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第4章・北方諸国漫遊と、契約の精霊と
第164話・自分だけなら楽勝ですけどね
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ヤジーマ連邦王国へ向かう冬の街道。
急ぐ旅ではないからと、のんびりと走っていたのはいいのですけれど、突然、超隊商が停止しました。
そして何やら、先頭方面が騒がしくなったので確認に向かいますと、フォートレスタートルが街道を塞いで座り込んでいましたが。
これは作戦会議を必要としますね。
「ねぇクリスっち、エセリアル馬車の認識阻害効果を使えば、前に並んでいる馬車もフォートレスタートルもすり抜けていけると思うし」
「確かに可能ではありますけれど。ここでその方法を使って先に進んだ場合、この超隊商とヤジーマ連邦王国で鉢合わせになったらどう誤魔化せば良いのやら。この場所から突然姿を消して、そしていきなり前乗りしているなんて胡散臭いことかの上ありませんよ?」
そう話していますと。
「クリスティナさま。残念なことに、エセリアル馬車の認識阻害効果は、フォートレスタートルには効果を発揮しません」
「……えええ!!」
「ノワっち、それはなしてだし?」
「それは、フォートレスタートルは精霊と対極に位置する【四神獣】という神の眷属のこれまた眷属に当たります。ちなみにですが、スノージェネラルの亜種にも、そのようなものがいます。それゆえに、彼ら四神獣の眷属は【看破の瞳】という隠されたものを認識する効果を持っているのです」
認識阻害と、看破の瞳。
これはまいりました、お手上げです。
エセリアル馬車で思いっきり迂回していくのが一番良いのですけど、やはり後々に疑われるのは避けたいところです。
「……これは参りましたね」
「何か対策があれば良いのだけど……う~ん、キルティングで移動させようかなって思ったけど、四神獣ってのに効果があるか自信がないし」
「そうなのですか?」
「あーしの魔法って、人間や動物には効果はあるけど、精霊とか神の眷属とかには効果をレジストされる可能性が高いし」
「そもそも、フォートレスタートルは魔法抵抗が高いですから」
はい、詰んだ、詰みましたよー。
武田さんの言うところの『マジ詰んだ』ですよ。
今は確か、救いようのない絶望……でしたよね。
──コンコン
そんなことを話し合っていますと、馬車の扉がノックされました。
認識阻害をカットしていますから、誰にでも見えるのですよ。
「はい、どなたでしょうか?」
窓から顔を半分だけ出して問いかけます。
すると、窓の外には二人の冒険者の方が立っています。
「超隊商の護衛を務めているクラン『暁の双剣』のジミィ・ベンダーだ。依頼主から、フォートレスタートルの討伐が可能な冒険者がいないかどうか確認してほしい時頼まれた」
「同じく、『暁の双剣』のアリサ・トルストールです。もしもフォートレスタートル討伐経験者の方がいらっしゃいましたら、お知恵を貸していただきたいのです」
両腰に腱を下げている男女の冒険者さん。
どちらも歴戦の戦士のような風格を感じさせてくれます。
「ええっと、フェイール商店責任者のクリスティナ・フェイールです。うちの馬車は女性のみなので、そんなにお力になることはできません」
「そうでしたか。ちなみに護衛の方は?」
「護衛兼従業員でして……」
私の直感。
ノワールさんがドラゴンに姿を戻したら、全て解決しそうなのですけれど。
それはそれで、か~な~り、問題が発生します。
伝説のクイーン・オブ・ノワールの降臨だなんて、洒落にもなりませんしそのあとの騒動をどう収めようか頭が痛くなるじゃないですか。
「そうでしたか。いえ、ご協力有難うございます」
「それでは良い旅を」
頭を下げてから、二人はさらに後ろの馬車へと向かいました。
「はぁ。フォートレスタートルの討伐だなんて、物騒すぎますわね」
「そもそも、なんでこんな街道のど真ん中で道を塞いでいるのか、話を聞きたいところだし」
「流石に私のスキルでは無理ですよ? 勇者言語は理解できますけれどモンスター言語なんて覚えていませんからね?」
「にしし。それくらいは理解しているし」
ん?
でも、話を聞いてみると言うのはありかも知れませんよね?
「ノワールさん、フォートレスタートルとか四神獣の眷属は、精霊と意思を通わせることはできますか?」
「え、ええ? ちょっとお待ちください、そのような事例があったか確認してみますので」
直接の会話が不可能なら、間接的に言葉や意思を交わすことができれば良いのです。
そうすれば、どうしてこのような場所でフォートレスタートルさんが立ち往生しているのか理解できるかもしれません。
「……あ、あります。四神獣でフォートレスタートルが属するものは亀に属するものは水の属性であるとか。つまり水の精霊を介することで、意思の疎通は可能かも知れません」
「水!! え、この冬の森の中の街道で水?」
「雪は氷属性だから、どうにかできないし?」
あの、それってつまり、今からスノージェネラルと契約しなさいっていう事になりませんか?
確かにここは雪降る街道、呼べば来てくれるかも知れませんよ?
