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第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~
一人現場を体験しよう
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無事に7月の現場を全て終えて。
8月7日には久しぶりに実家のある旭川へ帰省します。
もっとも、実家に戻っても家業の手伝いに駆り出されるのは目に見えていますので、あまりのんびりとできないのが実情ですけれど。
その前に、平日朝からの札幌市地下歩行空間での設営と、いつもの大学生を対象とした就職活動セミナーの設営が待っていますが。
「……あの、明日の地下歩行空間の現場なのですけれど、私一人なのですか?」
いつものように、仕事の前日に届いたメール。
これには現場の場所から作業時間、人数、その現場でのリーダーと連絡先、そして請負業者の名前まで全て書いてあります。
明日の現場は札幌市地下歩行空間、時間は午前7時から10時まで。
請負業者はいつもの明桜レンタリース、担当は広崎さんなのですが、注意事項と人数に問題が。
『注意事項:当日、担当は現場にいません。作業開始時と終了時に電話をください』
という注意事項と、当日の人数が一人。
そして現場リーダーが私の名前なのですけれど……。
思わず確認のために会社に電話を入れて確認しているところです。
『あ~、明日の現場ね。仕事内容はレンタル備品の納品で、カゴ台車一台分の椅子とテーブルなんだけれど、ほら、地下歩行空間って加護台車とかイベントの設営備品を運び込む際、かならず一台につき2名が付いていないと怒られるじゃない。それで明桜さんから搬入要員に一人って頼まれてさ……』
あっけらかーんと説明してくれる大野さん。
なるほど、そういう理由でしたらわかります。
でも、それって受けるときにあらかじめ教えて欲しかったのですけれと。
「了解しました。では、明日は指定された現場でトラックから荷物を降ろして、それを地下のブースで待っているお客さんのところに届けるだけなのですか? 設営とかは?」
『ないよ。納品手伝いが仕事だから……まあ、いったらわかるから。終わったら事務所に電話をよろしくね~』
「はい、それでは失礼します」
ふう。
かなり不安な部分もありますが。
なんにせよ、私一人に現場を補任せられるっていうぐらい、信用はされているのですよね。
「よし、明日もがんばりますか……」
………
……
…
――そして翌日、明日7時
いつもの通り、地下へと降りるエレベーターのある【北海道草原銀行】という銀行の前へ。
地下歩行空間での仕事はこの場所が待ち合わせ場所になります。
さて、トラックはそろそろついているかと思うのですかと周囲を見渡しましたら、ちょうど目の前にトラックが停車しました。
明桜レンタリースの契約運送会社さん、今日の運転手は黒沢さんというおじさんです。
「お、ウィルプラスの御子柴さんかい?」
「はい、本日はよろしくお願いします。では広崎さんに電話をしますのでお待ちください」
「うん、まあ、留守電になっていると思うけどな」
そうなのですかと、急ぎ電話したところ。
黒沢さんの言う通り留守電でしたので作業開始のメッセージを入れておきます。
「それじゃあ、とっと終わらせるか……リフトでカゴ車を降ろすから、補助を頼むな」
「はい」
トラックの後ろに収納されているリフトが降りてきて、中からカゴ台車が一台降りてきます。
1800のテーブルが10本、折りたたみ椅子が8脚、あとはサインパネルという看板を固定するものが一つ。
それらがまとめて一つのカゴ台車に固定されていますので、それが倒れてこないように両手で支え、リフトが地面まで降りるのをじっと待ちます。
そのあとは、黒沢さんとカゴ台車を押してガラガラとエレベーターへ。
まだ早朝ということで人並もなく、歩いている人たちもまばら。
平日なので歩いている人たちの殆どはサラリーマンか、もしくは学生なのでしょう。
「これだけ人が少ないと、カゴ車を押していても怖くないですね」
「まあ、な。夕方の撤去とかは人が多すぎて、ぶつからないように気を付けないとならないんだけどな……今日の現場は楽だからさ」
「はい」
そんなことを話しつつ、10分もあるけば指定されたブースへ到着。
あとは黒沢さんが現場の担当の人に納品書を渡し、回収についての簡単な打ち合わせを開始……。
「それじゃあ、夕方の6時にここまで取りに決ますので、壁際においてロックしておいてください」
「わかりました、よろしくおねがいします」
うん、簡単どころか二言で終わっていましたね。
そして黒沢さんがこっちを見て。
「はい、作業終了。お疲れ様でした」
「……あの、この後は時間までどこかで待機ですか?」
「いや、これで終わり、帰って良しってところだな。広崎に連陸してねあとはウィルプラスの事務所に一報入れたらこれでおしまいだからさ。それじゃあ、またな」
「は、はい、ありがとうございました」
慌てて頭を下げて挨拶。
そして手を振って帰っていく黒沢さんを見送って、急ぎ明桜の広崎さんに電話を……。
『只今、電話に出ることが出来ません……御用の方は……』
はい、まだ留守電でしたよ。
だから作業終了のメッセージを入れて、今度は札幌事務所に連絡……って。
「まだ7時15分じゃないですか、本日の現場作業15分で三時間分働いたことになるのですか!!」
おもわず自分に突っ込みをいれつつ、急ぎ事務所に電話……って、こんな早朝に人がいるとは思えないのですけれど。
――ガチャッ
『もしもーし、大野です』
繋がった!!
