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第一部・二人の転生者と異世界と
ラグナ動乱・その8・王都動乱、皇帝の決断
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シルヴィーが齎した、王都の危機についての情報。
そしてケルビム老の見た予知。
二つの運命の歯車がかっちりと噛み合い、ゆっくりと回転を始めた。
「さて、緊急で申し訳ない。先日の『竜の襲来』について、新しい情報があるが、それはまず食事の後にでも‥‥」
ラグナの五王と皇帝のみが入る事を許された、塔の最上階にある『五王の間』に、ラグナの五王と皇帝が座している。
ケルビムはシルヴィーたちの話を推敲し、自分が行うべき最良の方法を考えだしたのである。
「それは?」
「まあ、時刻も丁度昼。ゆっくりと食事でも取りながら話をしようではないか」
シルヴィーが持ってきたお土産の入ったバスケットから、『タンドリーサンドとザンギ串、揚げじゃが』を人数分の皿に取り分けて配る。
「あら、これはあなたの孫娘さんのところの露店のメニューよね。初日の料理が美味しかったので、つい毎日通っていたのよ」
真紅のロープの女性・ミストが早速タンドリーサンドを食べ始める。
それに続いてシュミッツとブリュンヒルデ、パルテノも食事を開始した。
そして最後に皇帝レックスも一口味見をしてから、ゆっくりと食事を開始。
ケルビムもまた、皆が食べ始めてからゆっくりと揚げじゃがを食べる。
「このザンギ串というのは中々美味いな。老の孫娘の露店らしいな。これの作り方をうちの料理人に教えてほしいのだが」
「私は先日のクレープとかいうのがいいわ。ケルビム、お願い」
シュミッツとミストが、ケルビムに頼みこむ。
「して、ケルビムよ。今日この場に我等を集めたのは、ただ異国の珍しい料理を食べるためではあるまい。先の話、そろそろ始めても良いのでは?」
レックスが食事を終えて、ケルビムに話かける。
「陛下にはお見通して。『竜の襲来』について。彼らの目的、そして求める贄について判明しました。まず、王都ラグナを襲う竜は赤神竜ザンジバルの眷属の一体、火竜ボルケイノです‥‥」
――ガタッ
とパルテノが立ち上がる。
「どうしたパルテノ」
「い、いえ。どうぞお話を」
シュミッツの問い掛けに、パルテノはゆっくりと椅子に腰掛ける。
(まさか、あの遺跡のドラゴンの死体が関係している?)
「して、そのボルケイノが求める贄というのは?」
「まあシュミッツ殿。その名前を明かす前に、一つ皆さんにお聞かせいただきたい。我らはその贄をドラゴンに差し出して怒りを鎮めるのですか? この王国の罪もない民を」
「その生命一つで、この国全ての民の命が助かるのだぞ‥‥」
とシュミッツは叫ぶ。
「だが、その贄となるものが命乞いをした場合、我らは人として、この王国の代表として、そのものに『死ね』と告げられるのですか? 王よ。我が国は助けを求めるものには今まで救いの手を差し伸べてきました。それこそが勇者ラグナと巫女マリアが我々に伝えたこの国の真理です」
ケルビムが悠然とその場にいる王に告げる。
「今、贄となるものを見捨てるということは、その真理を捨てることになります‥‥」
「ケルビム老、贄というのは、貴方の孫であるシルヴィーなのですね」
パルテノが悲痛の叫びを上げる。
「マクシミリアンの娘か。もしその子を贄として差し出した場合、あの領地は統治者不在となり、近隣諸侯に分割されるか‥‥それもやむなしと言う所だ」
シュミッツがそう呟く。
「ですが、王族の血を引くものならば、国民のために命を差し出すのは道理。それしかあの災害に勝てる見込みはないのです‥‥ケルビム、貴方も辛いでしょうが‥‥」
ブリュンヒルデがそう告げた時、ケルビムは静かに手を上げる。
「先に告げておくが、贄というのはシルヴィーではない。その上で問いたい。贄となったものの家族や共に、どのような報酬を差し出さねばならぬのかと。命と引き換えに、我らは何を差し出せるのか。騎士ならば、それは国を、民を救うという栄誉が与えられる。だが、そうでないものには、何を与えなければならぬのか」
