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エルフさん、ぶっちゃける

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 自然公園で一晩過ごし、一夜明けるとテレビ局の中継車が来ていた。
 それならばと朝のニュース番組中継に乱入したけれど、途中で機動隊が電源車を止めてしまう。
 だが、ハンディタイプのカメラは回り続けていたので、そのまま放送は続いている。

 さあ、機動隊が突入してカメラを止めるのか。
 他の放送局もハンディカメラを回して中継しているので、機動隊が強権発動する瞬間を捉えることができるのか?


「はい、CM明けも引き続き、異世界からの来訪者であるアルカ・トラスさんに独占インタビューを行いますね。すでにboyaitterを通して、皆さんから質問は受け付けていますのでそちらから質問させてもらいましょう」

 ニコニコと笑うアナウンサーの横で、私は魔法の箒に横座りで浮いている。
 周りでは機動隊が突撃準備をしているし、彼らが本気になれば番組を止めることもできるだろう。
 そして、報道局の上層部に睨みを聞かせて、番組自体を止めることもできる。
 そのあとで動く可能性は十分にある。
 取り敢えず、もう少し情報が欲しいのでアナウンサーに右手を差し出す。

「え? 握手ですか?」
「そ。友達の証明ね?」


 そのまま軽く握手したとき、|深淵の書庫(アーカイブ)を通じてアナウンサーの記憶から、一般的な社会常識などを読み取る。
 これで、昨日|深淵の書庫(アーカイブ)で集めたものと摺り合わせて、この世界の普通の社会的知識は理解できた。


「はい、まず最初の質問です。異世界から来たと話していましたが、私たち地球の人々も異世界に行くことはできるのですか?」
「さぁ? 勇者召喚術式によって、異世界から特異な能力を持つ人を召喚したことはあるみたいよ。私の師匠がその術式の名人なのですけど、私もその術式を受け継いでいます」

 アルカの言葉に、またもお茶の間は騒然。
 ラノベやアニメでしか、異世界に旅立つことはできなかったのだが、それが現実になったのである。
 騒がしくならない方がおかしい。

「そ、それは、アルカさんが私たちを異世界に呼んでくれると言うことですか?」
「帰れたらね。帰り方もわからないから、こっちの世界に住むしかないのよ。でも、警察は私のことを密入国だの不法滞在だのって、話を聞いてくれないからね」
「では、戻ることができたらと言うことですね。次の質問ですが、アルカさんが異世界人、ハイエルフであることを証明できますか? これはどうでしょう」

 まあ、そう思うのも仕方がない。
 けれど、いざ証明しろと言われてもなかなか難しいものである。
 なので、右手の中に|魂の護符(ソウルプレート)を作り出した。

「それは?」
「これはね、私たちの世界の身分証明。魂から削り出した本人のみしか使えないカードよ。えーっと、あなたのお名前は?」
「私ですか? 高橋美知ですが」
「じゃあ、もう一度握手して」

 再度、高橋アナと握手すると、私は彼女の|魂の護符(ソウルプレート)を作り出す。
 
「はい、これがあなたの|魂の護符(ソウルプレート)よ。こう手にとって念じると、あなたの所持しているスキルが表示されるから」
「え? そうなのですか?」

 疑心暗鬼のまま、高橋アナは|魂の護符(ソウルプレート)を右手に持って念じる。
 すると、その表面にゆっくりと日本語が浮かびあがってくる。

「はわわわ、私の持っている資格がすべて表示されました、それに、私の知らないものも……え? これが私のスキルなのですか?」
「そうよ。あなたが知らないということは、そのスキルに対しての適性を持っているっていうことね。これで私たちは、冒険者や商人の適性を調べたりしますし、裏面には犯罪歴も出ますから殺人犯とか盗賊も捕まえたりできますよ」

