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第一章・迷宮大氾濫と赤の黄昏編
第20話・禁じ手と、ハイコストな魔導具
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レムリアからの報告を受けて。
エリオンは、結界の中で静かに横たわるバーサーカーナイトから受けた傷を手当てしつつ考えていた。
未だキノクニ領の領主であるブンザイモンからの連絡は受けていない。
彼の連絡なくしてはダンジョンコアを破壊することはできず、ひたすらに冒険者たちの無事を祈ることしかできない。
また、レムリアからの逐次報告を聞きつつ、破壊に必要な魔導具の開発も並行で行わなくてはならなかったのだが、ここにきて最悪の報告がレムリアから届いてしまった。
ゲートキーパーの出現。
すなわち、レムリアのいる階層の一つ下が最下層であり、その下にはダンジョンコアの収められている『玄室』が存在する。
その玄室を護るために、ダンジョンコアは玄室の前の階層にラスボスクラスの魔物を生み出し、且つダンジョン内部の魔物の活性を高め始める。
これが長く続くとダンジョンは大氾濫を引き起こすのでありが、今回はそれとはし少し違う。
ダンジョン最下層ではなくその上にゲートキーパーと呼ばれている『玄室の守護者』が発生、さらに地上を目指して動き始めたのである。
普通の大氾濫でもゲートキーパーは姿を現すことはない。
ダンジョンコアを護りるのがゲートキーパーの務め、いわば最終防衛ライン。
その切り札ともいえる存在が、自ら地上に向けて侵攻を開始したのである。
「ダンジョンコアが命じたのか……ということは、ここのダンジョンの核は自立思考型に進化したといっていいレベルに進化したっていうことになる。そうなると、今の冒険者たちのレベルでは反乱を開始した魔物相手にまともに戦うことなんてできないんだよなぁ……。はぁ、また面倒なことになったなぁ……」
そう呟きつつ、エリオンはアイテムボックスを開いて次の一手を考える。
相手は赤のトワイライト、元素を自在に操るという能力を持っていることを考えると、ダンジョンコアおよびゲートキーパーもその恩恵を受けていると考えるのが無難。
「元素魔術とは……まったく、よくもまあ、レムリアと相性の悪い輩がやって来たものだよ。どうせこの事態も、どこかでつぶらに観察しているんだろうけれどな……」
そう独り言ちると、エリオンは古い魔導具を二つ取り出して転送用魔法陣の中に収める。
そしてカウンター下から通信用インカムを取り出すと、それを装着してからレムリアに通信を送る。
「次元断層発生装置と瘴気変換コアを送り出す。使い方は知っているかとおもうけれど」
『時間つぶし用の道具。でも、それでもダンジョンの活性は抑えられない』
次元断層発生装置で切断できるのは、せいぜいが階層一つ分の空間の切断。
ようは、エリオンはこの魔導具でダンジョンの第8階層そのものを切断し、最下層と地上との繋がりを切断しようというのである。
だが、それが通用するのは通常のダンジョンの氾濫程度であり、赤のトワイライトによってつくりかえられたダンジョンコアにどれだけ通用するか分からない。
また、これが作動できるのは完全活性していないダンジョンのみであり、ここの前にレムリアが破壊したダンジョンのように活性度が進行していると、次元断層発生装置そのものが作動しない。
「それでもいい。まずは次元の切断、そのあとは第7層に戦える冒険者を集めてくれ。あまりやりたくはないんだが、オールレント第七階層店の開店だ」
『はぁ……どうせあとから、キノクニにすべて請求するから問題ないけれど』
「そういうこと。誰に度の武器を貸し出すかはレムリアが現地で確認してくれ。起点に転送用デバイスを設置したら、すぐに連絡を寄越してくれ」
『オールライト』
一通りの指示はした。
あとはレムリアが動くだけ。
まあ、どうせなんとかなると考えて、エリオンは転送装置のスイッチを気軽に押した。
――カランカラーン
