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第一部・二人の転生者と異世界と
幕間1・神々の戯れ
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パルテノス大神殿。
それは、神々の住まう世界『神域エーリュシオン』の中央にある、正神の務める神殿。
エーリシオンには8柱神と呼ばれている正神以外にも、亜神や上位精霊、神獣と呼ばれる様々な人々や生物が住んでいる。
彼らは地上の人間と同じく生を受け、この世界で暮らしている。
決して自らは人の世に降りる事はなく、必要な場合は地上に【代理人】を定めて信託を授ける。
最も、一部の亜神や神獣はその姿を変え、精霊は精霊魔術師の召喚により地上に姿を表すことがあるらしい。
パルテノス大神殿には8柱の神々の執務室が納められている。
そしてこの建物の一角には、創造神と8柱神にしか入ることの出来ない神域というものが存在する。
その神域に、『それ』は安置されていた。
大量の水のようなものを湛えている巨大な容器が二つ。
その中に水無瀬真央と三三矢善の肉体が沈んでいる。
創造神によってこの異世界に召喚された二人の肉体は、彼らの望みによって其処に保存されていた。
彼らの魂は地上へと送られ、其処で神々によって用意された肉体に転生しているのである。
「おや、創造神殿、このような場所でどうなされました?」
白銀の甲冑に身を包んだ【正神クルーラー】が、目の前に置いてある二つの台座を眺めている創造神にそう問いかける。
地上での彼の呼び名は【正義の神クルーラー】だが、正式には正神クルーラーである。
地上に彼が顕現し、様々な加護を行っているうちにそのような呼ばれるようになったのであろう
「この台座に記されている10の紋章はな、この者たちの【魂の修練】の成長度合いを示している。一つの台座には10の紋章。これらは彼らの魂の成長によって輝き始めるのだが、未だ紋章達は輝いていない」
そう呟く創造神。
「まだまだですか。と言うより、まだ始まったばかりです。そうそう紋章が輝くなんてないと思いますが」
「ええ、確かに創造神様のおっしゃる通りですわ。彼等には私とクルーラー、そしてセルジオの加護が授けてありますわ」
「左様。このセルジオ・リヴァー、創造神殿の名により、善に加護を授けてある。今はまだ未熟なれど、いつかは試練を全て超え、栄光あるオリンピアへとたどり着くであろう」
正神クルーラーに続いて秩序神ミスティと武神セルジオ・リヴァーが姿を表した。
純白のロープに身を包み、木製の杖を手にした女神ミスティと、一枚布で作られたヒマティオンと呼ばれる古代ギリシャの衣裳に身を包んだセルジオ。
二人もまた8柱神のとして此処に入ることを許されているのである。
ちなみにセルジオ・リヴァーは【武神セルジオ】と地上では呼ばれており、そのフルネームを覚えているものは極僅かである。
「あのですねセルジオ、オリンピアは彼らの世界の土地の名前ですわ。ここはエリューシオン、そしてパルテナス大神殿ですわ」
とミスティにツッコミを入れられるセルジオ。
武神というだけあって、筋骨隆々の肉体である。
クルーラーが甲冑や武器を装備しているのに対して、セルジオ・リヴァーは武具を装備していない。
今はリラックス・ポーズと呼ばれる独特のリラックススタイルで、にこやかに立っていた。
「さて、ではここは任せておく。私は次の地へと向かうとしよう。今暫く、あの二人を見ていて欲しい」
と告げて、創造神はゆっくりと二人の収められている容器から離れる。
「はっ、創造神殿の命ずるままに」
了解いたしましたわ、それでは御機嫌よう創造神様」
「ハイッ!!」
3神の返事と同時に、創造神の姿が光り輝き、そして消えていった。
――スッ
「我々が手を差し伸べることなく、彼等には代理人を持って救いを与えるか。中々難しいな」
