51 / 68
頼介
しおりを挟む
GINJIの車から飛び出した後、俺はタクシーを拾って、家に帰った。
誰も待っていない家。
自分で灯りを点けて、部屋に入る。
慣れなきゃいけないと思った。
これから先、ずっとこうなのだから。
だけど、自分の部屋に戻るともう限界で、俺はひとりで泣き崩れた。
あれから、3日が過ぎた。
俺は相変わらず仕事をこなしていたけれど、身体は悲鳴を上げていた。
何も食べられず。
全く眠れず。
今日も仕事が終わって、何か食べなきゃと思って、用意してもらったサンドイッチとお茶に目をやった。
食欲なんてまるでないけれど、無理やり口に押し込んで、お茶で強引に流し込む。
なんとか胃に入れようと格闘したけれど、やっぱりダメだった。
「ゲホッ!ゲェ!」
結局、吐き出してしまう。
その時。
「頼介!」
物音に気付いたのだろう。
GINJIが俺の控室に飛び込んできてくれた。
GINJIはあれ以来、マトモに俺の顔を見てもくれなかった。
だから、来てくれて凄く嬉しかった。
だけど、今は苦しくて、言葉が出ない。
「大丈夫か!?」
GINJIは俺が落ち着くまで、背中をさすっていてくれた。
胃に入ったものを全部出しきっても、しばらくは苦しくて、俺は肩で息をしながら涙ぐんでいた。
「お前…ずっとこんな調子なのか?」
GINJIが俺の顔を覗き込んで、訊いてくる。
俺は黙って頷いた。
GINJIは悲しそうな顔をしていた。
「とりあえず、ここは俺が片付けるから、お前は横になっていろ。」
「でも…。」
「いいから。少し休め。」
GINJIに優しくそう言われ、また泣きたくなった。
軽く口を漱いで、言われた通りに休んでいた。
横になりながら、床を片付けてくれているGINJIを見つめていた。
申し訳なくなってくる。
GINJIも何だかツラそうな顔をしていた。
「頼介、帰ろう。今日は1人で帰すわけにはいかない。佐久間さんに送ってもらえ。佐久間さんも心配している。」
気を遣っているのだろう。
GINJIは自分が送るとは言わなかった。
だけど、俺はワガママを言った。
「GINJIがいい。」
「え…。」
「俺、GINJIがいい。」
GINJIは戸惑ったような顔をしたけれど、結局、俺を送ってくれる事になった。
俺はGINJIに傍にいてほしい。
だけど、それならGINJIの気持ちを受け入れるべきだ。
GINJIの気持ちを知っているんだから。
だけど、GINJIを受け入れようと思うと、別の人物の顔が頭に浮かぶ。
俺はその人物の顔を、何度も何度も打ち消した。
GINJIにあんな事をされても、嫌な気持ちは起きなかった。
大丈夫。
俺、きっとGINJIを受け入れられる。
「GINJI。」
車が家の前にまで着くと、俺はGINJIに話しかけた。
「なんだ?」
優しくGINJIが返事をしてくれる。
「今晩、泊って行ってよ。」
「え?」
GINJIがここまで送ってくれるのはいつもの事だけど、泊って行った事はない。
「何、言っているんだ?頼介。」
戸惑ったような声で、GINJIが訊き返してくる。
だけど、俺はもう決めていた。
「俺、GINJIのものになりたい。」
俺は振り絞るような声でそう言った。
誰も待っていない家。
自分で灯りを点けて、部屋に入る。
慣れなきゃいけないと思った。
これから先、ずっとこうなのだから。
だけど、自分の部屋に戻るともう限界で、俺はひとりで泣き崩れた。
あれから、3日が過ぎた。
俺は相変わらず仕事をこなしていたけれど、身体は悲鳴を上げていた。
何も食べられず。
全く眠れず。
今日も仕事が終わって、何か食べなきゃと思って、用意してもらったサンドイッチとお茶に目をやった。
食欲なんてまるでないけれど、無理やり口に押し込んで、お茶で強引に流し込む。
なんとか胃に入れようと格闘したけれど、やっぱりダメだった。
「ゲホッ!ゲェ!」
結局、吐き出してしまう。
その時。
「頼介!」
物音に気付いたのだろう。
GINJIが俺の控室に飛び込んできてくれた。
GINJIはあれ以来、マトモに俺の顔を見てもくれなかった。
だから、来てくれて凄く嬉しかった。
だけど、今は苦しくて、言葉が出ない。
「大丈夫か!?」
GINJIは俺が落ち着くまで、背中をさすっていてくれた。
胃に入ったものを全部出しきっても、しばらくは苦しくて、俺は肩で息をしながら涙ぐんでいた。
「お前…ずっとこんな調子なのか?」
GINJIが俺の顔を覗き込んで、訊いてくる。
俺は黙って頷いた。
GINJIは悲しそうな顔をしていた。
「とりあえず、ここは俺が片付けるから、お前は横になっていろ。」
「でも…。」
「いいから。少し休め。」
GINJIに優しくそう言われ、また泣きたくなった。
軽く口を漱いで、言われた通りに休んでいた。
横になりながら、床を片付けてくれているGINJIを見つめていた。
申し訳なくなってくる。
GINJIも何だかツラそうな顔をしていた。
「頼介、帰ろう。今日は1人で帰すわけにはいかない。佐久間さんに送ってもらえ。佐久間さんも心配している。」
気を遣っているのだろう。
GINJIは自分が送るとは言わなかった。
だけど、俺はワガママを言った。
「GINJIがいい。」
「え…。」
「俺、GINJIがいい。」
GINJIは戸惑ったような顔をしたけれど、結局、俺を送ってくれる事になった。
俺はGINJIに傍にいてほしい。
だけど、それならGINJIの気持ちを受け入れるべきだ。
GINJIの気持ちを知っているんだから。
だけど、GINJIを受け入れようと思うと、別の人物の顔が頭に浮かぶ。
俺はその人物の顔を、何度も何度も打ち消した。
GINJIにあんな事をされても、嫌な気持ちは起きなかった。
大丈夫。
俺、きっとGINJIを受け入れられる。
「GINJI。」
車が家の前にまで着くと、俺はGINJIに話しかけた。
「なんだ?」
優しくGINJIが返事をしてくれる。
「今晩、泊って行ってよ。」
「え?」
GINJIがここまで送ってくれるのはいつもの事だけど、泊って行った事はない。
「何、言っているんだ?頼介。」
戸惑ったような声で、GINJIが訊き返してくる。
だけど、俺はもう決めていた。
「俺、GINJIのものになりたい。」
俺は振り絞るような声でそう言った。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる