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第7章・王位継承と、狙われた魔導書
第304話・魔族はどこから、やっばり海から?
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フェイールの里でおばあさまから注文を受けましたので、私とペルソナさんは一路、カマンベール王国の王城へと馬車を走らせます。
私の馬車でも認識阻害効果は発動しますけれど、ペルソナさんの馬車はさらに『速度向上』と『精霊の守護』という効果が永続発動しているらしく、特殊な魔術をつかったり見えないものを見ることができる能力保持者でなくては発見することができないそうです。
その効果は絶大、フェイールの里を出て僅か数時間で、隣国との国境ラインを通過。あっさりとカマンベール王国に入国すると、あとは街道を一直線に走り、目的である目おうと王城へと馬車を走らせている真っ最中です。
「……本当に凄いですけれど……」
「ええ。ここは王都と隣国であるハーバリオスを結ぶ街道。なのに、人の気配を何も感じないどころか、あちこちに魔族の監視が隠れていますね」
「はい……」
私もアイテムボックスからサングラスを取り出して装備しています。
これは以前、メデューサの視線を阻害できるサングラスを入手したときに購入したものの一つ。
透過という、壁の向こうの者が好けて見えるものです。
これを装着して馬車の中から周囲を見渡していますと、ペルソナさんのいう通り、民家や商店の中に隠れている魔族を発見することが出来ましたよ。
「あの店には二人、あそこの角に隠れて3人……うん、この街道沿いの建物の理ほとんどが、魔族によって接収されているようです。でも、一体いつの間に、これだけの魔族がカマンベール王国にやってきているのでしょうか」
「可能性の一つとしては、海沿いからの侵攻が行われた可能性があります。といっても、サライのように外洋航海用の大きな港ではなく、沿岸を伝ってこの大陸内を移動するためのものぐらいなはずですが……ああ、そういうことですか」
「東方諸国の南方にも港町はあります。可能性でいうなら、そこが魔族によって陥落し、使われている可能性があるということです」
幸いなことに港町サライは、その沖合にある旧魔族収監所のある小島まで結界によって守られています。ですが、おそらくはさらに沖合でハーバリオス監視している魔族の船団がいるのかもしれません。
「もしもそうなら、カマンベール王国よりさらに西方の国も危険な可能性がありますが」
「そうですね。では、ちょっと様子を見てくることにしましょうか」
――グイッ
そう告げた瞬間、ペルソナさんは馬車の向きを大きく変更。
街道から南方にむかって大きくそれると、そのまま港町のある方角へと馬車を走らせました。
ええ、街道からそれてしっかりと森の中を爆走しましたよ、あの、馬車の中を樹木や動物たちが貫通していくという、久しぶりの経験でしたよ……。
………
……
…
――カマンベール王国南方・港町ヴァランセ
街道から大きくそれて森を抜けて丘を越えて、やって来たのはカマンベール王国の海の玄関の一つ、ヴァランセ。
丘の上から見下ろした風景は、内湾に大量に停泊している黒い帆船。
ええ、カマンベール王国特有の白い船体の船なんて一隻もありませんよ、すべて真っ黒です。
「……クリスティナさん、遠くを見渡せるサングラスは御持ちですか?」
「えぇっと、オペラグラスなら以前売入したものが……」
ペルソナさんに促されて、彼の指さした方角を見ます。
そこには、ちょうど停泊している船に積荷を乗せている最中の人々の姿が見えていました。
そして、その様子を監視している大勢の魔族の姿も。
「……酷いです」
「ええ。これで魔族が海からやって来たという事は分かりました。ですが、この国の騎士団が動いていないというのが腑に落ちませんが」
「そうですよね……やっばり、騎士団は魔族によって打ち取られてしまった可能性が高いということでしょうか……」
船による奇襲を受けてしまい騎士団が壊走したのか、またはこの港町は魔族に占拠されてしまい、これから騎士団による奪還作戦がはじまるのか……。
よく見ると、町の中のあちこちで縛られた人たちが船に乗せられている光景も見えます。
そして……。
「……なるほどな。クリスティナさんを魔族に売ろうとした貴族が、裏で手引きしている可能性が高いという事ですか」
ペルソナさんの指さした場所では、数名のエルフの貴族と魔族の貴族のような人たちが楽しそうに談笑しながら歩いています。
しかも、そのエルフの貴族の数名は、私も以前、見たことがある人たちでした。
「あの貴族は確か、メルカバリーで行われた結婚式に参列していた貴族ですよ」
「そうでしたか。となると、この国の貴族については信用することができない……王城の様子も気になりますね、いそぎましょう」
「はい」
急ぎ馬車を走らせて、一路王城へ。
先ほど見えたエルフの貴族の中に、クレアさんのご両親らしき人も彼女も見えなかったのは幸いです。ええ、もしも掴まっていたりしたら、まずはクレアさんも助け出さなくてはなりませんからね。
そんな不安もありますが、今は王城に囚われているセシールさまの様子が気になります。
ええ、本当にこのまま馬車で連れて帰りたい気分ですよ。
私の馬車でも認識阻害効果は発動しますけれど、ペルソナさんの馬車はさらに『速度向上』と『精霊の守護』という効果が永続発動しているらしく、特殊な魔術をつかったり見えないものを見ることができる能力保持者でなくては発見することができないそうです。
その効果は絶大、フェイールの里を出て僅か数時間で、隣国との国境ラインを通過。あっさりとカマンベール王国に入国すると、あとは街道を一直線に走り、目的である目おうと王城へと馬車を走らせている真っ最中です。
「……本当に凄いですけれど……」
「ええ。ここは王都と隣国であるハーバリオスを結ぶ街道。なのに、人の気配を何も感じないどころか、あちこちに魔族の監視が隠れていますね」
「はい……」
私もアイテムボックスからサングラスを取り出して装備しています。
これは以前、メデューサの視線を阻害できるサングラスを入手したときに購入したものの一つ。
透過という、壁の向こうの者が好けて見えるものです。
これを装着して馬車の中から周囲を見渡していますと、ペルソナさんのいう通り、民家や商店の中に隠れている魔族を発見することが出来ましたよ。
「あの店には二人、あそこの角に隠れて3人……うん、この街道沿いの建物の理ほとんどが、魔族によって接収されているようです。でも、一体いつの間に、これだけの魔族がカマンベール王国にやってきているのでしょうか」
「可能性の一つとしては、海沿いからの侵攻が行われた可能性があります。といっても、サライのように外洋航海用の大きな港ではなく、沿岸を伝ってこの大陸内を移動するためのものぐらいなはずですが……ああ、そういうことですか」
「東方諸国の南方にも港町はあります。可能性でいうなら、そこが魔族によって陥落し、使われている可能性があるということです」
幸いなことに港町サライは、その沖合にある旧魔族収監所のある小島まで結界によって守られています。ですが、おそらくはさらに沖合でハーバリオス監視している魔族の船団がいるのかもしれません。
「もしもそうなら、カマンベール王国よりさらに西方の国も危険な可能性がありますが」
「そうですね。では、ちょっと様子を見てくることにしましょうか」
――グイッ
そう告げた瞬間、ペルソナさんは馬車の向きを大きく変更。
街道から南方にむかって大きくそれると、そのまま港町のある方角へと馬車を走らせました。
ええ、街道からそれてしっかりと森の中を爆走しましたよ、あの、馬車の中を樹木や動物たちが貫通していくという、久しぶりの経験でしたよ……。
………
……
…
――カマンベール王国南方・港町ヴァランセ
街道から大きくそれて森を抜けて丘を越えて、やって来たのはカマンベール王国の海の玄関の一つ、ヴァランセ。
丘の上から見下ろした風景は、内湾に大量に停泊している黒い帆船。
ええ、カマンベール王国特有の白い船体の船なんて一隻もありませんよ、すべて真っ黒です。
「……クリスティナさん、遠くを見渡せるサングラスは御持ちですか?」
「えぇっと、オペラグラスなら以前売入したものが……」
ペルソナさんに促されて、彼の指さした方角を見ます。
そこには、ちょうど停泊している船に積荷を乗せている最中の人々の姿が見えていました。
そして、その様子を監視している大勢の魔族の姿も。
「……酷いです」
「ええ。これで魔族が海からやって来たという事は分かりました。ですが、この国の騎士団が動いていないというのが腑に落ちませんが」
「そうですよね……やっばり、騎士団は魔族によって打ち取られてしまった可能性が高いということでしょうか……」
船による奇襲を受けてしまい騎士団が壊走したのか、またはこの港町は魔族に占拠されてしまい、これから騎士団による奪還作戦がはじまるのか……。
よく見ると、町の中のあちこちで縛られた人たちが船に乗せられている光景も見えます。
そして……。
「……なるほどな。クリスティナさんを魔族に売ろうとした貴族が、裏で手引きしている可能性が高いという事ですか」
ペルソナさんの指さした場所では、数名のエルフの貴族と魔族の貴族のような人たちが楽しそうに談笑しながら歩いています。
しかも、そのエルフの貴族の数名は、私も以前、見たことがある人たちでした。
「あの貴族は確か、メルカバリーで行われた結婚式に参列していた貴族ですよ」
「そうでしたか。となると、この国の貴族については信用することができない……王城の様子も気になりますね、いそぎましょう」
「はい」
急ぎ馬車を走らせて、一路王城へ。
先ほど見えたエルフの貴族の中に、クレアさんのご両親らしき人も彼女も見えなかったのは幸いです。ええ、もしも掴まっていたりしたら、まずはクレアさんも助け出さなくてはなりませんからね。
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