お嬢様、ミスリルは食べ物ではありません~異世界転生した悪役令嬢は、暴飲暴食で無双する~

呑兵衛和尚

文字の大きさ
上 下
21 / 25
第一部・食戦鬼? あ、食洗機ですか。

第21話・メッセージ

しおりを挟む
 二人の騎士に護衛を頼み、久しぶりに町に出ました。
 今日の目的は冒険者ギルド、闇ギルドの暗殺者であったウル・スクルタスについての処遇と、逃亡したミランダの行方について話を聞かせて貰いに来ましたのですが。

「この度は、誠に申し訳ありません……」

 ランカスター領都の冒険者ギルドの統括である男性、そしてその補佐官が深々と頭を下げています。
 ここが統括の執務室でなかったら、また私の悪評が流れることになっていたでしょう。

「まあ、頭を上げてください。相手は闇ギルドです、それだけ狡猾だったということで話を収める予定ではあります。事実、ランカスター家には人的被害は出ていないのですから」
「そうですか……お嬢様がそうおっしゃるのでしたら。それと、明日にでも王都から宮廷魔術師の方が到着します。ギルド地下室にて術的保存されているウル・スクルタスの死体を回収し、霊媒師によって魂を召喚し尋問する予定だそうです」

 霊媒師による召喚、そして尋問。
 こっちの世界では、犯罪者に対してはそこまでするものなのですか。
 まあ、国家の裏で暗躍する闇ギルドの正体を暴く絶好のチャンスということで行うのでしょうけれど。
 地球では考えられない証拠の探し方をするものだなぁと、思わず関心してしまいますよ。

「そして闇ギルドの存在を明るみに出し、関係者を全て捕らよという王の勅令が発せられています。この件についてはすべての冒険者ギルドにも闇ギルドアジトの調査という強制依頼が発行される手はずになっているそうです」
「なるほど、陛下はこの機に闇ギルドを消滅させるおつもりですか。まあ、狙われていた私としても、それでよいかとおもいますが」
「ええ。ということなので、この件についてはこれ以上の情報も何もありません。逃亡したミランダには賞金が掛けられ手配書も出回っています。また、今回の件でワルヤーク子爵家については王都の財務局より監査が入ることになっています」

 相手は子爵ですので、私の見聞きしたこと程度では強権は発動できないということでしょう。
 だから、まずは監査役を派遣し適当な罪状をでっちあげて拘束、あとは王都の鑑定持ち魔術師の出番というところでしょう。
 つまり、この時点でランカスター家ならびに私がするべきことは無くなったということですね。

「わかりました。では、そちらにつきましては私が手を出すことはありませんので、こちらで処理してください。これでようやく、私も枕を高くして眠れるというものですよ」
「枕を高く? 低いと眠りずらいのですか?」
「いえ、こっちの話ですので。では失礼します」

 そのまま一礼して、私は部屋から出ます。
 あとは冒険者ギルドを後にして、適当に買い物でもして帰る予定ですけれど。
 まず、ギルドに出入りしている冒険者の視線が痛すぎます。
 畏怖と恐怖と侮蔑の入り混じったようなネットリとした視線が私に向けられてます。
 ハイランカー冒険者を素手でねじ伏せた令嬢という噂が流れているのは知っていますし、冒険者にとって憧れであったウル・スクルタスを解散にまで追い込んだ悪女という話まで流れているとか。
 ジャービスたちの功績についてはまるで伝説のように数多く存在しているため、今だ彼らが暗殺者であったということについて信じていない冒険者も数多くいるそうで。
 
「まあ、私には関係ありませんね。とっとと買い物でも……」

 冒険者ギルドを後にして。
 馬車にのって通りを眺めていますと、そこにはいつものような日常が広がっています。
 まあ、馬車に乗っている私を見て目を逸らしたり、道行く我が子を護るかのように動いていたり。
 心なしか、暴君令嬢の時よりも畏怖の目が多すぎやしませんか?
 そう思って適当に買い物を済ませ、自宅へと戻って一休み。

「残りのミスリル飴は22個、万が一の時には足りなくなるかも」

 室内でアイテムボックスを確認、現在の体内のオーラチャージは0。
 今一つ補充したとしても、体内のオーラは自然に抜けていくものですから無駄になってしまうのは判っています。

「まあ、今の私が修得している様々な理ですら、常人ではたどり着けないようなランクのものもありますからねぇ」

 そう思いつつ、部屋の中で修得した理について確認していると、ふとベランダに何かの気配を感じます。
 
「こんな昼間っから、正々堂々と暗殺にくるほど闇ギルドは切羽詰まっているのですか?」

 ぼそっと呟きつつ、口の中にミスリル飴をとりだしてかみ砕く。
 そして慎重にベランダに近寄ると、そこには一羽の角を生やした鳩。
 鳩? え、ハトって額に小さな角が生えていたっけ?
 そのくちばしに手紙のようなものを咥えているので、それを受け取って開いてみると。

『会談を行いたい。今宵、月が頂点に差し掛かるころ、そちらに伺わせていただく。二人だけの会談を希望するが、私たちを罠に嵌めようとするのなら、その時は家族の命については保障しないとだけ付け加えておく』

 そして手紙は一瞬で灰となり消滅。
 その場にいた鳩も黒い霧のように変化し、大気の中に散っていく。
 
「脅迫に近い……いや、こっちが何もしなければ、あっちもに何もしてこないということか」

 闇ギルドの存在については容認しがたい部分はある。
 ただし、殺すのはターゲットと目撃者のみ、それ以外についてはむやみに命を奪うようなことはないという話をしていたのだが。
 だからこそ、この手紙に記されていることから、相手もまた切羽詰まっているのだろうと予測できる。

「約束をたがえた場合は、うちの家族は皆殺しにする……か。本来の闇ギルドの方針を曲げてでも、話し合いで解決をしたいということなんでしょうね」

 それが相手の覚悟であり、私を恐れているということが理解できた。
 
「まあ、いいでしょう。今回の件つにいては、こっちとしても手打ちで終わるのならそれでいいとは思っているからね……口封じで殺されたジャービスさんたちには悪いけれど、あんたたちだって散々人を殺してきたんだろうからさ……」

 さて、そうとわかれば今のうちに準備を。 
 といっても、今現在の私の部屋にあるガラクタ武具程度では、新たにスキルを修得することはない。
 だったら今のうちに色々と実験をして、オーラの限界数などを調べることにしましょうかね。
 食べられる武具はたくさんあるのですから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...