―― シーーーン
ケルビムの言葉に、一同は沈黙する。
人の命の価値を知っているからこその沈黙。
贄と国民の全てを引き換えにという、シュミッツの言葉も一理ある。
シュミッツは大を活かすために小を殺す。王であり騎士でもある彼なりの訓示を持っている。
「王国のために命を差し出すのは騎士としての使命、そのシュミッツの言葉もわかります。ですが残された者の気持ちを考えると、そんな残酷なことは‥‥」
ミストの言葉には、その場の誰もが考えさせられる。
だが、人の上に立つものとしては、どう結論を出せばよいのか。
「このウィル大陸を守護している『黒神竜ラグナレク』は未だ目覚めたという報告は受けていない。『赤神竜ザンジバル』はこの世界全てを縄張りとする竜。先代皇帝の盟約によると王が活動期を迎えた際に、人の住処を襲わぬ代わりに尊き生贄を差し出せという‥‥」
ブリュンヒルデがそう話を始める。
「その盟約を、赤神竜の眷属であるボルケイノがどこまで守るかという保証はない。ミスト、ザンジバルはすでに目覚めているのか?」
「いえ。ザンジバルとラグナレクが目覚めるのはまだ先。まず眷属たちが目覚めて活性化してからね。それでも、いまから10年ぐらい先にはなるわ。もっとも彼らに取っては10年なんて、ほんの瞬き程度でしかないのだから」
ミストはそう告げて、口を閉ざす。
「陛下。ご決断をお願いします‥‥」
とケルビムは告げる。
「ケルビムよ。貴公の知る贄とやらに伝えよ。今より3日のうちに、この王都より離れよと。そして贄の家族達には望みの報酬を与えると‥‥。諸侯は、万が一のために今より警戒態勢に入れ。以上だ」
その言葉に、一行は立ち上がり、その場から消えていく。
最後に部屋に残ったのは、ケルビムとパルテノ、そして皇帝レックスのみである。
「陛下にお伝えしたいことが御座います」
「この場に残っているということは、そういうことであろう。構わぬ」
ケルビムは、王の顔色を伺う。
いつもの感情を押し殺した表情の皇帝である。
「では。贄の家族、つまり家族であり主君であり、そして友である者達の望みを伝えたいと思います。私はすでに、彼らの望むものを知っていますので‥‥」
と告げる。
パルテノは、ケルビムがこの場に残っているのには何か理由があると感じて、ここに残っていたのである。
「よかろう。だがあと一人。三王の立会が欲しい。シュミッツを呼べ」
と告げられ、間もなくシュミッツが再びこの場に戻ってくる。
「陛下、突然の呼び戻し、一体何があったのですか?」
「ケルビムが贄の家族達の報酬を告げたいと。三王の名において承認となれ。我は皇帝として、それを聞き届けよう‥‥これは貴族院の决定よりも上である」
と告げられ、一同は静かに頭を下げる。
「して、老よ。贄の家族たちは何を望む」
「では。贄の家族達の代表として我、ケルビム・ラグナ・マリアが望みます。シルヴィー・ラグナ・マリア・ベルナーに今一度、ベルナー王国の復興と王位を授けて欲しいのです」
――ガタッ
とシュミッツが立ち上がる。
「そういうことか。しかしあの王国は既に解体され、シルヴィーも‥‥そうか」
と自己完結して、シュミッツはうなずきながら椅子に座る。
「彼女が成人を迎えた際、かの領地と王家の血を守るためにマクドガルとの婚姻が貴族院で承認されていました。ですがマクドガルは帝国転覆を考え、悪魔と契約をした大罪人。貴族院では次の婚姻候補の選定に入っていると思われますが」
パルテノが告げると、ケルビムもコクリとうなずく。
そして再びレックスの方を向くと、まるで息子に諭すかのように、静かに口を開いた。
「陛下、シルヴィーをベルナー王国の女王として任命して下さい。さすれば貴族院も何も言えますまい。それが贄の家族たちの願いです」
ケルビムがそう告げる。
「クッ‥‥クククッ‥‥ケルビム。その贄とやらは、まさか竜と戦うのではないか?」
笑いつつレックスが問い掛ける。
