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第4章・北方諸国漫遊と、契約の精霊と
第184話・限界を超えた先……は、まだ見えないのですか?
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ヤージマ連邦ロシマカープ王国で行われる、大武術大会。
これにはシード枠と呼ばれる招待参加選手のほかに、各地域で行われる予選会を突破したものが参加できる一般枠の二つの参加方法が存在する。
一つ目のシード枠は、各国の冒険者ギルドや傭兵ギルドからの推薦状があり、一定ランク以上の実績があること。この二つがそろっていれば、簡単な審査のみでシード枠に参加することができる。
そしてもう一つの一般枠は、各国で執り行われる予選会を勝ち抜いたもののみが参加できる枠であるのだが、すでに殆どの王国予選は終了しているため、勝ち残れなかったものたちは残り僅かの枠を求め、大会開催国であるロシマカープ王国王都にやってくる。
そして闘技場にて随時、予選会は行われているものの、いまだ闘技場で勝利を勝ち取った参加者は数名のみ。それも、運よく闘技場に登録されている剣闘士の上位者が『なぜか』欠席だったため、やや下位の剣闘士たちが相手を務めることとなったとか。
そして現在は、用事を済ませた闘技場トップが帰還してきたので一般枠の合格者は再びゼロ人になっていたという。
「それで、運のよい一般枠とはどこのどいつなのやら」
「噂では、この国の近隣の貴族の次男や三男とからしいですわね。どう考えても、跡継ぎに慣れなかった貴族の子息たちが箔をつけるために参加したとしか思えませんわよ。中には伯爵家の五男とかいう輩もいるそうですわ」
自分たちの予選試合の順番が来たので、クリムゾンとミコト、そしてその他8名の参加者たちは闘技場の中へと案内された。
予選合格条件は一つ。
闘技場中央で立つ二人の剣闘士を倒すこと。
合格者の人数は不問であるが、戦わずに逃げていた場合などは合格とは認めない。
それゆえに、他人任せに戦ってもらいおこぼれにありつこうとする輩もいるらしいのだが、そもそも剣闘士たちは反撃してくる。
この予選で一定人数以上の参加者を『再起不能』にすれば、それだけで数年分の恩赦や報奨金がもらえるのである。
奴隷のように買われてきた剣闘士は、自分自身を買い戻す為に賞金を手に入れようとするし、犯罪奴隷から剣闘士になったものは、奴隷契約期間を短くしてもらうために恩赦を手に入れようとする。
つまり、この闘技場に一歩でも足を踏み入れたならば、勝利しか無事に出ることができないのである。
「さて、それじゃあとっとと始めようぜ。そこの剣闘士とかいうやつ、まずはこの俺が相手だ」
一番最後に入場した、紋章付きフルプレートに身を包んだ青年が、剣を引き抜いて剣闘士に向かって身構える。
「威勢がいいな。名は?」
「グリナカープ王国、シュタインベルク公爵家が三男、アルフレッド・シュタインベルクだ。この名前を聞いた以上、俺に手を出したらどうなるか分かっているだろうな」
ニヤニヤと笑いつつ、剣を構えることなく右手でブラブラと振り回すと、アルフレッドが一人の剣闘士の前に歩み寄る。
「いいな、俺には手を出すな。そのうえで、ここにいる奴らすべてを殺せ。そしてそのあとで構わないから、降参するんだ。そうすれば、お前たちの刑を減刑するように、この国の公爵家に手紙を書いてやるからな……」
そう呟くアルフレッド。
さすがにこの一言は他の参加者の怒りを買うこととなったのだが、そんな外野の言葉など気にもせず、一人の剣闘士がアルフレッドの前に指を一本差し出した。
「ん、金か? 減刑以外にも金を寄越せってか?」
「俺たちの仕事は、ここにくる参加者たちを叩き潰すこと。一人叩き潰せば小金貨袋ひとつ。身分が高い奴を叩き潰せば、大金貨袋ひとつだ」
「俺は、一日ここで勝ち残ったら一年の刑期が免除される」
「そうかそうか。それよりも破格な条件だろ?」
「「だが」」
――ドッゴォォォォォッ
剣闘士の持つ巨大なハンマーがアルフレッドの腰に向かって叩き込まれ、もう一人の大剣がアルフレッドの左肩を真っ二つに切断した。
