・・・・・そう何度も見たところで結果は変わらないだろうに。
大きくため息を吐き、まあいいでしょう、と羊皮紙を懐にしまった。
「次は別館で身体能力を測ります。説明は移動しながら致しましょうかな」
「はい」
別館は実戦用の特別製で、武器訓練の為のスペースはもちろん、魔法の練習の為に結界を何重にも張った特別なスペースもある。他にも、実戦形式での試合を行う専用の広い部屋も用意されている。
もしもの為には、別館の隣には医療室も用意されているのだから相当な贅沢だといえよう。
(・・・・・・本当に国は力を入れすぎだな)
隣で自慢げにペラペラと話す老爺に適当に相槌を打ちながら、見えない所で小さく息を吐く。
しかしまあ、仕方ないのかもしれない。
たかが学園だろうが、これが他国との戦争の際には役に立つ兵士を育成していると考えれば、国自らが相当な金を援助するのも納得がいく。
「──さあ、着きましたよ」
この学園がいかに優れているかについて一通り聞いた所で、到着の声を聞く。見ると石造りの建物が見えた。校舎に負けず劣らずの大きさである。
こちらはあまり装飾はなくシンプル。見るからに頑丈そうな建物だ。
「・・・・・・ここで何を行うのです?」
学園長は歩きながら説明すると言ったものの、実際には学園の自慢話を聞かされて終わってしまっていた。説明とは何だったのか。
しかし、学園長は「なあに、簡単なものですよ」と言うだけで詳しくは教えてくれない。
そうして通された場所は一面白で埋め尽くされた部屋。十分に動き回れるくらいの広さはある。
「ここでは瞬発力を試させていただきます」
「瞬発力・・・・・・」
「ええ、時間は1時間。最初は1個、それから5分毎にペイントボールを投げ込みますので、それに当たらないようにして下さい。ボールはランダムに反射されるよう、天井や壁、床には凹凸があります」
なるほど。身体能力はスキルのお陰でそこそこ強化されたはず・・・・・・これはいけるのではないか? エネルギーの無くなったボールはその場に留まるはずだ。
だが、学園長の次の言葉で雲行きが怪しくなった。
「因みにペイントボールは、いつまでもはね続けることが出来る材質で作られていますのでお気をつけて。もちろん、当たると色が付きますので・・・・・・」
嫌な笑みを浮かべる彼に対し、私は冷静に問いかける。
「注意事項は以上で大丈夫ですか?」
「え? ええ・・・・・・ペイントボールに当たらなければ大丈夫です」
その言葉を聞いて口角が小さく上がった。──言質はとった。ペイントボールに当たらなければ良いのである。
「・・・・・・因みに、あの3名はどこまでいきました?」
「40分くらい・・・・・・ですね。かなり優秀ですよ」
40分となるとボールは計9個。動き回れるくらいのスペースはあるものの、決して広くはないここで避けるのはかなり難易度が高いだろう。
一般男子で15分程度。トップクラスでも30分程度しかもたないと言う。私と違ってあの女神から色々貰っているであろう彼らなら、有り得る話だ。
・・・・・・私と違ってな。
一通り話し終えたジェラトーニは「では、開始します」と一声かけて部屋を出る。同時に天井の一部が開き、そこからピンク色のボールが落ちてくる。
──さあ、始まりだ。
◇◇
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