皇帝には、贄が誰なのか想像がついたのである。
「さて。贄としては差し出しますが、その後は贄がどこまで抵抗することやら。竜は、自身が死す時、自分を殺した者に『竜殺し』の烙印をその魂に刻みます。そのものは竜に狙われやすくなりますからなぁ‥‥」
してやったりという表情のケルビム。
ここまでが、先日シルヴィーから話を聞いてから編み出した策。
三王の承認のもとに確約が取れればいい、そこまで計算しての話であった。
そして、食事の時にふと見えた、レックスがシュミッツを一瞬だけちらっとみた時、これはいけると確信したらしい。
「よかろう。三日の後、シルヴィー・ラグナ・マリア・ベルナーをベルナー王国の女王として任命し、名を『シルヴィー・ラグナマリア・ベルナー』とする。これは皇帝権限を持って行う事とする。ケルビム、シュミッツ、パルテノ、三王はこの場にて承認となれ!!」
皇帝の勅令には、貴族院すら手を出すことが出来ない。
そして新しく与えられた名は、今までの4つに分割された名ではなく、3つに分割された王家のものである。
ケルビム・ラグナ・マリアのように3つの分割名は王族直系の証。
つまり、シルヴィーがこの国の王族直系である事を証明されたことになる。
父の名字でもあり、自分たちの住まう領である『ベルナー』を大切にする、シルヴィーに対しての配慮であろう。
「「「ハッ!!」」」
その場にいる三王が立ち上がり頭を下げる。
「残りの王にも通達せよ。ベルナー王国は五王のケルビムの元に繋がり、新たに六王の一人となると。以上だ」
それだけを告げて、皇帝は振り向き、そしてスッと消えた。
そしてレックスが姿を消した直後、シュミッツは立ち上がってケルビムを指さして叫んだ。
「は、は、は、はかったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「はて、なんのことぢゃ?」
「私にもわかりませんねー」
と笑いながら立ち上がる二人。
「ミストとブリュンヒルデだと、ここまで話がまとまらないの知っていたんだろう?」
「さーて、お前を選んだのは皇帝陛下だ。きっと陛下なりのお心があったのだろう? もしくは‥‥」
と呟いて、ケルビムは扉に手をかけた。
「お前の皿の上には、皇帝よりも二つ多くザンギが乗っかっていたからかもしれぬぞ‥‥」
と笑いながら告げて、スッと消えた。
「ま、まさかな‥‥」
しばし腕を組んで考えていたものの、どうにも答えが出てこないので、シュミッツはその場を後にすることにした。
○ ○ ○ ○ ○
夕刻。
ケルビムに呼び出されて、再びシルヴィーは王城へと戻ってきた。
マチュアの露店を手伝っていたのだが、丁度夕方の鐘が鳴ったので本日は閉店、後片付けをしているところである。
後片付けはアンジェラ達にまかせて、シルヴィーとマチュアは王城にやってきた。
そのまま真っすぐに皇帝の間まで案内される。
その場には、五王全員と彼らの騎士団長が、静かに皇帝が来るのを待っていた。
――ザッ
やがて皇帝レックス・ラグナ・マリアが玉座に付く。
「さて、シルヴィー・ベルナー、そしてマチュア、表を上げろ」
力強い声が室内に響き渡る。
その声に、シルヴィーとマチュアが頭を上げる。
(ああっ、武道大会のどの選手よりも怖いわ‥‥)
ドキドキしながら顔を揚げたマチュア。
「シルヴィー、貴殿が知る『竜の贄』に対して、三日以内にこの王都からの退去を命ずる。その後は贄が食い殺されようと、死に抗おうと我らは関与せぬ」
シルヴィーにとっては、絶望的な言葉である。
近日中に大会は再び開催するであろう。が、竜の襲来が来ると判って、大会を続けることはないだろうともシルヴィーは思っていた。
そして、この国外退去命令である。
「なお、贄を出す代償として、シルヴィーにはあるものをくれてやる‥‥」
と告げた時、ミストが前に一歩出て、手にした書面を読み上げる。
「シルヴィ・ベルナー、今より三日後に、ベルナー領に王として付くことを命ずる。今より貴殿は『シルヴィー・ラグナマリア・ベルナー』を名乗ること。ベルナー辺境都市は三日のちにベルナー王国となり、シルヴィーはケルビム殿の血に連なる、新たなる六王の一人となる」