「おはようございます、御子柴です。あの、今日の作業が終わったので電話を入れました」
『あーはいはい、楽な現場だったでしょ?』
「楽っていうか、これなら一時間契約でもよかったのでは、いえ、3時間分頂けるのはうれしいのですけれど」
おもわず本音と建前が混ざってしまいましたけれど、そのあとの大野さんの一言で納得です。
『うちは、一つの現場の最低拘束時間は3時間からなんだよね。だけど、それよりも早く終わったらなにもすることがないのでそれでおしまいなんだよ。まあ、大抵の場所は同じなんじゃないかな……ということで、今日の御子柴さんの現場はこれでおしまい。明日の夕方の設営で。またよろしくおねがいします』「はい、それではよろしくお願いします」
――ガチャッ
これで電話連絡も終わる。
ここまでで所要時間20分。
「……ワグドナルドで朝ごはんでも買って帰ろうかな……街にこないと買えないからなぁ」
うん、開き直って買い物をして帰ることにしましょう。
それによく見たら。期間限定のサツマポテトパイもあるじゃないですか。
朝ワグド限定のマフィンシリーズも久しぶりですし、よく見たら色々とメニューが増えているような気も……。
さ、さあ、今日の給料が飛ばない程度に買い物をして帰りましょうか!!
8月7日には久しぶりに実家のある旭川へ帰省します。
もっとも、実家に戻っても家業の手伝いに駆り出されるのは目に見えていますので、あまりのんびりとできないのが実情ですけれど。
その前に、平日朝からの札幌市地下歩行空間での設営と、いつもの大学生を対象とした就職活動セミナーの設営が待っていますが。
「……あの、明日の地下歩行空間の現場なのですけれど、私一人なのですか?」
いつものように、仕事の前日に届いたメール。
これには現場の場所から作業時間、人数、その現場でのリーダーと連絡先、そして請負業者の名前まで全て書いてあります。
明日の現場は札幌市地下歩行空間、時間は午前7時から10時まで。
請負業者はいつもの明桜レンタリース、担当は広崎さんなのですが、注意事項と人数に問題が。
『注意事項:当日、担当は現場にいません。作業開始時と終了時に電話をください』
という注意事項と、当日の人数が一人。
そして現場リーダーが私の名前なのですけれど……。
思わず確認のために会社に電話を入れて確認しているところです。
『あ~、明日の現場ね。仕事内容はレンタル備品の納品で、カゴ台車一台分の椅子とテーブルなんだけれど、ほら、地下歩行空間って加護台車とかイベントの設営備品を運び込む際、かならず一台につき2名が付いていないと怒られるじゃない。それで明桜さんから搬入要員に一人って頼まれてさ……』
あっけらかーんと説明してくれる大野さん。
なるほど、そういう理由でしたらわかります。
でも、それって受けるときにあらかじめ教えて欲しかったのですけれと。
「了解しました。では、明日は指定された現場でトラックから荷物を降ろして、それを地下のブースで待っているお客さんのところに届けるだけなのですか? 設営とかは?」
『ないよ。納品手伝いが仕事だから……まあ、いったらわかるから。終わったら事務所に電話をよろしくね~』
「はい、それでは失礼します」
ふう。
かなり不安な部分もありますが。
なんにせよ、私一人に現場を補任せられるっていうぐらい、信用はされているのですよね。
「よし、明日もがんばりますか……」
………
……
…
――そして翌日、明日7時
いつもの通り、地下へと降りるエレベーターのある【北海道草原銀行】という銀行の前へ。
地下歩行空間での仕事はこの場所が待ち合わせ場所になります。
さて、トラックはそろそろついているかと思うのですかと周囲を見渡しましたら、ちょうど目の前にトラックが停車しました。
明桜レンタリースの契約運送会社さん、今日の運転手は黒沢さんというおじさんです。
「お、ウィルプラスの御子柴さんかい?」
