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第6章・ミュラーゼン連合王国と、王位継承者と
第273話・失態からの、商談スタートですが。
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深夜、私たちの部屋に泥棒が侵入しました。
キリコさんが機転を利かせてくれたおかげで、どうにか返り討ちにすることが出来ました。
泥棒たちは宿の警備員に連れられて、どこかの部屋に監禁状態。
朝一番で、アスパッハ辺境伯へ連絡していただくようにお願いもしましたし、お詫びということで最上級の部屋を借りることも出来ました。
あとはゆっくりと体を休め、朝一番にペルソナさんが納品に来るのを待つばかり。
はぁ、これでようやく、ゆっくりと寝ることが出来そうです。
……
…
――ガバッ!
「あれ……目覚ましが鳴りません……って、あれれ!」
いつもなら目覚まし時計の音で目が覚めるのですが、今日は目覚まし時計が何っていません……っていうか、目覚まし時計がありません!!
あれは【型録通販のシャーリィ】で購入した、大切なものなのですよ。
いつもは寝る前にベッドの横、テーブルの上に置いてあるのですが、今日に限って見当たらないって、どういうことで……。
「ああ。そうですよ、昨晩、部屋を交換してもらった時、一旦アイテムボックスに仕舞ったのを忘れていましたよ……って、今、何時ですか!!」
慌てて着替えと一緒に置いてある懐中時計を確認します。
はい、今の時刻は、午前7時25分……。
つまり、朝6っつの鐘がなったときも、私たちは熟睡していたことになります。
やっちゃった……。
「はぅあ!! クレアさん、キリコさん起きてください!! 寝坊しましたわ、もう7時を回っていますよ!! ペルソナさんが帰ってしまったかもしれません……」
急ぎ窓を開けて、外を眺めますと。
「ん?」
宿の外に、ペルソナさんの馬車が止まっています。
しかもですよ、馬車にもたれかかるようにして、のんびりとコーヒーか何かを飲んでいるではありませんか。なんてスタイリッシュな……ってそうじゃない、急いで身支度しませんと。
そう思って窓を閉じようとしたとき、偶然ですがペルソナさんと目が合ってしまいました。
『大丈夫ですよ』
そう、ペルソナさんの口が動いたように感じます。
それでは、いつもよりも超高速で身支度を整え、急いで納品を終わらせてしましましょう。
――ドダダダダダダダダダタ
ダッシュダッシュ!
クレアさんはまだ身支度が整っておらず、キリコさんは二度寝に突入。
つまり、私が一人で作業しなくてはなりません。
一気に階段を駆け下り、そのまま外に飛び出しますと。
「おはようございます」
「あ、あの、その、遅れてしまって」
「本日は本当に申し訳ありません。道が混んでいたため、ようやく到着しました。朝一番で準備をして待っていていただいたのに、本当に申し訳ありませんでした」
かぶっているシルクハットを胸に当てて、ペルソナさんが頭を下げました。
いえ、その言葉は私を気遣ってくれたのですよね、先ほど、窓から外を見た時は、ペルソナさんはくつろいでいたじゃないですか。
そう思って、私も謝ろうとしたのですけれど。
「それでは、さっそく納品チェックを行いましょうか。お久しぶりです、クリスティナさま」
「ジョーカーさん!! まさか今日はジョーカーさんの当番日だったのですか?」
御者台から降りてきたのは、ノワールさんでもブランシュさんでもなく、ジョーカーさんです。
「いえ、実はですね、今日はこの後、この国で仕入れ作業がありまして。シャーリィ様から、この地で栽培されている茶葉の仕入れを頼まれていたのですよ。そしてペルソナに話を聞くと、納品でこの地に向かうと聞きまして、こうして同行させていただいたということです。では、私が荷物を下ろしますので、検品をお願いします」
「あ、あの……ええっと」
もう、どうしていいか分からなくなってしまい、ペルソナさんをちらっと見ましたが。
――スッ
彼は自分の口元に人差し指を当てて、ニッコリと笑ってくれました。
うん、本当にお気遣い感謝します。
「それでは、検品は私が代行しますので、クリスティナさんは荷物をアイテムボックスに納めてください」
「えええ……はい、よろしくお願いします」
ということで荷下ろしはジョーカーさんが、検品はペルソナさんが担当してくれました。
私は検品が終わった商品を次々とアイテムボックスに納める担当。
そのままどんどん作業を進めていますと、やがてクレアさんもやってきましたので、そこからは流れもスムーズになりました。
そして一時間ほどで作業も完了、ようやく一息つけそうです。
「今回は、随分と食材や調味料関係が多いようですが。大きな仕事でも入ったようですね」
支払いを終え、来月分の型録を受け取ったとき。
ペルソナさんが嬉しそうに、そう話しかけてくれました。
「はい。この街で行われるデビュタント・ボールに使う食材の納品です。今日はサンプルとして仕入れを行わせていただきました。この後は、宮廷料理人の方と合流し、食材をチェックしていただく予定になっています」
「それは良かった。今回仕入れた北海道産の野菜ですけれど、今年の出荷分はたいそう出来が良いそうです。型録通販のシャーリィとしても、自信を持ってお勧めできますので……それと」
「ん?」
ペルソナさんが、何か話しかけたそうにしていましたけれど、そこで言葉が止まってしまったようです。
何かあったのでしょうか。
「いえ、ヴェルディーナ王国の件は順調に進んでいますので、ご安心くださいと伝えして欲しいと、ヘスティア王国の国王からの言伝がありましたので。では、今後とも型録通販のシャーリィを、よろしくお願いします」
深々と頭を下げるペルソナさん。
私もつられて頭を下げますと、ペルソナさんが私の頭を軽く、ポンポンと撫でてくれました。
「あまり、根を詰めたり無茶なことはあまりしませんように。ノワールたちが護衛として戻るには、あと少し時間を頂くことになっていますけれど、近い将来、ノワールは護衛に復帰しますので」
「ほ、本当ですか!!」
「ええ。それでは失礼します」
「またのご利用を、お待ちしていますぞ」
そう告げて、ペルソナさんとジョーカーさんは馬車に乗り、走り去っていきました。
「う~ん。相変わらずスタイリッシュな配達員ですわね。それで、ちょっと時間がずれてしまったようですけれど、朝食を取ってメルセデス夫人の元へ向かうとしましょうか?」
「ええ。それではさっそく、腹が減っては戦が出来ない。勇者語録にちなんで、しっかりと朝食を取ることにしましょう!!」
ちょっと遅れた朝食ですが、しっかりと食べて今日も頑張りましょう。
………
……
…
――バンクーバー郊外・アスパッハ辺境伯別荘
私たちが宿で朝食を取っていますと、ちょうどアスパッハ辺境伯の使いという騎士たちが宿にやってきました。
騎士の身分を示す徽章も確認しましたので、昨晩捕らえた泥棒たちを警備員さんが引き渡してくれました。
それを見届けてから、私たちは郊外の別荘へと移動。
そのままメルセデス夫人にご挨拶をしたのち、副責任者のマウロ・グレゴリーさんが待っている応接間へと移動。
ええ、私を毛嫌いしているサンマルコさんも、しっかりと椅子に座っていましたよ。
私たちを見て口をパクパクと動かしていましたけれど、ひょっとして昨晩の泥棒を手引きしたのも、サンマルコさんなのかもしれません……と、それは置いておくことにしましょう。
「おはようございます。遅れて申し訳ありませんでした」
「いえいえ、私どももつい先ほど到着したばかりです。そういえば、昨晩、フェイールさんたちの宿泊している宿に押し込みが入ったと伺いましたが、大丈夫でしたか?」
マウロさんが心配そうに話しかけてくれました。
特に怪我もしていませんし、ちょっと遅れましたけれど納品作業も終えてきましたので問題はありません。
「はい。幸いなことに」
「それは良かった。では、さっそく、食材の見本を出していただけますか?」
「はい、それでは……」
今朝方届いたばかりの新鮮野菜。
ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、キャベツ。
ビーツ、 赤ピーマンやトウガラシも用意してあります。
それらを一つ一つ、アイテムボックスの中で籠に入れなおしてから、テーブルの上に並べていきます。
「……嘘だ……こんなのあり得ない……」
私たちが一つ一つ籠を並べていくたびに、サンマルコさんは真っ青な顔で、頭を左右に振りつつ何かを呟いていますが。うん、私たちが入手できないとでも思っていたのかもしれませんね。
ですが、型録通販のシャーリィを舐めて貰っては困ります。季節限定商品やフェア限定でない限りは、ある程度の商品を入手することができます。
もっとも、武器防具といったものは入荷できませんけれどね。
そういえば、来月からの型録では『モバイルバッテリー』というものも取り扱いを開始したようです。
ええ、大賢者・武田さんの欲していたものですよね、タイミングが悪いというかなんというか。
「ふむふむ……ああ、これはいいポテトですね。大きさもある程度均等で、しかも採れたてのような鮮度を保っています。こちらの赤ピーマンも艶がよく肌ざわりもみずみずしい。ここまでの野菜を揃えることができるとは、正直言って脱帽としかいえませんね」
「嘘だ嘘だ嘘だ……おい、この野菜はどこで手に入れた! 朝一番に港に入って来た船の積み荷を確認したけれど、どの船にもこの商品は積んでいなかったはずだ! 言え!! どうやってこんなにいい野菜を手に入れた!!」
私たちの持ってきた野菜を大絶賛するマウロさんとは対照的に、サンマルコさんは激昂。
「あのですね……私どもは商人です。仕入れルートなどおっしゃる必要はありませんよね? これらの商品は、クリス店長が色々と苦労してようやく身に付けたルートです。それを聞き出して、一体、どうするおつもりかしら?」
「ぐっ……そ、それはそうだが……」
やや怒状態のクレアさんの迫力に、サンマルコさんもたじたじのようです。
「サンマルコ、いい加減にしなさい。では、このサンプルと同程度の品質のものをご用意していただけますか。出来れば、明日の昼までに」
「明日の昼……はい、大丈夫です」
この後、宿に戻って追加発注を掛けて……明日の朝の納品ならば、昼までに間に合います。
「それでは、こちらに必要な食材の数量をメモしてありますので、よろしくお願いします。それと、調味料についてですが」
「はい、そちらについても、ご用意してあります。では……」
野菜の次は、調味料の選定。
ええ、まだまだ仕事は終わりませんよ!! サンマルコさんがもうぐったりとしていますけれど、敢えて無視ですよ、無視!!
キリコさんが機転を利かせてくれたおかげで、どうにか返り討ちにすることが出来ました。
泥棒たちは宿の警備員に連れられて、どこかの部屋に監禁状態。
朝一番で、アスパッハ辺境伯へ連絡していただくようにお願いもしましたし、お詫びということで最上級の部屋を借りることも出来ました。
あとはゆっくりと体を休め、朝一番にペルソナさんが納品に来るのを待つばかり。
はぁ、これでようやく、ゆっくりと寝ることが出来そうです。
……
…
――ガバッ!
「あれ……目覚ましが鳴りません……って、あれれ!」
いつもなら目覚まし時計の音で目が覚めるのですが、今日は目覚まし時計が何っていません……っていうか、目覚まし時計がありません!!
あれは【型録通販のシャーリィ】で購入した、大切なものなのですよ。
いつもは寝る前にベッドの横、テーブルの上に置いてあるのですが、今日に限って見当たらないって、どういうことで……。
「ああ。そうですよ、昨晩、部屋を交換してもらった時、一旦アイテムボックスに仕舞ったのを忘れていましたよ……って、今、何時ですか!!」
慌てて着替えと一緒に置いてある懐中時計を確認します。
はい、今の時刻は、午前7時25分……。
つまり、朝6っつの鐘がなったときも、私たちは熟睡していたことになります。
やっちゃった……。
「はぅあ!! クレアさん、キリコさん起きてください!! 寝坊しましたわ、もう7時を回っていますよ!! ペルソナさんが帰ってしまったかもしれません……」
急ぎ窓を開けて、外を眺めますと。
「ん?」
宿の外に、ペルソナさんの馬車が止まっています。
しかもですよ、馬車にもたれかかるようにして、のんびりとコーヒーか何かを飲んでいるではありませんか。なんてスタイリッシュな……ってそうじゃない、急いで身支度しませんと。
そう思って窓を閉じようとしたとき、偶然ですがペルソナさんと目が合ってしまいました。
『大丈夫ですよ』
そう、ペルソナさんの口が動いたように感じます。
それでは、いつもよりも超高速で身支度を整え、急いで納品を終わらせてしましましょう。
――ドダダダダダダダダダタ
ダッシュダッシュ!
