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第6章・ミュラーゼン連合王国と、王位継承者と
第262話・電化製品の罪と罰、そして悩ましい効果
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早朝、いつもより早起きして身支度を整えて。
フェイール商店の配達馬車が到着する前に宿の外に出て、やや涼しい空気に触れてしっかりと体の芯まで目を覚まさせます。
右肩には狐の姿でまだ眠りについたままのキリコさんが乗っていますし、傍らでは緊張した面持ちのクレアさんも立って配達馬車が到着するのを待っています。
「ううう、こ、この緊張感って、なかなか慣れないわね。クリス店長って、そういう意味では凄いとしか思えないわね」
「え、そうなのですか? 別にいつもの早朝配達ですから、それほど緊張することもないかと思いますよ。ほら、普通の商会が商品の納品を待っているのと同じですからね、そう考えたら気が楽じゃないですか?」
「そんな筈はないわよ。だって、フェイール商店の扱っている商品の中心は【型録通販のシャーリィ】なのよ? それってつまり、精霊女王の眷属たちが商売をしているようなものじゃない。うちはその支店のような感じなのよね、それに毎朝配達してくれる方だって、要は本店からの配達担当。そんな偉い人に隙を見せたら、本店でどのような噂が立つかわかったものじゃないわよ?」
「またまた。そんなに緊張しなくても……と、来ましたわね」
うん、クレアさんは考えすぎです。
もっとおおらかな心で、どっしりと構えたほうがいいですよ。
――ガラガラガラガラ
朝一番で、宿屋の外にやってくるフェイール商店の配達馬車。
いつものように御者台にはペルソナさんが……あれ、ペルソナさんが見当たらないですが。
その変わり、御者台にはノワールさんが座っています。
「あらら、今日の御者さんは、店長の彼氏さんじゃないみたいね」
「だ、だ、だれが彼氏なのですか!! あの方はペルソナさんといって、その、フェイール商店の担当で、私の窮地をいつも助けてくれて、それでいて……ええっと、まだ彼氏じゃありません!!」
「まだ……ねぇ。うん、そういうことにしておいてあげる。それよりも馬車が付いたみたいですよ?」
そうニヤニヤと笑いつつ呟いて、クレアさんが馬車後方の荷台へと向かいます。
そして私の前で馬車がゆっくりと止まると、扉が開いてペルソナさんが出てきました。
「おはようございます。型録通販のシャーリィより、ご注文の品をお届けに参りました。ということですので、ノワールさんとクレアさんは後部荷台から商品を下ろし、検品をおねがいします」
「はい、それではよろしくおねがいします。クレアさんが後ろに回っていますので納品と検品は彼女が行いますので」
「畏まりました……と、クリスティナさん、お顔が真っ赤ですけれど。ひょっとして熱でもあるのではないですか?」
いきなり私の前に立つと、ペルソナさんが純白の手袋を脱いで、私の額に手を当てました。
いえ、熱なんてありませんから大丈夫ですから。
「あ、は、はい、熱はないです大丈夫です」
「ペルソナさん、うちの店長をからかっていないで、とっとと仕事をしてください」
「ええ、そうですね。では、ノワールさんは後ろをお願いします」
「はいはい」
ノワールさんがチラッチラッとこっちを見ていましたので、にっこりと笑って手を振ってあげます。
うん、元気そうでなによりですね。
それにクレアさんとも雑談を交えつつ、積荷を下ろす作業を始めてくれました。
ということで、検品は彼女たちにお願いして大丈夫ですね。
私も大きく深呼吸を繰り返し、ドキドキする鼓動を落ち着かせます。
「スーハースーハー。はい、もう大丈夫です」
「そうですか。どうしても具合が悪いようでしたら、常備薬は持ち歩いていますのでいつでもおっしゃってください」
「はい。ご心配なく……と、そういえば、型録通販のシャーリィでは、医薬品の販売は行っていないのですよね?」
そう、今のこの国の窮地を救える薬品、それがあると色々と助かるのですけれど。
もっとも、私個人でどうこうするわけにはいきませんし、そもそもいくつもの派閥の貴族の方に目を付けられていますので、ここは私よりも信用のある方に丸投げした方が効率的ですよね。
そして丸投げする相手とは、ずばり、王都に向かったソーゴさん。
貴族の話を聞いていた時、一瞬だけソーゴさんの顔が浮かんで来たのですけれど、彼のフルネームはソーゴ・タカシマヤ。つまりこの国の王族ではありません。
それに、ソーゴさんなら、ひょっとしたら王室ご用達の商人をしっているかもしれませんよね、そこに流して私たちは別の町に移動してしまいましょう。
「そうですねぇ。医薬品はありませんけれど、薬用効果のある商品ならいくつかございますよ」
そう告げて、ペルソナさんがアイテムボックスから型録を取り出しました。
それを目の前でめくり、いくつかの商品を説明してくれましたけれど。
「これは薬用ハーブの入浴剤、こっちは薬用せっけん……と、ああ、疲労回復用の飲料もありますが……と、そうか、これは欠品でしたか」
んんん? なにか心当たりの商品があるようですが。
「何かありましたか?」
「いえ、医薬品というか、れいやくエリクシールと同効果の飲料があったのですが。このページのこの商品、『元気溌剌』とかいてあるこのドリンクがあれば、どんな病気や呪いも一発で消し飛ぶのですけれど……あいにくと、ずっと欠品状態のままでして」
「元気溌剌……ふぁ」
ああっ、この前確認したあれですよ、エルフの里の地下の、カナン・アーレストの遺産。
私のアイテムボックスにも入っているあれです。
いや、まさか本当にそのような効果とは。
「んんん? どうかなさいましたか?」
「いえ、大丈夫です。それにしても、薬になりそうなものって、結構あるのですね。この薬膳というのは?」
「ああ、これは食べることで薬となる食品ですよ。これでしたら在庫はありますし、今月のグルメ型録にも掲載されていますよ。と、医薬品自体はやっぱり取り扱っていませんね」
「そうですか、ありがとうございました」
ペコッと頭を下げてお礼を告げて。
ふと後ろから視線を感じて振り向くと、馬車の影て私たちを見てニヤニヤと笑っているノワールさんとクレアさんの姿がありました。
『う~ん、やっぱり恋人同士の会話ではないわね。でもねノワールさん、絶対にあの二人は付き合っていると思うのですけれど、どうなのでしょうか?』
『それについてはノーコメントということでねでも、友達以上恋人未満だとは思いますけれどねぇ……と、検品が終わりましたわよ』
はぁ、小声で何かつぶやいていたのでよく聞き取れませんでしたけれど。
ペルソナさんも二人を見て、やれやれという顔をしつつ、仕事の顔に戻りました。
「では、お支払いはいつもの通りで」
「はい、よろしくお願いします」
そのまま手続きも全て終えると、ペルソナさんが顎に手を当てて頭を傾げています。
「ええっと、何かありしまたか?」
「いえ、ちょっと教えていただきたいのですけれど。今回、家電製品の発注がいくつかありましたよね、電源についてはどうするのかと思っていたのですよ」
「ええっと……電源はこれですね」
以前、賢者・タケダさんが作ってくれた魔導コンセント。
それを取り出してペルソナさんにお見せしますと、納得がいったようにうなずいていました。
「ふふ、そういうことでしたか。これならば家電製品も扱えますね。フェイール商店で家電の販売も始めたのかと思ってしまいましたよ。さすがに電気のないところでは動きませんから、どうするのかと思っていましてね」
「基本的には、家電製品は私たちフェイール商店の従業員で楽しもうかと思っていました」
「なるほど、それなら納得です。もしも販売するのでしたら、電気を供給できる方のみに限定してください。それと……ああ、あの可能性もありましたか」
なにか納得しているペルソナさん。
そしてそのまま一礼して、馬車にのって帰っていきましたよ。
最後のあれは、一体、なんだったのでしょうか。
………
……
…
無事に納品も終わり、周囲に集まって来た人たちに挨拶をしてまずは部屋へ。
納品書を確認して、さっそく、お目当ての『シックスパット・ダイエットスーツ』を取り出します。
「んんん? クリス店長、その服はなんですか?」
「これは、着るだけで痩せる可能性のあるスーツです」
「なん……ですって!!」
ああっ、クレアさんの目がキラキラと輝きました。
これはあれですよ、獣が獲物を発見したときの目です。
「わ、私にも着させてください」
「そういうと思って、こちらにもう一着……と、まずは私が実験してみますね」
箱の中から取説、つまり取扱説明書を取り出して一通り目を通します。
そして着用手順に従ってスーツを着込みますと、次に魔導コンセントを用意して接続。
「それでは、スイッチ・オン」
――シーン
はい、なにも起きません。
魔導コンセントは普通に動いていますし、稼働ランプも点灯しています。
「あの、クリス店長? なにか始まったのですか?」
「い、いえ……動きませんよ。ちょっと待ってくださいね」
一度スーツを脱ぎ、鑑定眼でチェックします。
そういえば、このスーツの魔法効果も確認していませんでしたね。
『ピッ……シックスパット・ダイエットスーツ。付与効果・ダイエツト、魔導化、健康促進』
「うん、しっかりとダイエット効果も付与されていますし、健康促進というのもありますね。でも、魔導化とはいったい、なんなのでしょうか?」
今度は、付与効果の魔導化について鑑定してみます。
『ピッ……魔導化。本来ならば電源を必要である家電製品が魔導化、すなわち魔導具に構造変換された場合に表示される効果。魔導化された家電を稼働する場合、電源はつながないでください』
「ふむふむ……クレアさん、これは電源を必要としないようですね。つまり、これは魔導具になりました」
「ああ、なるほど、動かなかったのは、そういうことなのですね」
あ~、それでは電源を外して……ってちょっと待ってください!!