そしてエリオンが次の手を考え始めていると、扉が開いてブンザイモンが姿を見せる。
「腹は括ったのか?」
覚悟を決めた顔でカウンターへとやつてくるブンザイモン。
すると、彼は開口一発。
「ダンジョンコアの破壊を頼みたい」
そう力強く話し始めた。
………
……
…
――シュンッ
エリオンとの通信が終わってすぐ。
レムリアの目の前に真っ赤な鳥居と、二つの狛犬が転送されてきた。
「さて。まずはこれをここの階層の真ん中に置く」
鳥居と狛犬を回収して、レムリアは迷宮の中を走る。
頭の中に地図を描き、鳥居の効果範囲を計算しつつ設置するべき最適解を求める。
途中で発見した、傷だらけの冒険者にはこの場所が異次元に飲み込まれるから逃げた方がいいと告げ、まだ戦闘中の冒険者には申し訳がないがと誤りを入れてから敵を粉砕する。
「急いで、もうすぐこの階層は消滅するから」
鬼気迫る顔で、魔法銀ランクの冒険者に叫ばれる。
それだけで冒険者たちは我先にと上の階層へ向けて走り出す。
そしてレムリアが目的地点へたどり着くと、すぐさまこの階層に冒険者が残っていないか探知の範囲魔法で確認。
「うん、全て避難完了。それじゃあ、次元切断を開始する」
階層の中心に鳥居を設置。
その前左右に狛犬を置くと、レムリアは柏手を打つと、静かに祝詞を唱える。
まるで歌うように律令を整え、左右の手は別々の印を描く。
やがて狛犬の口が開くと、そこへダンジョン内部の瘴気が集まり始める。
「次元切断開始……あとは任せる」
レムリアの言葉に、狛犬たちは嬉しそうに笑う。
そしてレムリアもまた、この階層から離れるべく第七層へと走り出した。
………
……
…
――第七層・ポス部屋
下の階層でレムリアに逃げるようにと伝えられた冒険者たちと、ようやく上の階のボス戦を終えてたどり着いた冒険者たちがこの場所に集まっている。
本来ならばボスを討伐しないと開かない筈の扉も空きっぱなしになっており、さらにこの階層の魔物さえ姿を消している。
「なんだ……一体何が起こっているんだ?」
「知らねぇよ。レムリアっていう冒険者が、この階層は消えるぞっていうからここまで逃げてきたんだよ。お前たちこそ、よく無事にここまでこれたな」
「魔物が消えたんだよ、素材も魔石も残さないで……こんなの初めてなんだが」
――ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
そんな話をしていると、第八層へと続く階段から奇妙な音がする。
何かが吸い込まれているような音にも、恨みがましく叫ぶ声とも着かえる音と同時に、階段下からレムリアが上がってく来た。
だが、その彼女の背後の階段も次々と消滅し、黒い何もない世界が広がっていく。
「お、おい、レムリア、これは一体何なんなんだ?」
「なにが起きているんだよ」
「詳しく説明してくれよぉぉぉぉ」
そうレムリアに問いかけたり詰め寄ったりする冒険者たち。
それでレムリアも背後を眺めると、第八層が切断されたのを確認。
「ここのダンジョンのここから上の階層を、ダンジョンコアから切り取った」
「切り取った……って、へ? それってどういうこと?」
「ここのダンジョンが危険だっていうから来たんだが、もう俺たちは必要ないのか?」
レムリアの話を聞いて混乱している冒険者たち。
だが、レムリアはちょっと待ってと手で合図を送ると、アイテムボックスから転送デバイスと屋台の骨組みを取り出し、その場で露店を作り始める。
そしてそれが完成したころに、転送装置が作動していくつものコンテナと一人の騎士が転送されてきた。
「……なるほどなぁ。これが転送システムか」
エリオンからレンタルした『白亜の鎧』と『伐魂の大剣』を装備したブンザイモンが、一番最後に転送されてきた。
そしてレムリアに一枚の書類を差し出すと、ニイッと笑って一言。
「ダンジョンコアを破壊するための戦闘力をレンタルした。ここにある商品はすべて、キノクニ領主の俺の名前でレンタルしてある。これを配布する手伝いを頼む。あと……」
受け取った書類の最後の項目を見て、レムリアはため息をつく。
「私もレンタルされたのか。レンタル目的は変異したダンジョンコアの破壊。なお、ダンジョンコアが破壊される前に疑似ダンジョンコアが届けられた場合、核の移植行う……エリオンはあとで泣かせる」
「まあ、そういうな……」
そう笑いつつ冒険者の前に出ると、キノクニは大声で叫んだ。
「ここが最前線となる。我々はここからあふれ出す魔物たちを討伐する。ここの箱の中には、俺がオールレントから借りてきた武具が納められている、自分に合う装備を見につけたら、階下からやってくる魔物の討伐を始めろ!! いいか、俺たちでキノクニ領を守り通すのだ!!」
――ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
突然姿を現した領主―の姿に、そしてその声に冒険者たちのボルテージは最高潮に達する。
それを冷たい目で見つめつつ、レムリアは隅っこで自分の装備を準備し始めた。
「ダンジョンコアは次元切断をかいくぐって、新しい階層を構築して別ルートでつなげてくるはず。すでに存在している階層がある場合、そこを無視して新たな階層を作ることは禁忌でありできない……だから、そこが繋がったら、私は中に突入してまっすぐ最下層へ向かう」
いつのまにか近寄っていたキノクニにそう告げると。
「俺たちはここで階層を護るチームと、嬢ちゃんについて行って梅雨払いをするチームに分かれる」
「半分は死ぬと思っていい。だから、死体は全て、このアイテムバッグに収納して。時間は止められるから」
「わかった。神官よ、ここにあるバッグを持って待機してくれ。死者はこの中に収めて、あとで地上に戻ってから蘇生するからな、持ち逃げするなよ!!」
「それはできない。オールレントの商品は、一定の時間の後、自動的にエリオンの元に戻るから」
「ちがいない……それじゃあ、各自この階層の調査を始めろ、新しく八層へ繋がる道を発見したら、すぐにここまで戻ってきて報告しろ!」
キノクニの指示で、冒険者たちも走る。
それを見届けてから、レムリアも今まで来ていたロングドレス型の装備から全身を包む鎧に装備を変えた。
そして第八層の浸食が始まるまで、じっとこの場で待機していた。
エリオンは、結界の中で静かに横たわるバーサーカーナイトから受けた傷を手当てしつつ考えていた。
未だキノクニ領の領主であるブンザイモンからの連絡は受けていない。
彼の連絡なくしてはダンジョンコアを破壊することはできず、ひたすらに冒険者たちの無事を祈ることしかできない。
また、レムリアからの逐次報告を聞きつつ、破壊に必要な魔導具の開発も並行で行わなくてはならなかったのだが、ここにきて最悪の報告がレムリアから届いてしまった。
ゲートキーパーの出現。
すなわち、レムリアのいる階層の一つ下が最下層であり、その下にはダンジョンコアの収められている『玄室』が存在する。
その玄室を護るために、ダンジョンコアは玄室の前の階層にラスボスクラスの魔物を生み出し、且つダンジョン内部の魔物の活性を高め始める。
これが長く続くとダンジョンは大氾濫を引き起こすのでありが、今回はそれとはし少し違う。
ダンジョン最下層ではなくその上にゲートキーパーと呼ばれている『玄室の守護者』が発生、さらに地上を目指して動き始めたのである。
普通の大氾濫でもゲートキーパーは姿を現すことはない。
ダンジョンコアを護りるのがゲートキーパーの務め、いわば最終防衛ライン。
その切り札ともいえる存在が、自ら地上に向けて侵攻を開始したのである。
「ダンジョンコアが命じたのか……ということは、ここのダンジョンの核は自立思考型に進化したといっていいレベルに進化したっていうことになる。そうなると、今の冒険者たちのレベルでは反乱を開始した魔物相手にまともに戦うことなんてできないんだよなぁ……。はぁ、また面倒なことになったなぁ……」
そう呟きつつ、エリオンはアイテムボックスを開いて次の一手を考える。
相手は赤のトワイライト、元素を自在に操るという能力を持っていることを考えると、ダンジョンコアおよびゲートキーパーもその恩恵を受けていると考えるのが無難。
