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第7章・王位継承と、狙われた魔導書
第293話・王都お買い物事変……王子襲来
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ボリマクールさんから、元アーレスト商会の事務所を譲り受けた件について。
その日と翌日は開店準備のため、大掃除とか主力商品の追加仕入れなどでドタバタとしていましたけれど、どうにか二日後の夕方には一段落しました。
そもそもうちでの販売量なんてたかが知れていますし、どのようなお客様でもおひとり様5品までというルールがあります。
なお、知人についてはこの範囲外で対応させていただきますけれど、貴族のように権力を笠に着て傍若無人な振る舞いをする輩とか、バックボーンに貴族が付いているような商会については、速やかな退店を行っていただきますよ、ええ。
ということで、3日目の朝、つまり今。
朝6つの鐘と同時にやってきたシャーリィの馬車を店舗の前でお迎えして……あれ、ペルソナさんだ。
「お待たせしました。型録通販のシャーリィより、商品をお届けに参りました」
「あ、ありがとうございます……でも、忙しかったのではないのですか? それに気のせいか、お顔のあちこちに傷が……」
「まあ、家族間のもめ事に巻き込まれただけですので、ご安心ください。ではまず先に、納品を終わらせてしまいましょうか」
「お、ペルソナか。今日はクラウンじゃなかったのか……って、なんだその顔は、アルルカンと殴り合いでもしてきたのかよ」
ハッハハッと笑いながら、ブランシュさんがやってきましたが。
なんでペルソナさんが、アルルカンさんと殴り合うのですか?
そういえば、この前、ブランシュさんがアルルカンさんの事も話していましたよね。
「え、殴り合い、ですか?」
「あははは……まあ、少々ですけれどね。でも大丈夫ですよ」
「それならいいのですけれど……あまり無茶なことはしないでくださいね」
「畏まりました。と、ブランシュ、申し訳ないが荷物を下ろしてもらえますか?」
「はいはい、了解ですよっと」
いつものようにテキパキと荷物を下ろしてもらい、私は検品を開始します。そして一時間後には全てのチェックも完了しました。うん、この作業についても、どんどん早くなってきましたよ。
「では、お支払いを……と、もう用意してありましたか」
「ええ。よろしくお願いします」
いつものように『シャーリィの魔導書』にチャージしてあった金額から支払いを終えると、ペルソナさんは素早く馬車に戻っていきましたよ。
「では、色々と立て込んていますので本日はこれで。詳しいお話は、また次の機会か、もしくはブランシュにでも訪ねてください。では、失礼します」
「あ、はい、お気をつけて……」
ガラガラとペルソナさんの馬車が戻っていきます。
さて、ブランシュさんから事の次第を教えてらいたいところですが、本日は開店初日。
先に新商品についてのチェックを終わらせなくてはなりませんね。
ここ王都支店での商品は、主に日用雑貨と菓子類です。
それと、ドレスや靴といった衣料品と装飾品といったところですね。
つまり、いつもと変わらない商品ですね、ええ、気が付くと愛の儀式であるバレンタインデーやホワイトデーなんてとっくに終わっていましたよ、ちょうど船で移動中でしたからね。
「ふぅん。それで、今回の目玉商品って、こいつか?」
ブランシュさんか手に取っているのは、ブリザーブドフラワーという枯れない花でつくられた鉢植えです。ドライフラワーよりも難しい技術で作った花でして、私たちの世界では見たこともない花々で作られています。
これと装飾品や干菓子のセットを販売しますよ、ええ、『母の日フェア』です!!
勇者語録曰く、この母の日というのは、お母さんに日頃の感謝を伝える日でして。
そのためのギフトコーナーも、【型録通販のシャーリィ】には追加されていましたから。
このページを見た瞬間、開店セールはこれだってピン、ときたのですよ。
そのための飾りつけも全て終わり、あとは今仕入れたギフト商品を綺麗に並べて、出来上がりです。
「……うん、間に合ったわね」
「全くだよ。それで、まさかとは思うけれど、俺と姐さん二人だけでこの店舗を切り盛りするって言わないよな?」
「ご安心を。すでに手は打っています」
――カランカラーン
ドン、と胸を張ってブランシュさんに告げた時、店舗入り口の扉が開きました。
「失礼します。商業ギルドから派遣されてきましたルメールと申します」
「同じく、短期派遣員のジェイミーです。7日間ですが、よろしくお願いします」
「はい、それじゃあ早速、仕事内容についての説明を行いますね……ということですよ、ブランシュさん」
「はいはい、手回しのいいことで。それじゃあ俺は、最後のチェックをしてきますかねぇ」
新規開店後の七日間は、商業ギルドから人を派遣して貰うように話し合いは終わらせてあります。
それとブランシュさんの提案で、『光の精霊ルクス』が店内の見張りを務めているそうです。
お客さんがこっそりと商品を盗んでいかないようにという配慮でして。
入り口には『精霊の監視付き』という看板も掛けられていますので、もう安心です。
それじゃあ、フェイール商店・王都支店の開店です!!
………
……
…
「はい、こちらの鉢植えとクッキーアソートのセットですね、少々お待ちください」
開店直後はそれほど忙しくなかった店内。
それも昼を過ぎると、超忙しい時間帯に突入しました。
お会計はルメールさんにお任せして、私とジェイミーさん、そしてブランシュさんは店内でお客様の応対中。なお、面倒くさい貴族の相手は、すべてブランシュさんが一括で引き受けてくれましたので安心です。
「それにしても、ここにあったアーレスト商会がどこかに引っ越ししたと思っていたら、クリスティン店長が新しい商店を構えたなんて驚きだわね」
「そうそう。それも、あのサライやメルカバリーで噂になっていたフェイール商店だなんて、びっくりしたわ。早く王都に戻って来てくれないかなって、近所でも噂していたのよ」
「は、はぃ、ちょっとあちこち旅をしていましたので。こちらの店舗も期間限定で開店していますけれど、ずっとここで開くかどうかはまだ未定なのですよ」
「あらぁ、それじゃあ今のうちに買いだめしておかないとねぇ……」
あはは。
私がアーレスト商会南支店で手伝いをしていた時のお客さんが、次々と来店してくれました。
うん、ここで顧客をがっちりと掴むのです。
そう思って、チラリと外の様子を確認してみますと。
まだ大勢のお客さんが並んで待っていますよ。
さすがにすべてのお客さんが店内に押し寄せると危険なので、今は入店制限を設けて、外で並んで待ってもらっています。
また、店舗近くの停車場では、貴族家の家紋を入れた馬車が数台ほど待機しています。
私が思うに、恐らくは貴族の方も気になってやってきたのですが、入店制限のため店内に入ることができなかったのではと。
それで、侍女か誰かに代理で並んでもらい、順番がくるのを待っているのでしょうね。
だって、今並んでいるお客さんの中に、貴族らしい人は……一人だけですか。
うん、一人いるようですけれど、だからといって順番を先にするようなことはしませんよ、全てルールどおりに従って貰いましょう。
………
……
…
ああ。
並んでいる貴族について、調べていなかった私を殴り倒したいところですよ。
次々とお客さんを捌きつつ、貴族の男性が店内に入って来た時。
彼の前後に並んでいたお客さんたちが店内を見渡したのち、入り口を封鎖していますよ。
あ、封鎖というと聞こえが悪いですね、次のお客さんが入り込まないようにバリケードを張ったようです。
つまり、前後のお客さんもすべてはグルであり、フェイール商店によからぬたくらみを持っているということでしょう。
そして貴族の男性、年齢は私と同じか少し上ぐらいでしょうか、その人がカウンターで待っている私の元にやってくると、胸元から貴族家の証である『銀の鎖に繋がれたメダル』を取り出し、軽く掲げてから胸元に戻しました。うん、貴族で正解です。
「我が母に贈り物をしたいのだが。なにか良い品がないか見繕って欲しい」
「お母さま用のプレゼントでしたか。それではいくつか質問をさせていただきますけれど、よろしいでしょうか」
「構わぬ、申して見よ」
うん、慇懃ですけれど無礼というほど割い口調にあらず。
と、私の後ろに下がって来たルメールさんとジェイミーさん、ずっと腰を曲げ頭を下げたままなのですが、何かあったのでしょうか?
「それでは、幾つか質問させていただきます。お母さまのお年は何歳ほどでしょうか?」
「60歳だな。私は末っ子でね、暫くの間、この国を離れていたのだが。ようやく戻って来ることが出来たのでね、親不孝をしていたお詫びも兼ねて、ということだ」
「なるほど。では、お母さまの御趣味とか、そういったものは何かご存じですか?」
「そうだなぁ。昔と変わらなければ、庭園の手入れなどを行ったり、その場所でのんびりとお茶会を楽しんだりというところだな。知人を招いてのパーティーも行ったりしていたからなぁ」
ふむふむ。
意外とセレブリティな方ですね、ということは貴族でしょうか?
いやいやさっきのメダルは貴族の証ですし、あの紋章と銀の鎖は……あれ、王家?
王族は金の鎖ですけれど、皇太子や王女は慣例として銀の鎖を繋げていますよね。
「あ、あの……つかぬ事を伺わせていただきますけれど、お母さまというのはひょっとして」
「レオノーラ・アルカシア・ハーバリオス。と申したら、気付いてもらえるかな?」
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、これは大変な失礼を……」
大慌てで頭を下げます。
いやそれってつまり、私の目の前に立っているのは数年前に北方諸国に留学していたユリシーズ王子ですよね、って本物ですよ、私はまだ小さい時に父に連れられて参加した園遊会の席で、遠目にしか見たことしかありませんけれど。
そうでしたか、戻ってきていらっしゃったのですか。
「いやいや、フェイール商店と君のことについては、父から話を伺っている。それで、先ほどの私の注文したものは、この店にはあるのかな?」
「はい、今サンプルをご用意しますので、少々お待ちください」
なるほど、つまり店内で待機しているお客の正体は、変装した近衛兵でしたか。
そしてその全てを知っているらしいブランシュさん、私に向かって笑顔でサムズアップしているようですけれど、あとで覚悟してくださいね。
あなたの能力なら、王子の正体だってすぐにわかっていたはずですよね。
その日と翌日は開店準備のため、大掃除とか主力商品の追加仕入れなどでドタバタとしていましたけれど、どうにか二日後の夕方には一段落しました。
そもそもうちでの販売量なんてたかが知れていますし、どのようなお客様でもおひとり様5品までというルールがあります。
なお、知人についてはこの範囲外で対応させていただきますけれど、貴族のように権力を笠に着て傍若無人な振る舞いをする輩とか、バックボーンに貴族が付いているような商会については、速やかな退店を行っていただきますよ、ええ。
ということで、3日目の朝、つまり今。
朝6つの鐘と同時にやってきたシャーリィの馬車を店舗の前でお迎えして……あれ、ペルソナさんだ。
「お待たせしました。型録通販のシャーリィより、商品をお届けに参りました」
「あ、ありがとうございます……でも、忙しかったのではないのですか? それに気のせいか、お顔のあちこちに傷が……」
「まあ、家族間のもめ事に巻き込まれただけですので、ご安心ください。ではまず先に、納品を終わらせてしまいましょうか」
「お、ペルソナか。今日はクラウンじゃなかったのか……って、なんだその顔は、アルルカンと殴り合いでもしてきたのかよ」
ハッハハッと笑いながら、ブランシュさんがやってきましたが。
なんでペルソナさんが、アルルカンさんと殴り合うのですか?