クレアさんはまだ身支度が整っておらず、キリコさんは二度寝に突入。
つまり、私が一人で作業しなくてはなりません。
一気に階段を駆け下り、そのまま外に飛び出しますと。
「おはようございます」
「あ、あの、その、遅れてしまって」
「本日は本当に申し訳ありません。道が混んでいたため、ようやく到着しました。朝一番で準備をして待っていていただいたのに、本当に申し訳ありませんでした」
かぶっているシルクハットを胸に当てて、ペルソナさんが頭を下げました。
いえ、その言葉は私を気遣ってくれたのですよね、先ほど、窓から外を見た時は、ペルソナさんはくつろいでいたじゃないですか。
そう思って、私も謝ろうとしたのですけれど。
「それでは、さっそく納品チェックを行いましょうか。お久しぶりです、クリスティナさま」
「ジョーカーさん!! まさか今日はジョーカーさんの当番日だったのですか?」
御者台から降りてきたのは、ノワールさんでもブランシュさんでもなく、ジョーカーさんです。
「いえ、実はですね、今日はこの後、この国で仕入れ作業がありまして。シャーリィ様から、この地で栽培されている茶葉の仕入れを頼まれていたのですよ。そしてペルソナに話を聞くと、納品でこの地に向かうと聞きまして、こうして同行させていただいたということです。では、私が荷物を下ろしますので、検品をお願いします」
「あ、あの……ええっと」
もう、どうしていいか分からなくなってしまい、ペルソナさんをちらっと見ましたが。
――スッ
彼は自分の口元に人差し指を当てて、ニッコリと笑ってくれました。
うん、本当にお気遣い感謝します。
「それでは、検品は私が代行しますので、クリスティナさんは荷物をアイテムボックスに納めてください」
「えええ……はい、よろしくお願いします」
ということで荷下ろしはジョーカーさんが、検品はペルソナさんが担当してくれました。
私は検品が終わった商品を次々とアイテムボックスに納める担当。
そのままどんどん作業を進めていますと、やがてクレアさんもやってきましたので、そこからは流れもスムーズになりました。
そして一時間ほどで作業も完了、ようやく一息つけそうです。
「今回は、随分と食材や調味料関係が多いようですが。大きな仕事でも入ったようですね」
支払いを終え、来月分の型録を受け取ったとき。
ペルソナさんが嬉しそうに、そう話しかけてくれました。
「はい。この街で行われるデビュタント・ボールに使う食材の納品です。今日はサンプルとして仕入れを行わせていただきました。この後は、宮廷料理人の方と合流し、食材をチェックしていただく予定になっています」
「それは良かった。今回仕入れた北海道産の野菜ですけれど、今年の出荷分はたいそう出来が良いそうです。型録通販のシャーリィとしても、自信を持ってお勧めできますので……それと」
「ん?」
ペルソナさんが、何か話しかけたそうにしていましたけれど、そこで言葉が止まってしまったようです。
何かあったのでしょうか。
「いえ、ヴェルディーナ王国の件は順調に進んでいますので、ご安心くださいと伝えして欲しいと、ヘスティア王国の国王からの言伝がありましたので。では、今後とも型録通販のシャーリィを、よろしくお願いします」
深々と頭を下げるペルソナさん。
私もつられて頭を下げますと、ペルソナさんが私の頭を軽く、ポンポンと撫でてくれました。
「あまり、根を詰めたり無茶なことはあまりしませんように。ノワールたちが護衛として戻るには、あと少し時間を頂くことになっていますけれど、近い将来、ノワールは護衛に復帰しますので」
「ほ、本当ですか!!」
「ええ。それでは失礼します」
「またのご利用を、お待ちしていますぞ」
そう告げて、ペルソナさんとジョーカーさんは馬車に乗り、走り去っていきました。
「う~ん。相変わらずスタイリッシュな配達員ですわね。それで、ちょっと時間がずれてしまったようですけれど、朝食を取ってメルセデス夫人の元へ向かうとしましょうか?」
「ええ。それではさっそく、腹が減っては戦が出来ない。勇者語録にちなんで、しっかりと朝食を取ることにしましょう!!」
ちょっと遅れた朝食ですが、しっかりと食べて今日も頑張りましょう。
