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第一部・アマノムラクモ降臨
第5話・外交にはまだ早い?
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朝。
快適な目覚め。
そして近所の温泉旅館にいって、朝風呂を堪能。
俺の日課は、ここから始まる。
居住区内の温泉旅館、その近くに俺の家はある。
まあ、ぶっちゃけると、この居住区の建物、全部俺のものなんだけどね。温泉旅館に住み着かない理由は、温泉は住居ではなく娯楽施設であるという認識があるんだよ。
締め切り前の小説家や漫画家が缶詰め状態になって、編集の担当者が見張っているんだよ。
そして、トイレにいくとか理由をつけて、宿から逃走するのが温泉宿なんだよ。
「さて、朝飯前の仕事に行きますか」
浴衣スタイルのまま、ブリッジに向かう。
昨日はオクタ・ワンとトラス・ワンにワルキューレのメンバーを紹介して、あとの教育は任せたままなんだよ。
………
……
…
そして、ブリッジに到着したら、花が咲いていました。
「おはようございます、ミサキ様‼︎」×9。
俺が到着するのを見計らって、並んで待機していたんだろう。
ヘルメットを外した美人さんたちが9人、一斉に頭を下げて挨拶してきたよ。
でも、俺、みんなの顔の造形なんてした記憶ないんだけど?
『ピッ……おはようございます』
「おはようオクタ・ワン。ひょっとして、みんなの顔を作ったの?」
『ピッ……はい。創造主を差し置いての行為、誠に申し訳ありません。ですが、キャプテンの望む環境を作るのも、我々の使命です』
「そっか。でも、オクタ・ワンがゴーレムを作れるのなら、最初から頼めばよかったよ」
『いえ、そのようなシステムはありません。外部装甲板を加工する魔導プラズマを用いた細部加工です』
そうか、物理的に削ったのか。
って、ちょっと待ったぁ。それ、だめだから。
バランス崩れる可能性あるし、ちょっとした魔力の流れの変化もダメだから‼︎
「ぜ、全員整列‼︎ これより皆さんを、ちょっとメンテナンスします」
「はい‼︎」×8
「あいあいさ~」
ん?
一人だけ、のんびりとしていますが。
「今の、気の抜けた声は誰?」
「あい‼︎ ロスヴァイゼでし」
恐る恐る手を挙げたのは、末っ子設定のロスヴァイゼ。
まあ、個性ということでいいか。
「私の言葉、おかしいでしか?」
「個性として許可します。そんじゃ始めますか」
右手で印を組み込む。
起動する術式は『メンテナンス』と『解析』。
それを9人同時に展開し、魔力の流れの歪みなどは『メンテナンス』で修復する。
まあ、だいたい10分程度で終わるんだけどね。
そして全員のメンテナンスが終了すると、オクタ・ワンが俺に話を振ってきた。
『ピッ……それでは、先日の会議の結果を報告します。ワルキューレ各員の能力を測定した結果、各員に仕事を割り振りしました』
「へぇ、どんな感じなの?」
具体的に説明を聞いたら、こんな感じだった。
●アマノムラクモ役職一覧
・操舵手
主:ゲルヒルデ 副:ヴァルトラウデ
・副操舵手
主:ジークルーネ 副:ゲルヒルデ
・航法オペレーター
主:オルトリンデ 副:ジークルーネ
・魔導機関オペレーター
主:シュヴェルトライデ 副:オルトリンデ
・通信士
主:ヴァルトラウデ 副:ロスヴァイゼ
・戦闘オペレーター
主:グリムゲルデ 副:シュヴェルトライデ
・キャプテン付き秘書官
主:ヒルデガルド 副:ヘルムヴィーケ
・外交担当
主:ヘルムヴィーケ 副:ヒルデガルド
・雑務
主:ロスヴァイゼ 副:グリムゲルデ
とまあ、こんな感じだった。
それで、普段俺に付き従うのが秘書官。
「ミサキ様、これからは精一杯、秘書官を務めさせていただきます」
「ああ、よろしく。それで、これの勤務スケジュールはどうなっているの?」
『ピッ……地球時間で七日ごとに主と副が入れ替わります。各員、二つのポジションのプロフェッショナルになってもらいます』
「休みなしか。どこかで休暇を取りたいよね? どうするかなぁ」
『ピッ……ワルキューレはゴーレムです。使役存在でありますので、休みなど不要です』
あうあう。
いや、それぐらいは理解しているさ。
それでもね、休みはとって欲しいんだよ、うちはブラック企業にはしたくないんだよ。
人の姿をしているんだから、せめてそういうふうにしたいんだよ。
そう力説したんだけど、人員不足なので無理って言われたよ。
「そうかよ、人員不足なんだよな? だったら作ってやるよ、みんなが休暇を取れるように、各セクションのサポート要員をつくるよ」
『ピッ……サポート要員でしたら、素材は安価なものをお勧めします』
「え? オリハルコンはダメなの?」
『ピッ……ワルキューレはマスターの腕であり足であり、武器であり盾である存在。そのようなものには惜しみなく供給できますが、サポート要員でしたら換えのきく素材で作るのがよろしいかと』
なるほどなぁ。
そこまで考えていたのか。
『ピッ……付け加えると、外見も人型ではなく、もっとロボロボしいものにしたほうが良いかと』
「サポートは、あくまでもサポートでしかないか。それならまあ、俺の気持ちも楽だよなぁ」
『ピッ……資材の無駄遣い、ダメ、絶対。この機動戦艦アマノムラクモでも、資源枯渇については重要なファクターとなります』
「マジか。まあ、当然だよな……資材管理部のゴーレムも作るから、二体分のオリハルコンを都合して。あとは鋼鉄……でいいか」
『是。すぐに手配します』
そんじゃ、朝飯食ったら仕事を始めますか。
「それじゃあ、ワルキューの皆さん、これからよろしくお願いします‼︎」
「はい‼︎」×8
「あいあいさ~」×1
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
日本国・東京。
永田町にある国会議事堂では、急遽、正体不明の飛行物体改め、『機動戦艦アマノムラクモ対策委員会』が設立していた。
与野党各党の代表及び各方面の専門家によって構成された委員会。
ここでは昼夜惜しまず、連日の対策会議が繰り広げられている。
「……まず、現時点で分かっていることは、あれが所属不明の存在であること、アメリカの爆撃によっても傷一つつかないバリアを形成していること、責任者は日本語を流暢に話せる女性であること、この三つだけです」
「付け加えると、あの物体が姿を表した時は、すぐに中国が各国の大使館を通じて連絡してきたことぐらいです。あれが中国の秘密兵器であり、我が軍の軍人が奪って逃走した。だから手出し無用、こちらで回収すると」
「とんだ茶番だ。今ではなりをひそめて、じっと様子を窺っているじゃないか」
委員長の報告に、各党の責任者も腕を組んで話を聞いている。
「さて、名前が長いので、以後はアマノムラクモと呼称しましょう。アマノムラクモは現在、北海道の石狩沖500メートルに浮かんでいます。手元の資料も参考にしていただくとわかりますが、このように、空中に何かを浮かべて固定している感じです」
正面に設置されている大型モニターにも、アマノムラクモが空間固定アンカーを打ち出している動画が映し出されている。
だが、この場の誰も、これがアマノムラクモを空間に固定するためのものであるなど分かるはずもなく、ただ、その場に何かが浮かんでいるという認識しかない。
「そもそも、あれはどうやって浮かんでいるんだ? あの技術を、日本で作り出すことができないのか?」
「まあまあ、そんなことができたら苦労しませんよ。今は、あのアマノムラクモに対しての我々の立場をどうするかです」
先日のアマノムラクモとの通信による話し合い。
向こうとしては、『何もしないなら何もしないし、こちらからも何もしない』という、実にあやふやな返答が返ってきただけである。
だからといって、はいそうですか、というわけにはいかない。
国際法と照らし合わせてみても、今回のケースは明らかな『領土侵犯』に他ならない。
すぐさま海保なり海上自衛隊なりが行動を開始する必要があるのだが、日米安保条約を盾に、アメリカが先に動いた。
そして日本としては、尖閣諸島問題や北方領土問題があるため、ここではあまり強気に出ることができなかった。
そして国連を通じて、各国の戦艦や空母を三隻まで、『安全保障及び平和維持のため』という理由で領土内に迎え入れることにもなったのである。
『日本だけじゃ、アマノムラクモの対応はできないだろうから、手伝ってやるよ』という真意が丸みえであるが、日本としては今の時点では何もできない。
「だから、早めに第九条の改訂が必要だったのですよ? それを野党の皆さんが揃いも揃って反対して、そもそも議題に上げた時点で、他の理由をつけての審議拒否、そんなことをしていたから、今、この状態なのが理解できますか?」
防衛大臣が叫ぶが、野党もすぐに反論。
現状では話し合いによる解決が成立している、このまま話し合いを続けて、お互いに利になる方向を進めるのが良いのではと。
そのまま話し合いは平行線となるのだが、国連事務総長からの連絡で、話し合いは一旦、中断した。
『正体不明の機動戦艦に対して、国連は緊急安全保障会議を開催する。その結果次第では、日本に対してあまりよい結末とならない可能性もある』
これには浅生総理大臣の顔色も真っ青になる。
言い方こそ優しいが、実際にはこうなのだろう。
『国連平和維持軍を設立し、日本国に向かわせる。最悪、日本が主戦場となる可能性もあるのでよろしく』
猛反対しても、恐らくは常任理事国の全会一致で可決というルートも見えている。
あれが姿を表して数日。
その間、日本だけでなく世界各国の報道がアマノムラクモを映していた。
アメリカとアマノムラクモの戦闘も、リアルタイム配信していた放送局もあった。
この未知なる巨大兵器を、どの国も喉から手が出るくらい欲している。
最悪は、日本の経済を破綻させることもできるという現状では、日本に平和維持軍を送り出すことぐらい気にもしないだろうから。
………
……
…
「なんてこった……どうすりゃあ良いんだよ。この責任とって、解散総選挙に持ち込むかぁ?」
「ダメでしょうね。今回ばかりは野党も消極的ですよ。ここで解散総選挙なんてやらかしても、野党は乗りませんよ、戦争責任を追及されるのが解っていますからね」
首相官邸で頭を抱える浅生総理。
その中では、官房長官もどうしたものかと、思案を続けていた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
『おおお、さすが手が早い。お見事です』
「まあ、俺が本気を出せば、この程度はお茶の子さいさい」
とにかく広い場所で錬金術がやりたかったので、格納庫の近くにある倉庫を、そのまま俺専用の『錬金術ラボ』に改造して貰った。
そこでサポート用ゴーレムを作成、素材は鋼鉄製ハニカム構造複層体。
これに魔導化処置を施すことで、滑らかな、しなりのあるモース硬度12の超鋼鉄を作り出した。
「これなら、そうそう壊れることはないだろ?」
『是。艦内サポート要員としては適切です。では、量産化をお願いします』
「はいはい、オクタ・ワンは人使いが荒いねぇ……練金魔法陣展開‼︎ サポートゴーレム『サーバント』の量産化開始……量産化‼︎」
──キィィィィィン
魔法陣が輝き始め、その中でゆっくりと素材が融解し変形し、人型ロボットの形を作り始める。
まったくロボット型だと温かみがないということで、人とロボットの中間を目指したデザインになったが、これはこれでメリハリが効いててよい。
「この魔力だと、全ての完成までに二時間か。それまでは、ゆっくりするとしますか」
目の前の50個の魔法陣。
サーバント50体分の魔法陣が、大きく揺らぎながら輝いている。
量産化の場合、デザインに多少の揺らぎを持たせるための術式も組み込んだので、一つとして同じデザインにはならないはずである。
はずであるが、そこは完成しないとわからない。
まあ、少しずつでも、今の環境に慣れられるように頑張りますか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「ミサキ様、ブリッジのヴァルトラウデから連絡です。日本国から、緊急通信とのことですが」
「ん……俺、寝てたか。緊急通信ね、今いくわ。ヴァルトラウデから……名前が長いわ、俺がつけたんだけどさ」
「では、愛称はヴァルトとしましょう。他のワルキューレにも、そう伝えておきます」
「助かる。日本人名に慣れてるから、カタカナの長い名前は覚えづらくてね」
気がつくと夕方。
なる早でブリッジに向かうと、通信席に向かう……いや、キャプテンシートでいいか。
「お待たせ。ヴァルト、通信開いてくれ」
「了解です、再接続します」
──ピッ
ここで、正面モニターに相手の顔とかが映ると格好いいんだけどさ、向こうのシステムにそういうのないだろうから無理。
『ピッ……モニターにアンチョコをご用意します』
「オクタ・ワン、助かるわ」
「接続完了、開きます」
「さて……いきなり呼び出すとは、貴公らは自分たちの立場がわかっている……のか?」
まてやオクタ・ワン。
このアンチョコなんだよ、随分と俺が偉そうじゃないかよ。
『こ、これは大変失礼を……。私は日本国総理大臣の浅生と申します。我が日本国は、貴国と友好に付き合いたいと考えています。つきましては、親善大使を、派遣したいと考えていますが』
「必要ない。いつ敵となるかわからないものを、みすみす内部に受け入れるなどあり得ない。こちらから一人、使節を送る。場所を指定したまえ」
え?