「はい、本日はよろしくお願いします。では広崎さんに電話をしますのでお待ちください」
「うん、まあ、留守電になっていると思うけどな」
そうなのですかと、急ぎ電話したところ。
黒沢さんの言う通り留守電でしたので作業開始のメッセージを入れておきます。
「それじゃあ、とっと終わらせるか……リフトでカゴ車を降ろすから、補助を頼むな」
「はい」
トラックの後ろに収納されているリフトが降りてきて、中からカゴ台車が一台降りてきます。
1800のテーブルが10本、折りたたみ椅子が8脚、あとはサインパネルという看板を固定するものが一つ。
それらがまとめて一つのカゴ台車に固定されていますので、それが倒れてこないように両手で支え、リフトが地面まで降りるのをじっと待ちます。
そのあとは、黒沢さんとカゴ台車を押してガラガラとエレベーターへ。
まだ早朝ということで人並もなく、歩いている人たちもまばら。
平日なので歩いている人たちの殆どはサラリーマンか、もしくは学生なのでしょう。
「これだけ人が少ないと、カゴ車を押していても怖くないですね」
「まあ、な。夕方の撤去とかは人が多すぎて、ぶつからないように気を付けないとならないんだけどな……今日の現場は楽だからさ」
「はい」
そんなことを話しつつ、10分もあるけば指定されたブースへ到着。
あとは黒沢さんが現場の担当の人に納品書を渡し、回収についての簡単な打ち合わせを開始……。
「それじゃあ、夕方の6時にここまで取りに決ますので、壁際においてロックしておいてください」
「わかりました、よろしくおねがいします」
うん、簡単どころか二言で終わっていましたね。
そして黒沢さんがこっちを見て。
「はい、作業終了。お疲れ様でした」
「……あの、この後は時間までどこかで待機ですか?」
「いや、これで終わり、帰って良しってところだな。広崎に連陸してねあとはウィルプラスの事務所に一報入れたらこれでおしまいだからさ。それじゃあ、またな」
「は、はい、ありがとうございました」
慌てて頭を下げて挨拶。
そして手を振って帰っていく黒沢さんを見送って、急ぎ明桜の広崎さんに電話を……。
『只今、電話に出ることが出来ません……御用の方は……』
はい、まだ留守電でしたよ。
だから作業終了のメッセージを入れて、今度は札幌事務所に連絡……って。
「まだ7時15分じゃないですか、本日の現場作業15分で三時間分働いたことになるのですか!!」
おもわず自分に突っ込みをいれつつ、急ぎ事務所に電話……って、こんな早朝に人がいるとは思えないのですけれど。
――ガチャッ
『もしもーし、大野です』
繋がった!!
「おはようございます、御子柴です。あの、今日の作業が終わったので電話を入れました」
『あーはいはい、楽な現場だったでしょ?』
「楽っていうか、これなら一時間契約でもよかったのでは、いえ、3時間分頂けるのはうれしいのですけれど」
おもわず本音と建前が混ざってしまいましたけれど、そのあとの大野さんの一言で納得です。
『うちは、一つの現場の最低拘束時間は3時間からなんだよね。だけど、それよりも早く終わったらなにもすることがないのでそれでおしまいなんだよ。まあ、大抵の場所は同じなんじゃないかな……ということで、今日の御子柴さんの現場はこれでおしまい。明日の夕方の設営で。またよろしくおねがいします』「はい、それではよろしくお願いします」
――ガチャッ
これで電話連絡も終わる。
ここまでで所要時間20分。
「……ワグドナルドで朝ごはんでも買って帰ろうかな……街にこないと買えないからなぁ」
うん、開き直って買い物をして帰ることにしましょう。
それによく見たら。期間限定のサツマポテトパイもあるじゃないですか。
朝ワグド限定のマフィンシリーズも久しぶりですし、よく見たら色々とメニューが増えているような気も……。
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