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第4章・北方諸国漫遊と、契約の精霊と
第144話・敵は悪の商業ギルド!
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チャーリィ王子の生誕祭。
そこで王子への貢物をということで、勇者の秘宝を探して欲しいと頼まれたまではよかったのです。
クリムゾンさんが主導で話を進めていましたのに、なぜかクリムゾンさんが休息モードへ突入。
あの、一番事情に詳しい貴方がいないと、話しが進まないのですからだと思っていましたら、実は柚月さんが事情通であったことが発覚。
そのまま商業ギルド『ナンバ屋』へと向かいますと、すぐにギルドマスターであるフローレンス・ルナパークさんの待つ応接室へと案内されて、今、まさにここなのです!
「おお、フェイールさん、ようやく来てくれましたか……」
安堵感満載の表情で、ルナパークさんが私の手を取って、ブンブンと振っています。
「あの、まずは説明をお願いします。先ほども受付の方が叫んでいたもので……ギルド解体の危機とか叫んでましたけれど、なにがあったのですか?」
「そ、そうですね、まずは順番に話を始めましょうか」
そう告げてから、ルナパークさんは自分の机に戻って席に着くと、これまでの経緯を説明してくれました。
「今回のチャーリィ王子の生誕祭での献上品の件で、ナンバ屋とサイバシ屋が貴族院に呼び出されてね。貢物が重なると問題があるから、双方の意見を先に聞いておきたいということだったのだが、そこでサイバシ屋が早まった真似をしでかしてくれたのです」
「早まった?」
「ええ。今となっては、私たちナンバ屋が罠に掛けられたとしか思えません。お互いの話が漏れないように別室で説明をした後、貴族院からは通達がありました。今回の献上品を届け、チャーリィ王子が気に入った商品をもたらした商業ギルドに『中継都市カンクー』の商業権を与えるという話だったのですが、それが白紙になりました」
白紙?
それでは双方が権利を得るということですか?
「なるほど。そこで、選ばれなかった商業ギルドは解体され、今後は一つの商業ギルドで国全体の商業を担うということになったのですか?」
ノワールさんの問いかけに、ルナパークさんが頷きます。
「ええ、そちらの方の言うとおり。そもそも一つの国家の中に、派閥の違う商業ギルドが二つあっては困るというのが貴族院の意見。それを国王が認可し、商業ギルドの統括責任者でもあるチャーリィ王子にどちらかを解体・吸収するように命じられたそうです」
「そんな一方的な!!」
「ええ、話し合いもなにもなく、ここまで話が進められているなんて私たちも予想していません。おそらくは、貴族院の中にサイバシ屋と繋がりのある貴族がいて、話を極秘裏に進めていたのでしょう」
その説明ののち、ノワールさんと柚月さんが考え込んでいます。
ここまでの話で問題なのは、サイバシ屋さんが勝った場合。
にもかかわらず、どうして解体するのがこちらのような雰囲気になっているのでしょうか。
「サイバシ屋は、なにを用意したし? あーしが考えるに、すでにサイバシ屋は何か王子の気に入りそうなものを用意してあり、それを噂で流してこちらのやる気を削いでいるとしか考えられられないし」
「柚月さんのおっしゃる通り。そして用意できたものは勇者ゆかりの物品……」
「ふむふむ、そのようなものをどこから手に入れたのか」
謎は深まります。
「確か、チャーリィ王子が欲していたものは『勇者の秘宝』ですよね? それをサイバシ屋さんが手に入れたと言うのですか?」
そう問いかけましたが、ルナパークさんは頭を左右に振ります。
つまり、それ以上のもので、勇者ゆかりのものが手に入ったと。
「サイバシ屋が用意したものは『聖剣』です。貴族院の鑑定士が鑑定眼で確認したから、間違いはありません。元の所有者は『タクマ・ヨシザワ』、あの滅びしヴェルディーナ王国に召喚された、今は亡き勇者です。彼が齎した聖剣が、流れ流れてサイバシ屋へと辿り着いたそうです」
勇者のタクマ・ヨシザワ?
聞いたことありますよ。
「その勇者は、今はどこに?」
「噂では、ヴェルディーナ王国を滅ぼした魔族を追って南下し、その最中に命を落としたとか。聖剣はその際に死を見届けたものが受け取り、大切に保管していたそうです」
「……そうでしたか、パルフェノンで出会ったあとで亡くなって……あれ? でもタクマさんは聖剣を売り飛ばしたって話していましたよ?」
「え、パルフェノンで会った? 聖剣を売り飛ばした?」
どうやら話の齟齬が発生しています。
「はい。実は私たちは、パルフェノンで勇者タクマとその一行に会ったことがありまして。その際に、聖剣は売り飛ばしたって本人から直接伺っていますけど?」
「では、その売り飛ばした聖剣をサイバシ屋が入手し、それを献上すると言うことでしたか。いずれにしても、本物の聖剣を納められてしまいますと、私どもナニワ屋では太刀打ち出来ません。そこでフェイールさんが早く戻ってきてくれるように祈っていました」
「なるほど、話の流れや事情は理解しました。ですが残り五日で勇者の秘宝を用意できるかどうかは、それこそ神のみぞ知る。私たちもできる限りの努力は惜しみませんので」
「よろしくお願いします」
立ち上がって深々と頭を下げるルナパークさん。
こうなったら、勇者の秘宝をどうにかして入手しなくてなりません。
それでは時間も足りませんので、まずは商業ギルドをあとにしてエセリアル馬車でロッコウ山脈麓のチクペン大深林へと向かうことにしましょう。
次の商談相手はハイエルフ、彼女たちが保有している勇者の秘宝を手に入れるためには、こちらとしても手間暇予算の限度額は考えませんよ!!
そこで王子への貢物をということで、勇者の秘宝を探して欲しいと頼まれたまではよかったのです。
クリムゾンさんが主導で話を進めていましたのに、なぜかクリムゾンさんが休息モードへ突入。
あの、一番事情に詳しい貴方がいないと、話しが進まないのですからだと思っていましたら、実は柚月さんが事情通であったことが発覚。
そのまま商業ギルド『ナンバ屋』へと向かいますと、すぐにギルドマスターであるフローレンス・ルナパークさんの待つ応接室へと案内されて、今、まさにここなのです!
「おお、フェイールさん、ようやく来てくれましたか……」
安堵感満載の表情で、ルナパークさんが私の手を取って、ブンブンと振っています。
「あの、まずは説明をお願いします。先ほども受付の方が叫んでいたもので……ギルド解体の危機とか叫んでましたけれど、なにがあったのですか?」
「そ、そうですね、まずは順番に話を始めましょうか」
そう告げてから、ルナパークさんは自分の机に戻って席に着くと、これまでの経緯を説明してくれました。
「今回のチャーリィ王子の生誕祭での献上品の件で、ナンバ屋とサイバシ屋が貴族院に呼び出されてね。貢物が重なると問題があるから、双方の意見を先に聞いておきたいということだったのだが、そこでサイバシ屋が早まった真似をしでかしてくれたのです」
「早まった?」
「ええ。今となっては、私たちナンバ屋が罠に掛けられたとしか思えません。お互いの話が漏れないように別室で説明をした後、貴族院からは通達がありました。今回の献上品を届け、チャーリィ王子が気に入った商品をもたらした商業ギルドに『中継都市カンクー』の商業権を与えるという話だったのですが、それが白紙になりました」
白紙?
それでは双方が権利を得るということですか?
「なるほど。そこで、選ばれなかった商業ギルドは解体され、今後は一つの商業ギルドで国全体の商業を担うということになったのですか?」
ノワールさんの問いかけに、ルナパークさんが頷きます。
「ええ、そちらの方の言うとおり。そもそも一つの国家の中に、派閥の違う商業ギルドが二つあっては困るというのが貴族院の意見。それを国王が認可し、商業ギルドの統括責任者でもあるチャーリィ王子にどちらかを解体・吸収するように命じられたそうです」
「そんな一方的な!!」
「ええ、話し合いもなにもなく、ここまで話が進められているなんて私たちも予想していません。おそらくは、貴族院の中にサイバシ屋と繋がりのある貴族がいて、話を極秘裏に進めていたのでしょう」
その説明ののち、ノワールさんと柚月さんが考え込んでいます。
ここまでの話で問題なのは、サイバシ屋さんが勝った場合。
にもかかわらず、どうして解体するのがこちらのような雰囲気になっているのでしょうか。
「サイバシ屋は、なにを用意したし? あーしが考えるに、すでにサイバシ屋は何か王子の気に入りそうなものを用意してあり、それを噂で流してこちらのやる気を削いでいるとしか考えられられないし」
「柚月さんのおっしゃる通り。そして用意できたものは勇者ゆかりの物品……」
「ふむふむ、そのようなものをどこから手に入れたのか」
謎は深まります。
「確か、チャーリィ王子が欲していたものは『勇者の秘宝』ですよね? それをサイバシ屋さんが手に入れたと言うのですか?」
そう問いかけましたが、ルナパークさんは頭を左右に振ります。
つまり、それ以上のもので、勇者ゆかりのものが手に入ったと。
「サイバシ屋が用意したものは『聖剣』です。貴族院の鑑定士が鑑定眼で確認したから、間違いはありません。元の所有者は『タクマ・ヨシザワ』、あの滅びしヴェルディーナ王国に召喚された、今は亡き勇者です。彼が齎した聖剣が、流れ流れてサイバシ屋へと辿り着いたそうです」
勇者のタクマ・ヨシザワ?
聞いたことありますよ。
「その勇者は、今はどこに?」
「噂では、ヴェルディーナ王国を滅ぼした魔族を追って南下し、その最中に命を落としたとか。聖剣はその際に死を見届けたものが受け取り、大切に保管していたそうです」
「……そうでしたか、パルフェノンで出会ったあとで亡くなって……あれ? でもタクマさんは聖剣を売り飛ばしたって話していましたよ?」
「え、パルフェノンで会った? 聖剣を売り飛ばした?」
どうやら話の齟齬が発生しています。
「はい。実は私たちは、パルフェノンで勇者タクマとその一行に会ったことがありまして。その際に、聖剣は売り飛ばしたって本人から直接伺っていますけど?」
「では、その売り飛ばした聖剣をサイバシ屋が入手し、それを献上すると言うことでしたか。いずれにしても、本物の聖剣を納められてしまいますと、私どもナニワ屋では太刀打ち出来ません。そこでフェイールさんが早く戻ってきてくれるように祈っていました」
「なるほど、話の流れや事情は理解しました。ですが残り五日で勇者の秘宝を用意できるかどうかは、それこそ神のみぞ知る。私たちもできる限りの努力は惜しみませんので」
「よろしくお願いします」
立ち上がって深々と頭を下げるルナパークさん。
こうなったら、勇者の秘宝をどうにかして入手しなくてなりません。
それでは時間も足りませんので、まずは商業ギルドをあとにしてエセリアル馬車でロッコウ山脈麓のチクペン大深林へと向かうことにしましょう。
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