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第七部 これからの日常、異世界の日常
異世界の章・その8 未来の導師を守るために
しおりを挟む――カチカチカチカチ
馴染み亭の自室で黙々とウィンドウを弄っているマチュア。
あと数時間で魔力感知球の量産が完了する。
それまでにこの作業を終わらせたい。
アバター作成モードで新しいアバターを作っているのだが、どうもうまくいかない。
「いっそ、今までにないアバターでも作るかな?」
エンジの姿で行っても構わないのだが、子供扱いされるのがオチである。
ならばもう少し威厳のある姿を作るのが良い。
それでいて一般受けの良さそうな。
「となると、ツヴァイの標準ボディと同じ金髪エルフだな‥‥少し知的な、いまのマチュアとは対極の、モノクルが似合って‥‥うひゃひゃひゃ」
――カチカチカチカチ
なんか暴走しているマチュア。
一般受けと考えてそのアバターを選ぶ所が、すでに暴走している。
まあ、アニメキャラを実体化しないだけまだましである。
その気になれば、アニメのあのヒロインやあのヒロインをゴーレムとして完成させることも可能だが、それはまだ思い付いていないようである。
そして一時間ののち完成した外見と詳細設定。
「さてと、神威起動‥‥外見をマチュアから『アルフィン』に変更。|魂の護符(プレート)はと‥‥」
――ブゥゥゥン
いまの外見に合わせて、|魂の護符(プレート)も書き換わる。
エンジの時と同じように変化するので慣れたものである。
「カナン魔導連邦所属の魔導騎士と。爵位は女男爵で‥‥」
一通りの設定を終えると、アルフィンは魔術師の装備に換装する。
胸元にカナン魔導騎士団の紋章を入れ、常時『魅了』の魔術が弱く発動している。
なんでこんなの作ったのだろうと本人も考えるほどである。
「まあ、いいか。ではミナセ女王のトコにでも顔出してきますか」
そのままトントンと階段を降りて馴染み亭に出る。
「おや、いらっしゃいませー。お一人ですか?」
店員がそう話しかけてくるが、アルフィンはニッコリと一言。
「いえいえ。ちょっと王城まで。それでは失礼しますね」
と笑いながらその場を立ち去る。
「これはこれは、お久しぶりです」
入り口のところまで行くと、執事のジェイクがアルフィンに話しかける。
「え、えーっと、どこかでお会いしましたか?」
動揺しながらジェイクに問い掛けるが。
ジェイクはそっとアルフィンに近づくと耳元で
「マチュア様。そのローブの刺繍文様がマチュアのままですぞ。新しい外見でしたら、そこもお直し下さい」
おおっと。
一瞬で無地の導師ローブに換装すると、ジェイクに向かって頭を下げる。
「相変わらず完璧だねぃ。これもマチュアで本人ね」
「はっはっはっ。お名前はなんとお呼びすれば?」
「アルフィン女男爵だ。魔導騎士団所属のね」
「また新しい遊びか何かで?」
「異世界で動くための外見ですよ。マチュアだと公的機関が動く、エンジは子供なのでダメだ」
「そういうことでしたか。ではお気をつけて。これはうちのものには説明しておきますか?」
「適当に頼む。それでは」
ひそひそ話を終えると、アルフィンは外に出ていった。
それを見送ってから、店員のメアリがジェイクに問い掛ける。
「あの状態のマチュア様の名前はなんですか?」
バレてるバレてる。
「アルフィン女男爵です。そう伝えておいて下さい」
「了解しました。ではでは‥‥」
なんだろう。
主人思いのいい職場と褒めるべきか、マチュアのドジを直せと言うべきか。
王城に到着したアルフィンは、まっすぐに執務室へと向う。
その扉の手前では、ちょうどファイズが護衛をしていたので、話を通すにはちょうどいい。
「ようファイズ、通るよ」
「‥‥どちら様で?」
――シュンッ
一瞬だけマチュアに戻ると、すぐにアルフィンに変化する。
「‥‥また遊んでいるのですか?」
「違うよ。異世界での活動用アバターだよ」
「ああ、成る程ねぇ」
――ポン
と手を叩いて納得するファイズ。
「クィーンは中?」
「ええ、イングリッド宰相と話をしています」
「そうか。まあ、急ぎだからちょっと失礼するよ」
――ガチャッ
やっくりと扉を開いて中に入る。
すると、イングリッドがアルフィンの方を見て一言。
「いま会議をしているところです。何処の騎士です‥‥あらら?」
瞬時にマチュアに戻る。
「邪魔はしない。ちよっと異世界行ってくるから。これは新しい外見でね‥‥」
その場にいるイングリッドとクィーンに説明するマチュア。
そしてすぐさま公的手続きを取ると、住居もグランドカナンに設定しておいた。
「遊びではないですよね? お気をつけ下さい」
クィーンもそう笑いながら呟いているし、イングリッドに至っては必死に笑いを堪えているのが判る。
「どうして笑うんだ?」
「マチュア様とのギャップが大きすぎて‥‥失礼しました」
「それならエンジの方がギャップあるでしょうが。あれはロリエッタだよ?」
「まあそうですけれど、ロリエッタでは行かないのですか?」
「アレはダメだ。合法ロリを求めて来るやつが出る。そんなことになったら、このグランドカナンがとんても無いことになる」
ブルブルと頭を振る。
想像するのも嫌であろ。
「ではお気をつけて。マチュア様の活動でしたら|通信用水晶球(トーキングオーブ)での報告でも良かったのですよ?」
そうイングリッドが話しているが。
「いや、この外見だけでも報告しておかないとね。では行ってくる」
――シュンッ
一瞬で異世界ギルドの自分専用執務室に転移するアルフィン。
「おや、ナイスタイミングですねぇ」
ちょうど魔力感知球も完成していたので、アルフィンは全てをバッグに放り込む。
「それじゃあ装備を魔法騎士に変更。カナン魔導騎士団の紋章を移して‥‥よしよし」
一通りの装備を終えるアルフィン。
そして部屋から出ると、丁度フィリップが部屋の前を通っていく。
「おや?」
ふと首を捻るフィリップだが。
「マチュア様ですか?」
「なんで判るんだよぉ」
「あちらで同じような姿のツヴァイ様が働いていましたから。その姿でその部屋から出てくるとなると、あとはマチュア様ぐらいでしょう?」
「的確な推理ですね。この外見時はこれでお願いします」
素早く|魂の護符(プレート)を作り出すと、それをフィリップに見せる。
「ふむふむ。アルフィン様ですね。では職員には?」
「混乱が増える。内緒でいい。異世界ギルド登録するから受付頼むわ」
「了解しました。Sクラスですよね?」
「ああ。女王の伝言役という名目で出かけるからそのつもりで」
そんな打ち合わせをしながら受付に向う。
そして空いているカウンターに向うと、フィリップがアルフィンの受付を行ってくれた。
「はいこれで、すぐに向うのですか?」
「ええ。部屋にあったやつをちょっと配ってくるわ」
そう話すと、まず手荷物検査室に向う。
「お疲れ様でした。ギルドカードをお願いします」
そう説明してくれる職員にギルドカードを提出する。
「手荷物は?」
「空間バッグ一つ。女王からの伝令です。これが魔導騎士団のカードで、こっちが|魂の護符(プレート)、です。フィリップサブマスターの許可も貰っています」
「ふむふむ。ではフリーパスでお通り下さい」
そのまま次の検疫室に向う。
そこで浄化魔術を受けると、最後の部屋に移動する。
――ガチャッ
「うわぁ!!」
扉の外ではワイルドターキーが護衛として詰めていた。
「な、なんでターキーさんがここに?」
思わず叫んでしまうアルフィン。
だが、ワイルドターキーは髭を撫でながらのんびりとしている。
「ふっふっふっ。この儂を知っているとは。君はカナン魔導騎士だな」
「ええ。アルフィンと申します。マチュア様の伝令役で異世界に向かいます」
淡々と説明するアルフィン。
それにはワイルドターキーもウンウンと頷いている。
「ではお気をつけてな」
「ええ、ありがとうございます」
そう頭を下げると、アルフィンはその場にある|転移門(ゲート)に手をかざし、日本へと転移した。
○ ○ ○ ○ ○
道庁赤れんが庁舎前。
|転移門(ゲート)から姿を表したアルフィンは、周囲で警備している機動隊にまず呼び止められる。
「い、異世界の方ですか?」
「ええ、カナン魔導連邦・カナン魔導騎士団のアルフィンと申します‥‥このエリアの責任者とお話をしたいのですが」
――キリッ
|片眼鏡(モノクル)を直しながらそう告げるアルフィン。
「このエリアといいますと‥‥北海道の知事ですか?」
「知事というのですか? ではその方にお取次をお願いします」
「はっ、少々お待ち下さい」
慌てて機動隊員の一人が赤レンガ庁舎にかけていく。
その数分後には、メガネを掛けた糸目でゆるい表情の職員がやってくる。
「これはようこそ北海道へ。私は観光課の三笠と申します。いま知事に連絡を入れていますので、それまでどうぞこちらでお休み下さい」
気がつくと、周囲を大勢の観光客や野次馬が取り囲みつつある。
あまり騒がしくするのは良くないので、ここは三笠課長の言葉に従う。
「そうですね。ではご案内下さい」
背筋を伸ばしてキリッとした表情で告げる。
そのまま隣のレストラン赤煉瓦亭に向うと、そこでアルフィンは一休みした。
‥‥‥
‥‥
‥
10分もすると、知事の秘書官がやってきて三笠に何かを耳打ちしている。
「そうですか。では、誠に申し訳ありませんが、知事のいる場所まで来て頂けますか?」
「構いませんよ。予定外にやってきたのは私ですので」
「そう仰言って頂けると光栄です。ではこちらへ」
そのまま秘書官と三笠課長に続いて、アルフィンは赤れんが庁舎から斜め後ろにある北海道庁へと案内された。
そこからエレベーターに乗って上に向うと、知事室の前まで案内された。
「誠に申し訳ありません。腰のものをお預かりしたいのですが」
丁寧に頭を下げる三笠課長。
ならばとアルフィンも帯剣ベルトを外してロングソードとショートソード、ダガーを全て預けた。
「それ全てで白金貨300枚の価値がありますので、丁寧に取り扱って下さいね」
「はい。それではここで待っていますので」
その返事を聞くと、アルフィンは扉をゆっくりと開く。
すると、椅子に座っていた壮年の男性がゆっくりと立ち上がり、アルフィンに近寄ってくる。
「初めまして。北海道知事の土方謙三と申します」
「カナン魔導騎士のアルフィンです。丁寧なご挨拶ありがとうございます」
土方に頭を下げると、アルフィンは差し出された手を握り返す。
「立ち話もなんでしょう。こちらへ」
「ありがとうございます」
促されるままに椅子に座る。
すると、土方知事はゆっくりと口を開く。
「ミナセ女王の特使と伺いましたが、日本国政府ではなくどうしてこの私を指名されたのですか?」
そう考えるのも無理はない。
国交を考えるなら、特使の行き先は国会。
永田町辺りに向かえばいいのだし、そこに連れて行ってほしいと言われるのなら納得する。
「まず、これをお貸しするために来ました」
――コトッ
肩から下げていたバッグから『魔力感知球』を取り出すと、それをテーブルの上に置いた。
「それは?」
「これは魔力感知球といいます。触れたものの体内にある魔力を感知するものでして。具体的に説明しますが、まずは私を信じて触れて頂けますか?」
そう問い掛ける。
すると土方は疑うこと無く手をかざす。
――ブゥゥゥゥン
すると、水晶球が赤く輝き始めた。
「これは危険ということですか?」
「いえ。赤く輝いたということはですね。土方知事の魔力係数は30~50。私たちの世界に来ても害がありませんが、来るためには私たちのように転移門ゲートを開けるものが代わりに開かなくてはなりません」
淡々と説明を始める。
「別の色もあるのですね?」
「ええ。赤の次は黄色。その方の魔力係数は大体51~80です。カリス・マレスに来ても問題なく生活もできますし、関連施設でしっかりと勉強すれば魔術も習得することが出来ます。但し、こちらの世界は魔障という魔力の源が薄いので、こちらでは魔術は使えないでしょう」
ほう。
異世界に人が来ることを前提に説明しているので、土方も表情が温和になる。
「そして青く輝いた方は魔力係数81~100。魔術の素質を秘めています。訓練次第では冒険者として十分に生活することもできますし、秘薬という魔術の触媒さえあれば、こちらの世界でも魔術は使えます」
「こちらでもですか?」
「ええ。ですがほんの一握りでしょうね」
そう話すと、土方は腕を組んで考えた。
「突然そのような説明とは、どういう意図ですか?」
「ここからがミナセ女王からの伝言です。そこの建物で働いている赤城という女性コックですが、彼女を守ってあげてほしいのです」
その唐突な言葉に、土方も呆然とする。
無理もない。
異世界の女王が、一人の女性を守ってほしいという願いをしているのである。
「それはまたどういうことで?」
その言葉に、アルフィンも水晶に手をかざす。
すると水晶が銀色に輝いた。
「私の魔力は係数で1300ほど。ちなみに私たちの世界の一般の人々の平均が60前後です。魔力係数101以上の方は白く輝きます。訓練次第では秘薬などの触媒も必要とせず、自力で転移門ゲートを自由に使うこともできるようになります」
「つまり?」
「先日女王が赤城さんと握手した際の感じた魔力係数は120以上。彼女は導師クラスの魔術師になることも出来ますし、独力であの|転移門(ゲート)をくぐる事もできます。そのようなことがバレた場合、この国の関係機関は彼女を徹底的に調べたりしませんか?」
ふむ。
それには土方も頷くしか無い。
「国どころか、他国の諜報関係に攫われかねませんね」
「ですので、どうか彼女を目の届くところで見守ってあげてほしいのです。私達の世界に来たら、その時は色々と教えてあげることも出来ます。けれど、いまの環境では来ること自体が難しいかと思われます」
いま現在で異世界に来ることが出来るのは、国の代表である使節団のみ。
そこには民間人が入る余地はない。
「では、彼女を異世界に対応できる部署に採用しましょう。そこの部署に所属する者は優先的に使節団もしくは査察団のメンバーに入れるように指定して頂ければ」
「そうですね。では‥‥そのような部署を作れますか?」
その言葉に土方は少し考える。
独断で新しい部署を新設。
だが、北海道の為に活動する部署ならば誰も文句はいうまい。
野党がうるさく言うだろうが、そんなものは結果を出せば何もいえまい。
「では‥‥北海道庁異世界政策局を設立します。カナン魔導連邦から、使節団には必ずそこの職員を一人もしくは複数加えるようにと伝えて頂けると。あとは私共でどうにでもしましょう」
「ありがとうございます。それでは、これはほんのお礼です‥‥異世界政策局の方がカナンにいらした際の調査費用としてお使い下さい」
そう話をして、アルフィンはバックから金貨袋を取り出すと、それを土方に預けた。
「これは?」
「わが国の通貨です。白金貨、金貨、銀貨、銅貨、鉄貨が収めてあります。大体白金貨で100枚ぐらいにはなると思いますのでお収め下さい」
「いえ、これは受け取れません。受け取ると賄賂になってしまいます」
「それでは困ります‥‥では、異世界政策局は私達カナンと道庁の合同設立として、その資金とすればよろしいのでは?」
「その手を使いますか‥‥参りましたなぁ‥‥」
頭を抱えるように悩む土方。
「カナン魔導連邦からの政策局員としては私アルフィンとツヴァイという女性を登録して頂けると助かります。ツヴァイは現在、異世界ギルドという部署の職員です。マチュア様の腹心でもありますのでどうか宜しくお願いします」
そこで頭を下げられると、土方も頷くしか無い。
「判りました。では、女王陛下には、いまの話を承諾したとお伝え下さい。後日ツヴァイさんという方も連れてきて頂けると助かります」
「了解しました。では、私は急ぎますのでこれで失礼します。あまり長い間ここで話をしていると、報道とかいう方々が集まってきますよね?」
「まあ、カナンからの特使が来たぐらいは話しますよ。それ以上はカナンとの秘密事項と言えばどうとでもなります」
その言葉でアルフィンはゆっくりと席を立つ。
そして再度土方と握手すると、静かに部屋から出ていった。
○ ○ ○ ○ ○
無事に交渉を終えてアルフィンはカナンに戻ってくる。
「さてさて。これで話は終わったので、あとはツヴァイと話をするだけで‥‥」
そう呟きながら検疫室で浄化を受けると、アルフィンは事務室にやってくる。
「無事に帰還しました。それでは失礼します」
丁寧に頭を下げて異世界ギルドから出るアルフィン。
そしてすぐさま箒を取り出して跨ると、のんびりと王城へと向かっていった。
そしてまっすぐに執務室に向うと、廊下に立っているファイズに一言。
「ミナセ女王に謁見したいのだが」
「とっとと入ればいいでしょうが。なにをふざけているんですか」
「様式美というものが‥‥いいや」
途中で言葉を濁してアルフィンは室内に入る。
そこでマチュアに戻ると、適当な椅子に座った。
「‥‥ツヴァイ、ちょっと急務。異世界関係の仕事で頼みがあるから王城に」
――ヒュンッ
会話の途中で飛んてくるツヴァイ。
最近は異世界ギルドに登録した際に用いた『金髪爆乳エルフ』の外見で固定している。
おかげてツヴァイ=エルフという形がすっかり固定されている。
しかし、そのパンパカパーンしそうな外見はどうかと、作ったマチュアも思う。
「どうしました?」
「実は潜入調査というか、潜入警護を頼みたい」
手の中に記憶のスフィアを作り出すと、それをツヴァイに手渡す。
「警護‥‥ああ、なるほど」
「正直言って、そこまでの魔力を持っているとは予想外なんだよ。このまま放っておいても異世界の資源や利権を求める諸外国の人間に狙われる。話は付けてあるので、明日にでも『異世界政策局』に出向して欲しい」
淡々と説明しているが、真面目な話なのでツヴァイも真剣に聞き入れる。
「外見は?」
「そのままでいいよ。いまのツヴァイはそれなんだから。異世界ギルド職員でマチュアの副官。それに新しく異世界政策局の職員というのが加わるだけ」
――シュンッ
アルフィンにアバターチェンジするマチュア。
その外見をまじまじと見るツヴァイ。
「そのアバターの原型は私ですか?」
「そういうこと。出向先でもしっかりと頼むわ」
「はいはい。私のほうが胸が大きいのですね?」
「爆乳金髪エルフだ。ツヴァイは泣きぼくろも付けてあるから私とは区別できるようにしてある」
そう説明してマチュアに戻る。
「では、いつから行きますか?」
「近々私が国会に向うので、その前には行って話を進めておいて欲しい。いつ行っても構わない、赤レンガ庁舎観光課の三笠っていう‥‥なんか内海課長みたいのがいるからそこに話すればいいよ」
「それって、あとで私、後ろから撃たれませんか?」
「似ているだけだ。ということであとは宜しく。数日走り疲れたので少し寝るわ」
それだけを告げて、マチュアは部屋の隅で|深淵の書庫(アーカイブ)を起動すると、そこで昼寝を始める。
それを眺めているクイーンとツヴァイ、イングリット。
「最近はよく眠りますねぇ」
「亜神になってからは、こっちの世界でパワーダウンしていないと身体がきついそうですわ」
「‥‥その分、私達がしっかりとしないといけませんね」
実によく出来た側近たちである。
そんな会話があるとは知らず、マチュアは来るべき国会での戦いに備えて、体力を回復していた。
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