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第5章・結婚狂騒曲と、悪役令嬢と
第217話・無理難題と、便利な隠しページと
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さて。
シャトレーゼ伯爵夫人の謀略……ならぬ陰謀……とも違いますか。
とにかく、結婚式でより美しく着飾るためにと装飾品や衣類をご用意したところ、運悪く伯爵夫人に来客がやって参りました。
このタイミングで逃げ切れたならば運よくというところでしょうが、来客は今回のご子息の結婚式のために来領してきた伯爵夫人の旧知の貴婦人のみなさん。
しかも、私と伯爵夫人の商談の場所までやって来た挙句、テーブルの上に並んでいる商品を見て目がキラーーンと輝いていました。
「ね、ねぇ……これって私たちも購入できるのかしら?」
「今度こそ、あの忌々しい男爵夫人」
やむなく大広間に移動し、販売用の装飾品とかドレスを並べて展示即売会を開催しました。
「ね、ねぇ……あの奥様が持っている黒真珠のアクセサリーはないの?」
「今度、王都の園遊会に招待されていて。あれがあるのならぜひとも売って欲しいのですけれど」
「もうね、あの忌々しいボーネック男爵夫人に嫌味を言われるのは嫌なのよ。あちらは王都、我が家は辺境……田舎貴族って鼻で笑っているのよ、ね、貴方も耐えられないでしょう?」
「あはは~」
この方は確か、シャトレーゼ伯爵夫人の旧友のコリコス子爵夫人でしたね。
もう、貴族のプライド勝負なんて、乾いた笑いしか出てきませんよ。
残念なことに黒真珠の装飾品につきましては、王家からも販売禁止と仰せつかっていますので、在庫があったとしても販売することはできません。
「誠に申しわけありません。国王陛下のご命令で、黒真珠の販売については禁止されております。ということで、ほかの商品でよろしければ」
ということで色々とご用意しましたけれど。
さすがにあきらめきれなかったのか、少しでも大きな、それでいて見栄えのいい装飾品を探しています。
「こ、このエメラルドならボーネック夫人の持っている黒真珠のイヤリングに勝つことが出来ますわ」
「そ、そうですね……黒真珠のイヤリングにも……ってあれ?」
ふと考える。
私が販売していた黒真珠の装飾品については、おおよそどこの誰に販売したのか判っています。
そして貴婦人の皆様が、自身をより美しく彩る黒真珠の装飾品を他人に譲るはずがありません。
ましてや、私が販売したお相手は伯爵位より上の方ばかり。
男爵夫人になど、販売した記憶はありませんが。
「コリコス夫人、ちょっとお尋ねしますけれど。ボーネック夫人が所有していたという黒真珠のイヤリングですけれど、フェイール商店から購入したとおっしゃっていましたか?」
思わず質問してしまいました。
ええ、よくよく考えてみても出所がいまいち分からないのですから。
「いえ、フェイール商店とははっきりと話してはいませんでしたわね。えぇっと確か……『まあ、このご時世にこれを取り扱える商会なんて、ご存じかと思いますけれど……』のような感じに話していましたわ」
「うん、それ、当店が販売したものではありませんね。うちはフェイール商店、商業ギルドには個人商隊で登録しています。旅をしながら商いを行っているので、特定の場所に商会は構えてはいません」
「あら、そうなの? それじゃあ、ボーネック夫人はどこで入手したのかしら?」
う~ん。
なんとなく嫌な予感しか出てきませんね。
ま、まあ、ボーネック夫人がどこで黒真珠を入手しようが私には関係ありませんからね。
………
……
…
這う這うの体でシャトレーゼ伯爵邸から宿に帰還。
夕食までお世話になってしまったため、食堂へは向かわずにまっすぐ部屋へと移動しましたよ。
もうね、女性が美を求めるということがどれほどのことかと、痛いほど思い知らされました。