と告げて、書面をシルヴィーに手渡す。
「今まで大変でしたね。シルヴィ。貴方のお父様たちもこれで浮かばれますわ」
――ポタッ‥‥ポタッ‥‥
シルヴィーの双眸から涙があふれる。
それは歓喜の涙か、それとも。
「ですが‥‥駄目じゃ。妾は、友を売ってまで‥‥国を起こすことは出来ぬ。ストムーは妾にとって、大切な友なのぢゃ。陛下‥‥それは駄目なのぢゃ‥‥」
涙がこぼれ落ちるのを止めることなく、シルヴィは皇帝にそう告げた。
だが、レックスはそれまでの威厳のある声ではなく、優しい穏やかな声で話し始めた。
「シルヴィー。貴殿の幻影騎士団は、竜の眷属たちより弱いのか?」
と皇帝が呟く。
それにはシルヴィーは、頭をブンブンと左右に振った。
「い、いえ‥‥しかし‥‥竜に手を出したことがわかると‥‥」
「まだ目覚めた竜は僅か。それにこちらに向かって来るのはボルケイノ一体のみ。それを力でねじ伏せなさい。竜よりも上であることを証明すれば、ザンジバルはあなた達に手を出そうとは思わないでしょう‥‥」
ブリュンヒルデがシルヴィーにそう告げる。
「それでも、シルヴィーは私達からの贈り物を受け取って貰えないのかな?」
優しく問いかけるレックス。
「いえ陛下。謹んで拝命受けさせて頂くのぢゃ。そのうえで、襲い来る竜の眷属を叩き潰してご覧に入れますのぢゃ」
涙を拭い、笑顔で皇帝に告げるシルヴィー。
「それでいい。たかが竜の眷属ごとき、人の手で倒せないわけではない。あの時はかなりの犠牲が出ていたが、過去にブリュンヒルデの騎士団によって討伐したという実績もあるのでな」
と苦笑しつつ呟く。
「陛下、それは言わないで下さい‥‥」
と告げて、皇帝は静かに立ち上がる。
「この件は明日の正午、帝国全土に皇帝権限において通達する。そろそろ貴族院にも喝を入れたかったのでな、以上だ下がってよし。ミスト、貴族院についての話がある。残れ」
と告げられ、シルヴィーとマチュアは一礼をして外に出た。
「うむ、ど、どうしよう‥‥とうとうファンタジーの王道、ドラゴン退治が来ましたよ」
とマチュアはドキドキしている。
「一刻もはやくストームに告げなくては。それから、ドラゴンをどうするのかぢゃ」
「そうですねー。まあ、一度屋敷に戻りますか」
と廊下で話していると、五王が謁見の間から出てくる。
「まあ、わしができるのはここまでだ。頑張れよシルヴィー」
とケルビムがシルヴィーに近づいて呟く。
「あ、ありがとうございますお祖父様。それと師匠、ミスト殿、シュミッツ殿、ブリュンヒルデ殿。この御礼はいつか必ず」
と、全員に頭を下げるシルヴィー。
「お礼は‥‥そうねぇ。そこのマチュアさんを貸して頂戴。うちの料理長に色々と教えてあげて欲しいのよ」
「いやいや、俺のところが先だ。ザンギの作り方を伝授していただかないとな」
ミストとシュミッツが言い争っている。
「さて、晴れて王家に戻りましたね。また『高位司祭』の勉強を始めますか? 何時でもいらしてくれて構いませんわよ」
とパルテノが告げる。
ブリュンヒルデはまっすぐにマチュアの元にやってくると、
「件の竜の眷属について、夜にでも屋敷にて説明してあげよう。私は『神槍ク・ヴァング』があったからどうにか戦うことが出来たが、あの鱗はそのへんの武具や魔法では貫くことが出来ない‥‥それと、君にはこの後で一つ、やって貰いたいことがある」
「はぁ? この私にですか?」
とマチュアは素っ頓狂な声を出す。
「ああ、ちょっとミストと一緒に出かけて欲しいところがあってな」
「ということで、マチュアさんをお借りしますね。貴方のトリックスターの腕を見込んで、ちょっとやって貰いたいことがあるのよ」
とミストが告げる。
「やって欲しい事ですか?」
「そ。マクドガルの背後にいて、色々と暗躍していた連中に喝を入れる必要があるからねぇ‥‥詳しくはこちらでお話ししまょう?」
と、マチュアの返事を待たずにミストはマチュアを連れて行く。
「何々何。私これからどうなるのよぉ‥‥」