でも、その前に直接の対話を要求します。
光と闇の精霊だって、ギリギリなんとかできたレベルなのに、次が雪精霊だなんて無茶にも程があります。
「はぁ、では、一度、話をしてみようかと思います。光の精霊経由、雪の小精霊からのフォートレスタートルさん、途中で意思疎通を二つほど挟みますが、なんとかなるかも知れません」
「また、無茶なこと考えるし」
「ですよね~」
分かってはいますよ。
ええ、でもやらないよりはやった方がいいですよね。
では、交渉に向かうことにしましょう。
急ぐ旅ではないからと、のんびりと走っていたのはいいのですけれど、突然、超隊商が停止しました。
そして何やら、先頭方面が騒がしくなったので確認に向かいますと、フォートレスタートルが街道を塞いで座り込んでいましたが。
これは作戦会議を必要としますね。
「ねぇクリスっち、エセリアル馬車の認識阻害効果を使えば、前に並んでいる馬車もフォートレスタートルもすり抜けていけると思うし」
「確かに可能ではありますけれど。ここでその方法を使って先に進んだ場合、この超隊商とヤジーマ連邦王国で鉢合わせになったらどう誤魔化せば良いのやら。この場所から突然姿を消して、そしていきなり前乗りしているなんて胡散臭いことかの上ありませんよ?」
そう話していますと。
「クリスティナさま。残念なことに、エセリアル馬車の認識阻害効果は、フォートレスタートルには効果を発揮しません」
「……えええ!!」
「ノワっち、それはなしてだし?」
「それは、フォートレスタートルは精霊と対極に位置する【四神獣】という神の眷属のこれまた眷属に当たります。ちなみにですが、スノージェネラルの亜種にも、そのようなものがいます。それゆえに、彼ら四神獣の眷属は【看破の瞳】という隠されたものを認識する効果を持っているのです」
認識阻害と、看破の瞳。
これはまいりました、お手上げです。
エセリアル馬車で思いっきり迂回していくのが一番良いのですけど、やはり後々に疑われるのは避けたいところです。
「……これは参りましたね」
「何か対策があれば良いのだけど……う~ん、キルティングで移動させようかなって思ったけど、四神獣ってのに効果があるか自信がないし」
「そうなのですか?」
「あーしの魔法って、人間や動物には効果はあるけど、精霊とか神の眷属とかには効果をレジストされる可能性が高いし」
「そもそも、フォートレスタートルは魔法抵抗が高いですから」
はい、詰んだ、詰みましたよー。
武田さんの言うところの『マジ詰んだ』ですよ。
今は確か、救いようのない絶望……でしたよね。
──コンコン
そんなことを話し合っていますと、馬車の扉がノックされました。
認識阻害をカットしていますから、誰にでも見えるのですよ。
「はい、どなたでしょうか?」
窓から顔を半分だけ出して問いかけます。
すると、窓の外には二人の冒険者の方が立っています。
「超隊商の護衛を務めているクラン『暁の双剣』のジミィ・ベンダーだ。依頼主から、フォートレスタートルの討伐が可能な冒険者がいないかどうか確認してほしい時頼まれた」
「同じく、『暁の双剣』のアリサ・トルストールです。もしもフォートレスタートル討伐経験者の方がいらっしゃいましたら、お知恵を貸していただきたいのです」
両腰に腱を下げている男女の冒険者さん。
どちらも歴戦の戦士のような風格を感じさせてくれます。
「ええっと、フェイール商店責任者のクリスティナ・フェイールです。うちの馬車は女性のみなので、そんなにお力になることはできません」
「そうでしたか。ちなみに護衛の方は?」
「護衛兼従業員でして……」
私の直感。
ノワールさんがドラゴンに姿を戻したら、全て解決しそうなのですけれど。
それはそれで、か~な~り、問題が発生します。
伝説のクイーン・オブ・ノワールの降臨だなんて、洒落にもなりませんしそのあとの騒動をどう収めようか頭が痛くなるじゃないですか。
「そうでしたか。いえ、ご協力有難うございます」
「それでは良い旅を」
頭を下げてから、二人はさらに後ろの馬車へと向かいました。
「はぁ。フォートレスタートルの討伐だなんて、物騒すぎますわね」
「そもそも、なんでこんな街道のど真ん中で道を塞いでいるのか、話を聞きたいところだし」
「流石に私のスキルでは無理ですよ? 勇者言語は理解できますけれどモンスター言語なんて覚えていませんからね?」
「にしし。それくらいは理解しているし」
ん?
でも、話を聞いてみると言うのはありかも知れませんよね?
「ノワールさん、フォートレスタートルとか四神獣の眷属は、精霊と意思を通わせることはできますか?」
「え、ええ? ちょっとお待ちください、そのような事例があったか確認してみますので」
直接の会話が不可能なら、間接的に言葉や意思を交わすことができれば良いのです。
そうすれば、どうしてこのような場所でフォートレスタートルさんが立ち往生しているのか理解できるかもしれません。
「……あ、あります。四神獣でフォートレスタートルが属するものは亀に属するものは水の属性であるとか。つまり水の精霊を介することで、意思の疎通は可能かも知れません」
「水!! え、この冬の森の中の街道で水?」
「雪は氷属性だから、どうにかできないし?」
あの、それってつまり、今からスノージェネラルと契約しなさいっていう事になりませんか?
確かにここは雪降る街道、呼べば来てくれるかも知れませんよ?
でも、その前に直接の対話を要求します。
光と闇の精霊だって、ギリギリなんとかできたレベルなのに、次が雪精霊だなんて無茶にも程があります。
「はぁ、では、一度、話をしてみようかと思います。光の精霊経由、雪の小精霊からのフォートレスタートルさん、途中で意思疎通を二つほど挟みますが、なんとかなるかも知れません」
「また、無茶なこと考えるし」
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ええ、でもやらないよりはやった方がいいですよね。
では、交渉に向かうことにしましょう。
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