マジで送るの?
それで話が進むのなら構わないんだけどさ。
『了解しました。場所は日本国東京都、永田町にある国会議事堂です。必要でしたら、迎えに参りますが』
「必要ない。その座標なら、この星を巡る衛星からデータを回収してある。明日にでも向かうので、そのように」
『了解いたしました。それでは、明日、お待ちしています』
「ああ。それでは」
──ピッ
「通信回線、切れました」
「オクタ・ワンんんんんん、このアンチョコなに、俺が傲慢でワガママな設定になってない?」
『施政者とはそういうものです。私の故郷の世界では、国王とはかくあるかと』
「どんな世界だよ。そもそも、お前はどこの誰が作ったんだよ?」
『ピッ……創造神ですが?』
「……うん、もう遅いから寝るわ。ヒルデ、また明日の朝、起こしてくれ」
「はい‼︎ 承りました」
そうだよなぁ。
神の加護でもらったんだから、作ったのも神様だよなぁ。
快適な目覚め。
そして近所の温泉旅館にいって、朝風呂を堪能。
俺の日課は、ここから始まる。
居住区内の温泉旅館、その近くに俺の家はある。
まあ、ぶっちゃけると、この居住区の建物、全部俺のものなんだけどね。温泉旅館に住み着かない理由は、温泉は住居ではなく娯楽施設であるという認識があるんだよ。
締め切り前の小説家や漫画家が缶詰め状態になって、編集の担当者が見張っているんだよ。
そして、トイレにいくとか理由をつけて、宿から逃走するのが温泉宿なんだよ。
「さて、朝飯前の仕事に行きますか」
浴衣スタイルのまま、ブリッジに向かう。
昨日はオクタ・ワンとトラス・ワンにワルキューレのメンバーを紹介して、あとの教育は任せたままなんだよ。
………
……
…
そして、ブリッジに到着したら、花が咲いていました。
「おはようございます、ミサキ様‼︎」×9。
俺が到着するのを見計らって、並んで待機していたんだろう。
ヘルメットを外した美人さんたちが9人、一斉に頭を下げて挨拶してきたよ。
でも、俺、みんなの顔の造形なんてした記憶ないんだけど?
『ピッ……おはようございます』
「おはようオクタ・ワン。ひょっとして、みんなの顔を作ったの?」
『ピッ……はい。創造主を差し置いての行為、誠に申し訳ありません。ですが、キャプテンの望む環境を作るのも、我々の使命です』
「そっか。でも、オクタ・ワンがゴーレムを作れるのなら、最初から頼めばよかったよ」
『いえ、そのようなシステムはありません。外部装甲板を加工する魔導プラズマを用いた細部加工です』
そうか、物理的に削ったのか。
って、ちょっと待ったぁ。それ、だめだから。
バランス崩れる可能性あるし、ちょっとした魔力の流れの変化もダメだから‼︎
「ぜ、全員整列‼︎ これより皆さんを、ちょっとメンテナンスします」
「はい‼︎」×8
「あいあいさ~」
ん?