「マチュア殿、いってらっしゃいなのぢゃー」
とシルヴィーはマチュアを見送ると、一度屋敷へと戻っていった。
そしてケルビム老の見た予知。
二つの運命の歯車がかっちりと噛み合い、ゆっくりと回転を始めた。
「さて、緊急で申し訳ない。先日の『竜の襲来』について、新しい情報があるが、それはまず食事の後にでも‥‥」
ラグナの五王と皇帝のみが入る事を許された、塔の最上階にある『五王の間』に、ラグナの五王と皇帝が座している。
ケルビムはシルヴィーたちの話を推敲し、自分が行うべき最良の方法を考えだしたのである。
「それは?」
「まあ、時刻も丁度昼。ゆっくりと食事でも取りながら話をしようではないか」
シルヴィーが持ってきたお土産の入ったバスケットから、『タンドリーサンドとザンギ串、揚げじゃが』を人数分の皿に取り分けて配る。
「あら、これはあなたの孫娘さんのところの露店のメニューよね。初日の料理が美味しかったので、つい毎日通っていたのよ」
真紅のロープの女性・ミストが早速タンドリーサンドを食べ始める。
それに続いてシュミッツとブリュンヒルデ、パルテノも食事を開始した。
そして最後に皇帝レックスも一口味見をしてから、ゆっくりと食事を開始。
ケルビムもまた、皆が食べ始めてからゆっくりと揚げじゃがを食べる。
「このザンギ串というのは中々美味いな。老の孫娘の露店らしいな。これの作り方をうちの料理人に教えてほしいのだが」
「私は先日のクレープとかいうのがいいわ。ケルビム、お願い」
シュミッツとミストが、ケルビムに頼みこむ。
「して、ケルビムよ。今日この場に我等を集めたのは、ただ異国の珍しい料理を食べるためではあるまい。先の話、そろそろ始めても良いのでは?」
レックスが食事を終えて、ケルビムに話かける。
「陛下にはお見通して。『竜の襲来』について。彼らの目的、そして求める贄について判明しました。まず、王都ラグナを襲う竜は赤神竜ザンジバルの眷属の一体、火竜ボルケイノです‥‥」
――ガタッ
とパルテノが立ち上がる。
「どうしたパルテノ」
「い、いえ。どうぞお話を」
シュミッツの問い掛けに、パルテノはゆっくりと椅子に腰掛ける。
(まさか、あの遺跡のドラゴンの死体が関係している?)
「して、そのボルケイノが求める贄というのは?」
「まあシュミッツ殿。その名前を明かす前に、一つ皆さんにお聞かせいただきたい。我らはその贄をドラゴンに差し出して怒りを鎮めるのですか? この王国の罪もない民を」
「その生命一つで、この国全ての民の命が助かるのだぞ‥‥」
とシュミッツは叫ぶ。
「だが、その贄となるものが命乞いをした場合、我らは人として、この王国の代表として、そのものに『死ね』と告げられるのですか? 王よ。我が国は助けを求めるものには今まで救いの手を差し伸べてきました。それこそが勇者ラグナと巫女マリアが我々に伝えたこの国の真理です」
ケルビムが悠然とその場にいる王に告げる。
「今、贄となるものを見捨てるということは、その真理を捨てることになります‥‥」
「ケルビム老、贄というのは、貴方の孫であるシルヴィーなのですね」
パルテノが悲痛の叫びを上げる。
「マクシミリアンの娘か。もしその子を贄として差し出した場合、あの領地は統治者不在となり、近隣諸侯に分割されるか‥‥それもやむなしと言う所だ」
シュミッツがそう呟く。
「ですが、王族の血を引くものならば、国民のために命を差し出すのは道理。それしかあの災害に勝てる見込みはないのです‥‥ケルビム、貴方も辛いでしょうが‥‥」
ブリュンヒルデがそう告げた時、ケルビムは静かに手を上げる。
「先に告げておくが、贄というのはシルヴィーではない。その上で問いたい。贄となったものの家族や共に、どのような報酬を差し出さねばならぬのかと。命と引き換えに、我らは何を差し出せるのか。騎士ならば、それは国を、民を救うという栄誉が与えられる。だが、そうでないものには、何を与えなければならぬのか」
―― シーーーン
ケルビムの言葉に、一同は沈黙する。
人の命の価値を知っているからこその沈黙。
