5 / 50
第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~
立場が変わるだけ? そして財布が吹っ飛んだぁ!
しおりを挟む
北海道の初夏のイベント、YOSAKOIソーラン祭。
去年まではこの時期になると、家族で大通り会場まで何度も見に行きました。
テレビで見るものと迫力が違い、本当に演者さんの熱気が伝わってきます。
沿道からでは見づらいため、毎年、大通り会場に作られる有料の桟敷席を使っていたのですけれど……まさか、今年は設営側になりそうとは予想外です。
「あ~、去年までは見ていたけど、今年は設営側にねぇ」
札幌ドームイベント最終日、私はトミさんと朝イチのスタッフ作業です。
それも前日のように10時になるとぱったりと客足が途絶えます。
あとはお昼までのんびりと待機、時折、レンタル備品の返却に来るお客さんの対応をする程度です。
「はい。去年までは桟敷席で見ていたり、終わってから三越のあたりで縁日を楽しんでいたのですけれど。こういうこともあるのですね?」
「まあ、あるよねぇ。ほら、御子柴さんの現場初日にいた、ハゲのおじさんいたでしょ?」
ハゲのおじさん。
一杯居たような気がしますけれど、ウィルプラスのハゲおじさんは確か。
「中島さん?」
「そうそう。あの人、元は和食の調理師でね。以前はパークホテルとかの『食の祭典フェア』とかに参加していたのよ。それが今では設営する側だって笑っていましたから。話では、去年は昼間は参加していて、夕方からは撤去作業に切り替えたって笑っていましたよ」
「あ~、あれ? ウィルプラスの皆さんって、他にも仕事をしているのですか」
「まあ、そりゃあしていると思うわよ。それで、YOSAKOIの設営はどうするの?」
そこが大切。
せっかく同じ講義の人とお友達になれそうなチャンスでもありますし、でも、このアルバイトは夢を叶えるための道標でもあるので、できる限り現場に出たいというのもあります。
「う~ん。今年は設営に回って色々と学ばせてもらえればなぁと思ってます」
「お? 御子柴さんは将来は社員登用を考えているの?」
私とトミさんの話を聞いて、名桜の平崎さんが話しかけてきました。
「い、いえ、社員とかではなくてですね……MCをやってみたいなぁと思っていまして」
「あ~、なるほどね。そっちの仕事があったら、高尾さんに回しておきますよ。まあ、最初はPAスタッフになると思いますし、司会業って別に専門の事務所があってね。まあ、そっちは社員だからアルバイトとして経験を積むのなら、ウィルプラスてわ頑張ってみるといいんじゃない?」
「ふぁ……はい!!」
こ、これはいきなり道が見えました。
これはもっと頑張らなくてはなりませんか?
「名桜でPAを担当するのは僕と、あとは堤さんかな。時間があるときにでも教えてあげるよ」
「御子柴さん、平崎さんには気をつけてね?」
「何を気をつけるんですか、まったく……」
トミさんと平崎さんのやりとりに吹き出しそうになるのを堪えつつ、残りの時間はしっかりと作業に集中。
そして定時になったので、本日の昼間の業務は完了。
あとは夕方の撤去に合流ですから、一旦帰宅しないと……。
──フワァ
ゴクッ。
この名桜レンタリースのブースの近くでは、フードコートが設営されています。
フードカーと呼ばれる移動式調理車が何台も並び、北海道各地の名産をその場で食べられるようになっています。
しかも、道内のさまざまなベーカリーも並んでいまして、本日限りの新商品とかもあるのですよ。
そして今は昼。
買い物に行かない道理などありません。
「あ、ラーメンもあるのですか。こっちはな、な、なんと限定のフルーツ大福コーナー? これって店に並んでも一瞬で売り切れるやつじゃないですか? こっちはドングリーズのクリームカスタードパン、え? ここは天国?」
少し並ばないといけませんが、これは、このタイミングを逃すわけにはいきません。
一期一会、私の好きな言葉です。
散財地獄、私の嫌いな言葉です。
そして、ふと気がつくと。
私は両手いっぱいのパンやスィーツをぶら下げていました。
「うん。昨日の伊藤さんの言葉の意味がわかりました。トミさんがすたからさっさと帰っていった理由も……」
そう思いつつ、ふと名桜のブースを見ますと。
私と目が合った伊藤さんが、悪魔の笑みを浮かべてサムズアップしています。
こ、こうなることがわかっていたのなら、先に忠告してくださいよぉ。
はぁ、しばらくはこのパンやスィーツが主食ですか。
本当に、今日のアルバイト代が吹き飛びましたよ。
「も、もう現場近くでの買い物はしません!!」
そう心に誓いつつ、のんびりと帰宅です。
はぁ、夕方からも頑張らないと。
去年まではこの時期になると、家族で大通り会場まで何度も見に行きました。
テレビで見るものと迫力が違い、本当に演者さんの熱気が伝わってきます。
沿道からでは見づらいため、毎年、大通り会場に作られる有料の桟敷席を使っていたのですけれど……まさか、今年は設営側になりそうとは予想外です。
「あ~、去年までは見ていたけど、今年は設営側にねぇ」