大ホールに並べてあった衣類、靴、装飾品は全て完売。
おかげで、これから発注のやり直しと結婚式に必要な商品のリストを製作しなくてはなりません。
ええ、見積依頼ですよ、それも大急ぎで。
「はぁぁぁぁ。もう足が痛い、疲れた、気力もない」
「そんな時は、ほら、どこぞの遺跡で手に入れてきた元気溌剌になる飲み物を飲むのじゃよ!!」
「あ~、そういえば、そんなものもありましたね」
勇者ご用達の魔法薬ですね。
ファイトが一発で出てきて、滋養強壮と栄養補給に優れているとか。
柚月さん曰く、映画という世界では、それを巨大なジョッキに入れて生卵と混ぜて飲んでいたそうです。
死ぬ気ですか、異世界の人は。
生卵なんて食べたら、おなかを壊して三日三晩、生死の境をさまようことになるのですよ。
という事で、それをアイテムボックスから取り出して一気飲み。
うん、身体中に力が漲ってきます。
「ぷは~。さーて、それじゃあ仕事に戻りますか!!」
「では、ワシは眠るのでな。あとはノワールに任せるぞ」
「はいはい。今日は昼間っからでずっぱりなんですけれどね」
「すいません。でも、あの人数を私とクリムゾンさんだけで捌くのは難しかったので」
ええ、昼間の展示即売会でもノワールさんにお願いしてでてきてもらったのですよ。
「そ、そんなつもりでおっしゃったのではありません。私はクリスティナさまのために誠心誠意お使えしています。即売会の会場で、人の目を盗んで酒を飲んでいた紅に対しての皮肉です!!」
『こりゃノワール!! そのことをバラすでない』
うん、ノワールさんの冤罪はあっさりと晴れました。
「大丈夫ですよ。いつもありがとうございます。それとクリムゾンさんは、明日からのお酒の量を減らしますので」
『ノォォォォォォ!』
指輪から絶叫が聞こえてきますが無視ですよ無視。
「それじゃあ早速」
【シャーリィの魔導書】を開き 【型録通販のシャーリィ】のメニューを確認。うん、ジューンブライドの特集ページがあります。
それに、この型録通販のシャーリィには、実はとんでもない秘密があったのですよ。
「うん、豆知識も参考にさせてもらいましょう」
私が開いたのは、『結婚祝い』と記されたページの下にある『その他』というページ。
実はこれ、隠しページなのですよ。
それぞれの季節限定イベントのページに必ずある『その他』の文字。
ここをタッチしますと、さらに新しいページが姿を現しました。
「ええっと、項目は……」
そこに記されているのは、『結婚祝い、トップページへ』『マナー・豆知識』『結婚祝い人気ランキング』『定番・おすすめ商品』、そして『カタログギフト』の項目。
それぞれが隠しページらしく、指でなぞることで姿を現すようです。
「うん、まずは異世界の結婚式についての豆知識から見てみますか」
あとはじっくりと豆知識のページを確認。
さすがは異世界、私たちの世界では考えられないような基礎知識が大量に記されていましたよ。
それに、この結婚祝いランキングなるものも、心がウキウキしてきます。
「ええっと、結婚式のお祝い返しのトップはテーブルグリルストーン? あ、確か異世界のホットプレートとかいう奴ですか。でも、これ一つで銀貨45枚……うっそでしょ?」
他にも、真紅の鋳物鍋が銀貨30枚、タスヒクゼロとかいう、不思議な形の掃除機……あ、コードレスクリーナーっていうのですが。これも銀貨30枚。
さらには、小さな小瓶に入っている練石鹸が銀貨12枚……え?
「どこの貴族の結婚式なのですか!! これを参列者にお返しとして渡すのですよね? 異世界の結婚式って、どれだけ大盤振る舞いするのですか。散財どころか破産しますよ」
ま、まあ。
落ち着きなさい私。
そもそもホットプレートとコードレスクリーナーはあり得ません。
武田さんが作ってくれた『発電魔導具』、あれが無いと動かないのですから。
そうなりますと、この鋳物鍋か練石鹸……うん、これって結婚式のお返しなのですか?
「おそらくは、参列者だけでも200人ではすみませんね。貴族の、それも伯爵家のご子息と異国の子爵家令嬢……うわぁぁぁ、待って待って、そもそも仕入れに必要な予算が足りなくなりませんか?」
慌ててアイテムボックスの中に収めてあるお金を計算。
うん、訳のわからない高額商品でなければ、1000人分の予算は確保できそうですが。
「そ、それじゃあ一つ銀貨10枚前後の商品からスタートして、一通り書き出してみますか」
「クリスティナさま。お返しする相手の家格による上下も考慮する必要があります。異世界では一律同じのようですが、私たちの世界では貴族同士のメンツとか格式、それに爵位の上下も加味する必要がありますから」
「うっそ……」
こ、これは一筋縄ではいきません。
私、今日は眠れるのでしょうか。
シャトレーゼ伯爵夫人の謀略……ならぬ陰謀……とも違いますか。
とにかく、結婚式でより美しく着飾るためにと装飾品や衣類をご用意したところ、運悪く伯爵夫人に来客がやって参りました。
このタイミングで逃げ切れたならば運よくというところでしょうが、来客は今回のご子息の結婚式のために来領してきた伯爵夫人の旧知の貴婦人のみなさん。
しかも、私と伯爵夫人の商談の場所までやって来た挙句、テーブルの上に並んでいる商品を見て目がキラーーンと輝いていました。
「ね、ねぇ……これって私たちも購入できるのかしら?」
「今度こそ、あの忌々しい男爵夫人」
やむなく大広間に移動し、販売用の装飾品とかドレスを並べて展示即売会を開催しました。
「ね、ねぇ……あの奥様が持っている黒真珠のアクセサリーはないの?」
「今度、王都の園遊会に招待されていて。あれがあるのならぜひとも売って欲しいのですけれど」
「もうね、あの忌々しいボーネック男爵夫人に嫌味を言われるのは嫌なのよ。あちらは王都、我が家は辺境……田舎貴族って鼻で笑っているのよ、ね、貴方も耐えられないでしょう?」
「あはは~」
この方は確か、シャトレーゼ伯爵夫人の旧友のコリコス子爵夫人でしたね。
もう、貴族のプライド勝負なんて、乾いた笑いしか出てきませんよ。
残念なことに黒真珠の装飾品につきましては、王家からも販売禁止と仰せつかっていますので、在庫があったとしても販売することはできません。
「誠に申しわけありません。国王陛下のご命令で、黒真珠の販売については禁止されております。ということで、ほかの商品でよろしければ」
ということで色々とご用意しましたけれど。
さすがにあきらめきれなかったのか、少しでも大きな、それでいて見栄えのいい装飾品を探しています。
「こ、このエメラルドならボーネック夫人の持っている黒真珠のイヤリングに勝つことが出来ますわ」
「そ、そうですね……黒真珠のイヤリングにも……ってあれ?」
ふと考える。
私が販売していた黒真珠の装飾品については、おおよそどこの誰に販売したのか判っています。
そして貴婦人の皆様が、自身をより美しく彩る黒真珠の装飾品を他人に譲るはずがありません。
ましてや、私が販売したお相手は伯爵位より上の方ばかり。
男爵夫人になど、販売した記憶はありませんが。
「コリコス夫人、ちょっとお尋ねしますけれど。ボーネック夫人が所有していたという黒真珠のイヤリングですけれど、フェイール商店から購入したとおっしゃっていましたか?」
思わず質問してしまいました。
ええ、よくよく考えてみても出所がいまいち分からないのですから。
「いえ、フェイール商店とははっきりと話してはいませんでしたわね。えぇっと確か……『まあ、このご時世にこれを取り扱える商会なんて、ご存じかと思いますけれど……』のような感じに話していましたわ」
「うん、それ、当店が販売したものではありませんね。うちはフェイール商店、商業ギルドには個人商隊で登録しています。旅をしながら商いを行っているので、特定の場所に商会は構えてはいません」
「あら、そうなの? それじゃあ、ボーネック夫人はどこで入手したのかしら?」
う~ん。
なんとなく嫌な予感しか出てきませんね。
ま、まあ、ボーネック夫人がどこで黒真珠を入手しようが私には関係ありませんからね。
………
……
…
這う這うの体でシャトレーゼ伯爵邸から宿に帰還。
夕食までお世話になってしまったため、食堂へは向かわずにまっすぐ部屋へと移動しましたよ。
もうね、女性が美を求めるということがどれほどのことかと、痛いほど思い知らされました。
大ホールに並べてあった衣類、靴、装飾品は全て完売。
おかげで、これから発注のやり直しと結婚式に必要な商品のリストを製作しなくてはなりません。
ええ、見積依頼ですよ、それも大急ぎで。