贄と国民の全てを引き換えにという、シュミッツの言葉も一理ある。
シュミッツは大を活かすために小を殺す。王であり騎士でもある彼なりの訓示を持っている。
「王国のために命を差し出すのは騎士としての使命、そのシュミッツの言葉もわかります。ですが残された者の気持ちを考えると、そんな残酷なことは‥‥」
ミストの言葉には、その場の誰もが考えさせられる。
だが、人の上に立つものとしては、どう結論を出せばよいのか。
「このウィル大陸を守護している『黒神竜ラグナレク』は未だ目覚めたという報告は受けていない。『赤神竜ザンジバル』はこの世界全てを縄張りとする竜。先代皇帝の盟約によると王が活動期を迎えた際に、人の住処を襲わぬ代わりに尊き生贄を差し出せという‥‥」
ブリュンヒルデがそう話を始める。
「その盟約を、赤神竜の眷属であるボルケイノがどこまで守るかという保証はない。ミスト、ザンジバルはすでに目覚めているのか?」
「いえ。ザンジバルとラグナレクが目覚めるのはまだ先。まず眷属たちが目覚めて活性化してからね。それでも、いまから10年ぐらい先にはなるわ。もっとも彼らに取っては10年なんて、ほんの瞬き程度でしかないのだから」
ミストはそう告げて、口を閉ざす。
「陛下。ご決断をお願いします‥‥」
とケルビムは告げる。
「ケルビムよ。貴公の知る贄とやらに伝えよ。今より3日のうちに、この王都より離れよと。そして贄の家族達には望みの報酬を与えると‥‥。諸侯は、万が一のために今より警戒態勢に入れ。以上だ」
その言葉に、一行は立ち上がり、その場から消えていく。
最後に部屋に残ったのは、ケルビムとパルテノ、そして皇帝レックスのみである。
「陛下にお伝えしたいことが御座います」
「この場に残っているということは、そういうことであろう。構わぬ」
ケルビムは、王の顔色を伺う。
いつもの感情を押し殺した表情の皇帝である。
「では。贄の家族、つまり家族であり主君であり、そして友である者達の望みを伝えたいと思います。私はすでに、彼らの望むものを知っていますので‥‥」
と告げる。
パルテノは、ケルビムがこの場に残っているのには何か理由があると感じて、ここに残っていたのである。
「よかろう。だがあと一人。三王の立会が欲しい。シュミッツを呼べ」
と告げられ、間もなくシュミッツが再びこの場に戻ってくる。
「陛下、突然の呼び戻し、一体何があったのですか?」
「ケルビムが贄の家族達の報酬を告げたいと。三王の名において承認となれ。我は皇帝として、それを聞き届けよう‥‥これは貴族院の决定よりも上である」
と告げられ、一同は静かに頭を下げる。
「して、老よ。贄の家族たちは何を望む」
「では。贄の家族達の代表として我、ケルビム・ラグナ・マリアが望みます。シルヴィー・ラグナ・マリア・ベルナーに今一度、ベルナー王国の復興と王位を授けて欲しいのです」
――ガタッ
とシュミッツが立ち上がる。
「そういうことか。しかしあの王国は既に解体され、シルヴィーも‥‥そうか」
と自己完結して、シュミッツはうなずきながら椅子に座る。
「彼女が成人を迎えた際、かの領地と王家の血を守るためにマクドガルとの婚姻が貴族院で承認されていました。ですがマクドガルは帝国転覆を考え、悪魔と契約をした大罪人。貴族院では次の婚姻候補の選定に入っていると思われますが」
パルテノが告げると、ケルビムもコクリとうなずく。
そして再びレックスの方を向くと、まるで息子に諭すかのように、静かに口を開いた。
「陛下、シルヴィーをベルナー王国の女王として任命して下さい。さすれば貴族院も何も言えますまい。それが贄の家族たちの願いです」
ケルビムがそう告げる。
「クッ‥‥クククッ‥‥ケルビム。その贄とやらは、まさか竜と戦うのではないか?」
笑いつつレックスが問い掛ける。
皇帝には、贄が誰なのか想像がついたのである。
「さて。贄としては差し出しますが、その後は贄がどこまで抵抗することやら。竜は、自身が死す時、自分を殺した者に『竜殺し』の烙印をその魂に刻みます。そのものは竜に狙われやすくなりますからなぁ‥‥」