「戦うことこそが剣闘士の仕事。それを汚した貴様には、ここで死んでもらうしかない」
「待て待て、再起不能にするのが仕事だからな。心配するな、高位治癒師が待機しているから、命は助かる」
――グラッ
言葉を発する力もなくん、一瞬で意識まで刈り取られたアルフレッドはその場に崩れ落ちる。
そしてそんな不遜な輩などいなかったかのように、剣闘士たちはクリムゾンたちに向かって武器を構える。
「さあ、予選の開始だ」
「最後まで俺たちを楽しませてくれよな」
ニイッと笑った剣闘士たちは、まだ戦う心構えがとれていない参加者に向かって、狂気を孕んだ暴力をたたきつけ始めた。
そんな中で、クリムゾンとミコトだけが、すぐに臨戦態勢をとって剣闘士たちと切り結び始めることとなったのだが……。
………
……
…
――1時間後・闘技場
ズタボロになった参加者たち。
アルフレッドとは違い手加減されていたために瀕死の重傷とまではいかなかったものの、この日の再戦は不可能なまでにダメージを受けている。
武器を破壊されたもの、手足が折られたもの、鎧が砕かれたもの。
みな意識を保っているのがやっとであり、明日また再戦できるかどうかなどわからない。
「ふむ。よい準備運動じゃったな」
「あ、あんた化け物なの……爆槌のロビンズと剛剣のサーパス、この闘技場のトップツーを相手に、どうして無傷なのよ」
地面に大の字になって息をしているミコトが、傍らで再起不能に近い参加者たちを見ているクリムゾンに問いかけている。
ミコトもがんばった、かなりいいところまでいったのだが最後にサーパスと相打ちになった。
ロビンズとサーパスの先制攻撃でクリムゾンとミコト以外の参加者は吹き飛ばされ、そこから乱戦状態になったのだが、一人、また一人と剣闘士たちの攻撃の前に崩れていく。
そなんんな中でもクリムゾンとミコトは攻撃の手を緩めることがなかったのだが、途中から剣闘士の二人はクリムゾンとミコト以外を集中的に攻撃。
邪魔が入らなくなった時点で、ミコトとサーパス、そしてクリムゾンとロビンズの一騎打ちが始まったのである。
そして最後まで勝ち残ったのがクリムゾンのみ、倒れてしまったもののサーパスを倒せたということでミコトも勝者と判断され、この日、久しぶりに一般参加枠での合格者が二人同時に現れたという。
これにはシード枠と呼ばれる招待参加選手のほかに、各地域で行われる予選会を突破したものが参加できる一般枠の二つの参加方法が存在する。
一つ目のシード枠は、各国の冒険者ギルドや傭兵ギルドからの推薦状があり、一定ランク以上の実績があること。この二つがそろっていれば、簡単な審査のみでシード枠に参加することができる。
そしてもう一つの一般枠は、各国で執り行われる予選会を勝ち抜いたもののみが参加できる枠であるのだが、すでに殆どの王国予選は終了しているため、勝ち残れなかったものたちは残り僅かの枠を求め、大会開催国であるロシマカープ王国王都にやってくる。
そして闘技場にて随時、予選会は行われているものの、いまだ闘技場で勝利を勝ち取った参加者は数名のみ。それも、運よく闘技場に登録されている剣闘士の上位者が『なぜか』欠席だったため、やや下位の剣闘士たちが相手を務めることとなったとか。
そして現在は、用事を済ませた闘技場トップが帰還してきたので一般枠の合格者は再びゼロ人になっていたという。
「それで、運のよい一般枠とはどこのどいつなのやら」
「噂では、この国の近隣の貴族の次男や三男とからしいですわね。どう考えても、跡継ぎに慣れなかった貴族の子息たちが箔をつけるために参加したとしか思えませんわよ。中には伯爵家の五男とかいう輩もいるそうですわ」
自分たちの予選試合の順番が来たので、クリムゾンとミコト、そしてその他8名の参加者たちは闘技場の中へと案内された。
予選合格条件は一つ。
闘技場中央で立つ二人の剣闘士を倒すこと。
合格者の人数は不問であるが、戦わずに逃げていた場合などは合格とは認めない。
それゆえに、他人任せに戦ってもらいおこぼれにありつこうとする輩もいるらしいのだが、そもそも剣闘士たちは反撃してくる。
この予選で一定人数以上の参加者を『再起不能』にすれば、それだけで数年分の恩赦や報奨金がもらえるのである。
