異世界ライフの楽しみ方

呑兵衛和尚

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第七部 これからの日常、異世界の日常

異世界の章・その19 謁見と越権行為とわがまま

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 綺麗な謁見の間。
 カナン魔導連邦王都カナン。
 その王城に、地球からやってきた査察団はやって来た。
 まだ専用宿泊施設はないため、王城の貴賓室を客室として改造し、そこに査察団は通されていた。

 その日はミナセ女王との謁見が組まれていたので、謁見の間には急遽椅子が並べられており、一行はそこに座るように促された。
「まあ、そんなに固くならなくて結構ですよ」
 王座に座って赤城たちを見下ろしながら、ミナセ女王は査察団を見渡している。
「はい。それでは失礼します」
 引率責任者の赤城は一番端に座った。
 そこから順番に査察団の一行は席に座る。

「少し時間がずれ込んだのは申し訳ない。前の方の陳謝の対処に手間取りまして。この場では、私で答えられる簡単な質問にお答えしましょう。明日からはみなさんのスケジュール通りに動いて頂いて結構ですよ」
 そう話すと、議員や報道官が挙手していた。
「まず、時計の持ち込みを許可して欲しいのです。それと撮影機材。それがないと報道官である私たちは仕事になりません」
 実に自分たちの都合しか考えていない。

(はぁ。マチュア様、面倒臭いからこっちに来なかったのですね、きっと‥‥)

 そう考えるが、カナンの姿勢は一つ。
 国交に関する取り決めが決定していない以上、異世界の文明を持ち込みたくはない。
「断ります。それら文明はまだ私たちには早い。魔法で対処できるので必要ありませんから」
 きっぱりと告げるミナセ女王。
 だが、報道官はその程度では引き下がらない。
「使うのは私たちです。別に機材をこの世界の人々に貸し出すとか、そう言うことはありません」
「未知の技術というのは、知ることと模倣することから手に入る事があります‥‥簡単に説明しましょう、魔法の中には、手に取ったものを解析し、それと全く同じものを作り出すものもあります。そこから解析されて技術が流れた場合、それを悪用するものが出ないとは限りません」
 そんな事になったら、責任の所在は?
 そう続けたかったが、返答はなかった。

 すると、今度は学者風の男性が挙手していた。
「それです。その魔法とは何でしょうか?」
「少し学んでできる、代償を伴う奇跡ですね」
「奇跡?」
「ええ。以前国会というところで聞いた話では、何もないところから水を生み出したり風を起こすのは奇跡なのでしょう?レベルが違いますが、そよ風を吹かせる事も台風を起こす事も同じですから」
 報道官や議員たちは必死にメモを取っている。
 が、赤城は自分の手をグーパーと握ったり広げたりしている。
「私にも出来るはずよね?」
 ボソッと呟く赤城。
 するとミナセ女王は王座から立ち上がると階下まで降りてきた。
「例えばですが。魔力係数はご存知ですか?」
 その問いには一人の議員が答えた。
「全ての人間が持つ魔力を数値化したものですね?誰でも命あるものは持っているという」
「ええ。魔法とは体内の魔力を放出し、言葉と意識と印、そして触媒を繋げて起こすものです。では試してみましょう」
 すると、近くで待機していたメアリーが全員に小さな袋を配った。
「これは何でしょうか?」
「触媒の入っている袋ですね。残ったものはお持ち帰りいただいて構いませんよ。では私の言葉と指先の流れを真似てください」
 そう説明してから、ミナセ女王はスッと右手を前に差し出す。
『清涼たる水よ、我が手に集いて形を成しなさい』
 まるでそこに水の玉があるかのように、指と手がそれをなぞる。

――ヒュゥゥゥゥゥン
 すると、女王の掌の上に水の玉が浮かび上がっている。
「そ、それは」
「大気中の水分を集めました。形は意識で固定していますので、みなさんも試してください」
 そう説明すると、全員が一斉に詠唱を始める。
 一番真剣にやっているのはやはり大学教授で、何度やっても丸い水などできないのが悔しそうである。
「先ほどの説明ですが、疑いを持つとそれは力を成しません。いきなり私のように玉を作ることはできませんよ。けれど、掌に少しでも水ができていたら上等でしょうね」

――チョロッ
 一人の記者の掌には水が少しだけ作られたらしい。
「うわ、うわあぁぁ、出来たぁぁ」
 そこに近づくと、女王は記者の手の中を見る。
「あなたは魔力回路も開き始めましたね。そのまま訓練するか、冒険者訓練施設に入れば魔術師を目指せますよ。みなさんも掌を上に向けておいてくださいね」
 一人一人を見て歩き、全員にアドバイスする女王。
 今ここにいるのは、最低でも魔力係数は30以上ある。
 大なり小なり掌には水が出来ている。
 大学教授など、少しだけしか出来なかったのだが、女王に説明を受けるといきなり水の量が少し増えたのである。
 そして。

――ゴゥゥゥゥゥッ
 自分の手の中を見て呆然としている赤城。
「う、うわ、うわあぁぁあ」
 直径30センチの水の球体。
 それが綺麗に掌の上で対流している。
 この姿には、全員が驚いている。
 そして女王はその姿を見て慌てて赤城に駆け寄る。
「いい事?私のいう通りに言葉を紡いで。『水よ、その力を解放し、あるべき場所へ帰りなさい』」
「は、はひっ。水よ、その力を解放して、あるべき場所へかえりなさいっっ」
――シュゥゥッ
 すると、赤城の掌の水の玉が霧のように散っていく。
「ふう。危ない危ない。あなたのように魔力回路が開いている方は珍しいですね。もう少し魔力を絞る訓練をした方がいいでしょう」
「そうなのですか?」
「ええ。先ほどのような状態が続くと、体内の魔力が空になってしまい、魔障酔いが起こります。そうなると意識がスッと消えてしまい全身の魔力回路が閉ざされてしまいます。魔力が回復するか回路を開き直さない限りは、身体を起こす事もできませんよ」
「わ、わかりました。努力します」
 気合いを入れて返事をする赤城。
「後ほど侍女に教えてもらうといいでしょう。さて、他に質問はありますか?」


 その後も次々と質問が飛び交う。
 ミナセ女王はそれらの全てに丁寧に答えている。
「時間の概念はあるのですか?」
「ありますよ。朝の教会の鐘が1日の仕事の始まりです。昼の鐘が昼の休みを、そして夕方の鐘が仕事の終わりです。最も、途中で休みを入れたり、仕事の進み具合で早く終わることもありますし」
「例えばですね?女王に謁見を求めた場合とかの時間指定はできないのですか?」
 記者の問い合わせの意図を理解したらしい。
「それ程時間というものを気にしていませんね。あなたたちの世界では大切な事なのかもしれませんが。謁見の場合ですと、王城内の受付で申請していただければ、その内容の重要度ですぐに謁見したり順番を待ってもらったりします」
「その重要度は誰が判断するのですか?」
「執務官や秘書官が決定します」
「そこに公平さはありますか?」
「どうでしょう?私の国では公平であると思いますが、他国では賄賂を掴ませて順番を早くしたりするものがあるかもしれませんね」
 その言葉の真意を、その場の議員たちも十分に理解していた、
「この世界では賄賂などは結構横行しているのですか?」
「付け届けというのですか?その程度と認識してください。皆さんの世界では建築や契約など、さまざまな条件下での付け届けがあると聞きましたが、それ程高額ではありませんよ」
 その回答には、議員たちは苦笑するしかない。
 すると、記者がスッと手を挙げた。
「もしもですが、この世界に居を構えたいと申請した場合は、受け入れて頂けるのですか?」
 それには赤城も身を乗り出した。

「そうですねぇ。私の国ですと、第三城壁と呼ばれている地区があります。グランドカナンと呼んでいますが、その区画ならば移住は可能ですよ?」
「ふむふむ。そこで生活するにはどうしたらいいのですか?」
「まず家を建ててください。もしくは建築ギルドに申請して建ててもらうと良いでしょう。そののちに各区画にある商人ギルドに移住申請すると良いかと」
 必死にメモを取る一行。
 赤城も急ぎ要点だけをメモし始めた。
「そのあとはお好きに。それで移住は完了です。商売をなさるのでしたら商人ギルドに申請、技術職も各種ギルドに申請するといいですよ」
「あの、冒険者というのも同じですか?」
「冒険者にもいくつかのパターンがありまして。宿を月契約で借りて、そこを拠点として活動する冒険者もいますし、報酬金額で家を購入して定住する冒険者もいます。馬車と馬を購入してそれを家にする方もいますから多種多様ですね」

――スッ
 今度は赤城も手をあげる。
「この世界の物価ですが。人が1ヶ月暮らすために必要な金額はどれぐらいかかるのでしょうか?」
 コクコクとその質問に頷く女王。
「まず、私たちの世界の通貨はご存知ですよね?」
「はい。テレビの特集で拝見しました」
「では、それを踏まえて。我が国では、家族4人で一ヶ月大体金貨8枚程度で生活できます。異世界ギルドのある地区ですと、素泊まりの宿一泊で銀貨3枚、ギルド直営の酒場で少し良い食事とエールを注文しても銀貨一枚ですね」
 ふむふむ。
 先日のツヴァイの話では、金貨一枚が大体一万円程度。
 そう考えると月八万円で一家族が生活できるというのである。

「銀貨一枚でジャガイモは幾つ買えますか?」
 カナンにもジャガイモはあるらしい。
 発音が似ているのでジャガイモと聞いたのだが、どうやら理解してくれたようである。
「そうですねぇ。銀貨一枚ですと、麻袋三つ分ですかね」
「麻袋一つ分の重さは?」
「大きさによってまちまちですから、いつも同じ重さではありませんよ。それでも、あなたたちの世界の重さでお話ししますと、多分15kgから20kg程でしょうか?」 

 と言うことは。
 最低でも銀貨一枚45kg。
 銅貨一枚で4.5kg。
 品種にもよるが、食材は予想外に安い。
 それならばなんとなく理解できる。

「ありがとうございます。大変参考になりました」
「いえ。それでは次の質問のある方は?」
 再び質疑が進む。
 全く未知の世界ゆえ、質問などはキリがない。
 中でも後半は、不老不死や魔術による治療と蘇生に話が集中していた。
 どんどんメモが増える赤城。
 だいたいの要点だけを纏めていると、やがて食事の時間になったらしく侍女が皆を呼びにやってきた。

「陛下、そろそろ晩餐会の準備ができました」
「あら、それではそろそろ切り上げるとしましょう。マルゲリータ、皆さんを食堂にご案内してください」
「畏まりました。それではこちらへどうぞ」
 そのまま一行は食堂へと案内されるが。
 その途中、赤城は大学教授に声をかけられていた。
「君は魔術の素養があったのか。是非とも研究に手伝って欲しいのだが」
「それは今すぐには返答出来ませんよ?私は公務員ではありませんがれっきとした北海道の職員ですから」
「そ。そうか。しかしだね、君の協力があれば魔術というものの解明に数歩近づけるのだよ?」
「すいません、あまり興味ありませんので‥‥」
 面倒なのでそれで話を切る赤城。
 まさか赤城がすでに冒険者登録を終えて、しかも高位魔導師のクラスであるなど知るよしもないだろう。
 そんな会話をしているうちに、食堂に到着する。
 そして全員が席に着くと、いよいよ晩餐会が始まった。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 翌日、赤城は異世界ギルドで輸入品目のチェックをしている。
 そこはミナセ女王に任せて、マチュアは再び日本に向かった。
 いつも通りに転移門ゲートを潜ると、待ち構えている報道陣を無視して赤レンガ庁舎の二階に向かう。