そういえば、この前、ブランシュさんがアルルカンさんの事も話していましたよね。
「え、殴り合い、ですか?」
「あははは……まあ、少々ですけれどね。でも大丈夫ですよ」
「それならいいのですけれど……あまり無茶なことはしないでくださいね」
「畏まりました。と、ブランシュ、申し訳ないが荷物を下ろしてもらえますか?」
「はいはい、了解ですよっと」
いつものようにテキパキと荷物を下ろしてもらい、私は検品を開始します。そして一時間後には全てのチェックも完了しました。うん、この作業についても、どんどん早くなってきましたよ。
「では、お支払いを……と、もう用意してありましたか」
「ええ。よろしくお願いします」
いつものように『シャーリィの魔導書』にチャージしてあった金額から支払いを終えると、ペルソナさんは素早く馬車に戻っていきましたよ。
「では、色々と立て込んていますので本日はこれで。詳しいお話は、また次の機会か、もしくはブランシュにでも訪ねてください。では、失礼します」
「あ、はい、お気をつけて……」
ガラガラとペルソナさんの馬車が戻っていきます。
さて、ブランシュさんから事の次第を教えてらいたいところですが、本日は開店初日。
先に新商品についてのチェックを終わらせなくてはなりませんね。
ここ王都支店での商品は、主に日用雑貨と菓子類です。
それと、ドレスや靴といった衣料品と装飾品といったところですね。
つまり、いつもと変わらない商品ですね、ええ、気が付くと愛の儀式であるバレンタインデーやホワイトデーなんてとっくに終わっていましたよ、ちょうど船で移動中でしたからね。
「ふぅん。それで、今回の目玉商品って、こいつか?」
ブランシュさんか手に取っているのは、ブリザーブドフラワーという枯れない花でつくられた鉢植えです。ドライフラワーよりも難しい技術で作った花でして、私たちの世界では見たこともない花々で作られています。
これと装飾品や干菓子のセットを販売しますよ、ええ、『母の日フェア』です!!
勇者語録曰く、この母の日というのは、お母さんに日頃の感謝を伝える日でして。
そのためのギフトコーナーも、【型録通販のシャーリィ】には追加されていましたから。
このページを見た瞬間、開店セールはこれだってピン、ときたのですよ。
そのための飾りつけも全て終わり、あとは今仕入れたギフト商品を綺麗に並べて、出来上がりです。
「……うん、間に合ったわね」
「全くだよ。それで、まさかとは思うけれど、俺と姐さん二人だけでこの店舗を切り盛りするって言わないよな?」
「ご安心を。すでに手は打っています」
――カランカラーン
ドン、と胸を張ってブランシュさんに告げた時、店舗入り口の扉が開きました。
「失礼します。商業ギルドから派遣されてきましたルメールと申します」
「同じく、短期派遣員のジェイミーです。7日間ですが、よろしくお願いします」
「はい、それじゃあ早速、仕事内容についての説明を行いますね……ということですよ、ブランシュさん」
「はいはい、手回しのいいことで。それじゃあ俺は、最後のチェックをしてきますかねぇ」
新規開店後の七日間は、商業ギルドから人を派遣して貰うように話し合いは終わらせてあります。
それとブランシュさんの提案で、『光の精霊ルクス』が店内の見張りを務めているそうです。
お客さんがこっそりと商品を盗んでいかないようにという配慮でして。
入り口には『精霊の監視付き』という看板も掛けられていますので、もう安心です。
それじゃあ、フェイール商店・王都支店の開店です!!