「はぁぁぁぁ。もう足が痛い、疲れた、気力もない」
「そんな時は、ほら、どこぞの遺跡で手に入れてきた元気溌剌になる飲み物を飲むのじゃよ!!」
「あ~、そういえば、そんなものもありましたね」
勇者ご用達の魔法薬ですね。
ファイトが一発で出てきて、滋養強壮と栄養補給に優れているとか。
柚月さん曰く、映画という世界では、それを巨大なジョッキに入れて生卵と混ぜて飲んでいたそうです。
死ぬ気ですか、異世界の人は。
生卵なんて食べたら、おなかを壊して三日三晩、生死の境をさまようことになるのですよ。
という事で、それをアイテムボックスから取り出して一気飲み。
うん、身体中に力が漲ってきます。
「ぷは~。さーて、それじゃあ仕事に戻りますか!!」
「では、ワシは眠るのでな。あとはノワールに任せるぞ」
「はいはい。今日は昼間っからでずっぱりなんですけれどね」
「すいません。でも、あの人数を私とクリムゾンさんだけで捌くのは難しかったので」
ええ、昼間の展示即売会でもノワールさんにお願いしてでてきてもらったのですよ。
「そ、そんなつもりでおっしゃったのではありません。私はクリスティナさまのために誠心誠意お使えしています。即売会の会場で、人の目を盗んで酒を飲んでいた紅に対しての皮肉です!!」
『こりゃノワール!! そのことをバラすでない』
うん、ノワールさんの冤罪はあっさりと晴れました。
「大丈夫ですよ。いつもありがとうございます。それとクリムゾンさんは、明日からのお酒の量を減らしますので」
『ノォォォォォォ!』
指輪から絶叫が聞こえてきますが無視ですよ無視。
「それじゃあ早速」
【シャーリィの魔導書】を開き 【型録通販のシャーリィ】のメニューを確認。うん、ジューンブライドの特集ページがあります。
それに、この型録通販のシャーリィには、実はとんでもない秘密があったのですよ。
「うん、豆知識も参考にさせてもらいましょう」
私が開いたのは、『結婚祝い』と記されたページの下にある『その他』というページ。
実はこれ、隠しページなのですよ。
それぞれの季節限定イベントのページに必ずある『その他』の文字。
ここをタッチしますと、さらに新しいページが姿を現しました。
「ええっと、項目は……」
そこに記されているのは、『結婚祝い、トップページへ』『マナー・豆知識』『結婚祝い人気ランキング』『定番・おすすめ商品』、そして『カタログギフト』の項目。
それぞれが隠しページらしく、指でなぞることで姿を現すようです。
「うん、まずは異世界の結婚式についての豆知識から見てみますか」
あとはじっくりと豆知識のページを確認。
さすがは異世界、私たちの世界では考えられないような基礎知識が大量に記されていましたよ。
それに、この結婚祝いランキングなるものも、心がウキウキしてきます。
「ええっと、結婚式のお祝い返しのトップはテーブルグリルストーン? あ、確か異世界のホットプレートとかいう奴ですか。でも、これ一つで銀貨45枚……うっそでしょ?」
他にも、真紅の鋳物鍋が銀貨30枚、タスヒクゼロとかいう、不思議な形の掃除機……あ、コードレスクリーナーっていうのですが。これも銀貨30枚。
さらには、小さな小瓶に入っている練石鹸が銀貨12枚……え?
「どこの貴族の結婚式なのですか!! これを参列者にお返しとして渡すのですよね? 異世界の結婚式って、どれだけ大盤振る舞いするのですか。散財どころか破産しますよ」
ま、まあ。
落ち着きなさい私。
そもそもホットプレートとコードレスクリーナーはあり得ません。
武田さんが作ってくれた『発電魔導具』、あれが無いと動かないのですから。
そうなりますと、この鋳物鍋か練石鹸……うん、これって結婚式のお返しなのですか?
「おそらくは、参列者だけでも200人ではすみませんね。貴族の、それも伯爵家のご子息と異国の子爵家令嬢……うわぁぁぁ、待って待って、そもそも仕入れに必要な予算が足りなくなりませんか?」
慌ててアイテムボックスの中に収めてあるお金を計算。
うん、訳のわからない高額商品でなければ、1000人分の予算は確保できそうですが。
「そ、それじゃあ一つ銀貨10枚前後の商品からスタートして、一通り書き出してみますか」
「クリスティナさま。お返しする相手の家格による上下も考慮する必要があります。異世界では一律同じのようですが、私たちの世界では貴族同士のメンツとか格式、それに爵位の上下も加味する必要がありますから」
「うっそ……」
こ、これは一筋縄ではいきません。
私、今日は眠れるのでしょうか。
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