「おや、どなたかと思えば。どうしましたマチュア様」
 カウンターの中でツヴァイが話しかけたので。
「土方知事と話がしたい。会えるかな?」
「さて、少々お待ちを。三笠部長、うちのギルマスが土方知事と謁見したいそうです。会えますか?」
 右手のブレスレットに話しかけるツヴァイ。
『確認をとりますので、中の応接間でお茶飲んでいてください』
 そう返信が来たが。
「そっちでテレビ見てるわ。こっちの情勢も知りたいからね」
 それだけを告げて、テクテクとロビーに据え付けてあるテレビのニュースをじっと見ている。
 丁度国会中継をやっていたので、これは好都合とのんびりと眺めていた。

――ドダダダッ
 相変わらず勢いよく階段を駆け上がってくる報道関係者。
「ツヴァイさん、あんたのとこのギルドマスターがきているんだって?取材頼めますか?」
「またですか。無理ですよ」
「そこをなんとか頼む。以前HTNが単独独占でインタビューに成功してから、うちのディレクターもどうにか取って来いってしつこいんだわ」
「ですから無理ですって」
「ツヴァイさんでもいいぞ、うちで売り出してあげられるよ?」
「次にそれ言ったら取材禁止報道社リストに加えますからね」
 トントンとペンでカウンターを叩くツヴァイ。
 それで諦めたのか、記者は振り向いて階段に向かおうとしたが。
「あれ?異世界ギルドマスターのマチュアさんここにいたのですが。国民放送協会、KHKの進藤と言います。少し良いですか?」
「まあ、ダメですね。それでは」
 じっとテレビを見るマチュア。
「そこをなんとかお願いしますよ」
 そう話をされても、今はテレビを見ているし、この後は予定が詰まっている。
「残念ですが、この後は予定も詰まっていまして」
 懐から『外交官等身分証明票』を取り出して見せると、マチュアは再びテレビを見る。
「やっべ、本物かよ‥‥これは失礼した。後日正式な手続きを申請するので、その時はご一考ください」
 先程とは態度が違う進藤。
「その殊勝さは認めるよ。カナン大使館ができたら正規手続きで申し込んでください。あと、一つだけ、今、この場で質問を許します」
 ニィッと笑うマチュア。
「は、本当ですか‥なら」
 ガサゴソと腰のバックからメモと録音機を取り出す。
「一つですよね。ええっと‥‥これかな?  マチュアさんは自在に転移門ゲートを開くことができますか?これは具体的には全ての都道府県にって言う意味だけど」
 中々鋭い質問。
 ならばと一言。
「開くのなら、一度行った場所にならどこにでも開くことはできますけど。ここに開けたのは儀式的なもので偶然。全ての都道府県に転移門ゲートを固定化できますかと言うのなら、やってみないとわからないわねぇ‥‥これで良いかしら?」
――カチッ
 録音機のスイッチを切る進藤。
「どうもありがとうございました。それではまた後日にでも」
 軽く会釈をして、進藤が立ち去っていく。
 それを見送ると、マチュアはまたテレビをのんびりと見ていた。

 今の議題の中心は『異世界関連法案』。
 マチュアたち異世界の住人を受け入れるのか? から始まり、異世界に行くための渡航手続きと異世界で得た力による犯罪行為の対応など。
「へぇ、阿倍野さん頑張っているねぇ」
 途中でお腹が減ってきたので、無意識のうちに空間から ターキーサンドを取り出して食べる。
「おや、お嬢ちゃんはこの子とおんなじ顔だねぇ」
 近くで座っていたお婆さんがマチュアに話し掛けて来た。
「おや、あっちは女王様で、私はギルドの偉い人だから別人ですよ」
「そうかそうか。そっくりだからねぇ。異世界って、魔法があるでしょう?それって病気や怪我もすぐに治るのかねぇ?」
「治りますよ。お婆さんはどこか悪いのですか?」
「リューマチがキツくてね。まあ、掛かりつけの接骨院があるからまだ楽だけれど、そこの先生が言っていたんだよ。魔法で病気が治ったら廃業だって」
――ポン
 思わず手を叩くマチュア。
「でもね、多分廃業にはならないよ。それは国会の偉い人が考えてくれるはずだからね」
「ほうほう。成る程ねぇ。魔法の先生も接骨院の先生も、どっちも大丈夫なら一番だねぇ」
 そんな世間話をしていると。
「マチュア様、知事室で土方知事がお呼びですよ」
「ほいほい。ばあちゃんそれじゃあね」
 軽く手を振ってから、マチュアは隣の本庁舎へと向かう。
 そして受付で手続きを終えると、真っ直ぐに知事室に向かった。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