一人だけ、のんびりとしていますが。
「今の、気の抜けた声は誰?」
「あい‼︎ ロスヴァイゼでし」
恐る恐る手を挙げたのは、末っ子設定のロスヴァイゼ。
まあ、個性ということでいいか。
「私の言葉、おかしいでしか?」
「個性として許可します。そんじゃ始めますか」
右手で印を組み込む。
起動する術式は『メンテナンス』と『解析』。
それを9人同時に展開し、魔力の流れの歪みなどは『メンテナンス』で修復する。
まあ、だいたい10分程度で終わるんだけどね。
そして全員のメンテナンスが終了すると、オクタ・ワンが俺に話を振ってきた。
『ピッ……それでは、先日の会議の結果を報告します。ワルキューレ各員の能力を測定した結果、各員に仕事を割り振りしました』
「へぇ、どんな感じなの?」
具体的に説明を聞いたら、こんな感じだった。
●アマノムラクモ役職一覧
・操舵手
主:ゲルヒルデ 副:ヴァルトラウデ
・副操舵手
主:ジークルーネ 副:ゲルヒルデ
・航法オペレーター
主:オルトリンデ 副:ジークルーネ
・魔導機関オペレーター
主:シュヴェルトライデ 副:オルトリンデ
・通信士
主:ヴァルトラウデ 副:ロスヴァイゼ
・戦闘オペレーター
主:グリムゲルデ 副:シュヴェルトライデ
・キャプテン付き秘書官
主:ヒルデガルド 副:ヘルムヴィーケ
・外交担当
主:ヘルムヴィーケ 副:ヒルデガルド
・雑務
主:ロスヴァイゼ 副:グリムゲルデ
とまあ、こんな感じだった。
それで、普段俺に付き従うのが秘書官。
「ミサキ様、これからは精一杯、秘書官を務めさせていただきます」
「ああ、よろしく。それで、これの勤務スケジュールはどうなっているの?」
『ピッ……地球時間で七日ごとに主と副が入れ替わります。各員、二つのポジションのプロフェッショナルになってもらいます』
「休みなしか。どこかで休暇を取りたいよね? どうするかなぁ」
『ピッ……ワルキューレはゴーレムです。使役存在でありますので、休みなど不要です』
あうあう。
いや、それぐらいは理解しているさ。
それでもね、休みはとって欲しいんだよ、うちはブラック企業にはしたくないんだよ。
人の姿をしているんだから、せめてそういうふうにしたいんだよ。
そう力説したんだけど、人員不足なので無理って言われたよ。
「そうかよ、人員不足なんだよな? だったら作ってやるよ、みんなが休暇を取れるように、各セクションのサポート要員をつくるよ」
『ピッ……サポート要員でしたら、素材は安価なものをお勧めします』
「え? オリハルコンはダメなの?」
『ピッ……ワルキューレはマスターの腕であり足であり、武器であり盾である存在。そのようなものには惜しみなく供給できますが、サポート要員でしたら換えのきく素材で作るのがよろしいかと』
なるほどなぁ。
そこまで考えていたのか。
『ピッ……付け加えると、外見も人型ではなく、もっとロボロボしいものにしたほうが良いかと』
「サポートは、あくまでもサポートでしかないか。それならまあ、俺の気持ちも楽だよなぁ」
『ピッ……資材の無駄遣い、ダメ、絶対。この機動戦艦アマノムラクモでも、資源枯渇については重要なファクターとなります』
「マジか。まあ、当然だよな……資材管理部のゴーレムも作るから、二体分のオリハルコンを都合して。あとは鋼鉄……でいいか」
『是。すぐに手配します』
そんじゃ、朝飯食ったら仕事を始めますか。
「それじゃあ、ワルキューの皆さん、これからよろしくお願いします‼︎」
「はい‼︎」×8
「あいあいさ~」×1
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
日本国・東京。
永田町にある国会議事堂では、急遽、正体不明の飛行物体改め、『機動戦艦アマノムラクモ対策委員会』が設立していた。
与野党各党の代表及び各方面の専門家によって構成された委員会。
ここでは昼夜惜しまず、連日の対策会議が繰り広げられている。
「……まず、現時点で分かっていることは、あれが所属不明の存在であること、アメリカの爆撃によっても傷一つつかないバリアを形成していること、責任者は日本語を流暢に話せる女性であること、この三つだけです」
