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第一章・夢から少し遠い場所~イベント設営業~
受付作業とダブルブッキング?
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大学生活を楽しみつつ、一人暮らしを満喫。
今日も午後の講義が終わり、あとは帰ってのんびりとする予定でしたが。
「ねぇ、御子柴さんって、何かサークルに入っているの?」
「へ? サークル?」
帰るとき、同じ講義を受けていた女子3人から声をかけられましたが。
「そう、せっかく大学生になったのだからら、やっぱり勉強以外にも楽しみがあった方がいいよね。何か趣味はないの?」
「そうそう、高校の時に打ち込んでいたものとか、そういうの」
「スポーツは? 運動神経良さそうに見えるけど何かやっていたの?」
グイクイと推してくる三人。
いや、わたしみなさんとは初めて会ったような、この講義でしか会ったなかったような気がするのですけれど。
「待って、いきなりじゃ困るわよね。私は小鳥遊ゆかり。こっちの子が大越美奈子で、彼女が……あれ?」
「忘れないでよ。私は内海翔子。私たち、YOSAKOIのサークルに入っているんだけど、今、メンバーが足りなくて。どう? 一緒にやらない?」
「え? この学校のYOSAKOIサークルって、毎回、最終日まで残っているあの強豪チームだよね?」
スポンサーまでついていて、しかも曲もプロの作曲家さんにアレンジしてもらっている毎年最終ラウンドまで残るほどの実力派チーム。
そんなところに運動音痴の私が入ったところで、迷惑しかかけませんよね。
「いやいや、うちらは個人チーム。この学校のチームってレベルが高すぎてさ、楽しんで頑張りたい私たちとしては、ちょっと難易度が高いかな~と思って」
「まあ、まだメンバーを募集しているだけなんだけれど、もし良かったら参加して欲しいかな~と思ってね。そうそう、バンド経験とかそういうのあったら、そっちでも歓迎するよ? 音響とかも必要だからさ」
「え? 音響?」
思わず食いつき気味に話したけれど、私はまだ音響の経験もないんですよね。
だって!あれは個人で揃えるには高額すぎて、好きこそ物の上手なれとは縁遠いものだったのですよ。
「そそ。もしも興味があったら連絡して。うちはいつでも大歓迎だからさ」
「はぁ……少し検討してみますね」
そう曖昧な返事をしてしまったのは、まだ私自身がどうしたいのかわかっていないから。
でも、これも経験なのかもしれないけれど、アルバイトのスケジュールも考えないとならないからなぁ。
「これ、うちらのチームのチラシだから。それじゃあね」
「連絡待っているからね」
「バイビー」
手を振って講義室から出て行く3人。
まるで台風一過という感じで、吹き荒れて去っていきました。
「うわぁ……でも、楽しそうですね。どうしようかなぁ」
カバンの中にチラシをしまって、とりあえず帰ることにしましょう。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──土曜日・早朝
今日の現場は、札幌ドーム。
といっても今日は設営ではなく、会場にある『備品のレンタル』の当日スタッフです。
土日の二日間で行われる【札幌市モノスキビレッジ】という、ハンドクラフト系のフリーマーケットの手伝いが本日の仕事です。
設営は金曜日の昼間に行われたらしく、私は今日と明日の備品レンタルコーナーの手伝いです。
「まあ、手伝いと言っても、朝一番で来るお客さん以外は夕方の撤去までは暇だからさ。のんびりとしていて大丈夫ですよ。ね、そうですよね?」
ウィルプラスのアルバイトは私と富岡さんの二人。
あとは名桜レンタリースの平崎さんと伊藤さんという社員の二人が担当のようです。
「そうそう。そろそろ忙しくなるけれどそんなに難しいことはないから。簡単に手順は説明しますけれど……」
平崎さんが受付のやり方を一通り教えてくれます。
当日貸し出し可能な備品についての説明、受付後にそれを裏の備品置き場から持ってきてお客さんに手渡す。
私たちはここでお客さんに渡すまでが仕事で、そこから先はお客さんが自分でやらなくてはならない。
まあ、レンタルだけなので当然と言えば当然です。
そして……。
「御子柴さん、裏からハンガーラック一つと丸椅子を二つ出してきてください。トミは1800の白テーブル一つ持ってきて」
「はい!!」
「テーブルはもう出してあるよ~。御子柴さん、丸椅子をお願い。ハンガーラックは私が持ってくるから」
「トミ、早っ!」
「わかりました!」
大急ぎで取りに行こうとしたら、トミさんに肩を掴まれました。
「現場では走らない、慌てない。急いでいてもそれはダメ。特に荷物や備品を持っているときはね。事故になると大変だから」
「ありがとうございます! では安全第一で」
「ヨシ!」
トミさんが指差し確認のように呟くので、私も落ち着いて備品を運び出します。
「次、トミは1800の茶テーブル、御子柴さんは姿見ひとつ」
「はい」
「テーブルはもう出してあるよ~」
「トミ!なんでもう出してある?」
「お客さんの声ですぐに出してきただけだよ~。御子柴さん、姿見は気をつけてね。倒して割ったら大変だから」
「わかりました!!」
次から次へとお客さんがやってきます。
もしも最初にトミさんに話を聞いていなかったら、きっとあわてて走りまくっていたかもしれません。
「すーはーすーはー。よし、慌てず騒がす」
姿見を持ってきてお客さんに手渡して。
すぐに次のお客さんがやってきて……と、間も無く会場の10時ですが、ようやくレンタルに来るお客さんもパッタリと止まりました。
「ハァハァハァハァ。あの、このイベントって毎回、こんなに仮に来るものなのですか?」
そうずっと会計をしていた伊藤さんに尋ねますと。
「いや? 今回は凄かったけれど、いつもはこの半分ぐらいだよ? 大体は昨日の設営の時点で各ブースに搬入してあるから。それよりも、明日の撤去が大変だからね。御子柴さんも明日は来るの?」
「はい。明日は通しと言われてます。朝から昼までは受付補助で、そのあとは夕方から撤去と言われてますから」
「そっか。明日の午前中ということは、明日のバイト代は吹き飛ぶかもしれないね?」
え?
バイト代が吹き飛ぶ?
それはどういう意味なのでしょうか。
「あ、トミ。六月だけど、YOSAKOIの設営があるのは聞いている?」
「高尾さんからスケジュールは開けておくように言われてますけれど。私たちにもできる設営なのですか?」
およ?
YOSAKOIも仕事ありますか?
でも、設営ってなにを設営するのでしょうか。
「大きなやつは男性に任せて。女子は、同時開催されるお祭りのほうかな。ヨーヨー釣りとか綿飴コーナーとか、そういうやつのサポートだけど。御子柴さんはやったことある?」
「え? 私ですか? いえいえ、初挑戦ですよ?」
「ふむ、やる気は十分と。それじゃあ空けておいてくれると助かります」
「あ、け、検討します」
YOSAKOIに誘われているのに、同じタイミングで仕事となりますと参加できなくなりますよ。
どうしましょうか。
今日も午後の講義が終わり、あとは帰ってのんびりとする予定でしたが。
「ねぇ、御子柴さんって、何かサークルに入っているの?」
「へ? サークル?」
帰るとき、同じ講義を受けていた女子3人から声をかけられましたが。
「そう、せっかく大学生になったのだからら、やっぱり勉強以外にも楽しみがあった方がいいよね。何か趣味はないの?」
「そうそう、高校の時に打ち込んでいたものとか、そういうの」
「スポーツは? 運動神経良さそうに見えるけど何かやっていたの?」
グイクイと推してくる三人。
いや、わたしみなさんとは初めて会ったような、この講義でしか会ったなかったような気がするのですけれど。
「待って、いきなりじゃ困るわよね。私は小鳥遊ゆかり。こっちの子が大越美奈子で、彼女が……あれ?」
「忘れないでよ。私は内海翔子。私たち、YOSAKOIのサークルに入っているんだけど、今、メンバーが足りなくて。どう? 一緒にやらない?」
「え? この学校のYOSAKOIサークルって、毎回、最終日まで残っているあの強豪チームだよね?」
スポンサーまでついていて、しかも曲もプロの作曲家さんにアレンジしてもらっている毎年最終ラウンドまで残るほどの実力派チーム。
そんなところに運動音痴の私が入ったところで、迷惑しかかけませんよね。
「いやいや、うちらは個人チーム。この学校のチームってレベルが高すぎてさ、楽しんで頑張りたい私たちとしては、ちょっと難易度が高いかな~と思って」
「まあ、まだメンバーを募集しているだけなんだけれど、もし良かったら参加して欲しいかな~と思ってね。そうそう、バンド経験とかそういうのあったら、そっちでも歓迎するよ? 音響とかも必要だからさ」
「え? 音響?」
思わず食いつき気味に話したけれど、私はまだ音響の経験もないんですよね。
だって!あれは個人で揃えるには高額すぎて、好きこそ物の上手なれとは縁遠いものだったのですよ。
「そそ。もしも興味があったら連絡して。うちはいつでも大歓迎だからさ」
「はぁ……少し検討してみますね」
そう曖昧な返事をしてしまったのは、まだ私自身がどうしたいのかわかっていないから。
でも、これも経験なのかもしれないけれど、アルバイトのスケジュールも考えないとならないからなぁ。
「これ、うちらのチームのチラシだから。それじゃあね」
「連絡待っているからね」
「バイビー」
手を振って講義室から出て行く3人。
まるで台風一過という感じで、吹き荒れて去っていきました。
「うわぁ……でも、楽しそうですね。どうしようかなぁ」
カバンの中にチラシをしまって、とりあえず帰ることにしましょう。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──土曜日・早朝
今日の現場は、札幌ドーム。
といっても今日は設営ではなく、会場にある『備品のレンタル』の当日スタッフです。
土日の二日間で行われる【札幌市モノスキビレッジ】という、ハンドクラフト系のフリーマーケットの手伝いが本日の仕事です。
設営は金曜日の昼間に行われたらしく、私は今日と明日の備品レンタルコーナーの手伝いです。
「まあ、手伝いと言っても、朝一番で来るお客さん以外は夕方の撤去までは暇だからさ。のんびりとしていて大丈夫ですよ。ね、そうですよね?」
ウィルプラスのアルバイトは私と富岡さんの二人。
あとは名桜レンタリースの平崎さんと伊藤さんという社員の二人が担当のようです。
「そうそう。そろそろ忙しくなるけれどそんなに難しいことはないから。簡単に手順は説明しますけれど……」
平崎さんが受付のやり方を一通り教えてくれます。
当日貸し出し可能な備品についての説明、受付後にそれを裏の備品置き場から持ってきてお客さんに手渡す。
私たちはここでお客さんに渡すまでが仕事で、そこから先はお客さんが自分でやらなくてはならない。
まあ、レンタルだけなので当然と言えば当然です。
そして……。
「御子柴さん、裏からハンガーラック一つと丸椅子を二つ出してきてください。トミは1800の白テーブル一つ持ってきて」
「はい!!」
「テーブルはもう出してあるよ~。御子柴さん、丸椅子をお願い。ハンガーラックは私が持ってくるから」
「トミ、早っ!」
「わかりました!」
大急ぎで取りに行こうとしたら、トミさんに肩を掴まれました。
「現場では走らない、慌てない。急いでいてもそれはダメ。特に荷物や備品を持っているときはね。事故になると大変だから」
「ありがとうございます! では安全第一で」
「ヨシ!」
トミさんが指差し確認のように呟くので、私も落ち着いて備品を運び出します。
「次、トミは1800の茶テーブル、御子柴さんは姿見ひとつ」
「はい」
「テーブルはもう出してあるよ~」
「トミ!なんでもう出してある?」
「お客さんの声ですぐに出してきただけだよ~。御子柴さん、姿見は気をつけてね。倒して割ったら大変だから」
「わかりました!!」
次から次へとお客さんがやってきます。
もしも最初にトミさんに話を聞いていなかったら、きっとあわてて走りまくっていたかもしれません。
「すーはーすーはー。よし、慌てず騒がす」
姿見を持ってきてお客さんに手渡して。
すぐに次のお客さんがやってきて……と、間も無く会場の10時ですが、ようやくレンタルに来るお客さんもパッタリと止まりました。
「ハァハァハァハァ。あの、このイベントって毎回、こんなに仮に来るものなのですか?」
そうずっと会計をしていた伊藤さんに尋ねますと。
「いや? 今回は凄かったけれど、いつもはこの半分ぐらいだよ? 大体は昨日の設営の時点で各ブースに搬入してあるから。それよりも、明日の撤去が大変だからね。御子柴さんも明日は来るの?」
「はい。明日は通しと言われてます。朝から昼までは受付補助で、そのあとは夕方から撤去と言われてますから」
「そっか。明日の午前中ということは、明日のバイト代は吹き飛ぶかもしれないね?」
え?
バイト代が吹き飛ぶ?
それはどういう意味なのでしょうか。
「あ、トミ。六月だけど、YOSAKOIの設営があるのは聞いている?」
「高尾さんからスケジュールは開けておくように言われてますけれど。私たちにもできる設営なのですか?」
およ?
YOSAKOIも仕事ありますか?
でも、設営ってなにを設営するのでしょうか。
「大きなやつは男性に任せて。女子は、同時開催されるお祭りのほうかな。ヨーヨー釣りとか綿飴コーナーとか、そういうやつのサポートだけど。御子柴さんはやったことある?」
「え? 私ですか? いえいえ、初挑戦ですよ?」
「ふむ、やる気は十分と。それじゃあ空けておいてくれると助かります」
「あ、け、検討します」
YOSAKOIに誘われているのに、同じタイミングで仕事となりますと参加できなくなりますよ。
どうしましょうか。
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