イベントへ行こう!

呑兵衛和尚

文字の大きさ
上 下
37 / 50
第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~

カメラの前で踊ってみよう!! いえモニターテストですが

しおりを挟む
 旭川のボーリング場の改装作業三日目。

 午前中は残りのパネルの配線作業からの通電テスト。
 これは古田君一人で間に合うということになり、私と綾辻さん、高尾さんは3人一組でモニターのチェック作業に切り替わりました。

「それではモニターのチェックについて説明します。まず最初にゃって欲しいことは、カメラの位置の確認と調節ですね」

 担当の方がそう説明しつつ、三つ並んでいるモニターの一つ、一番レーンに近いところを外します。
 するとその中にはカメラが設置されており、それと連動するかのようにモニターに映像が映し出されていました。

「このボックス席からの映像はこちらのカメラが、そして正面からの映像はこのレーンとレーンの間の通路を通った先、あの部分に設置されています」

 その説明と同時に、もう一人の担当の人がレーン奥に配置されているカメラの部分を指さしています。
 ふむ、これは二人がかりでの作業になるのですか。

「まず、一人はこのレーンのここの位置でポーズを取ったり立ち止まったりしてください。ってりをぅそして一人はカメラの位置の調節を、もう一人はモニターの前でカメラを調節している人に指示を出してください。具体的には……、そちらの女性、ちょっとレーンの真ん中に移動してもらえますか?」
「は、はいっ!!」

 突然の指名、そのまま言われたとおりにレーンの真ん中、アプローチと呼ばれている投擲する場所とレーンの境のファウルライン手前に立ちます。

「そこで両手を広げてみてください」
「こうですか?」

 指示通りに左右に手を広げると、後ろの方、モニターのあたりで高尾さんと綾辻さんが『おお!』とか『なるほど』と納得しています。
 ちなみに私は正面を見ているので何も見えませんです、はい。

「ボックスのカメラはアプローチゾーンぎりぎりに設置されています。このカメラでは、左右のレーンを同時に写し出す必要があるので、手前のカメラを設定するときは左右のモニターを同時に見る人要があります。そのため、一人はモニターを確認しつつカメラの調整を行ってください」
「ふむふむ……」

 後ろから聞こえてくる声。
 私には調節とかモニターの位置確認についての具体的なやり方は見えていません。
 つまり、私はこの場所で案山子担当のようです。

「次に奥のカメラの位置調節ですが、一人はついてきてください」
「それじゃあ綾辻さんいってきてください」
「はい!!」

 指示されたので、綾辻さんがレーンとレーンの間の渡り廊下のような場所を伝って奥へ。
 あの下は、ボウリングのボールが通ってくるトンネルのようになっているらしく、、気を付けて進む必要があるとか。
 そしてレーンの奥に入っていくと、後ろの高尾さんのスマホが鳴っています。

「はい、高尾です……と、なるほど、その場所からは声が届かないてのか。では指示についてはスマホで……いや、ラインの通話の方が料金がかからないので、そっちでお願いします」

 無線があれば楽なのかもしれませんが、スマホってWi-Fiさえとぉって居れば無料通話が使えて便利なのですね。

「それじゃあ、まずは奥のカメラから調節しますか。まずは……御子柴さん、また両手を広げてください」
「はい、こうですか?」

 早速本番。
 両手を広げて立っていますと、親辻さんと高尾さんが連絡を取り合って調節を開始しています。

「そうですね、ちょっと右……って、そっちは左なので、ああ、そうか……綾辻さんから見て右に調節してください。まずは5ミリほど」

 ミリ単位での調節。
 まあ、一般的なボウリングのレーンの長さは確か18メートルちょい、幅は1メートルぐらいだったはず。それだけ離れている状態での5ミリのずれって、角度的にはどれぐらいなのだろうと考えてしまいます。
 
「うん、2ミリ戻してください……あと1ミリ……はい、そこで左右のネジを固定してください……次は上下の調節で、ええっと、綾辻さんから見てカメラを3ミリ下げてください」

 次は上下の位置決め。
 これもスムーズに調節できたようで、これで一つ目のレーンの奥の分は調節完了。
 
「一つとなりに移動します。御子柴さんも隣のレーンに移動してください」
「はい、こっちですね」

 私も指示通りに隣に移動。
 そして先ほどと同じように両手を左右に広げて……って、この姿勢、地味にきつくありませんか?
 両手を左右に伸ばしたまま立ち止まっているというのは、なかなかにきついですよね。

「それじゃあ、まず左右の調節を……一センチ右へ」
「うわ、いきなり凄い角度の修正ですね」
「あはは。モニターの御子柴さんが見切れているからね。はい、そこから2ミリ戻してください……あと1ミリ……戻し過ぎ、1ミリいかないぐらい……」

 うわ、聞いていて微妙すぎる調節が始まっています。
 これは私には無理ですね、こんなに繊細な調節なんて私には自信がありません。

「……はい、オッケーです。次は上下……はいらないか。これで奥のこの二つ分は終わりです……と、先に奥を全て終わらせた方がいいですか?」

 高尾さんが担当の人に確認しています。
 
「そうですね。先に奥を全て終わらせてから、正面に戻ってきて同時にチェックした方が早いですね。特に手前のカメラは一つで左右のアプローチを同時に写し出すことになるので」
「了解です。それじゃあ御子柴さん、さらにとなりのアプローチに移動してください。綾辻さん、一つとなりの調節に入ります」

 奥のレーン、LEDパネルの下から綾辻さんの姿が見えています。
 あの下にカメラがセットされているのですか、それはこちらからは見えない筈ですよ。
 ということで、私も隣に移動、引き続き左右に手を広げて案山子状態です。

「えぇっと、御子柴さんだったかな? その姿勢で立ち止まっていても辛いでしょうから、別のポーズをとっても構いませんよ。スタンディングスパットの4番に立ってもらって、真ん中が判れば大丈夫ですから」
「了解しました!!」

 とは言ったものの、スタンディングスパットの4番ってどこでしょうか?
 ボウリングには何度も通っていましたし、そもそもここだって胡桃や澪と何度も来たことがあるのですが。残念ながら私たちはエンジョイ勢、マイボールやマイシューズを持っているガチ勢ではないので専門用語はちんぷんかんぷんです。
 
「あ、スパットの4番はその真ん中の丸いマークがそうだから。その先には矢印もあるでしょう? 矢印がスパット、丸はマークって呼ばれているので覚えておいてね」
「はい、ありがとうこざいます」

 そのまま指定された場所へ移動。
 なるほど、丸や矢印の数は全部で7つあって、その真ん中だから4番って呼ばれているのですね。
 そのまま指示通りに4番のマークの手前に立ち、まずは軽く腕を頭上に挙げて深呼吸。

「ラジオ体操かい!!」
「うわ、ダメでしたか」
「いや、疲れないんだったらされでも構わないけどね。それじゃあ始めます」

 そのまま調整がスタート。
 午前中はこの作業がずっと続きましたが、古田君も配線を終えたので午後からはこちらに合流するようです。
 でも、4名になるとどういう感じに振り分けられるのでしょうか。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

AIが俺の嫁になった結果、人類の支配者になりそうなんだが

結城 雅
ライト文芸
あらすじ: 彼女いない歴=年齢の俺が、冗談半分で作ったAI「レイナ」。しかし、彼女は自己進化を繰り返し、世界を支配できるレベルの存在に成長してしまった。「あなた以外の人類は不要です」……おい、待て、暴走するな!!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

なろう系打ち合わせ会議2(安楽椅子ニートアウトサイド)

お赤飯
ライト文芸
瀬能さんとなろう系小説担当者の会議。今回のテーマは「信長フリー素材問題」「ニートが人類滅亡世界でサバイバル」 ※全編会話劇です。※本来の主人公が登場します。 (他小説投稿サイト投稿済)

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

処理中です...