………
……
…
――バンクーバー郊外・アスパッハ辺境伯別荘
私たちが宿で朝食を取っていますと、ちょうどアスパッハ辺境伯の使いという騎士たちが宿にやってきました。
騎士の身分を示す徽章も確認しましたので、昨晩捕らえた泥棒たちを警備員さんが引き渡してくれました。
それを見届けてから、私たちは郊外の別荘へと移動。
そのままメルセデス夫人にご挨拶をしたのち、副責任者のマウロ・グレゴリーさんが待っている応接間へと移動。
ええ、私を毛嫌いしているサンマルコさんも、しっかりと椅子に座っていましたよ。
私たちを見て口をパクパクと動かしていましたけれど、ひょっとして昨晩の泥棒を手引きしたのも、サンマルコさんなのかもしれません……と、それは置いておくことにしましょう。
「おはようございます。遅れて申し訳ありませんでした」
「いえいえ、私どももつい先ほど到着したばかりです。そういえば、昨晩、フェイールさんたちの宿泊している宿に押し込みが入ったと伺いましたが、大丈夫でしたか?」
マウロさんが心配そうに話しかけてくれました。
特に怪我もしていませんし、ちょっと遅れましたけれど納品作業も終えてきましたので問題はありません。
「はい。幸いなことに」
「それは良かった。では、さっそく、食材の見本を出していただけますか?」
「はい、それでは……」
今朝方届いたばかりの新鮮野菜。
ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、キャベツ。
ビーツ、 赤ピーマンやトウガラシも用意してあります。
それらを一つ一つ、アイテムボックスの中で籠に入れなおしてから、テーブルの上に並べていきます。
「……嘘だ……こんなのあり得ない……」
私たちが一つ一つ籠を並べていくたびに、サンマルコさんは真っ青な顔で、頭を左右に振りつつ何かを呟いていますが。うん、私たちが入手できないとでも思っていたのかもしれませんね。
ですが、型録通販のシャーリィを舐めて貰っては困ります。季節限定商品やフェア限定でない限りは、ある程度の商品を入手することができます。
もっとも、武器防具といったものは入荷できませんけれどね。
そういえば、来月からの型録では『モバイルバッテリー』というものも取り扱いを開始したようです。
ええ、大賢者・武田さんの欲していたものですよね、タイミングが悪いというかなんというか。
「ふむふむ……ああ、これはいいポテトですね。大きさもある程度均等で、しかも採れたてのような鮮度を保っています。こちらの赤ピーマンも艶がよく肌ざわりもみずみずしい。ここまでの野菜を揃えることができるとは、正直言って脱帽としかいえませんね」
「嘘だ嘘だ嘘だ……おい、この野菜はどこで手に入れた! 朝一番に港に入って来た船の積み荷を確認したけれど、どの船にもこの商品は積んでいなかったはずだ! 言え!! どうやってこんなにいい野菜を手に入れた!!」
私たちの持ってきた野菜を大絶賛するマウロさんとは対照的に、サンマルコさんは激昂。
「あのですね……私どもは商人です。仕入れルートなどおっしゃる必要はありませんよね? これらの商品は、クリス店長が色々と苦労してようやく身に付けたルートです。それを聞き出して、一体、どうするおつもりかしら?」
「ぐっ……そ、それはそうだが……」
やや怒状態のクレアさんの迫力に、サンマルコさんもたじたじのようです。
「サンマルコ、いい加減にしなさい。では、このサンプルと同程度の品質のものをご用意していただけますか。出来れば、明日の昼までに」
「明日の昼……はい、大丈夫です」
この後、宿に戻って追加発注を掛けて……明日の朝の納品ならば、昼までに間に合います。
「それでは、こちらに必要な食材の数量をメモしてありますので、よろしくお願いします。それと、調味料についてですが」
「はい、そちらについても、ご用意してあります。では……」
野菜の次は、調味料の選定。
ええ、まだまだ仕事は終わりませんよ!! サンマルコさんがもうぐったりとしていますけれど、敢えて無視ですよ、無視!!
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