してやったりという表情のケルビム。
ここまでが、先日シルヴィーから話を聞いてから編み出した策。
三王の承認のもとに確約が取れればいい、そこまで計算しての話であった。
そして、食事の時にふと見えた、レックスがシュミッツを一瞬だけちらっとみた時、これはいけると確信したらしい。
「よかろう。三日の後、シルヴィー・ラグナ・マリア・ベルナーをベルナー王国の女王として任命し、名を『シルヴィー・ラグナマリア・ベルナー』とする。これは皇帝権限を持って行う事とする。ケルビム、シュミッツ、パルテノ、三王はこの場にて承認となれ!!」
皇帝の勅令には、貴族院すら手を出すことが出来ない。
そして新しく与えられた名は、今までの4つに分割された名ではなく、3つに分割された王家のものである。
ケルビム・ラグナ・マリアのように3つの分割名は王族直系の証。
つまり、シルヴィーがこの国の王族直系である事を証明されたことになる。
父の名字でもあり、自分たちの住まう領である『ベルナー』を大切にする、シルヴィーに対しての配慮であろう。
「「「ハッ!!」」」
その場にいる三王が立ち上がり頭を下げる。
「残りの王にも通達せよ。ベルナー王国は五王のケルビムの元に繋がり、新たに六王の一人となると。以上だ」
それだけを告げて、皇帝は振り向き、そしてスッと消えた。
そしてレックスが姿を消した直後、シュミッツは立ち上がってケルビムを指さして叫んだ。
「は、は、は、はかったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「はて、なんのことぢゃ?」
「私にもわかりませんねー」
と笑いながら立ち上がる二人。
「ミストとブリュンヒルデだと、ここまで話がまとまらないの知っていたんだろう?」
「さーて、お前を選んだのは皇帝陛下だ。きっと陛下なりのお心があったのだろう? もしくは‥‥」
と呟いて、ケルビムは扉に手をかけた。
「お前の皿の上には、皇帝よりも二つ多くザンギが乗っかっていたからかもしれぬぞ‥‥」
と笑いながら告げて、スッと消えた。
「ま、まさかな‥‥」
しばし腕を組んで考えていたものの、どうにも答えが出てこないので、シュミッツはその場を後にすることにした。
○ ○ ○ ○ ○
夕刻。
ケルビムに呼び出されて、再びシルヴィーは王城へと戻ってきた。
マチュアの露店を手伝っていたのだが、丁度夕方の鐘が鳴ったので本日は閉店、後片付けをしているところである。
後片付けはアンジェラ達にまかせて、シルヴィーとマチュアは王城にやってきた。
そのまま真っすぐに皇帝の間まで案内される。
その場には、五王全員と彼らの騎士団長が、静かに皇帝が来るのを待っていた。
――ザッ
やがて皇帝レックス・ラグナ・マリアが玉座に付く。
「さて、シルヴィー・ベルナー、そしてマチュア、表を上げろ」
力強い声が室内に響き渡る。
その声に、シルヴィーとマチュアが頭を上げる。
(ああっ、武道大会のどの選手よりも怖いわ‥‥)
ドキドキしながら顔を揚げたマチュア。
「シルヴィー、貴殿が知る『竜の贄』に対して、三日以内にこの王都からの退去を命ずる。その後は贄が食い殺されようと、死に抗おうと我らは関与せぬ」
シルヴィーにとっては、絶望的な言葉である。
近日中に大会は再び開催するであろう。が、竜の襲来が来ると判って、大会を続けることはないだろうともシルヴィーは思っていた。
そして、この国外退去命令である。
「なお、贄を出す代償として、シルヴィーにはあるものをくれてやる‥‥」
と告げた時、ミストが前に一歩出て、手にした書面を読み上げる。
「シルヴィ・ベルナー、今より三日後に、ベルナー領に王として付くことを命ずる。今より貴殿は『シルヴィー・ラグナマリア・ベルナー』を名乗ること。ベルナー辺境都市は三日のちにベルナー王国となり、シルヴィーはケルビム殿の血に連なる、新たなる六王の一人となる」
と告げて、書面をシルヴィーに手渡す。
「今まで大変でしたね。シルヴィ。貴方のお父様たちもこれで浮かばれますわ」
――ポタッ‥‥ポタッ‥‥
シルヴィーの双眸から涙があふれる。
それは歓喜の涙か、それとも。
「ですが‥‥駄目じゃ。妾は、友を売ってまで‥‥国を起こすことは出来ぬ。ストムーは妾にとって、大切な友なのぢゃ。陛下‥‥それは駄目なのぢゃ‥‥」
涙がこぼれ落ちるのを止めることなく、シルヴィは皇帝にそう告げた。
だが、レックスはそれまでの威厳のある声ではなく、優しい穏やかな声で話し始めた。
「シルヴィー。貴殿の幻影騎士団は、竜の眷属たちより弱いのか?」
と皇帝が呟く。
それにはシルヴィーは、頭をブンブンと左右に振った。
「い、いえ‥‥しかし‥‥竜に手を出したことがわかると‥‥」
「まだ目覚めた竜は僅か。それにこちらに向かって来るのはボルケイノ一体のみ。それを力でねじ伏せなさい。竜よりも上であることを証明すれば、ザンジバルはあなた達に手を出そうとは思わないでしょう‥‥」
ブリュンヒルデがシルヴィーにそう告げる。
「それでも、シルヴィーは私達からの贈り物を受け取って貰えないのかな?」
優しく問いかけるレックス。
「いえ陛下。謹んで拝命受けさせて頂くのぢゃ。そのうえで、襲い来る竜の眷属を叩き潰してご覧に入れますのぢゃ」
涙を拭い、笑顔で皇帝に告げるシルヴィー。
「それでいい。たかが竜の眷属ごとき、人の手で倒せないわけではない。あの時はかなりの犠牲が出ていたが、過去にブリュンヒルデの騎士団によって討伐したという実績もあるのでな」
と苦笑しつつ呟く。
「陛下、それは言わないで下さい‥‥」
と告げて、皇帝は静かに立ち上がる。
「この件は明日の正午、帝国全土に皇帝権限において通達する。そろそろ貴族院にも喝を入れたかったのでな、以上だ下がってよし。ミスト、貴族院についての話がある。残れ」
と告げられ、シルヴィーとマチュアは一礼をして外に出た。
「うむ、ど、どうしよう‥‥とうとうファンタジーの王道、ドラゴン退治が来ましたよ」
とマチュアはドキドキしている。
「一刻もはやくストームに告げなくては。それから、ドラゴンをどうするのかぢゃ」
「そうですねー。まあ、一度屋敷に戻りますか」
と廊下で話していると、五王が謁見の間から出てくる。
「まあ、わしができるのはここまでだ。頑張れよシルヴィー」
とケルビムがシルヴィーに近づいて呟く。
「あ、ありがとうございますお祖父様。それと師匠、ミスト殿、シュミッツ殿、ブリュンヒルデ殿。この御礼はいつか必ず」
と、全員に頭を下げるシルヴィー。
「お礼は‥‥そうねぇ。そこのマチュアさんを貸して頂戴。うちの料理長に色々と教えてあげて欲しいのよ」
「いやいや、俺のところが先だ。ザンギの作り方を伝授していただかないとな」
ミストとシュミッツが言い争っている。
「さて、晴れて王家に戻りましたね。また『高位司祭』の勉強を始めますか? 何時でもいらしてくれて構いませんわよ」
とパルテノが告げる。
ブリュンヒルデはまっすぐにマチュアの元にやってくると、
「件の竜の眷属について、夜にでも屋敷にて説明してあげよう。私は『神槍ク・ヴァング』があったからどうにか戦うことが出来たが、あの鱗はそのへんの武具や魔法では貫くことが出来ない‥‥それと、君にはこの後で一つ、やって貰いたいことがある」
「はぁ? この私にですか?」
とマチュアは素っ頓狂な声を出す。
「ああ、ちょっとミストと一緒に出かけて欲しいところがあってな」
「ということで、マチュアさんをお借りしますね。貴方のトリックスターの腕を見込んで、ちょっとやって貰いたいことがあるのよ」
とミストが告げる。
「やって欲しい事ですか?」
「そ。マクドガルの背後にいて、色々と暗躍していた連中に喝を入れる必要があるからねぇ‥‥詳しくはこちらでお話ししまょう?」
と、マチュアの返事を待たずにミストはマチュアを連れて行く。
「何々何。私これからどうなるのよぉ‥‥」
「マチュア殿、いってらっしゃいなのぢゃー」
とシルヴィーはマチュアを見送ると、一度屋敷へと戻っていった。
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