クルーラーはそう告げるが、すでに彼は代理人であるケビン枢機卿を通してマチュアとは接触を行っている。
「ええ。あの二人が私の管轄を訪れたときには、そうするしかないようですわね。それがあの御方の望みなのですから」
ミスティもそう呟く。
「ストームとやらは、すでに我が管轄地を訪れている。彼については今暫くは私が見ていよう、ウム」
セルジオ・リヴァもそう呟くと、3人の神は其々の治める地へと戻っていった。
――クックックッ‥‥
「創造神の選びし者達とは。興味があると思わぬか?」
その一部始終を自分の執務室の水晶球を通して見ているのは、8柱神の一人【魔神イェリネック】。
濡れるような黒髪と露出の激しい衣服を着用している女性型魔神である彼女は、近くにいた他の魔神や配下の亜神達にそう問いかけていた。
「ああ、確かにな。けれど我々もクルーラー達と同じく手出しは無用であろう?」
「イェーイ。ダッタラ、ミスティ達ト同ジヨウニ代理人ヲ使エバ良イノデハ?」
和かな笑みでそう呟く仮面の魔神と、フードによって全身を包んでいる無貌の亜神。
「そうじゃのう。我々は何もしない。けれど魂の修練とやらの手伝いをしてあげようじゃないか」
と魔神イェリネックが呟くと、その他の魔神達も静かに彼女の執務室から退室していった。
○ ○ ○ ○ ○
そして。
エーリュシオンの外れにある広大な大森林。
その中心にそびえる巨大な神樹の傍らに、彼らはいた。
「あのー、天狼様、クルーラー様とイェリネック様が何かやっているようですが」
純白のチュニックを着た少女が、目の前で静かに横になっている巨大な狼の姿をした神に向かってそう問いかけた。
「ん? ああ、放っておけば良い。我々は干渉しない。そうであろう?精霊王殿」
と傍に座っている少女に話しかけた。
「ええ。そのように。どうせ見つかって怒られるのはあの者達だけで十分ですから」
こちらの二人は、今回の【魂の修練】に対して我関せずを貫くらしい。
しかし、いつの間にか色々な神々が二人に対して干渉を開始してしまったために、魂の修練の難易度は上げられてしまったようだ。
それは、神々の住まう世界『神域エーリュシオン』の中央にある、正神の務める神殿。
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彼らは地上の人間と同じく生を受け、この世界で暮らしている。
決して自らは人の世に降りる事はなく、必要な場合は地上に【代理人】を定めて信託を授ける。
最も、一部の亜神や神獣はその姿を変え、精霊は精霊魔術師の召喚により地上に姿を表すことがあるらしい。
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そしてこの建物の一角には、創造神と8柱神にしか入ることの出来ない神域というものが存在する。
その神域に、『それ』は安置されていた。
大量の水のようなものを湛えている巨大な容器が二つ。
その中に水無瀬真央と三三矢善の肉体が沈んでいる。
創造神によってこの異世界に召喚された二人の肉体は、彼らの望みによって其処に保存されていた。
彼らの魂は地上へと送られ、其処で神々によって用意された肉体に転生しているのである。
「おや、創造神殿、このような場所でどうなされました?」
白銀の甲冑に身を包んだ【正神クルーラー】が、目の前に置いてある二つの台座を眺めている創造神にそう問いかける。
地上での彼の呼び名は【正義の神クルーラー】だが、正式には正神クルーラーである。
地上に彼が顕現し、様々な加護を行っているうちにそのような呼ばれるようになったのであろう
「この台座に記されている10の紋章はな、この者たちの【魂の修練】の成長度合いを示している。一つの台座には10の紋章。これらは彼らの魂の成長によって輝き始めるのだが、未だ紋章達は輝いていない」
そう呟く創造神。
