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第3章・神と精霊と、契約者と

第108話・型録通販は誤魔化しましたけど、神様のお供えとは?

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 柚月さんの失言による紀伊國屋さんの突っ込み。

 そして私の必死の誤魔化しと、紀伊國屋さんの口から出た『オンラインショップ』なる加護の存在。
 それは私も知らない加護なのですけれど。

「あの、紀伊國屋さん、その【オンラインショップ】なる加護は、どのようなものなのですか?」
「簡単に説明しますね。私たちの世界では、インターネットという世界を通じて、遠くのものなどを購入したり取り寄せたりすることができます。それを行なっているサイト、つまり場所が【オンラインショップ】というところで、仮想空間の商会みたいな感じなのですよ」

 ふむふむ。
 これは参考になるかもしれませんね。、

「それでですね。異世界に転移してくる人々の物語が、向こうの世界では流行っていまして。その中にある神の加護の一つが、【オンラインショップ】というものなのですよ。まあ、簡単に言いますと、私たちの世界の商品を購入する事ができるものでして、それを使ってさまざまな商品を取り扱う事ができるのです」 「それはすごく楽しそうですね!!」

 思わず前のめりになりそうになりました。
 まさか、【型録通販のシャーリィ】のような加護が存在しているとは、予想外どころか驚きですよ。

「ええ。大抵は香辛料などを購入したり塩、食料品、調味料などを買い込んで転売し利益を上げたりしていますね。まあ、色々と便利なものなのですが、フェイールさんの加護は違うのですか?」
「いえいえ、そんな面白い加護がありましたら、もっと早くに使っていますよ。私の加護は【精霊の加護】ですし、シャーリィさまとアゲ=イナリさま、そしてメルセデスさまの加護を受けているだけですから」

 そう説明してから、パルフェノンで発行してもらった身分証を取り出して、紀伊國屋さんにも見せてあげました。するとそれを確認してかは、紀伊國屋そんはうんうんと頷いています。

「確かに。そうですよね、オンラインショップが使えるのでしたら、武田くんのスマホのバッテリーも購入しているはずですし、海外のショップと繋がっているのなら緒方さんの銃器も購入できたかもしれませんからね」
「いまだに銃器についてはよくわかっていませんけれど。まあ、そんな感じです」
「いえいえ、参考になりましたよ。それでは、あのリバイアス教会が話を持ってくる事があるかもしれませんが、そこはうまくかわしてくださいね。海神リバイアスは戦神でもありますから、無理難題を押し付けてくることもあるかよしれませんから」

 流石に、冒険者でないものに戦闘を押し付けるようなことはないでしょう。
 そう考えていますと、先ほど三人を外に連れ出した司祭長がやってきました。

「先ほどは、リバイアス教会所属クランのものがご迷惑をおかけしました」

 深々と私たちに頭を下げますので.こちらも立ち上がってしまいます。

「いえ、すでに謝罪は受け取りましたし、事情は紀伊國屋さんから伺いました。ですから、この話はこれで終わりということで」
「ありがとうございます。彼女たちも悪気があって行なったわけではなく、自分たちの実力を認めてくれないと功を焦っただけ。その結果、そちらの方に無理強いをしてしまったようですし、教会の権威を振りかざすなどあってはならぬことだと説きましたので」

 真剣に謝罪をされたので、この件は終わりです。
 それに、冒険者ギルドに討伐依頼を出しているので、私たちのところに話が来ることはありません。

「それでですね、実はフェイール商店にお願いがあって参りました」
「あれ?」

 紀伊國屋さん、話は着いたはずですよね?