奴隷のように買われてきた剣闘士は、自分自身を買い戻す為に賞金を手に入れようとするし、犯罪奴隷から剣闘士になったものは、奴隷契約期間を短くしてもらうために恩赦を手に入れようとする。
つまり、この闘技場に一歩でも足を踏み入れたならば、勝利しか無事に出ることができないのである。
「さて、それじゃあとっとと始めようぜ。そこの剣闘士とかいうやつ、まずはこの俺が相手だ」
一番最後に入場した、紋章付きフルプレートに身を包んだ青年が、剣を引き抜いて剣闘士に向かって身構える。
「威勢がいいな。名は?」
「グリナカープ王国、シュタインベルク公爵家が三男、アルフレッド・シュタインベルクだ。この名前を聞いた以上、俺に手を出したらどうなるか分かっているだろうな」
ニヤニヤと笑いつつ、剣を構えることなく右手でブラブラと振り回すと、アルフレッドが一人の剣闘士の前に歩み寄る。
「いいな、俺には手を出すな。そのうえで、ここにいる奴らすべてを殺せ。そしてそのあとで構わないから、降参するんだ。そうすれば、お前たちの刑を減刑するように、この国の公爵家に手紙を書いてやるからな……」
そう呟くアルフレッド。
さすがにこの一言は他の参加者の怒りを買うこととなったのだが、そんな外野の言葉など気にもせず、一人の剣闘士がアルフレッドの前に指を一本差し出した。
「ん、金か? 減刑以外にも金を寄越せってか?」
「俺たちの仕事は、ここにくる参加者たちを叩き潰すこと。一人叩き潰せば小金貨袋ひとつ。身分が高い奴を叩き潰せば、大金貨袋ひとつだ」
「俺は、一日ここで勝ち残ったら一年の刑期が免除される」
「そうかそうか。それよりも破格な条件だろ?」
「「だが」」
――ドッゴォォォォォッ
剣闘士の持つ巨大なハンマーがアルフレッドの腰に向かって叩き込まれ、もう一人の大剣がアルフレッドの左肩を真っ二つに切断した。
「戦うことこそが剣闘士の仕事。それを汚した貴様には、ここで死んでもらうしかない」
「待て待て、再起不能にするのが仕事だからな。心配するな、高位治癒師が待機しているから、命は助かる」
――グラッ
言葉を発する力もなくん、一瞬で意識まで刈り取られたアルフレッドはその場に崩れ落ちる。
そしてそんな不遜な輩などいなかったかのように、剣闘士たちはクリムゾンたちに向かって武器を構える。
「さあ、予選の開始だ」
「最後まで俺たちを楽しませてくれよな」
ニイッと笑った剣闘士たちは、まだ戦う心構えがとれていない参加者に向かって、狂気を孕んだ暴力をたたきつけ始めた。
そんな中で、クリムゾンとミコトだけが、すぐに臨戦態勢をとって剣闘士たちと切り結び始めることとなったのだが……。
………
……
…
――1時間後・闘技場
ズタボロになった参加者たち。
アルフレッドとは違い手加減されていたために瀕死の重傷とまではいかなかったものの、この日の再戦は不可能なまでにダメージを受けている。
武器を破壊されたもの、手足が折られたもの、鎧が砕かれたもの。
みな意識を保っているのがやっとであり、明日また再戦できるかどうかなどわからない。
「ふむ。よい準備運動じゃったな」
「あ、あんた化け物なの……爆槌のロビンズと剛剣のサーパス、この闘技場のトップツーを相手に、どうして無傷なのよ」
地面に大の字になって息をしているミコトが、傍らで再起不能に近い参加者たちを見ているクリムゾンに問いかけている。
ミコトもがんばった、かなりいいところまでいったのだが最後にサーパスと相打ちになった。
ロビンズとサーパスの先制攻撃でクリムゾンとミコト以外の参加者は吹き飛ばされ、そこから乱戦状態になったのだが、一人、また一人と剣闘士たちの攻撃の前に崩れていく。
そなんんな中でもクリムゾンとミコトは攻撃の手を緩めることがなかったのだが、途中から剣闘士の二人はクリムゾンとミコト以外を集中的に攻撃。
邪魔が入らなくなった時点で、ミコトとサーパス、そしてクリムゾンとロビンズの一騎打ちが始まったのである。
そして最後まで勝ち残ったのがクリムゾンのみ、倒れてしまったもののサーパスを倒せたということでミコトも勝者と判断され、この日、久しぶりに一般参加枠での合格者が二人同時に現れたという。
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