「まだまだですか。と言うより、まだ始まったばかりです。そうそう紋章が輝くなんてないと思いますが」
「ええ、確かに創造神様のおっしゃる通りですわ。彼等には私とクルーラー、そしてセルジオの加護が授けてありますわ」
「左様。このセルジオ・リヴァー、創造神殿の名により、善に加護を授けてある。今はまだ未熟なれど、いつかは試練を全て超え、栄光あるオリンピアへとたどり着くであろう」
正神クルーラーに続いて秩序神ミスティと武神セルジオ・リヴァーが姿を表した。
純白のロープに身を包み、木製の杖を手にした女神ミスティと、一枚布で作られたヒマティオンと呼ばれる古代ギリシャの衣裳に身を包んだセルジオ。
二人もまた8柱神のとして此処に入ることを許されているのである。
ちなみにセルジオ・リヴァーは【武神セルジオ】と地上では呼ばれており、そのフルネームを覚えているものは極僅かである。
「あのですねセルジオ、オリンピアは彼らの世界の土地の名前ですわ。ここはエリューシオン、そしてパルテナス大神殿ですわ」
とミスティにツッコミを入れられるセルジオ。
武神というだけあって、筋骨隆々の肉体である。
クルーラーが甲冑や武器を装備しているのに対して、セルジオ・リヴァーは武具を装備していない。
今はリラックス・ポーズと呼ばれる独特のリラックススタイルで、にこやかに立っていた。
「さて、ではここは任せておく。私は次の地へと向かうとしよう。今暫く、あの二人を見ていて欲しい」
と告げて、創造神はゆっくりと二人の収められている容器から離れる。
「はっ、創造神殿の命ずるままに」
了解いたしましたわ、それでは御機嫌よう創造神様」
「ハイッ!!」
3神の返事と同時に、創造神の姿が光り輝き、そして消えていった。
――スッ
「我々が手を差し伸べることなく、彼等には代理人を持って救いを与えるか。中々難しいな」
クルーラーはそう告げるが、すでに彼は代理人であるケビン枢機卿を通してマチュアとは接触を行っている。
「ええ。あの二人が私の管轄を訪れたときには、そうするしかないようですわね。それがあの御方の望みなのですから」
ミスティもそう呟く。
「ストームとやらは、すでに我が管轄地を訪れている。彼については今暫くは私が見ていよう、ウム」
セルジオ・リヴァもそう呟くと、3人の神は其々の治める地へと戻っていった。
――クックックッ‥‥
「創造神の選びし者達とは。興味があると思わぬか?」
その一部始終を自分の執務室の水晶球を通して見ているのは、8柱神の一人【魔神イェリネック】。
濡れるような黒髪と露出の激しい衣服を着用している女性型魔神である彼女は、近くにいた他の魔神や配下の亜神達にそう問いかけていた。
「ああ、確かにな。けれど我々もクルーラー達と同じく手出しは無用であろう?」
「イェーイ。ダッタラ、ミスティ達ト同ジヨウニ代理人ヲ使エバ良イノデハ?」
和かな笑みでそう呟く仮面の魔神と、フードによって全身を包んでいる無貌の亜神。
「そうじゃのう。我々は何もしない。けれど魂の修練とやらの手伝いをしてあげようじゃないか」
と魔神イェリネックが呟くと、その他の魔神達も静かに彼女の執務室から退室していった。
○ ○ ○ ○ ○
そして。
エーリュシオンの外れにある広大な大森林。
その中心にそびえる巨大な神樹の傍らに、彼らはいた。
「あのー、天狼様、クルーラー様とイェリネック様が何かやっているようですが」
純白のチュニックを着た少女が、目の前で静かに横になっている巨大な狼の姿をした神に向かってそう問いかけた。
「ん? ああ、放っておけば良い。我々は干渉しない。そうであろう?精霊王殿」
と傍に座っている少女に話しかけた。
「ええ。そのように。どうせ見つかって怒られるのはあの者達だけで十分ですから」
こちらの二人は、今回の【魂の修練】に対して我関せずを貫くらしい。
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