異世界ライフの楽しみ方

呑兵衛和尚

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第七部 これからの日常、異世界の日常

異世界の章・その10 よし、かかって来い

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 委員会質疑は一旦休憩に入った。
 その為マチュアたちは控室に戻ってきたのであるが。

『あのですねぇ。魔法抵抗の低い人に『恐慌』なんで使ったら漏らすに決まっているでしょうが』
 大陸語でマチュアを咎めるゼクス。
『いやぁ、子供に説教するレベルでかなり弱くしたんだけれどね。まさか失禁するとは思わなかったよ』
『マチュア様、あのシーナとかいう人、私は好きになれませんわ。マチュア様を怒らせようとしているのが見え見えですので』
『わたしもぉ~。わたしは古泉とかいう人は良い人と思いますよお』
『それにしても。椎名の目的は日本との国交妨害だね。他国から言われて、日本以外の選択肢を突き付けようとしたんでしょう?』
 そう告げると、マチュアは羊皮紙を取り出してサラサラっと世界地図を描く。
 そして日本の北方や西方などを丸く囲むと、トントンと指を叩く。
『この辺かなぁ‥‥あのラノベでは、此処と此処までやばいんだよ』
 おおよそ大国と呼ばれている国をチェックするマチュア。そしてランダムに二桁の数字を書き込んでいく。
 最大値は79、最低値は24。
 まるで魔力係数のようにあちこちに書き込んでいく。
『それは?』
『特に意味はないよ。この数値にどんな意味を付けてくるか楽しみだね。あの椎名って言うのがこれを見たらどう思うかなぁ』
『罠ですか?』
『罠でもないよ。これも交渉材料になるんだ。わざと忘れて帰るから、これを見たら日本はどう動くかねぇ』

『『マチュアさま、また悪い笑いしてる』』

 そう二人に突っ込まれると、マチュアはパンパンと顔を軽く叩く。
『それでどうするのですか?』
『日本とは国交を結ぶよ。その上で、わたしに喧嘩を売って来た組織は排除するさ。まだこの程度、ラマダ公国やククルカンの時に比べたら楽なものだよ?』

――コンコン
「失礼します。準備が出来ましたのでこちらへどうぞ」
「はい。ゼクス、それを捨てておいてください」
「了解しました」
 そう返答してから、ゼクスは羊皮紙を丸めると近くの屑篭に捨てた。
「では此方へ」
 そのまま委員会室に案内されるマチュア。
 すると、先程の喧騒は他所に、マチュアは拍手で迎えられた。
 そのままゆっくりと席に戻る。
 そして再び質問が始まったが、椎名議員の質問の前のように、カリス・マレス世界全体のしくみや文化などの質問に戻った。
 そして他愛のない質疑応答もやがて時間となる。
 最後にマチュアは壇上に上がると、丁寧に頭を下げた。

「本日は私たちをこのような場に招いて頂いて有難うございます。まだまだ私たちの世界全てを理解されるとは思っていませんが、今回の質疑応答で少しでも皆さんの疑問が解消されていることを心から思います」

 そこで言葉を止める。
 少しの時間をおいて、マチュアはニッコリと微笑んだ。
「一部の人々から私たちが侵略者という言葉を頂きましたが、それは大きな間違いです。わたしも今日この場に来るためにこの国のことを勉強して来ました。日本は古くから他国のものを寄せ付けない傾向にあると聞いています。古くは鎖国と言うのでしょうか。ですが新しい文化を受け入れる事で、この国は大きな発展をして来たと理解しました」

 まさか日本の歴史を持ち出されるとは思わなかったのだろう。
 あちこちから驚きの声が聞こえて来る。
「私たちの世界も、そのように日本に良き力となれるように努力しますし‥‥」
 またしても言葉を止める。
 そして笑いながら一言。

