型録通販から始まる、追放令嬢のスローライフ

呑兵衛和尚

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第6章・ミュラーゼン連合王国と、王位継承者と

第237話・海は広くて大きくて、そして危険がいっぱいですね

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 私たちが、商用大型帆船ブルーウォーター号の甲板に転移してから一週間。

 食料と水を補給するために、ミュラーゼン連合王国諸島の小さな島に立ち寄ることになりました。
 ここはミュラーゼン連合王国の玄関口と呼ばれているヘルヘイブン王国、海上にうかぶ大小合わせて20の島からなる王国です。
 ここで2日間停泊したのち、残り5日の航海でフォンミューラー王国の港町バンクーバーへとたどり着きます……と、船長さんが説明してくれました。
 私とクレアさんも船から降り、久しぶりの大地を噛みしめている真っ最中。

「ああ……地面が揺れていない……生きているって素晴らしいわ」
「クレアさんってば、大袈裟ですよ。まあ、私もその件については 同意しますけれど」
「それに、この街で少しでも商品を仕入れておかないとならないのでしょう? そろそろペットボトルの水も、レトルトの食料も足りなくなってきたのでしょう?」
「ええ。でもそれは明日ですね。ここまで配達してくれるかどうか、それも確認しないとならないのですから」

 ここ、大切です。
 ちょっと心配になったので、【シャーリィの魔導書】の一番後ろのページに書いてあった『サポートセンター』というところに連絡を書き込んでおいたのです。
 現在向かっているミュラーゼン連合王国まで、商品の配達は可能かどうか。
 その返事が今朝方になって届いたのですが、距離の関係のか配達は週一回の定期便になること、旅行券は効果を発揮しないことなどが浮かび上がっていました。
 ですので、この街で仕入れを行い、次の仕入れはバンクーバーで数日たってからということになります。

「まあ、とっとと宿に行きましょう? この港町での宿代も、当初の旅費の中に含まれているのよね?」
「そのようですよ。ええっと、この先にある大きな宿が、ブルーウォーター号の指定宿らしいので」
「それじゃあレッツゴー。この国でも勇者丼が食べられるのかしら? 港町サライでは新鮮な魚介類が手に入るから食べられたけれど、ここはどうなのかしらね?」
「う~ん。実は、ハーバリオス王国のあるヤーパニウム大陸以外のチリや歴史には、私はあまり詳しくはないのですよ。まあ、こっちの大陸にも魔族は居たそうですけれど、歴史がどうだったのかまでは詳しくないので」

 ええ、勇者丼、すなわち海鮮丼は300年前に勇者さまたちが広めた料理です。
 それが海を渡ったこっちの国々まで浸透しているかどうかは、私も分からないのですよ。

「まあ、それならそれでいいわ。どのみち、船の上の保存食とか、鮮度の下がった食事にはうんざりしていたからね」
「あはは~」

 それでも、朝晩の食事の際には、レトルトのハムやソーセージ、缶入りスープとかを食べていたので、それほどうんざりした様子はありませんでしたけれど。
 でも、あのカチカチに硬くなっていたパンや塩漬けから戻した葉野菜のサラダからは開放されるようなので、一安心です。

――ドガッ
 そんな他愛ない話をしていると、突然、後ろから誰かがぶつかりました。
 勢いが強すぎたのでそのまま私とクレアさんが突き飛ばされるような形になってしまいましたけれど、どこも怪我もなく無事のようです。

「すまねぇ、急いでいるんだ!!」

 そう走りつつ叫ぶ人物。
 帽子をかぶっていましたので顔はよく判りませんけれど、声から察するにそれほど歳をとっているような雰囲気ではありませんね。

「はぁ? 人にぶつかっておいてなによ、あの態度は……もう、とっとと宿に向かいましょ……ってあれ? 私のカバンがない!!」
「ほぇ?」

 慌てて周囲を探しますけれど、何処にもカバンが落ちていないようですし。
 
「さっきの男、きっとあいつが盗んでいったのよ!! どこに行ったのよぉぉぉぉ!」

 慌ててクレアさんが走り出したので、私も後を追いかけます。
 こんなどこになにがあるのか分からないような場所で、一人で走り回ったりしたら道に迷ってしまうじゃないですか。
 それこそ人攫いとか、禄でもない奴らに付き纏わられたりしたら大変ですよ!!

「ちょ、ちょっと待ってくださいクレアさん!! 一人で走っていったら危険ですってば!!」
「わかっているわよ……まったく、何処にいったのかしら……」

 立ち止まって周囲を見渡すクレアさんですけれど。
 どうやら、盗人はどこかに逃げてしまったようです。
 そもそも、ここはどこでしょうか?
 周りを見渡しますと、先ほどまで歩いていた商店街のような場所ではなく、うらびれてさびれている建物が密集しているような場所なんですけれど。
 これって、かなり危険な場所じゃないですか?
 護衛もなく、こんな場所にうら若き乙女が二人。
 はい、危険以外の何物でもありませんよ。
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