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第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~
天敵? いえ真面目すぎるだけです
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札幌市地下歩行空間の設営も無事に完了。
イベント期間が土、日曜日の二日間だったため、日曜日の夕方6時から撤去作業が始まりました。
基本的に、撤去作業は設営時間の2/3程度、今回の場合も設営はイベントの運営スタッフが来る15分前に完了しました。
ただ、システムなどの解体についてはさすがはベテランさん、一気に解体を終わらせて備品回収の私がむしろ遅かったという。
「……よし、梱包は終わったのでこれからエレベータまで移動します。いつも通りの注意点を守って、安全にお願いします」
ウィルプラスの高尾さんの説明と同時に、全員で搬出作業を開始。
ただ、日曜日の夕方5時というシビアな時間は、搬出作業には不向きな気がします。
──ガヤガヤガヤガヤ
大勢の人が行き来する地下歩行空間。
その中を、システム機材をはじめ多くの荷物が積まれている台車を押していかなくてはなりません。
決して壁などの設備にぶつかることなく、尚且つ通行の妨げにならないように。
ここで問題なのは、私たちが問題を起こした場合、そのクレームは最初にイベント運営会社に届くということ。
そこから下請け会社に降りて、そして私たちの会社へ。
それ故に、兎にも角にも注意しなくてはなりません。
通路及びエレベータの優先権は道ゆく人々、私たちはそこを通してもらっている。
この心構えが甘いと、ちょっとした油断で事故に繋がるそうです。
しかも、どんなに軽い台車も二人で押さなくてはなりません。
それが札幌市交通局のルール。
「……しっかし。一般用エレベータじゃな暗く搬出用のやつを使わせてもらえたら、楽なんだけどなぁ」
「そうそう。その辺り何というか、頭が硬いというか……」
まだ名前を覚えていないベテランさんがぼやいています。
そういえば、確かに作業用のエレベーターってある筈ですよね?
よく地下歩行空間で大きな催しがありますけれど、どう考えても一般用エレベータでは荷物を下ろすことは不可能なものもありましたから。
「搬出用のエレベータってあるのですか?」
「あるよ。でも、うちらみたいなイベントだと使わせてくれないんだよなぁ。ほら、あそこのイベントなんて、これから搬出みたいだよ?」
ベテランさんの指差した先。
そこでは、別のイベントの人が階段から荷物を運び出しています。
しかも、あれは展示用大型冷蔵庫。
よくコンビニとかにあるアイスクリームの入ったストッカーがありますよね? あれを少し薄くしたようなやつを、大勢の大人たちが一斉に持ち上げて、階段を上がっていきます。
その姿、まさに力仕事。
「え? あ、あれはエレベータを使わないのですか?」
「あれ、入らないんだよ。参考までにつたえるけど、うちらもあれ、良くやるから」
「そうそう。夏場のアイスクリームのイベントの時とかでさ、北海道中から地元オリジナルアイスとかがら集まってくるイベントがあってね。その時は早朝からあれだよ? まあ御子柴さんとか女性はエレベータで備品搬入だけど」
「うわ……」
他人事のように話していたベテランさん。
すると、目の前で冷蔵庫を運んでいたスタッフの一人が、私たちに近寄ってきました。
「お、今日はそっちなの? 次のうちのイベントの時はよろしくね」
「はい。ちなみに次はなんですか?」
「ロイトンであるから。まあ、近々募集かけるから……って、そっちの子は新人?」
すごくガタイのいいお兄さんが、ベテランさんと話をしています。
そして私を見てそう問いかけましたので。
「はい。先月からお世話になっています御子柴です」
「関山さん、ミコシーちゃんって呼んでも大丈夫だから」
「え、私ミコシーなのですか?」
「そっか。俺は東尾RAの関山。まあ、そのうち現場で会うことがあるからよろしく。それじゃあね」
「はい!!」
そのまま作業続行。
関山さんは冷蔵庫の搬出を手伝いに向かいます。
私たちはこのままエレベータでの搬出作業。
「先ほどの方は、やっぱりイベント会社なのですか?」
「まあ、備品レンタルだね。名桜レンタリースと同じ。北海道にはまだいくつもそういう会社があって、うちらはその都度、色々なイベントに呼び出されるんだよ。御子柴さんも、そのうち関山さんと仕事するかもしれないから頑張ってね」
「あとはまあ……そのうち洗礼を受けると思うけど……」
「洗礼?」
はて、それは一体なんでしょうか?