「皆さん、魔法使いたくありませんか?」

 それで言葉を締めくくるのは反則であろう。
 丁寧に頭を下げてから、マチュアは壇上から降りて退室した。
 その間、会場からは盛大な拍手が続いていた。


 ○ ○ ○ ○ ○


 異世界政策委員会の質疑応答を終えて。
 マチュア達は控え室に戻って来る。
『ゼクス、さっきの羊皮紙はあるか?』
『また屑篭の中ですが、先程とは丸めた形が違いますね。多分一度広げられています』
『上等だ』
『あの、マチュアさま、この世界の人たちに魔法教えるのですか?』
 そうミヌエットがマチュアなら問いかけるが。
『教えてもいいと思っているけど、カナンでだね。ここでは教えたくないよ。この世界では、まだ魔法を取り締まる法律がないからね。魔法を使った犯罪は結果としては裁かれるけれど、その手段に使われた魔法を立証することがむずかしいからなぁ。そこを逆手に取られると、危険なんだよ』
 淡々と説明するマチュア。
『つまり?』
『魔法で人を殺したら殺人罪。ものを盗んだら窃盗罪。その証拠を明らかにするのが難しいけれどっていうこと』
 ふぅんと納得する二人。
『しかし、いつのまにこの国の歴史を?』
『空港で買ってもらった本。そもそも|転移門(ゲート)とレストランとか、国会議事堂とかしか行ってないでしょ?何処で細かく調べる時間がある?』
 その言葉に全員がやれやれと言う表情をする。

――ガチャッ
 すると、菅野官房長官が部屋にやって来る。
「本日はお疲れ様でした。このあとは会食の準備が出来ていますので、そちらでごゆっくりとおくつろぎください」
「私たち以外の参加者は?」
「先程、阿倍野総理が戻られまして、急遽会食に参加したいと。それ以外にも希望者が多くてですね」
「では、阿倍野総理以外に五名ほど。場所は北海道の」
「いえ、近くですでに用意してありまして。今から北海道というのは」
 あわててそう告げる菅野官房長官。
「では、会食の後で少しくつろぎたいので。北海道の赤煉瓦邸と言いましたか? そこの予約もお願いします」
「判りました。ですが、会食後となりますと時間が」
「レストランの前の|転移門(ゲート)に魔法で向かいましょう。菅野官房長官もご一緒しますか?」
 一度|転移門(ゲート)を通って異世界に来ている菅野官房長官。
 その言葉には抵抗はないのだが。
「残念ですが、このあと緊急会議がありまして。私の代わりに内閣府特命担当大臣の蒲生太郎大臣が同席したいそうです。私の方から赤煉瓦邸にも連絡を入れておきましょう」
 それで話は全て終わった。


 会席の場所は赤坂にある茶寮『四季折々』。
 創業100年を超える、老舗の店である。
 国際的な来客などがあった場合によく使われる割烹で、今回のマチュア達の会食の場としても用意されていたらしい。
 公用車で茶寮までやって来ると、とこで嗅ぎつけて来たのか数名の記者が正門横で待機していた。
「阿倍野総理、一言お願いしたいのですが」
「今日のこの場を設けるために急遽帰国したというのは本当ですか?」
「ミナセ女王。なにか一言お願いします」
 そんな感じで次々とマイクを向けられるが、マチュアと報道の間にゼクスが入ると状況が一転する。

「このような事をしなくても、予めご連絡をしていただければ女王はみなさまとお話しする機会を設けますよ。他社に抜け駆けしてトップ記事を書きたいのは理解します。ですが、物事にはやり方というものがあります」
 軽く笑みを浮かべるゼクス。
 その言い方に、記者達も少し勢いを失ってしまう。
「それと一言。皆様に報道の自由があるとは担当官の方から伺っていますが、そのような権利ばかりを振りかざす場合、その報道の関係者は私たちカナンには受け入れませんので。私たちも皆様を受け入れる以上、友好的に行いたいのです。そのあたり、ご了承ください」
 丁寧に頭を下げるゼクス。

『ちょ、おまえ、いつのまにそんな話術覚えた?』
『マチュア様の記憶から色々と引っ張り出しただけですよ。多少おかしくても、異世界の人間ゆえ笑ってくれます』
『成る程ね。多少おかしいに疑問はあるが、まあナイスだ』

 そんな会話を念話で話していると、すぐに店の女中さんがやってくる。
 流石にバツが悪くなったのか、報道関係者は下がっていく。
「皆さまご協力かんしゃしま~す。それでは失礼します~」
 ミヌエットが耳をピクピクさせながら報道関係者に挨拶すると、一同はゆっくりと店の中に入って行った。


 そのあとはのんびりとした時間が過ぎていた。
 特段変わった話などなく、委員会に出られなかった阿倍野総理と蒲生大臣からの質問に簡単に答える程度の話である。
 途中で魔力に関する話があったので、すぐさま二人の魔力を計測したが、阿倍野総理が係数31、蒲生大臣は係数52という高数値を算出した。
 そして帰りの時間が近づいたとき。

 妙に外が騒がしくなっているのにミヌエットが気づいた。
「マチュア様、外にかなり大勢の人が集まっていますよ」
「へぇ。よく聴こえますね」
 思わす蒲生大臣が話しかけると、ミヌエットは自分の耳を指差す。
「遠くの音も聞こえますよ。猫族は人よりも優れた聴力を持っていますから」
「そうなると、出るときにもう一悶着ありそうですね。車を裏に回すか待機しているSPにお願いしますか」
 阿倍野総理が呟きながら懐からスマホを取り出すが。
「でしたら、敷地の中から北海道に向かいましょう。正面玄関で開けば、彼らからも見えますし諦めてくれると思いますよ」
 とんでもない妙案。
 まあ、正攻法の妙案というのがあるとは思えないが。
「そうですか。では、お言葉に甘えるとしましょう」
「わたしもまだまだ聞きたいことがあるのでね。異世界というのは興味に付きませんよ」
 流石は漫画やアニメをこよなく愛する蒲生大臣。
 異世界を実体験できそうなのでご満悦である。
「それでは、向かいましょう」
 ゼクスとミヌエットが先行して歩き出す。
 マチュアと阿倍野総理、蒲生大臣はそれに続き、しんがりをナタリーが務める。

 やがて玄関を抜けて外に出ると、正門外には大勢の人が集まっている。
 丁度カメラを構えた人々がいたので、ゼクスやミヌエットは軽く手を振ったり頭を下げている。
 そしてマチュアも外に向かって軽く会釈すると、すぐさま|転移門(ゲート)を開いた。

――ウォォォォォォォォオ
 絶叫が周囲に響く。
 するとナタリーが先行し、続いて阿倍野総理、ミヌエット、蒲生大臣が|転移門(ゲート)に触れてスッと消えて行った。
 大量のフラッシュが点滅し、|転移門(ゲート)に消える瞬間が撮影される。
 そしてマチュアも消えて行くと、最後にゼクスが丁寧に一礼して|転移門(ゲート)に触れて消えて行った。

『よし、閉じるぞ』
『はいはい。では先行して護衛に付きます』
 大陸語で話しするマチュアとゼクス。
 マチュアはすぐさま茶寮正面の扉を消すと、北海道側の扉にはゼクスが向かった。
「ここからは、いくつもの扉が開けるのかね?」
「ええ。わたしが一度でも行ったことのある場所でしたら。いつでも国会には出ることができますわ」
 そう話をしているうちに、ゼクスが|転移門(ゲート)の外に出る。
 そしてミヌエット、阿倍野総理、ナタリー、蒲生大臣と続き、マチュアが最後にゲートから出た。
「では急ぎましょうか」
 ゼクスが阿倍野総理と蒲生大臣の右横に立つと、ミヌエットがマチュアの右横に付く。
 ナタリーは後方を警戒しながら赤煉瓦亭に向かうと、すぐさま建物の中に入って行く。

『‥‥何があった』
『銃というものでしょう。狙撃されました』
『へぇ、誰を狙った?』
『私が狙われましたね。何処から撃ってきたのかなどは分かりません。後ほど警戒を促した方が良いかと』
『ミヌエットは何か感じた?』
『距離が離れ過ぎています。ちょっと無理ですねぇ~』
『はいはい。ではご褒美にアイスでも買って帰りますか』
 大陸語で笑いながら話をするマチュア。
 総理と大臣にはまだ伝えないほうがいいとの配慮である。


