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将太

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自分をこんな目に合わせた俺に対して、頼介はそれでも優しかった。

俺が泣き止むまで、ずっと手を握っていてくれた。
それで、少し落ち着く事ができた。

そんな俺の様子を見て、頼介は
「将太。お前も昨日は寝ていないんだろ?少し自分の部屋で休んできな。」
と言った。

確かにここに俺が居ても、やれる事はない。
そう思って、自分の部屋に戻った。

ベッドに横になると、急速な眠気に襲われた。
それに逆らわず、俺は目を閉じた。

……。

どれくらい眠っただろう。
時計を見ると、3時近くになっていた。

頼介の奴、腹減ってきただろうな。
何か食べさせてやらないと。

そう思って、頼介の部屋にやって来た。

「頼介、入るぞ。」
返事はなかったが、俺は部屋の中に足を踏み入れた。

そして、俺は愕然とした。

ベッドの枕元が、真っ赤に染まっていた。
口元にも血がこびりついている。
血を吐いたんだ!

顔色は真っ青を通り越して、土気色になっていた。
呼吸はゼイゼイ荒く、本当に苦しそうだ。

「おい!頼介!どうしたんだよ!?」

さっきまでは、まだ話は出来たのに。
俺は慌てて、GINJIさんにまた電話した。

GINJIさんは、さっきの医者を連れて、すぐに戻ってきた。

「頼介!?」
あまりの様子に、GINJIさんも言葉を失う。

医者は黙って頼介の服を脱がせると、聴診器を胸に当てた。
そして、突然、筒のようなものをとりだして、頼介の胸を突き刺した。
大量の血が、その筒から飛び出した。

「な、何しやがる!?」
吃驚して、GINJIさんも俺も医者に掴みかかった。

だけど…。
「将太…。GINJI…。」
頼介がこっちを見て、声を出した。
顔色はまだ悪かったが、呼吸はずっと楽になったみたいだ。
少なくとも、声は出せている。

俺達は医者に向き直った。

「肺に血が溜まっていたんだ。所謂、血胸だな。楽になっただろう?今、血を抜いたからな。」

裏の医者とは言え、流石は医者だ。

「だが、このままでは、どうにもならんぞ。出た血は抜いたが、出血点を止めなければ、根本的解決にはならん。オペするより他にないな。俺のところでは、お手上げだ。救急車を呼んだ方がいい。」

そう言われて、GINJIさんと俺は顔を見合わせた。
すると、頼介が
「先生…救急車はどうしてもダメなんです。何とかしてください…。お願いします。」
そう医者に言った。

「頼介、俺の事はいいから!頼むから、病院に行ってくれ。死んじまうだろ!」
俺は頼介に懇願した。

「何か方法はないんですか!?」
GINJIさんは、医者に縋りつくように問いかけた。

「仕方ない…。」

医者は手帳を開き、走り書きをした。
それを切り取って、GINJIさんに渡す。

「本当は救急車を呼ぶのが一番だと思うが、そういうわけにはいかないんだろう。この病院は、俺と同じ裏の医者の病院だ。表沙汰になるような事はない。」

「わかりました。ありがとうございます。」

医者は再び帰って行った。

「頼介、病院に行こう。ツラいかもしれないが、我慢してくれ。」
GINJIさんは、頼介をそっと抱え上げた。

俺も付いて行こうとしたが、GINJIさんに遮られた。
「こういう所には、将太君は出入りしない方がいい。家で待っていてくれ。」

俺はそれに逆らえず、2人を見送るしかなかった。
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