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第4章・北方諸国漫遊と、契約の精霊と

第149話・あれ、またやらかしたかも知れませんよ?

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 朝一番の配達で届けられたサングラス。

 次は鑑定眼を用いて、ランダムに付与された効果を確認する作業です。
 これは私一人では時間がかかり過ぎますので、ノワールさんと柚月さんにもお手伝いをお願いします。
 なお、私の知らない魔法付与がある可能性が高く、それらの検証も大魔導師である柚月さんに見てもらうことにしました。

「ふーん。これはA、こっちもA、これはC……」

 サングラスを一つずつ手に取ってから、柚月さんがテキパキと分別を開始しましたが。その分別の意味を知りません。

「柚月さん、この仕分けはどのような意味が?」
「んと、こっちは三つ付与されているからA等級魔導具、こっちは二つなのでB等級。それで、これがよくある一つだけ付与されている量産品。まずは数の確認をしているから、クリスっちはC等級の鑑定を、ノワっちはB等級をお願いするし」
「かしこまりました、では早速始めます。クリスティナ様のわからないものがありましたら、いつでも尋ねてください」

 にっこりと微笑む美女のノワールさん。
 この笑顔にやられる人も多そうですよね。

「では、始めましょう」

 このサングラスは鑑定アプレイズ、こっちは魅力値上昇? 魅力値ってなんですか? これは透過? あ、つけると壁とかを探してみることができるのですね。はい、これは封印。
 これがランニング……足が速くなると、どうしてサングラスなのに足が速くなるのでしょう? こっちは千里眼で遠くのものがよく見える、うん、高性能。

 ちゃっちゃとチェックを重ねていきますが、目的のものは出て来ません。
 そして気がつくと柚月さんも分別を終えて、三つ付与の方から順に鑑定を始めています。

「おや? 柚月さん、この『魔力効果遮断』というのは?」
「それは、目から発動するタイプの魔法を遮断するやつで、意味ないハズレだし」
「これは石化の魔眼には使えないのですか?」
「ん~と。石化の魔眼は魔法じゃないので、『邪眼効果遮断』じゃないと無理かな? でも、同じような魔法体質の人には効果はあるかも知れないし」

 ふむふむ。
 これはメモです。
 そして私も負けじと、引き続き鑑定を続行。

 サンレーザー? あ、サングラスから光魔法が出るのですか。
 視力回復? おや、これはまた便利なものが。
 サイズ自動修正はまあ、いつも通りのお約束で。
 異性魅了? はい封印です。
 調べた限りでは、おおよそのものに『サイズ自動修正』が付与されていたこと、複数効果のあるものにも『サイズ自動修正』と何かが付与されていることが判明しました。

 なお、目的のものは。

「あったぁぁぁぁぁぁ!! これだし、これが『邪眼効果遮断』の付与されているサングラスだし。これがあれば、メデュっちの石化の魔眼を止めることができるし」
「やりました、おめでとうございます」
「私の方には一つもありませんでしたから、柚月さんの鑑定にかけていましたわ。クリスティナさま、これでようやく勇者の秘宝が手に入りますわ」
「……ただ、ちょっと面倒くさいことにもなりそうだし」
「そうなのですか?」

 ポリポリと頬を掻きながら、柚月さんが呟いています。
 残り二つの効果、それが非常に面倒くさいそうで。

「残りの二つのうち、一つは『進化』で、もう一つが『変身』だし」
「進化? それはなんですか?」
「あーしにも読めないから、かなり上位の付与効果だし。それと変身は、その姿を望む何かに変化させることができて、サングラスを外すと効果が消えるし」
「……んんん? 使い所が悪いというよりは、難しいということですね」

 試しに私も鑑定させてもらいましたが、進化についてはやはり『鑑定不可能』という表示が出ています。
 さて。
 こうなると試すしか方法はありませんし。
 そう考えていますと、ノワールさんがそのサングラスを手に取り、素早く装着しました。

「ひゃぁぁぁぁ、の、ノワールさん、大丈夫なのですか?」
「鑑定結果でも、呪いとかは感じられていませんでしたので。それに、進化についてはある程度の予測ができましたから」

 そう説明をしつつ、ノワールさんがサングラスの横を指で押さえ、クイッて少し持ち上げます。
 心なしか、できる女性っていう感じに見えたのは気のせいでしょうか。

「……はい、理解しましたわ。この進化条件は、幻獣種および獣人をその上位種に進化させる効果があります。人間には効果はないのですが、エルフはハイエルフに一段昇華をするやつですね。メデューサという方にはあまり効果はないものと思われます」
「それなら問題はないし」
「ええ。それに、進化に必要な条件を満たしていないものには、何も効果は発揮されませんし、使い方さえわからないかと思われますので」

 これで条件はクリアしましたよ。
 では、残りのサングラスは仕舞っておくことに……あの、なんで柚月さんとノワールさんはワクワクしているのですか?

「クリスティナさま。私、この千里眼のサングラスを購入したく」
「あーしは、魅力値上昇!!」
「はいはい。お手伝いしていただきましたから、その二つは私からの贈り物ということで、どうぞ」

 喜びながらサングラスをつけて楽しんでいます。
 さて、それでは早速、里長の元へと向かうことにしましょう。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 里長の家へ向かい、頼まれたサングラスをアイテムボックスから取り出します。

「こちらが、メデューサさんの『石化の魔眼』を抑えることができるサングラスです。これをかけることで石化の魔眼は効果を失いますが、サングラスを通してしかし効果を発揮しませんので」

 説明をしながらサングラスを差し出しますと、里長のワカマッツさんが茫然としています。
 私、何かおかしいことを話したのでしょうか?

「ま、待ってください。昨日の今日で、どうしてこのようなものが用意できたのですか? まさかフェイールさんは魔導具を作ることができる錬金術師であったりとか?」
「それこそまさかです。私は商人です。昨日のお話を伺い、アイテムボックスの中にそのような商品がなかったから確認していたのです。この『邪眼効果遮断』のサングラスは大変貴重なものでして、私どももこれひとつしか持ち合わせがありません。また、同じようなものが入手できるかどうかと問われましても、わからないとしか言えないのです」

 その説明を聞きつつ、ワカマッツさんはサングラスを手に取って確認しています。

「わかりました。魔力を感じますので魔導具であることは確かなようです。後ほどタカッツという里の商人にも鑑定してもらい、あなたの説明が本当ならばお約束通りに『勇者の秘宝』をお渡しします」
「ありがとうございます」

 これで取引は成立。
 すぐにタカッツさんがやって来てアイテム鑑定を行なってくれましたが、どうやら『進化』と『変身』については見えなかったそうで。
 でも、『邪眼効果遮断』は確認してくれたようですので、私は里長とガッチリと握手をしました。

「では、勇者の秘宝をお渡ししましょう。それは勇者の祠の奥にありますので、私が取って来ます」
「あの~、その祠って、勇者のあーしにも同行させて欲しいし。すっごく気になって夜しか眠れないし」
「夜眠れるのなら宜しいのでは?」
「昼寝もしたいし」

 突然の柚月さんの申し出に、ワカマッツさんも腕を組んで考えていますが。
 すぐに柚月さんが、ギルドカードのようなものを取り出して提示しました。

「ハーバリオス王国所属、国家認定勇者パーティの大魔導師・柚月だし。冒険者ランクはSSだし」

 その一言で、ワカマッツさんは頷きます。

「確かに確認しました。王家の紋章と魔力印に間違いはございません。そもそも勇者の祠は、初代大賢者カナン・アーレストさまが齎したもの。現勇者の一人である柚月さまの願いを断ることはできません」
「それなら、クリスっちとノワっちも一緒に行けるし。クリスっちはカナン・アーレストの末裔、ノワっちはエセリアルナイトだし」

──ゲッ、ガーン!!
 この真実にワカマッツさんは驚愕。
 ちなみに柚月さん、今、それ話すタイミングですか?

「畏まりました。では、お言葉に従いましょう」
「にしし。入るだけで何も取らないし。それに、あーしには祠の向こうが何か、予想はついたし」
「そうなのですか!!」

 まさかの柚月さんの言葉に、今度は私たちが動揺しています。
 そして私たちはワカマッツさんの案内で、いよいよ勇者の祠のある小屋へと向かいました。
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