 玄関では、新調したように真っ白なコックコートを着た赤城湊が出迎えていた。
「本日は赤煉瓦亭にようこそお越しくださいました。心からのおもてなしをお楽しみください」
「あら、この前の臨時シェフさん‥‥赤城さんといったかしら?」
 先日スカウトしたことは忘れていない。
 だが、敢えてここでは冷静に務めるマチュア。
「はい。覚えて頂いて光栄です」
「それはもう。それで、私の国の王城で働く決心はついたかしら?」
「えっ、いえ、その‥‥」

(そうだよねぇ。すぐになんて決心つかないよねぇ)

 赤城の様子から察すると、マチュアはすぐに話題を切り替えた。
「まあ、その話はまたということで。阿倍野総理、この方が私のお勧めしていた女性ですよ」
「なるほど。そうでしたか‥‥では、積もる話は中でゆっくりと」
 そう話をしていると、ホール担当の初老のマネージャーがマチュア達を部屋に案内した。
 そして席に着くと、すぐさま飲み物を聞いて部屋から出て行く。
「さて、此処までご一緒していただき感謝します。一つだけ問題が発生しまして」

――コトッ
 席に着いたゼクスが、阿倍野と蒲生の目の前に真っ二つに切断した弾丸を二つ置いた。
「これは一体。いつ撃たれたのかな?」
 驚いたようにゼクスに問いかける阿倍野。
 その横では、蒲生が何処かに連絡を入れている。
「先ほどですね。私がゲートを通過した際に、突然撃たれました。すぐさま弾丸は切り捨てましたが、誰が撃ったとかはまったく不明で」
「それで、狙われているのは恐らくは私たちです。そうなると、今後も私たちや関係者が狙われる可能性が高くなります」
 ゼクスに続いてマチュアもそう話す。
「実はここだけの話ですが」
――ガチャッ
「失礼します。お飲物をお持ちしました」
 ホールマネージャーが全員の目の前に飲み物を置く。
 軽く乾杯をしたのちに一口だけ口をつけると、蒲生はマネージャーに何が軽くつまめるものをと注文する。
 そしてマネージャーが部屋から出て行くと、マチュアはまた話を始めようとするが。

『マチュア様。窓の外、遠くから様子を伺っている気配を感じます』

 ミヌエットが大陸語で警告を発する。
「先程の件、少し魔法で警戒しておきましょう」
 スッとマチュアは印を組むと、『範囲指定・沈黙結界』を施す。
 室内の音を外から聞き出すことはこれでできない。
「敷地の外だとは思いますが、此方を観察している者達がいるようですね。魔法で結界を施したので、ここの会話を外から聞くことはできませんが‥‥」
「まあ、何処かの国の諜報関係でしょうね。先ほど関係各位に連絡入れましたので、動いてくれるでしょう」
 フン、と鼻で笑う蒲生。
「自国に|転移門(ゲート)が開かなかったのがよほど悔しいらしい。開いたところで、奴らは交渉という名の脅迫を仕掛けてくるだろうがな」
「日本国は運が良かったのですよ。私たちも|転移門(ゲート)が何処につながるかなんてわからなかったのですから」
「当たりくじを引けましたか。そういえば、先ほども何か言いかけていましたが?」
 阿倍野が笑いながらマチュアに問いかける。
 すると、マチュアもコクリと頷く。
「こちらの世界の人間で、とてつもない魔力を秘めた方がいらっしゃいます。その方を守ってあげて欲しいのです」
「と言いますと。件の玉が青く光ったかたがいたのですか?」

「まだ水晶を使っての測定はしていません。けれど、少なくとも青色の次、白く輝く魔力を有している方がいらっしゃいます」
「それが事実なら、なんとか隠蔽したいがねぇ」
「最悪攫われて人体実験という事も考えられますね。その方はどちらに?」
 そう問われて、マチュアは少し考えてから一言。
「先ほど挨拶していた料理人の赤城湊です。保護とまでは言いませんが、少し目をかけてください」
「なら、今国会で出されている異世界対策委員会に招き入れるというのもありますね」
 そう蒲生が腕を組んで説明するが。
「その辺りは派手に手を打っているようで。なにかあった場合の保護をお願いします」
「まあ、それは構わないが‥‥と、つまむものが来たか」

――ガチャッ
「お待たせしました。‥‥と‥‥をお持ちしました」
 コトコトッと料理をテーブルに運ぶと、取り皿とナイフ、フォーク、スプーンなどを並べて部屋から出て行く。
 その彩り鮮やかな光景に、ナタリーやミヌエットもワクワクしている。
「まあまあ、ここからは楽しい話をしましょう」
「そうですね。では‥‥」
 そこからは蒲生の促す通りに、会食の続きのような雰囲気で話が丸くなる。
 やがて楽しい時間終わりに近づくと、マチュアは阿倍野と蒲生に一言。
「このあと、私たちの世界の人間が幾度となくやって来るでしょう。けれど、その場合は優しく受け入れてください」
「わかりましたよ。こちらとしては、皆さんの世界の人たちが気軽にやって来るための法整備を進めることになりそうですので」
 そんな話をしていると、終わりの挨拶に再び赤城がやってきた。

――ガチャッ
「失礼します。本日はありがとうございました」
「こちらこそ美味しい料理をありがとうございました。また来ますので、その時はお願いします」
「はい。私は明日付で部署が変わりますが、リクエストがありましたら対応させていただきますので」
 その言葉には、阿倍野総理や蒲生大臣も驚いている。
 マチュアはアルフィンとしてその話をしていたので知っていたが、とりあえずは驚いて見せた。
「ほう、明日付で変わるのか。次は何処に行くのかな?」
 阿倍野総理が赤城に問いかけると。
「北海道庁総合政策部・異世界政策局です。北海道における異世界関連の専門局ですので、必然的に女王様の対応は私達が務めることになりますので」
 しっかりとした口調でそう説明する赤城。
 その言葉を聞いて、阿倍野と蒲生がチラリとマチュアの方を見る。
「そうか、なら大丈夫だな。後日連絡するが、近いうちに君には異世界に行ってもらうので。今日はありがとうな」
 蒲生大臣が赤城の肩を叩きながら告げる。
「はい‥‥って?」
「それでは。今度は私の国でお会いしましょう」
 マチュアは赤城にそう話しかけると、ゼクスに先頭を任せて部屋から出て行った。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 


 帰りは|転移門(ゲート)の中での別れとなる。
 赤レンガ前のゲートをくぐり、中で国会議事堂正門外に|転移門(ゲート)を繋げると、マチュアは阿倍野と蒲生を見送った。
 赤煉瓦亭で受け取ったアイスの包みを手に、ミヌエットとナタリーも丁寧に頭を下げる。
 そしてその足でのんびりとカナンの異世界ギルドに帰還すると、検疫を通ってギルドの中に戻って来る。

「ぷっはー。外向けの顔は疲れるわ」
「お疲れ様でした。次はいつ頃向かうのですか?」
「明日。朝一でツヴァイと行ってくるわ~」
 ハーブティーを持ってきたフィリップともそんな話をしていると、ツヴァイもマチュアの元にやってくる。
「異世界政策局ですか?」
「そうそう。私は今から作り物してくるから、あとは任せるね」
 手をヒラヒラと振りながら、マチュアは馴染み亭へと戻って行く。

「ゼクス、何かあったのですか?」
 傍らで王城に持ち帰るアイスの箱を持っているゼクスを見かけて、ツヴァイがそう問いかけたが。
「狙撃というのですか?あれに巻き込まれましたねぇ。相手が何者かわからないですが、恐らくはその対策でしょうね」
「へぇ‥‥」
 その話に納得するツヴァイ。
「どうかしたのですか?」
「いや、あんなに怒っているマチュア様を見たのは久しぶりだなぁって‥‥」
 そう話すと、ツヴァイも明日の準備を開始する。
「え? あれ怒っているのですか?」
「かなりね。そんなに腹に据えかねないことがあったのかぁ‥‥」
 そのツヴァイの込と場に頭をひねると、ゼクスはアイスが溶ける前に急ぎ王城に転移した。

 なお、お土産のアイスの数が足りないと魔導騎士団の女性陣にゼクスが怒られたのは言うまでもない。
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