魔導化ってなんですか、これが魔導具、つまりマジックアイテムになったということですか!!
それって誰でも使えるっていうことですよね、型録通販のシャーリィのフ電化製品は、購入したら魔導化するのですか?
いえいえ、そんなことはないですね。
だって、以前購入した電子レンジとか綿菓子器は、電源を必要としていましたから。
「つまり……項に幽した電化製品は、確率で魔導化するっていうこと?」
そーっともう一着、クレアさんが手にしたカーツも確認。
『ピッ……シックスパット・ダイエットスーツ。付与効果・ダイエツト、若返り、健康促進』
ああ、よかった。
そっちは魔導化ではないので電源が必要です。
ほっと胸を撫で降ろして……へ、若返り?
ああっ、また変な効果が付与されているぅぅぅ。
「クレアさん、そのスーツを着るのはちょっと待ってください。色々と調べてからでないと、危険です」
「そ、そうなのですか」
慌ててスーツを箱に納めるクレアさん。
さて、この二着、どうしたものでしょうか。
他にも美顔ローラーとか、初めて購入した商品もいくつかあります。
これは久振りに、効果検証の時間が必要ですね。
フェイール商店の配達馬車が到着する前に宿の外に出て、やや涼しい空気に触れてしっかりと体の芯まで目を覚まさせます。
右肩には狐の姿でまだ眠りについたままのキリコさんが乗っていますし、傍らでは緊張した面持ちのクレアさんも立って配達馬車が到着するのを待っています。
「ううう、こ、この緊張感って、なかなか慣れないわね。クリス店長って、そういう意味では凄いとしか思えないわね」
「え、そうなのですか? 別にいつもの早朝配達ですから、それほど緊張することもないかと思いますよ。ほら、普通の商会が商品の納品を待っているのと同じですからね、そう考えたら気が楽じゃないですか?」
「そんな筈はないわよ。だって、フェイール商店の扱っている商品の中心は【型録通販のシャーリィ】なのよ? それってつまり、精霊女王の眷属たちが商売をしているようなものじゃない。うちはその支店のような感じなのよね、それに毎朝配達してくれる方だって、要は本店からの配達担当。そんな偉い人に隙を見せたら、本店でどのような噂が立つかわかったものじゃないわよ?」
「またまた。そんなに緊張しなくても……と、来ましたわね」
うん、クレアさんは考えすぎです。
もっとおおらかな心で、どっしりと構えたほうがいいですよ。
――ガラガラガラガラ
朝一番で、宿屋の外にやってくるフェイール商店の配達馬車。
いつものように御者台にはペルソナさんが……あれ、ペルソナさんが見当たらないですが。
その変わり、御者台にはノワールさんが座っています。
「あらら、今日の御者さんは、店長の彼氏さんじゃないみたいね」
「だ、だ、だれが彼氏なのですか!! あの方はペルソナさんといって、その、フェイール商店の担当で、私の窮地をいつも助けてくれて、それでいて……ええっと、まだ彼氏じゃありません!!」
「まだ……ねぇ。うん、そういうことにしておいてあげる。それよりも馬車が付いたみたいですよ?」
そうニヤニヤと笑いつつ呟いて、クレアさんが馬車後方の荷台へと向かいます。
そして私の前で馬車がゆっくりと止まると、扉が開いてペルソナさんが出てきました。
「おはようございます。型録通販のシャーリィより、ご注文の品をお届けに参りました。ということですので、ノワールさんとクレアさんは後部荷台から商品を下ろし、検品をおねがいします」
「はい、それではよろしくおねがいします。クレアさんが後ろに回っていますので納品と検品は彼女が行いますので」
「畏まりました……と、クリスティナさん、お顔が真っ赤ですけれど。ひょっとして熱でもあるのではないですか?」
いきなり私の前に立つと、ペルソナさんが純白の手袋を脱いで、私の額に手を当てました。
いえ、熱なんてありませんから大丈夫ですから。
「あ、は、はい、熱はないです大丈夫です」
「ペルソナさん、うちの店長をからかっていないで、とっとと仕事をしてください」