「あの、私共は商人です、討伐依頼など受けることはできませんし、冒険者ギルドに登録する気もありませんが」
「いえいえ、お願いしたいのは、海神リバイアスさまへのお供えについてです。例年、リバイアスさまへのお供えは新鮮な魚介類及び麦穂とワイン樽と決まっているのですが、今年は神託がありまして……」
「神託、ですか?」
「はい。信託によりますと『我の知らない食べ物』『飲んだことのない酒』『見た目も綺麗な菓子』『フカフカの布団』だそうで……私共もあちこちの商人に話をし、少しずつ集めては教会の祭壇に捧げてみましたが、やはり海神様はどれも満足できないそうで」
 
 また、難易度の高いお供えを求める神様ですね。
 それに、フカフカの布団とは何でしょうか?
 ベッドに藁を敷き詰めてシーツで包んだものではなく、大きな袋状のものに羊毛を詰め込んだものでもなく?
 大抵の宿の布団は藁布団ですよね。
 私がアーレスト家にいたときも、グランドリ兄様やオストール兄さんの布団は羽毛遠ふんだんに使ったものが使われていましたけど、私は羊毛でした。
 でも、それも贅沢品であり、一般的には藁を詰め込んだ布団や羊毛を編んだ毛織物だそうです。

 それでもダメだったのでしょうか。
 それに、新鮮な海産物や麦穂、それもダメと言われましても。
 米はまだこれからですし、既に冬になりますから、新鮮な野菜となりますと数は限られます。だから麦穂であったり、海の神様故に海産物だったと思いますが。

「う~ん。この辺りの商人さんが持ち込んだものでも駄目なのですか?」
「はい。ひょっとしたらと思い、ミュラーゼンからやってきた商人の方にも問い合わせたのです。あの国も、海神リバイアスさまを祀っていますので。ですが、あちらの国では、ハーバリオスとは異なるお供えをしているそうなのですが、それは例年通りで構わないと……」

 つまり、このサライの教会にのみ、贅沢な神託が届けられたということですか。それはひょっとして、何か目的があるのではないでしょうか?
 例えば、もう欲しいものは決まっていて、それを探しなさいという試練なのかも知れません。
 なかなか難易度が高いです。

「そうですか……でも、私共はそれは珍しいものは扱っていませんし……」

──カラーンカラーン、カラーンカラーン
 そう話をしていますと、ブランシュさんがにっこりと手を振って消えていきます。そして入れ替わりにノワールさんが出てきますと、頭を抱えてため息をついています。

「はぁ、リバイアスが何を求めているのか。私にはわかりましたわ。それに、柚月さんと紀伊國屋さんも、予想はついているのでは?」

 その問いかけに、柚月さんは頷いていますし、紀伊國屋さんは少しだけ顔を背け、困ったように頷いています。何かあったのでしょうか?

「寧ろ、クリスっちがわからないことに驚いているし」
「おそらくは、ノワールさんの予想通りかと」
「え、へ?私には思いつきませんよ? ミュラーゼンでは今まで通りで、サライでは新しいもの、つまり、去年はなくて今年はあるもので、珍しくて他にはない……あの、まさかと思いますけど?」

 はい、予想がつきました。
 そしてそれは正解なのでしょう、皆さんが頷いています。

「海神リバイアスは、フェイール商店の取り扱っている異世界の商品を求めています」
「うわ……そうきましたか。でも、あまりにも該当するものが多すぎまして。そもそも、フカフカの布団なんてありませんよ?」
「あったし!!」
「え、ありましたか?」

 柚月さんは気が付いていたようですが、私は見逃していたようです。
 そもそも、私が興味なかったのかも知れませんし、もしくは高級すぎて商品にならないと外していたものかもしれません。

「なるほど……理解しました。ですが、明日まで返答は待ってもらえませんか? 本当に私たちの予想があっているのかわかりませんし、それを揃えられるかどうかもまだわかりませんので」
「畏まりました。では、私どもは教会へ戻りますので、良きお言葉が届けられるように、神に祈りつつお待ちしています」

 そう告げて頭を下げますと、司祭長は酒場をあとにしました。
 これは、予想外の展開になりましたよ、討伐以来ではなく、別の意味で海神さまを納得させないとなりませんので。
 そしてノワールさん、先程からため息を続けていますけれど、何かお困りでしたか。

「いえ。海神リバイアスって……まあ、私たち神竜族の眷属の一人なのですよ。ちなみに神竜は、竜族の最高位を表しまして亜神に位置します。それでリバイアスは青の竜、水竜の王であり……かーなーり我儘です。あまりに我儘すぎて世界が泣くレベルです」

 うわ、それはとんでもない神様ですこと。
 これは難易度が、さらに跳ね上がりましたよ。
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