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GINJI
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頼介とのメシの約束をキャンセルした。
記憶にある限り、多分、初めてだと思う。
退院祝いに奢ってやると、俺の方から言ったのに。
アイツ、今頃しょげているかもしれない。
蓮介と関係を持ってから、俺は頼介の顔を見られずにいる。
後ろ暗い思いが、俺を頼介から遠ざけていた。
その代わり、何故か蓮介の部屋には通い詰めている。
俺達と袂を別ってから、おそらくは真面な生活はしていなかっただろう蓮介を思うと、世話を焼かずにはいられない気持ちになってきたのだ。
頼介にさえ食べさせたことのない俺の手料理を食べさせて。
まあ、頼介はいつも将太くんの手料理を食べているし、自分の料理の腕も確かだから、メシを食わせてやる時は、外食になる。
あ、でもよく考えたら、蓮介も料理は得意だったっけ。
じゃあ、コイツ出来ないんじゃなくて、やらないだけか!
それに気付いたものの、やはり足は蓮介のアパートに向いてしまう。
だが、それも今日までか…。
頼介が回復して、仕事復帰の目途が立ったからだ。
こうなれば、俺も頼介を避けてはいられない。
復帰一発目の仕事は、写真撮影だった。
俺達の写真集が発売される予定なのだ。
そこで、久しぶりにメンバー全員が揃った。
「よ!RAISUKE。」
「ホント良かったな~。思ったより早く復帰できて。」
USHIOとNAOTOが、それぞれ頼介に声をかける。
頼介はそれに対して、上の空で返事を返した。
これは、いつもの事だ。
USHIOもNAOTOも気にしてはいない。
アイツは、こういう仕事が苦手なんだ。
歌うわけでもないのに、衣装だけ整えさせられるから、通常モードか仕事モードか、自分で上手く切り替えられないらしい。
だが、俺を見つけると、どちらかというと通常モードに近い調子で駆け寄ってきた。
「GINJI!」
メイクしている時には、滅多に見せない笑顔を見せる。
俺はその笑顔を正面から、受け止めてやる事が出来なかった。
ついつい素っ気ない対応をしてしまう。
「RAISUKE。仕事中だぞ。」
自分でも冷たい言い方をしてしまったと思う。
一瞬、傷付いたような顔をした頼介だが、次の瞬間にはRAISUKEに切り替わっていた。
そのおかげで、撮影は実にスムーズに進行した。
クールなRAISUKEの表情を余すところなく撮影できて、カメラマンは上機嫌だった。
だが、俺達の微妙な空気にメンバーは気付いていた。
「おい、GINJI。」
頼介が控室に戻ったのを確認し、USHIOとNAOTOが声をかけてきた。
「なんだ?」
俺は2人に睨みつけるような視線を向けた。
この程度でたじろぐ2人ではない。
かえって、俺と頼介の間に何かあった事を確信したようだ。
「せっかく、アイツが復帰したってのに、どうしたってんだよ?」
「久々だってのに、メシにも誘ってやらないのか?」
「俺はアイツの保護者じゃない。なんで、俺がいちいちアイツのご機嫌とらなきゃいけないんだ。」
「いつも保護者面しているクセに、よく言うぜ。」
「何があったんだ?」
頼介との間に何かがあったわけじゃない。
蓮介との間にはあったが…。
それを説明するわけにもいかず、俺は2人を押しのけるように、控室に戻った。
私服に戻り控室を出ると、頼介が待っていた。
俺に声をかけようとしているのはわかったが、今日はアイツと一緒に居たくはなくて「お疲れサマ」とだけ声をかけて、俺は立ち去った。
声はかけたが、ほとんど無視に近い。
泣きそうになった頼介を慰めるUSHIOとNAOTOの気配を背後で感じながら、俺はその足で蓮介の部屋に向かった。
記憶にある限り、多分、初めてだと思う。
退院祝いに奢ってやると、俺の方から言ったのに。
アイツ、今頃しょげているかもしれない。
蓮介と関係を持ってから、俺は頼介の顔を見られずにいる。
後ろ暗い思いが、俺を頼介から遠ざけていた。
その代わり、何故か蓮介の部屋には通い詰めている。
俺達と袂を別ってから、おそらくは真面な生活はしていなかっただろう蓮介を思うと、世話を焼かずにはいられない気持ちになってきたのだ。
頼介にさえ食べさせたことのない俺の手料理を食べさせて。
まあ、頼介はいつも将太くんの手料理を食べているし、自分の料理の腕も確かだから、メシを食わせてやる時は、外食になる。
あ、でもよく考えたら、蓮介も料理は得意だったっけ。
じゃあ、コイツ出来ないんじゃなくて、やらないだけか!
それに気付いたものの、やはり足は蓮介のアパートに向いてしまう。
だが、それも今日までか…。
頼介が回復して、仕事復帰の目途が立ったからだ。
こうなれば、俺も頼介を避けてはいられない。
復帰一発目の仕事は、写真撮影だった。
俺達の写真集が発売される予定なのだ。
そこで、久しぶりにメンバー全員が揃った。
「よ!RAISUKE。」
「ホント良かったな~。思ったより早く復帰できて。」
USHIOとNAOTOが、それぞれ頼介に声をかける。
頼介はそれに対して、上の空で返事を返した。
これは、いつもの事だ。
USHIOもNAOTOも気にしてはいない。
アイツは、こういう仕事が苦手なんだ。
歌うわけでもないのに、衣装だけ整えさせられるから、通常モードか仕事モードか、自分で上手く切り替えられないらしい。
だが、俺を見つけると、どちらかというと通常モードに近い調子で駆け寄ってきた。
「GINJI!」
メイクしている時には、滅多に見せない笑顔を見せる。
俺はその笑顔を正面から、受け止めてやる事が出来なかった。
ついつい素っ気ない対応をしてしまう。
「RAISUKE。仕事中だぞ。」
自分でも冷たい言い方をしてしまったと思う。
一瞬、傷付いたような顔をした頼介だが、次の瞬間にはRAISUKEに切り替わっていた。
そのおかげで、撮影は実にスムーズに進行した。
クールなRAISUKEの表情を余すところなく撮影できて、カメラマンは上機嫌だった。
だが、俺達の微妙な空気にメンバーは気付いていた。
「おい、GINJI。」
頼介が控室に戻ったのを確認し、USHIOとNAOTOが声をかけてきた。
「なんだ?」
俺は2人に睨みつけるような視線を向けた。
この程度でたじろぐ2人ではない。
かえって、俺と頼介の間に何かあった事を確信したようだ。
「せっかく、アイツが復帰したってのに、どうしたってんだよ?」
「久々だってのに、メシにも誘ってやらないのか?」
「俺はアイツの保護者じゃない。なんで、俺がいちいちアイツのご機嫌とらなきゃいけないんだ。」
「いつも保護者面しているクセに、よく言うぜ。」
「何があったんだ?」
頼介との間に何かがあったわけじゃない。
蓮介との間にはあったが…。
それを説明するわけにもいかず、俺は2人を押しのけるように、控室に戻った。
私服に戻り控室を出ると、頼介が待っていた。
俺に声をかけようとしているのはわかったが、今日はアイツと一緒に居たくはなくて「お疲れサマ」とだけ声をかけて、俺は立ち去った。
声はかけたが、ほとんど無視に近い。
泣きそうになった頼介を慰めるUSHIOとNAOTOの気配を背後で感じながら、俺はその足で蓮介の部屋に向かった。
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