「ええ、そうですね。では、ノワールさんは後ろをお願いします」
「はいはい」
ノワールさんがチラッチラッとこっちを見ていましたので、にっこりと笑って手を振ってあげます。
うん、元気そうでなによりですね。
それにクレアさんとも雑談を交えつつ、積荷を下ろす作業を始めてくれました。
ということで、検品は彼女たちにお願いして大丈夫ですね。
私も大きく深呼吸を繰り返し、ドキドキする鼓動を落ち着かせます。
「スーハースーハー。はい、もう大丈夫です」
「そうですか。どうしても具合が悪いようでしたら、常備薬は持ち歩いていますのでいつでもおっしゃってください」
「はい。ご心配なく……と、そういえば、型録通販のシャーリィでは、医薬品の販売は行っていないのですよね?」
そう、今のこの国の窮地を救える薬品、それがあると色々と助かるのですけれど。
もっとも、私個人でどうこうするわけにはいきませんし、そもそもいくつもの派閥の貴族の方に目を付けられていますので、ここは私よりも信用のある方に丸投げした方が効率的ですよね。
そして丸投げする相手とは、ずばり、王都に向かったソーゴさん。
貴族の話を聞いていた時、一瞬だけソーゴさんの顔が浮かんで来たのですけれど、彼のフルネームはソーゴ・タカシマヤ。つまりこの国の王族ではありません。
それに、ソーゴさんなら、ひょっとしたら王室ご用達の商人をしっているかもしれませんよね、そこに流して私たちは別の町に移動してしまいましょう。
「そうですねぇ。医薬品はありませんけれど、薬用効果のある商品ならいくつかございますよ」
そう告げて、ペルソナさんがアイテムボックスから型録を取り出しました。
それを目の前でめくり、いくつかの商品を説明してくれましたけれど。
「これは薬用ハーブの入浴剤、こっちは薬用せっけん……と、ああ、疲労回復用の飲料もありますが……と、そうか、これは欠品でしたか」
んんん? なにか心当たりの商品があるようですが。
「何かありましたか?」
「いえ、医薬品というか、れいやくエリクシールと同効果の飲料があったのですが。このページのこの商品、『元気溌剌』とかいてあるこのドリンクがあれば、どんな病気や呪いも一発で消し飛ぶのですけれど……あいにくと、ずっと欠品状態のままでして」
「元気溌剌……ふぁ」
ああっ、この前確認したあれですよ、エルフの里の地下の、カナン・アーレストの遺産。
私のアイテムボックスにも入っているあれです。
いや、まさか本当にそのような効果とは。
「んんん? どうかなさいましたか?」
「いえ、大丈夫です。それにしても、薬になりそうなものって、結構あるのですね。この薬膳というのは?」
「ああ、これは食べることで薬となる食品ですよ。これでしたら在庫はありますし、今月のグルメ型録にも掲載されていますよ。と、医薬品自体はやっぱり取り扱っていませんね」
「そうですか、ありがとうございました」
ペコッと頭を下げてお礼を告げて。
ふと後ろから視線を感じて振り向くと、馬車の影て私たちを見てニヤニヤと笑っているノワールさんとクレアさんの姿がありました。
『う~ん、やっぱり恋人同士の会話ではないわね。でもねノワールさん、絶対にあの二人は付き合っていると思うのですけれど、どうなのでしょうか?』
『それについてはノーコメントということでねでも、友達以上恋人未満だとは思いますけれどねぇ……と、検品が終わりましたわよ』
はぁ、小声で何かつぶやいていたのでよく聞き取れませんでしたけれど。
ペルソナさんも二人を見て、やれやれという顔をしつつ、仕事の顔に戻りました。
「では、お支払いはいつもの通りで」
「はい、よろしくお願いします」
そのまま手続きも全て終えると、ペルソナさんが顎に手を当てて頭を傾げています。
「ええっと、何かありしまたか?」
「いえ、ちょっと教えていただきたいのですけれど。今回、家電製品の発注がいくつかありましたよね、電源についてはどうするのかと思っていたのですよ」
「ええっと……電源はこれですね」
以前、賢者・タケダさんが作ってくれた魔導コンセント。
それを取り出してペルソナさんにお見せしますと、納得がいったようにうなずいていました。
「ふふ、そういうことでしたか。これならば家電製品も扱えますね。フェイール商店で家電の販売も始めたのかと思ってしまいましたよ。さすがに電気のないところでは動きませんから、どうするのかと思っていましてね」
「基本的には、家電製品は私たちフェイール商店の従業員で楽しもうかと思っていました」
「なるほど、それなら納得です。もしも販売するのでしたら、電気を供給できる方のみに限定してください。それと……ああ、あの可能性もありましたか」
なにか納得しているペルソナさん。
そしてそのまま一礼して、馬車にのって帰っていきましたよ。
最後のあれは、一体、なんだったのでしょうか。
………
……
…
無事に納品も終わり、周囲に集まって来た人たちに挨拶をしてまずは部屋へ。
納品書を確認して、さっそく、お目当ての『シックスパット・ダイエットスーツ』を取り出します。
「んんん? クリス店長、その服はなんですか?」
「これは、着るだけで痩せる可能性のあるスーツです」
「なん……ですって!!」
ああっ、クレアさんの目がキラキラと輝きました。
これはあれですよ、獣が獲物を発見したときの目です。
「わ、私にも着させてください」
「そういうと思って、こちらにもう一着……と、まずは私が実験してみますね」
箱の中から取説、つまり取扱説明書を取り出して一通り目を通します。
そして着用手順に従ってスーツを着込みますと、次に魔導コンセントを用意して接続。
「それでは、スイッチ・オン」
――シーン
はい、なにも起きません。
魔導コンセントは普通に動いていますし、稼働ランプも点灯しています。
「あの、クリス店長? なにか始まったのですか?」
「い、いえ……動きませんよ。ちょっと待ってくださいね」
一度スーツを脱ぎ、鑑定眼でチェックします。
そういえば、このスーツの魔法効果も確認していませんでしたね。
『ピッ……シックスパット・ダイエットスーツ。付与効果・ダイエツト、魔導化、健康促進』
「うん、しっかりとダイエット効果も付与されていますし、健康促進というのもありますね。でも、魔導化とはいったい、なんなのでしょうか?」
今度は、付与効果の魔導化について鑑定してみます。
『ピッ……魔導化。本来ならば電源を必要である家電製品が魔導化、すなわち魔導具に構造変換された場合に表示される効果。魔導化された家電を稼働する場合、電源はつながないでください』
「ふむふむ……クレアさん、これは電源を必要としないようですね。つまり、これは魔導具になりました」
「ああ、なるほど、動かなかったのは、そういうことなのですね」
あ~、それでは電源を外して……ってちょっと待ってください!!
魔導化ってなんですか、これが魔導具、つまりマジックアイテムになったということですか!!
それって誰でも使えるっていうことですよね、型録通販のシャーリィのフ電化製品は、購入したら魔導化するのですか?
いえいえ、そんなことはないですね。
だって、以前購入した電子レンジとか綿菓子器は、電源を必要としていましたから。
「つまり……項に幽した電化製品は、確率で魔導化するっていうこと?」
そーっともう一着、クレアさんが手にしたカーツも確認。
『ピッ……シックスパット・ダイエットスーツ。付与効果・ダイエツト、若返り、健康促進』
ああ、よかった。
そっちは魔導化ではないので電源が必要です。
ほっと胸を撫で降ろして……へ、若返り?
ああっ、また変な効果が付与されているぅぅぅ。
「クレアさん、そのスーツを着るのはちょっと待ってください。色々と調べてからでないと、危険です」
「そ、そうなのですか」
慌ててスーツを箱に納めるクレアさん。
さて、この二着、どうしたものでしょうか。
他にも美顔ローラーとか、初めて購入した商品もいくつかあります。
これは久振りに、効果検証の時間が必要ですね。
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