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第5章・結婚狂騒曲と、悪役令嬢と
第232話・旅は道連れ……って、道連れにしたのは私ですよね
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メルカバリーで魔族の襲撃にあい、私とクレアさんの乗っていたエセリアル馬車は空間転移によってはらか海上にポイッと投げ捨てられました。
ですが、運が良いことに航行中の帆船の上に落下し一命をとりとめることが出来ましたし、割高ではありますが空室を押さえることが出来きましたのでひとまずは安心です。
「さて、明日からは露店でも開きますか……」
「はあ、本当にクリスティナ店長といたら退屈しないわね」
ベッドの上に腰かけて、クレアさんがため息交じりに呟きますが。
もっとフランクな話し方の方が、お互いに気付かれしなくて済みますよね。
「クレアさん、私のことはクリスティナ、もしくはクリスって呼んでください。仕事でもないときに店長って付けられると、気も休まりませんから」
「そ、そう? それならクリスって呼ぶわね。私のことはまあ、クレアで構わないわよ」
「はい。私よりも年上ですから、クレアさんって呼びますね」
「そうね、それでいいわ」
腕を組んでそっぽを向きつつ、ちょっと照れ隠しに呟いているクレアさん。
さて、この後はどうしましょうか。
明日にでも露店を開きたいところですけれど、在庫ってまだ何か残っていましたか……。
「アイテムボックス!!」
そう宣言すると、私の手元に大量の羊皮紙が出現します。
それを確認して商品の在庫を調べてみますが。
「う~ん。凡その在庫は引き出物用の福袋にしてしまっていますねぇ。まあ、食品は別にしてありましたけれど、そちらも結婚式用に在庫を捌いてしまいましたから。あとは……装飾品かぁ」
はい、引き出物を選ぶための目利き勝負で用意した、黒真珠を始めとした豪華な装飾品の山。
これが大量に残っていますか。
でも、今から向かう先はミュラーゼン連合王国のフォンミューラー王国です。
かつて、私が所持していた黒真珠にたいして、密輸品だという疑いをかけた国ですよ。
そんなところに向かうっていうのに、疑われている黒真珠を売り先ばくことなんてできるはずがありませんよ。
「ひょっとして商品の在庫が足りないとか?」
「いえいえ、まあ、引き出物の予備として購入したものは残っていますけれど、これで二週間繋ぐというのも難しいですよ」
とはいえ、今の場所は海の上です。
いくら【型録通販のシャーリィ】といえど、たとえ神出鬼没のペルソナさんであっても、海の上を馬車で走ってくるなんて言う器用なことはできるはずがありません。
ま、まあ、エセリア馬車は川ぐらいなら楽々と走っていけますから、ひょっとしたら海の上も走れるとは思いますけれど……。
それに、認識阻害の効果があるとはいえ、帆船の上で納品だなんて訳が分からなすぎますからね。
同じ理由で、旅行券での帰還もアウトです。
いきなり乗客が減るなんて言う事件を起こそうものなら、この船の船長さんに迷惑が掛かってしまいます。
――コンコン
そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされました。
すぐにクレアさんが扉の近くまで移動すると、鍵を開けることなく。
「どちら様でしょうか?」
と外の人に向かって問いかけています。
う~ん、実に慎重です。
こういったところは、私も学ぶべきでしょう。
『船長からの伝言です。夕食は部屋まで運んできますが、出来るなら窓に取り付けられている木窓は夜は空けないで欲しいということです』
「ありがとうございます。それで、木窓を開けないでっていう意味はなにかしら?」
『この海域では、ごくまれにシーサーペントが出現します。夜間は航行速度が遅いため、窓から光が零れて居たりしたら見つかって襲撃される可能性がありますので。それにですね……』
そこまで告げて、外にいる男性の声がくぐもってしまいます。
「それに?」
『海賊が出ることもありますので……だから、木窓は開けないでください。では失礼します』
「あ、はい、ごくろうさまですわ」
そう告げてから、クレアさんがベッドに戻ってきます。
「シーサーペント、それに海賊ですか」
「クリス。まさかとは思うけれど、海賊相手に商売しようだなんて考えてはいないわよね?」
「まさかですわ。そんな危険なこと、するはずがないじゃないですか」
私が知る限りでは。
海賊に捕まった場合、金品は全て奪われた挙句、女子供は全て奴隷商人に売り飛ばされます。
ハーバリオスでは奴隷の売買はおろか、所持すら禁止されていますのでそういった心配は……ありますわね。そもそも私が隷属されそうになっていましたから。
「そうよね。それじゃあ、明日からはあまり目立たないようにして、フォンミューラー王国に穏便に到着するのを待つしかないわ」
「ええ。変に目立ってしまうと、到着した後に目を付けられてしまうかも知れませんから」
まだ、この帆船に乗船しているお客がどのような身分のなのかなんて知りません。
だからこそ、慎重に行動しなくてはなりませんね……と言いましても、ファーストコンタクトの時点で目立っていましたから、今更と遅れな感じもしていますけれど。
ですが、運が良いことに航行中の帆船の上に落下し一命をとりとめることが出来ましたし、割高ではありますが空室を押さえることが出来きましたのでひとまずは安心です。
「さて、明日からは露店でも開きますか……」
「はあ、本当にクリスティナ店長といたら退屈しないわね」
ベッドの上に腰かけて、クレアさんがため息交じりに呟きますが。
もっとフランクな話し方の方が、お互いに気付かれしなくて済みますよね。
「クレアさん、私のことはクリスティナ、もしくはクリスって呼んでください。仕事でもないときに店長って付けられると、気も休まりませんから」
「そ、そう? それならクリスって呼ぶわね。私のことはまあ、クレアで構わないわよ」
「はい。私よりも年上ですから、クレアさんって呼びますね」
「そうね、それでいいわ」
腕を組んでそっぽを向きつつ、ちょっと照れ隠しに呟いているクレアさん。
さて、この後はどうしましょうか。
明日にでも露店を開きたいところですけれど、在庫ってまだ何か残っていましたか……。
「アイテムボックス!!」
そう宣言すると、私の手元に大量の羊皮紙が出現します。
それを確認して商品の在庫を調べてみますが。
「う~ん。凡その在庫は引き出物用の福袋にしてしまっていますねぇ。まあ、食品は別にしてありましたけれど、そちらも結婚式用に在庫を捌いてしまいましたから。あとは……装飾品かぁ」
はい、引き出物を選ぶための目利き勝負で用意した、黒真珠を始めとした豪華な装飾品の山。
これが大量に残っていますか。
でも、今から向かう先はミュラーゼン連合王国のフォンミューラー王国です。
かつて、私が所持していた黒真珠にたいして、密輸品だという疑いをかけた国ですよ。
そんなところに向かうっていうのに、疑われている黒真珠を売り先ばくことなんてできるはずがありませんよ。
「ひょっとして商品の在庫が足りないとか?」
「いえいえ、まあ、引き出物の予備として購入したものは残っていますけれど、これで二週間繋ぐというのも難しいですよ」
とはいえ、今の場所は海の上です。
いくら【型録通販のシャーリィ】といえど、たとえ神出鬼没のペルソナさんであっても、海の上を馬車で走ってくるなんて言う器用なことはできるはずがありません。
ま、まあ、エセリア馬車は川ぐらいなら楽々と走っていけますから、ひょっとしたら海の上も走れるとは思いますけれど……。
それに、認識阻害の効果があるとはいえ、帆船の上で納品だなんて訳が分からなすぎますからね。
同じ理由で、旅行券での帰還もアウトです。
いきなり乗客が減るなんて言う事件を起こそうものなら、この船の船長さんに迷惑が掛かってしまいます。
――コンコン
そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされました。
すぐにクレアさんが扉の近くまで移動すると、鍵を開けることなく。
「どちら様でしょうか?」
と外の人に向かって問いかけています。
う~ん、実に慎重です。
こういったところは、私も学ぶべきでしょう。
『船長からの伝言です。夕食は部屋まで運んできますが、出来るなら窓に取り付けられている木窓は夜は空けないで欲しいということです』
「ありがとうございます。それで、木窓を開けないでっていう意味はなにかしら?」
『この海域では、ごくまれにシーサーペントが出現します。夜間は航行速度が遅いため、窓から光が零れて居たりしたら見つかって襲撃される可能性がありますので。それにですね……』
そこまで告げて、外にいる男性の声がくぐもってしまいます。
「それに?」
『海賊が出ることもありますので……だから、木窓は開けないでください。では失礼します』
「あ、はい、ごくろうさまですわ」
そう告げてから、クレアさんがベッドに戻ってきます。
「シーサーペント、それに海賊ですか」
「クリス。まさかとは思うけれど、海賊相手に商売しようだなんて考えてはいないわよね?」
「まさかですわ。そんな危険なこと、するはずがないじゃないですか」
私が知る限りでは。
海賊に捕まった場合、金品は全て奪われた挙句、女子供は全て奴隷商人に売り飛ばされます。
ハーバリオスでは奴隷の売買はおろか、所持すら禁止されていますのでそういった心配は……ありますわね。そもそも私が隷属されそうになっていましたから。
「そうよね。それじゃあ、明日からはあまり目立たないようにして、フォンミューラー王国に穏便に到着するのを待つしかないわ」
「ええ。変に目立ってしまうと、到着した後に目を付けられてしまうかも知れませんから」
まだ、この帆船に乗船しているお客がどのような身分のなのかなんて知りません。
だからこそ、慎重に行動しなくてはなりませんね……と言いましても、ファーストコンタクトの時点で目立っていましたから、今更と遅れな感じもしていますけれど。
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