 こっちの世界には、そういう身分証明はないものの、マイナンバーズという国が振り割ったナンバーがあるらしい。
 それで貯金や税金、健康保険の管理なども一括で行っている。
 ある意味、私たちの持っている|魂の護符(ソウルプレート)と似たようなものである。

「こ、これは無くさないようにしないと」
「あ、それって所有者の魂なので、念じて出し入れできますから」

──ヒュッ、スパッ、ヒュッ、スパッ
 テレビカメラに向かって、高橋アナが|魂の護符(ソウルプレート)を出し入れする。
 流石にスキルについては個人情報でもあるので、カメラに向かって表示しないものの、裏面には学歴まで出ていたらしい。

「こ、これ一つで異世界の技術であることが証明できますね?」
「まあね、それで、次の質問は?」
「はい。魔法が使えるようですが、ラノベによくあるインベントリとかアイテムBOXのようなものは使えますか? それと鑑定はできますか?」

 ふむふむ。
 そのラノベについて私個人としては色々と知りたいところではある。

「アイテムBOXというのは、あれよね? 異空間収納よね? これかな?」

──シュンッ
 一瞬で|空間収納(チェスト)から魔法の杖を引き出して構える。

「あ、あの、それは何処から?」
「えーっと、多分この辺りかな? 私の|空間収納(チェスト)は|第六聖典(レジェンド)の空間魔法なので、誰でもホイホイ使える訳ではないわよ」
「そうですか。では、鑑定というのは?」

 私の場合、|深淵の書庫(アーカイブ)端末から鑑定したい対象を見るだけで、簡単にそのものの真偽や価値、はては来歴まで見ることができる。
 これがスキルの鑑定ならば、せいぜい真偽と価値程度、それも物質のみで対人には使えない。

「例えば……そうね、何か鑑定して欲しいものはあるかしら?」
「では、この時計は?」

 高橋アナが自分の腕に着けている時計をアルカに手渡す。それを受け取り鑑定すると、アルカは云々と肯いている。

「こっちの世界のブランドは知らないわよ? これはゴルティアって言うメーカーの偽物ね……送り主はゴニョゴニョさんでしょ?」

 ゴニョゴニョの部分は、彼女に耳打ちする。
 すると真っ赤な顔になり、何やら怒っているようだ。

「そ、その名前はどうしてわかるのですか?」
「だから、わたしには来歴が分かるのよ。まあ、真偽については、そのゴニョニョさんと話し合って見てね?」
「ありがとうございます……と、それでは、次の質問に」

──ドゴゴゴゴゴッ
 高橋アナがそう告げた瞬間、機動隊がアルカたちに向かって突撃してくる。
 ディレクターもすぐに拘束され、近くの報道局も囲まれてしまっている。

「きゃぁぁぁあ」
「はい、そうくると思いましたよ‼︎」

 すぐさま高橋アナの手を掴んで箒に飛び乗ると、一気に急上昇する。

「えええ、なに、何があったのですか?」
「これ以上、わたしがテレビで話するとまずいって思った人がいるのでしょ? おあいにく様、その程度は予想済みよ」

──バシュゥゥゥゥゥ
 だが、眼下の機動隊がネットランチャーを構えてアルカたちを捕獲するために射出した。

「甘いわよ‼︎」

 アルカもその程度は予測済み、結界で捕まえられないのなら結界ごと捕まえる。あっちの世界でも良くあった戦術なので。

──パチィィィン
 飛んでくるネットに向かって指パッチンする。
 すると、突然ネットが燃え上がり、消し炭になって落ちていく。

「はぁ。いきなりクライマックス見たいね。さて、高橋さん、貴方はどうしますか? 望むならあの場におろしてあげても構いませんし、わたしの家に逃げても構いませんよ?」
「わ、わ、私は……アルカさんの家に逃してください」
「オッケー。では行きますね」

 そのまま真っ直ぐにテントに向かって飛ぶ。
 テントの周りは包囲されているので、もう一度指パッチンでテントを回収すると、そのまま高度を上げてその場から撤退した。
 
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