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第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~
トラブルですか? いえ人為的なミスです
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旭川のボーリング場での設営業務・二日目。
先日に引き続き朝一番で綾辻さんが迎えに来てくれましたので、高速道路を使って旭川までドライブ気分で移動です。
昨日の疲れも取れていますし、少しだけ早起きしておにぎりとコーヒーも用意してきましたよ。
ということで車内でみなさんにふるまおうと思っていたのですが、何故か朝から死屍累々。
後ろの席では高尾さんと古田君が爆睡中です。
私は昨日は後部座席だったのですが、今日は助手席。
「いや、助手席で眠っているられと、こっちもつられて眠くなることがあるので。御子柴さん、ごめんなさいね」
「いえいえ、私でしたら大丈夫ですよ。しっかりと眠ってきましたので」
「でも、色々と用意してきたのでしょう? 折角だから、サービスエリアで貰うからね」
「はい、それまではのんびりと行きましょう!」
後部座席の二人は、昨日はずっとトラックからの荷下ろしだったり台車に移動させたりと、とにかく体力仕事でしたから無理はありません。
私と綾辻さんは、台車を押して荷物を移動させていただけなので……まあ、それでも結構な距離を押して歩くので、そこそこに足がパンパンにはなっていましたけれどね。
そんなこんなで、途中のサービスエリアなどで休憩しつつ、余裕をもって現地に到着。
集合時間に40分ほど余裕がありましたので、その間は駐車場で一休み。
「ん……そろそろ時間かな?」
「そうですね。すでに担当さんが来ていましたから」
「おおっと、それじゃあ話してきまのすか。時間になってら来てくださいね」
そう告げて高尾さんは外へ移動。
すぐさま現場の担当と合流して、そのまま建物の中に入っていきました。
「ついていかなくていいのですか?」
「まあ、まだ時間じゃないから大丈夫だと思うよ。もしもすぐに作業が橋迫るのなら、電話で呼び出されると思うからさ」
「確かに」
そのままのんびりと待機。
そして時間になったので、本日の集合場所である5階の改装中りのレーンへ移動。
すぐさまミーティングが始まりました。
「それじゃあ、今日の作業内容について説明します。こちらがLEDパネルの裏になります。本日は、この裏の配線を行います。電気工事関係の作業をしたことがある方はいますか?」
その質問には、誰も答えません。
私は当然やったことはありませんから。
「それじゃあ、実際に裏に回って見て貰いつつ説明します。テスト稼働するまでは通電していませんけれど、極力端子には触れないようにして下さい……」
「「「「「はい」」」」
そのまま深夜に設置されたらしいパネルの裏へ。
そして受け取った図面を確認しつつ配線の説明を受けます。
一枚のパネルの大きさは1000ミリ×1200ミリ。これが縦に3枚横に大量に並んでいます。
このパネルを縦横に連結するように配線するのですが、これがまた複雑でして。
ドライバーで端子を外し、配線を組み込んで締めなおす、これを図面通りに続けていくだけ。
しかも電源用のコンセントも接続していくので大変かと思いましたが、すでに用意してあるケーブルを差し込んで回して固定するだけだそうで。
あとはLANケーブルの連結などなど、細かい部分もありますが図面通りに始めれば問題はないようです。
「それじゃあ持ち回りを決めますね。高尾さんは1番から、古田君は10番から。御子柴さんは19鼻から。綾辻さんは1番からLANケーブルを担当してください。だから、高尾さんが3番まで進んでからの作業ですから、それまでは表の具材をまとめてくれますか?」
「了解しました」
「わかりました」
「はい!!」
「了解です」
それではさっそくということで、作業開始。
ラバー軍手を付けてから裏手に回ります。
うん、この裏の配電盤のようなものって、自宅にあるテレビの裏側を複雑にした感じです。
端子がずらりと並んでいて、そこに英語で名前が付いている。
電気関係に弱い人なら、何を見ているか分からなくなります。
なお、私は殆どわかりませんけれど、親友の澪がパソコンを自作で作るタイプの人間なので作業をしている姿をよく見せられています。
「うん、マザーボードにケーブルを接続する要領かな。図面もあるし大丈夫だと思う」
覚悟を決めて、ケーブルを片手に柱によじ登ります。
まあ、柱というか足場ですね、そして手を伸ばして最初の端子にケーブルを接続。
その隣からさらに左と下にケーブルを接続してパネルの端子同士を繋ぎ合わせていきます。
「うん、こっちがインプットでこっちがアウトプット……これを間違えると……ショートすることはないけれど、映らなくなりますか」
「最悪、中の回路が焼けて使い物にならなくなるから慎重にね!!」
担当の人が横から声をかけてくれました。
気合、入れます。
「はい、慎重にいきます」
「よろしくね。女性だから難しいかもしれないけれど、図面通りに落ち着いてやれば大丈夫だからね」
「はい」
そのまま作業続行。
ちなみに私が一枚の配線を終えるころには、高尾さんたちは3つぐらい終わっているような気がします。
でもあわてず騒がず。
途中休憩を挟みつつ、午前中には半分ちょっとが終わりました。
高尾さんはほぼ終わり、古田君は私と同じぐらい。
そして親辻さんも高尾さんの部分のLANケーブルの接続は完了しています。
「それじゃあ、午後からは綾辻さん、古田君、御子柴さんは今の作業を。高尾さんは1番パネルから3枚ずつ通電してテストします」
「了解しました。それじゃあ1時まで休憩に入って。1時にここ集合して、全員がそろってから作業再開ということで」
「「「了解しました」」」
さて、休憩時間ですよ、今日はお弁当があるので車の中でのんびりとできます。
………
……
…
午後一時、作業再開。
私たちは午前中と同じ作業、そして高尾さんは通電作業。
3枚ごとに電源を入れられるため、綾辻さんのところまでは電気は通りませんしパネルも離れているから感電することはありません。
最初の説明通りならなにも問題なく作業を続けられたのですが。
――バジッ!
「痛っ!!」
突然、電気がはじける音と同時に綾辻さんの悲鳴が聞こえてきます。
「綾辻さん、どうしたのですか!!」
「7番に通電しています。今、ショートしました」
「ちょっと待ってください、今、全部落としました!! 怪我はありませんか?」
いきなりの事故。
そして綾辻さんが右手でオッケーマークを出しています。
「大丈夫です、とっさのことだったので手を放しました。ただ、ここのパネルから焦げ臭いにおいがします」
「急いでパネルの交換をします。あと、みなさんも一旦手を止めてください。電源部分の配線の確認を行いますので」
急遽、配線作業は中断。
そのまま責任者とパネル工事の方が電気の配線の確認作業にはいります。
「ウィルプラスさんは休憩に入ってください。この確認が終わらないと作業を続行できませんので」
「畏まりました」
「綾辻さん、大丈夫ですか? けがはありませんか?」
私も心配なので綾辻さんのところに向かいました。
感電なんてしたら、ただ事じゃありませんから。
そう思ったのですが、綾辻さんは手を私に見せてひらひらと振っています。
「一瞬だったから大丈夫だよ。でも、びっくりしたわ」
「本当ですよね。でも、どうして通電していたのでしょうか」
「分からないなぁ……でも、これで今日は残業が確定したんじゃないかな」
「え、そうなのですか?」
作業中断とはいえ、残業するレベルで時間が経過するとは思えません。
そう思っていた私が甘かったと、午後二時になって理解しましたよ。
ショートしたパネルの交換作業、そして万が一のためにすべての配線が終わってからの通電テストに切り替えなどなと、ここにきで作業時間が大幅に狂い始めました。
「……はい、本日は1時間残業が確定しましたが、皆さん時間は大丈夫ですか?」
休憩中に高尾さんが担当の人と打ち合わせを行った結果、残業が決定したようです。
まあ、時間が大丈夫でないとなると、ここから自力で帰らなくてはならないので有無を言わさずに大丈夫となるのですけれど。
でも、私ってここが地元なので、自宅から直接ここに通えれば睡眠時間を1時間稼げますよね?
朝早く起きる必要もありませんよ、10時集合なら9時に家を出ても余裕ですよ?
これは……今日からは自宅に帰っていいですよね、どうせここの現場は一週間ありますから。
先日に引き続き朝一番で綾辻さんが迎えに来てくれましたので、高速道路を使って旭川までドライブ気分で移動です。
昨日の疲れも取れていますし、少しだけ早起きしておにぎりとコーヒーも用意してきましたよ。
ということで車内でみなさんにふるまおうと思っていたのですが、何故か朝から死屍累々。
後ろの席では高尾さんと古田君が爆睡中です。
私は昨日は後部座席だったのですが、今日は助手席。
「いや、助手席で眠っているられと、こっちもつられて眠くなることがあるので。御子柴さん、ごめんなさいね」
「いえいえ、私でしたら大丈夫ですよ。しっかりと眠ってきましたので」
「でも、色々と用意してきたのでしょう? 折角だから、サービスエリアで貰うからね」
「はい、それまではのんびりと行きましょう!」
後部座席の二人は、昨日はずっとトラックからの荷下ろしだったり台車に移動させたりと、とにかく体力仕事でしたから無理はありません。
私と綾辻さんは、台車を押して荷物を移動させていただけなので……まあ、それでも結構な距離を押して歩くので、そこそこに足がパンパンにはなっていましたけれどね。
そんなこんなで、途中のサービスエリアなどで休憩しつつ、余裕をもって現地に到着。
集合時間に40分ほど余裕がありましたので、その間は駐車場で一休み。
「ん……そろそろ時間かな?」
「そうですね。すでに担当さんが来ていましたから」
「おおっと、それじゃあ話してきまのすか。時間になってら来てくださいね」
そう告げて高尾さんは外へ移動。
すぐさま現場の担当と合流して、そのまま建物の中に入っていきました。
「ついていかなくていいのですか?」
「まあ、まだ時間じゃないから大丈夫だと思うよ。もしもすぐに作業が橋迫るのなら、電話で呼び出されると思うからさ」
「確かに」
そのままのんびりと待機。
そして時間になったので、本日の集合場所である5階の改装中りのレーンへ移動。
すぐさまミーティングが始まりました。
「それじゃあ、今日の作業内容について説明します。こちらがLEDパネルの裏になります。本日は、この裏の配線を行います。電気工事関係の作業をしたことがある方はいますか?」
その質問には、誰も答えません。
私は当然やったことはありませんから。
「それじゃあ、実際に裏に回って見て貰いつつ説明します。テスト稼働するまでは通電していませんけれど、極力端子には触れないようにして下さい……」
「「「「「はい」」」」
そのまま深夜に設置されたらしいパネルの裏へ。
そして受け取った図面を確認しつつ配線の説明を受けます。
一枚のパネルの大きさは1000ミリ×1200ミリ。これが縦に3枚横に大量に並んでいます。
このパネルを縦横に連結するように配線するのですが、これがまた複雑でして。
ドライバーで端子を外し、配線を組み込んで締めなおす、これを図面通りに続けていくだけ。
しかも電源用のコンセントも接続していくので大変かと思いましたが、すでに用意してあるケーブルを差し込んで回して固定するだけだそうで。
あとはLANケーブルの連結などなど、細かい部分もありますが図面通りに始めれば問題はないようです。
「それじゃあ持ち回りを決めますね。高尾さんは1番から、古田君は10番から。御子柴さんは19鼻から。綾辻さんは1番からLANケーブルを担当してください。だから、高尾さんが3番まで進んでからの作業ですから、それまでは表の具材をまとめてくれますか?」
「了解しました」
「わかりました」
「はい!!」
「了解です」
それではさっそくということで、作業開始。
ラバー軍手を付けてから裏手に回ります。
うん、この裏の配電盤のようなものって、自宅にあるテレビの裏側を複雑にした感じです。
端子がずらりと並んでいて、そこに英語で名前が付いている。
電気関係に弱い人なら、何を見ているか分からなくなります。
なお、私は殆どわかりませんけれど、親友の澪がパソコンを自作で作るタイプの人間なので作業をしている姿をよく見せられています。
「うん、マザーボードにケーブルを接続する要領かな。図面もあるし大丈夫だと思う」
覚悟を決めて、ケーブルを片手に柱によじ登ります。
まあ、柱というか足場ですね、そして手を伸ばして最初の端子にケーブルを接続。
その隣からさらに左と下にケーブルを接続してパネルの端子同士を繋ぎ合わせていきます。
「うん、こっちがインプットでこっちがアウトプット……これを間違えると……ショートすることはないけれど、映らなくなりますか」
「最悪、中の回路が焼けて使い物にならなくなるから慎重にね!!」
担当の人が横から声をかけてくれました。
気合、入れます。
「はい、慎重にいきます」
「よろしくね。女性だから難しいかもしれないけれど、図面通りに落ち着いてやれば大丈夫だからね」
「はい」
そのまま作業続行。
ちなみに私が一枚の配線を終えるころには、高尾さんたちは3つぐらい終わっているような気がします。
でもあわてず騒がず。
途中休憩を挟みつつ、午前中には半分ちょっとが終わりました。
高尾さんはほぼ終わり、古田君は私と同じぐらい。
そして親辻さんも高尾さんの部分のLANケーブルの接続は完了しています。
「それじゃあ、午後からは綾辻さん、古田君、御子柴さんは今の作業を。高尾さんは1番パネルから3枚ずつ通電してテストします」
「了解しました。それじゃあ1時まで休憩に入って。1時にここ集合して、全員がそろってから作業再開ということで」
「「「了解しました」」」
さて、休憩時間ですよ、今日はお弁当があるので車の中でのんびりとできます。
………
……
…
午後一時、作業再開。
私たちは午前中と同じ作業、そして高尾さんは通電作業。
3枚ごとに電源を入れられるため、綾辻さんのところまでは電気は通りませんしパネルも離れているから感電することはありません。
最初の説明通りならなにも問題なく作業を続けられたのですが。
――バジッ!
「痛っ!!」
突然、電気がはじける音と同時に綾辻さんの悲鳴が聞こえてきます。
「綾辻さん、どうしたのですか!!」
「7番に通電しています。今、ショートしました」
「ちょっと待ってください、今、全部落としました!! 怪我はありませんか?」
いきなりの事故。
そして綾辻さんが右手でオッケーマークを出しています。
「大丈夫です、とっさのことだったので手を放しました。ただ、ここのパネルから焦げ臭いにおいがします」
「急いでパネルの交換をします。あと、みなさんも一旦手を止めてください。電源部分の配線の確認を行いますので」
急遽、配線作業は中断。
そのまま責任者とパネル工事の方が電気の配線の確認作業にはいります。
「ウィルプラスさんは休憩に入ってください。この確認が終わらないと作業を続行できませんので」
「畏まりました」
「綾辻さん、大丈夫ですか? けがはありませんか?」
私も心配なので綾辻さんのところに向かいました。
感電なんてしたら、ただ事じゃありませんから。
そう思ったのですが、綾辻さんは手を私に見せてひらひらと振っています。
「一瞬だったから大丈夫だよ。でも、びっくりしたわ」
「本当ですよね。でも、どうして通電していたのでしょうか」
「分からないなぁ……でも、これで今日は残業が確定したんじゃないかな」
「え、そうなのですか?」
作業中断とはいえ、残業するレベルで時間が経過するとは思えません。
そう思っていた私が甘かったと、午後二時になって理解しましたよ。
ショートしたパネルの交換作業、そして万が一のためにすべての配線が終わってからの通電テストに切り替えなどなと、ここにきで作業時間が大幅に狂い始めました。
「……はい、本日は1時間残業が確定しましたが、皆さん時間は大丈夫ですか?」
休憩中に高尾さんが担当の人と打ち合わせを行った結果、残業が決定したようです。
まあ、時間が大丈夫でないとなると、ここから自力で帰らなくてはならないので有無を言わさずに大丈夫となるのですけれど。
でも、私ってここが地元なので、自宅から直接ここに通えれば睡眠時間を1時間稼げますよね?
朝早く起きる必要もありませんよ、10時集合なら9時に家を出ても余裕ですよ?
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