「付け加えると、あの物体が姿を表した時は、すぐに中国が各国の大使館を通じて連絡してきたことぐらいです。あれが中国の秘密兵器であり、我が軍の軍人が奪って逃走した。だから手出し無用、こちらで回収すると」
「とんだ茶番だ。今ではなりをひそめて、じっと様子を窺っているじゃないか」
委員長の報告に、各党の責任者も腕を組んで話を聞いている。
「さて、名前が長いので、以後はアマノムラクモと呼称しましょう。アマノムラクモは現在、北海道の石狩沖500メートルに浮かんでいます。手元の資料も参考にしていただくとわかりますが、このように、空中に何かを浮かべて固定している感じです」
正面に設置されている大型モニターにも、アマノムラクモが空間固定アンカーを打ち出している動画が映し出されている。
だが、この場の誰も、これがアマノムラクモを空間に固定するためのものであるなど分かるはずもなく、ただ、その場に何かが浮かんでいるという認識しかない。
「そもそも、あれはどうやって浮かんでいるんだ? あの技術を、日本で作り出すことができないのか?」
「まあまあ、そんなことができたら苦労しませんよ。今は、あのアマノムラクモに対しての我々の立場をどうするかです」
先日のアマノムラクモとの通信による話し合い。
向こうとしては、『何もしないなら何もしないし、こちらからも何もしない』という、実にあやふやな返答が返ってきただけである。
だからといって、はいそうですか、というわけにはいかない。
国際法と照らし合わせてみても、今回のケースは明らかな『領土侵犯』に他ならない。
すぐさま海保なり海上自衛隊なりが行動を開始する必要があるのだが、日米安保条約を盾に、アメリカが先に動いた。
そして日本としては、尖閣諸島問題や北方領土問題があるため、ここではあまり強気に出ることができなかった。
そして国連を通じて、各国の戦艦や空母を三隻まで、『安全保障及び平和維持のため』という理由で領土内に迎え入れることにもなったのである。
『日本だけじゃ、アマノムラクモの対応はできないだろうから、手伝ってやるよ』という真意が丸みえであるが、日本としては今の時点では何もできない。
「だから、早めに第九条の改訂が必要だったのですよ? それを野党の皆さんが揃いも揃って反対して、そもそも議題に上げた時点で、他の理由をつけての審議拒否、そんなことをしていたから、今、この状態なのが理解できますか?」
防衛大臣が叫ぶが、野党もすぐに反論。
現状では話し合いによる解決が成立している、このまま話し合いを続けて、お互いに利になる方向を進めるのが良いのではと。
そのまま話し合いは平行線となるのだが、国連事務総長からの連絡で、話し合いは一旦、中断した。
『正体不明の機動戦艦に対して、国連は緊急安全保障会議を開催する。その結果次第では、日本に対してあまりよい結末とならない可能性もある』
これには浅生総理大臣の顔色も真っ青になる。
言い方こそ優しいが、実際にはこうなのだろう。
『国連平和維持軍を設立し、日本国に向かわせる。最悪、日本が主戦場となる可能性もあるのでよろしく』
猛反対しても、恐らくは常任理事国の全会一致で可決というルートも見えている。
あれが姿を表して数日。
その間、日本だけでなく世界各国の報道がアマノムラクモを映していた。
アメリカとアマノムラクモの戦闘も、リアルタイム配信していた放送局もあった。
この未知なる巨大兵器を、どの国も喉から手が出るくらい欲している。
最悪は、日本の経済を破綻させることもできるという現状では、日本に平和維持軍を送り出すことぐらい気にもしないだろうから。
………
……
…
「なんてこった……どうすりゃあ良いんだよ。この責任とって、解散総選挙に持ち込むかぁ?」
「ダメでしょうね。今回ばかりは野党も消極的ですよ。ここで解散総選挙なんてやらかしても、野党は乗りませんよ、戦争責任を追及されるのが解っていますからね」
首相官邸で頭を抱える浅生総理。
その中では、官房長官もどうしたものかと、思案を続けていた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
『おおお、さすが手が早い。お見事です』
「まあ、俺が本気を出せば、この程度はお茶の子さいさい」
とにかく広い場所で錬金術がやりたかったので、格納庫の近くにある倉庫を、そのまま俺専用の『錬金術ラボ』に改造して貰った。
そこでサポート用ゴーレムを作成、素材は鋼鉄製ハニカム構造複層体。
これに魔導化処置を施すことで、滑らかな、しなりのあるモース硬度12の超鋼鉄を作り出した。
「これなら、そうそう壊れることはないだろ?」
『是。艦内サポート要員としては適切です。では、量産化をお願いします』
「はいはい、オクタ・ワンは人使いが荒いねぇ……練金魔法陣展開‼︎ サポートゴーレム『サーバント』の量産化開始……量産化‼︎」
──キィィィィィン
魔法陣が輝き始め、その中でゆっくりと素材が融解し変形し、人型ロボットの形を作り始める。
まったくロボット型だと温かみがないということで、人とロボットの中間を目指したデザインになったが、これはこれでメリハリが効いててよい。
「この魔力だと、全ての完成までに二時間か。それまでは、ゆっくりするとしますか」
目の前の50個の魔法陣。
サーバント50体分の魔法陣が、大きく揺らぎながら輝いている。
量産化の場合、デザインに多少の揺らぎを持たせるための術式も組み込んだので、一つとして同じデザインにはならないはずである。
はずであるが、そこは完成しないとわからない。
まあ、少しずつでも、今の環境に慣れられるように頑張りますか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「ミサキ様、ブリッジのヴァルトラウデから連絡です。日本国から、緊急通信とのことですが」
「ん……俺、寝てたか。緊急通信ね、今いくわ。ヴァルトラウデから……名前が長いわ、俺がつけたんだけどさ」
「では、愛称はヴァルトとしましょう。他のワルキューレにも、そう伝えておきます」
「助かる。日本人名に慣れてるから、カタカナの長い名前は覚えづらくてね」
気がつくと夕方。
なる早でブリッジに向かうと、通信席に向かう……いや、キャプテンシートでいいか。
「お待たせ。ヴァルト、通信開いてくれ」
「了解です、再接続します」
──ピッ
ここで、正面モニターに相手の顔とかが映ると格好いいんだけどさ、向こうのシステムにそういうのないだろうから無理。
『ピッ……モニターにアンチョコをご用意します』
「オクタ・ワン、助かるわ」
「接続完了、開きます」
「さて……いきなり呼び出すとは、貴公らは自分たちの立場がわかっている……のか?」
まてやオクタ・ワン。
このアンチョコなんだよ、随分と俺が偉そうじゃないかよ。
『こ、これは大変失礼を……。私は日本国総理大臣の浅生と申します。我が日本国は、貴国と友好に付き合いたいと考えています。つきましては、親善大使を、派遣したいと考えていますが』
「必要ない。いつ敵となるかわからないものを、みすみす内部に受け入れるなどあり得ない。こちらから一人、使節を送る。場所を指定したまえ」
え?
マジで送るの?
それで話が進むのなら構わないんだけどさ。
『了解しました。場所は日本国東京都、永田町にある国会議事堂です。必要でしたら、迎えに参りますが』
「必要ない。その座標なら、この星を巡る衛星からデータを回収してある。明日にでも向かうので、そのように」
『了解いたしました。それでは、明日、お待ちしています』
「ああ。それでは」
──ピッ
「通信回線、切れました」
「オクタ・ワンんんんんん、このアンチョコなに、俺が傲慢でワガママな設定になってない?」
『施政者とはそういうものです。私の故郷の世界では、国王とはかくあるかと』
「どんな世界だよ。そもそも、お前はどこの誰が作ったんだよ?」
『ピッ……創造神ですが?』
「……うん、もう遅いから寝るわ。ヒルデ、また明日の朝、起こしてくれ」
「はい‼︎ 承りました」
そうだよなぁ。
神の加護でもらったんだから、作ったのも神様だよなぁ。
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土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
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