「元素魔術とは……まったく、よくもまあ、レムリアと相性の悪い輩がやって来たものだよ。どうせこの事態も、どこかでつぶらに観察しているんだろうけれどな……」
そう独り言ちると、エリオンは古い魔導具を二つ取り出して転送用魔法陣の中に収める。
そしてカウンター下から通信用インカムを取り出すと、それを装着してからレムリアに通信を送る。
「次元断層発生装置と瘴気変換コアを送り出す。使い方は知っているかとおもうけれど」
『時間つぶし用の道具。でも、それでもダンジョンの活性は抑えられない』
次元断層発生装置で切断できるのは、せいぜいが階層一つ分の空間の切断。
ようは、エリオンはこの魔導具でダンジョンの第8階層そのものを切断し、最下層と地上との繋がりを切断しようというのである。
だが、それが通用するのは通常のダンジョンの氾濫程度であり、赤のトワイライトによってつくりかえられたダンジョンコアにどれだけ通用するか分からない。
また、これが作動できるのは完全活性していないダンジョンのみであり、ここの前にレムリアが破壊したダンジョンのように活性度が進行していると、次元断層発生装置そのものが作動しない。
「それでもいい。まずは次元の切断、そのあとは第7層に戦える冒険者を集めてくれ。あまりやりたくはないんだが、オールレント第七階層店の開店だ」
『はぁ……どうせあとから、キノクニにすべて請求するから問題ないけれど』
「そういうこと。誰に度の武器を貸し出すかはレムリアが現地で確認してくれ。起点に転送用デバイスを設置したら、すぐに連絡を寄越してくれ」
『オールライト』
一通りの指示はした。
あとはレムリアが動くだけ。
まあ、どうせなんとかなると考えて、エリオンは転送装置のスイッチを気軽に押した。
――カランカラーン
そしてエリオンが次の手を考え始めていると、扉が開いてブンザイモンが姿を見せる。
「腹は括ったのか?」
覚悟を決めた顔でカウンターへとやつてくるブンザイモン。
すると、彼は開口一発。
「ダンジョンコアの破壊を頼みたい」
そう力強く話し始めた。
………
……
…
――シュンッ
エリオンとの通信が終わってすぐ。
レムリアの目の前に真っ赤な鳥居と、二つの狛犬が転送されてきた。
「さて。まずはこれをここの階層の真ん中に置く」
鳥居と狛犬を回収して、レムリアは迷宮の中を走る。
頭の中に地図を描き、鳥居の効果範囲を計算しつつ設置するべき最適解を求める。
途中で発見した、傷だらけの冒険者にはこの場所が異次元に飲み込まれるから逃げた方がいいと告げ、まだ戦闘中の冒険者には申し訳がないがと誤りを入れてから敵を粉砕する。
「急いで、もうすぐこの階層は消滅するから」
鬼気迫る顔で、魔法銀ランクの冒険者に叫ばれる。
それだけで冒険者たちは我先にと上の階層へ向けて走り出す。
そしてレムリアが目的地点へたどり着くと、すぐさまこの階層に冒険者が残っていないか探知の範囲魔法で確認。
「うん、全て避難完了。それじゃあ、次元切断を開始する」
階層の中心に鳥居を設置。
その前左右に狛犬を置くと、レムリアは柏手を打つと、静かに祝詞を唱える。
まるで歌うように律令を整え、左右の手は別々の印を描く。
やがて狛犬の口が開くと、そこへダンジョン内部の瘴気が集まり始める。
「次元切断開始……あとは任せる」
レムリアの言葉に、狛犬たちは嬉しそうに笑う。
そしてレムリアもまた、この階層から離れるべく第七層へと走り出した。
………
……
…
――第七層・ポス部屋
下の階層でレムリアに逃げるようにと伝えられた冒険者たちと、ようやく上の階のボス戦を終えてたどり着いた冒険者たちがこの場所に集まっている。
本来ならばボスを討伐しないと開かない筈の扉も空きっぱなしになっており、さらにこの階層の魔物さえ姿を消している。
「なんだ……一体何が起こっているんだ?」
「知らねぇよ。レムリアっていう冒険者が、この階層は消えるぞっていうからここまで逃げてきたんだよ。お前たちこそ、よく無事にここまでこれたな」
「魔物が消えたんだよ、素材も魔石も残さないで……こんなの初めてなんだが」
――ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
そんな話をしていると、第八層へと続く階段から奇妙な音がする。
何かが吸い込まれているような音にも、恨みがましく叫ぶ声とも着かえる音と同時に、階段下からレムリアが上がってく来た。
だが、その彼女の背後の階段も次々と消滅し、黒い何もない世界が広がっていく。
「お、おい、レムリア、これは一体何なんなんだ?」
「なにが起きているんだよ」
「詳しく説明してくれよぉぉぉぉ」
そうレムリアに問いかけたり詰め寄ったりする冒険者たち。
それでレムリアも背後を眺めると、第八層が切断されたのを確認。
「ここのダンジョンのここから上の階層を、ダンジョンコアから切り取った」
「切り取った……って、へ? それってどういうこと?」
「ここのダンジョンが危険だっていうから来たんだが、もう俺たちは必要ないのか?」
レムリアの話を聞いて混乱している冒険者たち。
だが、レムリアはちょっと待ってと手で合図を送ると、アイテムボックスから転送デバイスと屋台の骨組みを取り出し、その場で露店を作り始める。
そしてそれが完成したころに、転送装置が作動していくつものコンテナと一人の騎士が転送されてきた。
「……なるほどなぁ。これが転送システムか」
エリオンからレンタルした『白亜の鎧』と『伐魂の大剣』を装備したブンザイモンが、一番最後に転送されてきた。
そしてレムリアに一枚の書類を差し出すと、ニイッと笑って一言。
「ダンジョンコアを破壊するための戦闘力をレンタルした。ここにある商品はすべて、キノクニ領主の俺の名前でレンタルしてある。これを配布する手伝いを頼む。あと……」
受け取った書類の最後の項目を見て、レムリアはため息をつく。
「私もレンタルされたのか。レンタル目的は変異したダンジョンコアの破壊。なお、ダンジョンコアが破壊される前に疑似ダンジョンコアが届けられた場合、核の移植行う……エリオンはあとで泣かせる」
「まあ、そういうな……」
そう笑いつつ冒険者の前に出ると、キノクニは大声で叫んだ。
「ここが最前線となる。我々はここからあふれ出す魔物たちを討伐する。ここの箱の中には、俺がオールレントから借りてきた武具が納められている、自分に合う装備を見につけたら、階下からやってくる魔物の討伐を始めろ!! いいか、俺たちでキノクニ領を守り通すのだ!!」
――ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
突然姿を現した領主―の姿に、そしてその声に冒険者たちのボルテージは最高潮に達する。
それを冷たい目で見つめつつ、レムリアは隅っこで自分の装備を準備し始めた。
「ダンジョンコアは次元切断をかいくぐって、新しい階層を構築して別ルートでつなげてくるはず。すでに存在している階層がある場合、そこを無視して新たな階層を作ることは禁忌でありできない……だから、そこが繋がったら、私は中に突入してまっすぐ最下層へ向かう」
いつのまにか近寄っていたキノクニにそう告げると。
「俺たちはここで階層を護るチームと、嬢ちゃんについて行って梅雨払いをするチームに分かれる」
「半分は死ぬと思っていい。だから、死体は全て、このアイテムバッグに収納して。時間は止められるから」
「わかった。神官よ、ここにあるバッグを持って待機してくれ。死者はこの中に収めて、あとで地上に戻ってから蘇生するからな、持ち逃げするなよ!!」
「それはできない。オールレントの商品は、一定の時間の後、自動的にエリオンの元に戻るから」
「ちがいない……それじゃあ、各自この階層の調査を始めろ、新しく八層へ繋がる道を発見したら、すぐにここまで戻ってきて報告しろ!」
キノクニの指示で、冒険者たちも走る。
それを見届けてから、レムリアも今まで来ていたロングドレス型の装備から全身を包む鎧に装備を変えた。
そして第八層の浸食が始まるまで、じっとこの場で待機していた。
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