ベテランさんの話し方から察しますに、あまりいい印象はないのですけど。
「まあ……あるイベント会社の人なんだけど。仕事熱心なところは認めるけど、なんというか」
「細かい!! とにかく仕事が細かくて、気に入らなかったらクレームどころかやり直しまでさせられる人がいるんだよ。まあ、うちのメンバーでもその人の現場は出入り禁止っていわれているぐらいだから」
「その人、怖いのですけど……」
仕事の鬼か、それとも自分の事をよく見せたいだけの人なのか。
その辺りがよくわかりませんが。
その現場には、あたりませんように。
………
……
…
仕事が終わり、自宅へ戻る。
明日は月曜日、アルバイトもないため、ゆっくりできそうです。
「はぁ、少しずつだけど力がついてきたような……」
シャワーを浴びてから、バスタオル一枚の姿で姿見に向かってポージング。
はい、とっても貧相な体ですいません。
たかだか一ヶ月程度の、それも週末だけの仕事でそうそう体ができるはずもありませんよね。
──モニッ
でも、ふと見ると上腕に少しだけ力こぶ。
気のせいか足も細く……いえ、筋肉が付いてきたようです。
すいません、できるならばお腹の辺りのモニッとした脂肪を燃焼してくれませんか。
「へへ。少しだけ体力がついたかな」
この調子で……そういえばMCやPAの仕事はまだなのでしょうか。
イベント期間が土、日曜日の二日間だったため、日曜日の夕方6時から撤去作業が始まりました。
基本的に、撤去作業は設営時間の2/3程度、今回の場合も設営はイベントの運営スタッフが来る15分前に完了しました。
ただ、システムなどの解体についてはさすがはベテランさん、一気に解体を終わらせて備品回収の私がむしろ遅かったという。
「……よし、梱包は終わったのでこれからエレベータまで移動します。いつも通りの注意点を守って、安全にお願いします」
ウィルプラスの高尾さんの説明と同時に、全員で搬出作業を開始。
ただ、日曜日の夕方5時というシビアな時間は、搬出作業には不向きな気がします。
──ガヤガヤガヤガヤ
大勢の人が行き来する地下歩行空間。
その中を、システム機材をはじめ多くの荷物が積まれている台車を押していかなくてはなりません。
決して壁などの設備にぶつかることなく、尚且つ通行の妨げにならないように。
ここで問題なのは、私たちが問題を起こした場合、そのクレームは最初にイベント運営会社に届くということ。
そこから下請け会社に降りて、そして私たちの会社へ。
それ故に、兎にも角にも注意しなくてはなりません。
通路及びエレベータの優先権は道ゆく人々、私たちはそこを通してもらっている。
この心構えが甘いと、ちょっとした油断で事故に繋がるそうです。
しかも、どんなに軽い台車も二人で押さなくてはなりません。
それが札幌市交通局のルール。
「……しっかし。一般用エレベータじゃな暗く搬出用のやつを使わせてもらえたら、楽なんだけどなぁ」
「そうそう。その辺り何というか、頭が硬いというか……」
まだ名前を覚えていないベテランさんがぼやいています。
そういえば、確かに作業用のエレベーターってある筈ですよね?
よく地下歩行空間で大きな催しがありますけれど、どう考えても一般用エレベータでは荷物を下ろすことは不可能なものもありましたから。
「搬出用のエレベータってあるのですか?」
「あるよ。でも、うちらみたいなイベントだと使わせてくれないんだよなぁ。ほら、あそこのイベントなんて、これから搬出みたいだよ?」
ベテランさんの指差した先。
そこでは、別のイベントの人が階段から荷物を運び出しています。
しかも、あれは展示用大型冷蔵庫。
よくコンビニとかにあるアイスクリームの入ったストッカーがありますよね? あれを少し薄くしたようなやつを、大勢の大人たちが一斉に持ち上げて、階段を上がっていきます。
その姿、まさに力仕事。
「え? あ、あれはエレベータを使わないのですか?」
「あれ、入らないんだよ。参考までにつたえるけど、うちらもあれ、良くやるから」
「そうそう。夏場のアイスクリームのイベントの時とかでさ、北海道中から地元オリジナルアイスとかがら集まってくるイベントがあってね。その時は早朝からあれだよ? まあ御子柴さんとか女性はエレベータで備品搬入だけど」
「うわ……」
他人事のように話していたベテランさん。
すると、目の前で冷蔵庫を運んでいたスタッフの一人が、私たちに近寄ってきました。
「お、今日はそっちなの? 次のうちのイベントの時はよろしくね」
「はい。ちなみに次はなんですか?」
「ロイトンであるから。まあ、近々募集かけるから……って、そっちの子は新人?」
すごくガタイのいいお兄さんが、ベテランさんと話をしています。
そして私を見てそう問いかけましたので。
「はい。先月からお世話になっています御子柴です」
「関山さん、ミコシーちゃんって呼んでも大丈夫だから」
「え、私ミコシーなのですか?」
「そっか。俺は東尾RAの関山。まあ、そのうち現場で会うことがあるからよろしく。それじゃあね」
「はい!!」
そのまま作業続行。
関山さんは冷蔵庫の搬出を手伝いに向かいます。
私たちはこのままエレベータでの搬出作業。
「先ほどの方は、やっぱりイベント会社なのですか?」
「まあ、備品レンタルだね。名桜レンタリースと同じ。北海道にはまだいくつもそういう会社があって、うちらはその都度、色々なイベントに呼び出されるんだよ。御子柴さんも、そのうち関山さんと仕事するかもしれないから頑張ってね」
「あとはまあ……そのうち洗礼を受けると思うけど……」
「洗礼?」
はて、それは一体なんでしょうか?
ベテランさんの話し方から察しますに、あまりいい印象はないのですけど。
「まあ……あるイベント会社の人なんだけど。仕事熱心なところは認めるけど、なんというか」
「細かい!! とにかく仕事が細かくて、気に入らなかったらクレームどころかやり直しまでさせられる人がいるんだよ。まあ、うちのメンバーでもその人の現場は出入り禁止っていわれているぐらいだから」
「その人、怖いのですけど……」
仕事の鬼か、それとも自分の事をよく見せたいだけの人なのか。
その辺りがよくわかりませんが。
その現場には、あたりませんように。
………
……
…
仕事が終わり、自宅へ戻る。
明日は月曜日、アルバイトもないため、ゆっくりできそうです。
「はぁ、少しずつだけど力がついてきたような……」
シャワーを浴びてから、バスタオル一枚の姿で姿見に向かってポージング。
はい、とっても貧相な体ですいません。
たかだか一ヶ月程度の、それも週末だけの仕事でそうそう体ができるはずもありませんよね。
──モニッ
でも、ふと見ると上腕に少しだけ力こぶ。
気のせいか足も細く……いえ、筋肉が付いてきたようです。
すいません、できるならばお腹の辺りのモニッとした脂肪を燃焼してくれませんか。
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