………
……
…
「はい、こちらの鉢植えとクッキーアソートのセットですね、少々お待ちください」
開店直後はそれほど忙しくなかった店内。
それも昼を過ぎると、超忙しい時間帯に突入しました。
お会計はルメールさんにお任せして、私とジェイミーさん、そしてブランシュさんは店内でお客様の応対中。なお、面倒くさい貴族の相手は、すべてブランシュさんが一括で引き受けてくれましたので安心です。
「それにしても、ここにあったアーレスト商会がどこかに引っ越ししたと思っていたら、クリスティン店長が新しい商店を構えたなんて驚きだわね」
「そうそう。それも、あのサライやメルカバリーで噂になっていたフェイール商店だなんて、びっくりしたわ。早く王都に戻って来てくれないかなって、近所でも噂していたのよ」
「は、はぃ、ちょっとあちこち旅をしていましたので。こちらの店舗も期間限定で開店していますけれど、ずっとここで開くかどうかはまだ未定なのですよ」
「あらぁ、それじゃあ今のうちに買いだめしておかないとねぇ……」
あはは。
私がアーレスト商会南支店で手伝いをしていた時のお客さんが、次々と来店してくれました。
うん、ここで顧客をがっちりと掴むのです。
そう思って、チラリと外の様子を確認してみますと。
まだ大勢のお客さんが並んで待っていますよ。
さすがにすべてのお客さんが店内に押し寄せると危険なので、今は入店制限を設けて、外で並んで待ってもらっています。
また、店舗近くの停車場では、貴族家の家紋を入れた馬車が数台ほど待機しています。
私が思うに、恐らくは貴族の方も気になってやってきたのですが、入店制限のため店内に入ることができなかったのではと。
それで、侍女か誰かに代理で並んでもらい、順番がくるのを待っているのでしょうね。
だって、今並んでいるお客さんの中に、貴族らしい人は……一人だけですか。
うん、一人いるようですけれど、だからといって順番を先にするようなことはしませんよ、全てルールどおりに従って貰いましょう。
………
……
…
ああ。
並んでいる貴族について、調べていなかった私を殴り倒したいところですよ。
次々とお客さんを捌きつつ、貴族の男性が店内に入って来た時。
彼の前後に並んでいたお客さんたちが店内を見渡したのち、入り口を封鎖していますよ。
あ、封鎖というと聞こえが悪いですね、次のお客さんが入り込まないようにバリケードを張ったようです。
つまり、前後のお客さんもすべてはグルであり、フェイール商店によからぬたくらみを持っているということでしょう。
そして貴族の男性、年齢は私と同じか少し上ぐらいでしょうか、その人がカウンターで待っている私の元にやってくると、胸元から貴族家の証である『銀の鎖に繋がれたメダル』を取り出し、軽く掲げてから胸元に戻しました。うん、貴族で正解です。
「我が母に贈り物をしたいのだが。なにか良い品がないか見繕って欲しい」
「お母さま用のプレゼントでしたか。それではいくつか質問をさせていただきますけれど、よろしいでしょうか」
「構わぬ、申して見よ」
うん、慇懃ですけれど無礼というほど割い口調にあらず。
と、私の後ろに下がって来たルメールさんとジェイミーさん、ずっと腰を曲げ頭を下げたままなのですが、何かあったのでしょうか?
「それでは、幾つか質問させていただきます。お母さまのお年は何歳ほどでしょうか?」
「60歳だな。私は末っ子でね、暫くの間、この国を離れていたのだが。ようやく戻って来ることが出来たのでね、親不孝をしていたお詫びも兼ねて、ということだ」
「なるほど。では、お母さまの御趣味とか、そういったものは何かご存じですか?」
「そうだなぁ。昔と変わらなければ、庭園の手入れなどを行ったり、その場所でのんびりとお茶会を楽しんだりというところだな。知人を招いてのパーティーも行ったりしていたからなぁ」
ふむふむ。
意外とセレブリティな方ですね、ということは貴族でしょうか?
いやいやさっきのメダルは貴族の証ですし、あの紋章と銀の鎖は……あれ、王家?
王族は金の鎖ですけれど、皇太子や王女は慣例として銀の鎖を繋げていますよね。
「あ、あの……つかぬ事を伺わせていただきますけれど、お母さまというのはひょっとして」
「レオノーラ・アルカシア・ハーバリオス。と申したら、気付いてもらえるかな?」
「はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、これは大変な失礼を……」
大慌てで頭を下げます。
いやそれってつまり、私の目の前に立っているのは数年前に北方諸国に留学していたユリシーズ王子ですよね、って本物ですよ、私はまだ小さい時に父に連れられて参加した園遊会の席で、遠目にしか見たことしかありませんけれど。
そうでしたか、戻ってきていらっしゃったのですか。
「いやいや、フェイール商店と君のことについては、父から話を伺っている。それで、先ほどの私の注文したものは、この店にはあるのかな?」
「はい、今サンプルをご用意しますので、少々お待ちください」
なるほど、つまり店内で待機しているお客の正体は、変装した近衛兵でしたか。
そしてその全てを知っているらしいブランシュさん、私に向かって笑顔でサムズアップしているようですけれど、あとで覚悟してくださいね。
あなたの能力なら、王子の正体だってすぐにわかっていたはずですよね。
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