――ガチャッ
「失礼します。土方知事、ご無沙汰しています」
「此方こそ。あの日はあれから大変だったよ。それで今日はどのような件で?」
「カナンとの国交の話で。現在はどこまで話が進んでいるのかと思いまして」
 その質問には、土方も中々渋い顔をする。
「国交を結ぶのは構わない方向になっている。問題なのは魔法に対する取り扱いと、異世界に対しての移住について。今現在の法案では、魔法の扱いが何処にも明記されていないからね」
 やはりそこか。
「まあ、そうなりますよね。異世界に来たら誰しも魔法を覚えたくなる。覚えたら使ってみたくなる。それを取り締まる条例や法案がまだありませんからね」
「今の日本では、まず可能性について徹底的に話し合うところから始まる。魔法反対案は医学系だけでなく、法律系の専門家も頭を抱えているからね」
 そこを突かれると痛い。
 が、それは今、考えることではない。
 どうせ国会からまた招集が掛けられると踏んだのである。
「若い世代は国交でなくても、観光ができれば良いという意見もある」
「無茶苦茶な話ですねぇ」
「その通りだよ。それと、カナン大使館を建てる話もあるのだが、今のままなら東京に建てられることになりそうだが」
「札幌にしてください。あっちは空気が悪くて嫌です」
「まあそういうと思ったよ。それはこっちでも提案しておくさ。と言うぐらい細かいところの調整で手間取っているのが現在だ」
「はぁ。まだまだ掛かりそうですね」
「それもやむなしだよ。国と国との繋がりを作るのだから、一筋縄ではいかないさ。それに‥‥」
 土方は話をそこで止めて考える。

「まだありますか。遠慮せずにどうぞ」
転移門ゲートの所有権についてだ。日本国は国内領土に転移門ゲートが開いたので日本の所有権を主張しているが、他の国々が反発してね」
 その一方的な言い回しに呆れるマチュア。
「呆れた。転移門ゲートの所有権は私たちカリス・マレスですが。なんで所有権を持ってくるのですか?」
「異世界は広大な土地と資源と未知の文明の塊だ。そんなものを日本が占有することに我慢できないらしいな。安保法案などがあるからまだコントロールは出来ているが、転移門ゲートの向こうの資源は国連で管理すべきだと言う国も出始めている」
「はぁ。本当に馬鹿ですね。当事国である私たちの意見は無視ですか。国連本部破壊して良いですか?」
 最後は冗談だが、マチュアが言うと本気と取れかねない。
「まあまあ落ち着いて。各国にも事情があって主張をしているんだ。現在は代表使節団を派遣する方向で話を進めているらしいがね」
「まあ、来るなら構いませんが、そんなわがまま言いだしている輩にギルド登録や魂の護符プレートなんて発行しませんからね」
「それはカナンの流儀で構わないと思う。そもそも諸外国となんて取引する気は無いんだろう?」
「日本が無茶言わなければね。さて、そんじゃあ永田町にでも行ってみますか」
「‥‥揺さぶるのかな?」
「さぁ?あそこには美味しい茶寮があるから、食事にでもね」
 そう告げると、マチュアはその場でスッと姿を消した。
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