札幌ドームイベント最終日、私はトミさんと朝イチのスタッフ作業です。
それも前日のように10時になるとぱったりと客足が途絶えます。
あとはお昼までのんびりと待機、時折、レンタル備品の返却に来るお客さんの対応をする程度です。
「はい。去年までは桟敷席で見ていたり、終わってから三越のあたりで縁日を楽しんでいたのですけれど。こういうこともあるのですね?」
「まあ、あるよねぇ。ほら、御子柴さんの現場初日にいた、ハゲのおじさんいたでしょ?」
ハゲのおじさん。
一杯居たような気がしますけれど、ウィルプラスのハゲおじさんは確か。
「中島さん?」
「そうそう。あの人、元は和食の調理師でね。以前はパークホテルとかの『食の祭典フェア』とかに参加していたのよ。それが今では設営する側だって笑っていましたから。話では、去年は昼間は参加していて、夕方からは撤去作業に切り替えたって笑っていましたよ」
「あ~、あれ? ウィルプラスの皆さんって、他にも仕事をしているのですか」
「まあ、そりゃあしていると思うわよ。それで、YOSAKOIの設営はどうするの?」
そこが大切。
せっかく同じ講義の人とお友達になれそうなチャンスでもありますし、でも、このアルバイトは夢を叶えるための道標でもあるので、できる限り現場に出たいというのもあります。
「う~ん。今年は設営に回って色々と学ばせてもらえればなぁと思ってます」
「お? 御子柴さんは将来は社員登用を考えているの?」
私とトミさんの話を聞いて、名桜の平崎さんが話しかけてきました。
「い、いえ、社員とかではなくてですね……MCをやってみたいなぁと思っていまして」
「あ~、なるほどね。そっちの仕事があったら、高尾さんに回しておきますよ。まあ、最初はPAスタッフになると思いますし、司会業って別に専門の事務所があってね。まあ、そっちは社員だからアルバイトとして経験を積むのなら、ウィルプラスてわ頑張ってみるといいんじゃない?」
「ふぁ……はい!!」
こ、これはいきなり道が見えました。
これはもっと頑張らなくてはなりませんか?
「名桜でPAを担当するのは僕と、あとは堤さんかな。時間があるときにでも教えてあげるよ」
「御子柴さん、平崎さんには気をつけてね?」
「何を気をつけるんですか、まったく……」
トミさんと平崎さんのやりとりに吹き出しそうになるのを堪えつつ、残りの時間はしっかりと作業に集中。
そして定時になったので、本日の昼間の業務は完了。
あとは夕方の撤去に合流ですから、一旦帰宅しないと……。
──フワァ
ゴクッ。
この名桜レンタリースのブースの近くでは、フードコートが設営されています。
フードカーと呼ばれる移動式調理車が何台も並び、北海道各地の名産をその場で食べられるようになっています。
しかも、道内のさまざまなベーカリーも並んでいまして、本日限りの新商品とかもあるのですよ。
そして今は昼。
買い物に行かない道理などありません。
「あ、ラーメンもあるのですか。こっちはな、な、なんと限定のフルーツ大福コーナー? これって店に並んでも一瞬で売り切れるやつじゃないですか? こっちはドングリーズのクリームカスタードパン、え? ここは天国?」
少し並ばないといけませんが、これは、このタイミングを逃すわけにはいきません。
一期一会、私の好きな言葉です。
散財地獄、私の嫌いな言葉です。
そして、ふと気がつくと。
私は両手いっぱいのパンやスィーツをぶら下げていました。
「うん。昨日の伊藤さんの言葉の意味がわかりました。トミさんがすたからさっさと帰っていった理由も……」
そう思いつつ、ふと名桜のブースを見ますと。
私と目が合った伊藤さんが、悪魔の笑みを浮かべてサムズアップしています。
こ、こうなることがわかっていたのなら、先に忠告してくださいよぉ。
はぁ、しばらくはこのパンやスィーツが主食ですか。
本当に、今日のアルバイト代が吹き飛びましたよ。
「も、もう現場近くでの買い物はしません!!」
そう心に誓いつつ、のんびりと帰宅です。
はぁ、夕方からも頑張らないと。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
AIが俺の嫁になった結果、人類の支配者になりそうなんだが
結城 雅
ライト文芸
あらすじ:
彼女いない歴=年齢の俺が、冗談半分で作ったAI「レイナ」。しかし、彼女は自己進化を繰り返し、世界を支配できるレベルの存在に成長してしまった。「あなた以外の人類は不要です」……おい、待て、暴走するな!!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


なろう系打ち合わせ会議2(安楽椅子ニートアウトサイド)
お赤飯
ライト文芸
瀬能さんとなろう系小説担当者の会議。今回のテーマは「信長フリー素材問題」「ニートが人類滅亡世界でサバイバル」
※全編会話劇です。※本来の主人公が登場します。
(他小説投稿サイト投稿済)

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる