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第一章・迷宮大氾濫と赤の黄昏編
第19話・ダンジョン攻略戦と、降臨した鬼神
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ドドドドドドドドドドトドッ
ダンジョン5層、そのボス部屋の外では、攻略のためにやってきたパーティーが列をなして待機している。
一度討伐すると、ボス部屋は次に扉が開くまで最低10分のクールタイムが発生する。
この原理はいまだ不明であるが、王都魔術師協会の統一見解では、『ボス部屋の内部に瘴気がたまり、ボスクラスのモンスターを再構築するのに必要な時間である』という公式発表がある。
これについてはエリオンやレムリアも同じ回答に至っているのだが、今回のように目的がダンジョンコアのはかいというパターンでは、このクールタイムすら惜しい。
それ故にボス部屋の前で臨時パーティーを組むものもいるのだが、中には報酬の配分でもめるパーティーも少なくはない。
結果として自分たちのパーティーを信じ、臨時を組まないという冒険者の方が圧倒的に多かった。
「……それじゃあ、そろそろ行く」
その5層ボス部屋の手前では、順番を待つレムリアの姿がある。
そのすぐ後ろは4人パーティーであり、彼女と臨時を組んで入った方が効率的ではないかと提案した結果、ボス部屋のみの臨時パーティーを組むことになった。
そして扉が開き4人は慎重に内部へと入っていくのだが、レムリアは奥に出現した巨大なサソリ型のモンスターに向かって走り出した。
「待て、まだバフを掛けていない!!」
「必要ない。このモンスターの素材は巣へ出貴方たちにあげるから。私は時間が惜しい」
――ドコドコドコドコドコォォォォッ
両手持ちハンマーを左右に一本ずつ持つと、レムリアは巨大サソリに向かって乱撃を打ち込む。
反撃とばかりに振るわれた鋏や尻尾の攻撃もハンマーでカウンターアタックして弾き飛ばすと、その分厚い外骨格を砕くかのようにハンマーを振り落とす。
ボス部屋が開かれてから僅か4分、奥にあった下層への扉が開かれると、大量に積み上げられた素材を無視してレムリアは先に進んでいった。
「……え、あ、あの……この素材とかドロップ品……」
「あげる。じゃあね」
今のレムリアの戦闘を見て呆然とする冒険者たちは、とりあえずは目の前の素材などを回収、このまま奥へ進むか地上へ一旦戻るか考え始める。
アイテムボックスを持たない彼らにとって、カバンに収まりきらない素材を持って先に進むことはできず、結果として地上に戻ることを選択した。
そしてこの後も、7層のボス部屋に至るまでレムリアは同じようなことを繰り返す。
何もせずにボスのドロップ品を入手したものの、あまりにもばつが悪くて手を付けずらい冒険者たちをあとにして、ようやく未踏破の8層までたどり着いた。
――ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
巨大な大空洞。
回廊型であったこれまでの階層とは異なり、この階層はこの大空洞一つしかない。
階段を降りてすぐに大空洞、その奥に巨大な扉。
どう見ても、ここがボス部屋直結であることは間違いがないとレムリアは確信したものの、その扉の前に立つ東洋風の鎧武者を見て、武器を片手剣と盾に持ち替えた。
「……確か、黄泉路の主人。マスター・クロサワとこんなところで会うなんて、今日の運勢は最悪」
この世界のアンデットとは異なる、異界の不死者。
それらを統べる不死将軍と呼ばれるものが、このマスター・クロサワである。
黒光する鎧と巨大な刀、そして全身に纏う青い闘気。
それらの特徴が、レムリアの知るマスター・クロサワと一致する。
「……イザ、ジンジョウニ、ショウブ!!」
――シュンッ
一瞬で100メートル以上の間合いを踏み込んでくるクロサワ。
瞬歩という体術によって間合いを詰めてくると、両手で構えた刀をレムリアに向かって振り落とす。
――キン
その一撃を盾て受け流そうとするが、まるでバターを切断するかのように盾の下部が斜めに切断される。
さらに刀は大きく弧を描いてレムリアに向かって振りぬかれるのだが、それは魔力を通した片手剣で受け止め、弾き飛ばされた。
「クックックッ、ナカナカヤルナ、ナヲモウセ」
「レムリア。いまは、ただのレムリア」
「ナルホド、デハ、ソノカラダ、セッシャガモライウケル」
――ヒュンッ……ガギィィィィン
一瞬で4撃叩き込まれるも、レムリアはすべてをガード。
だが、3撃目を受けて片手剣の刀身に亀裂が入り、4撃目で砕け散った。
「……アダマンタイト製の剣が砕けるとは……それに分かった、貴方の本体はその刀」
「イカニモ……セッシャノタマシイハ、コノカタナノナカニアル」
「倒した相手の体を奪い、その力を糧として扱うことが出来る……つていうところ?」
「サッシガイイ」
そのまま距離を取ったレムリアに向かって剣を振るうと、真空の刃がレムリアを襲う。
だが、それは左腕の巨大な籠手を装着すると、彼女はそれで飛来する刃のすべてを弾き飛ばした。
「……クックック、マジンノヒダリウデカ。キサマ、マサカ【忌ミ子】ナノカ」
「残念。これはエリオンが作ってくれた装備。ということで、貴方の攻撃は大体解析できた」
攻撃を繰り返し技を受け止めつつも、レムリアはマスター・クロサワを解析し続けていた。
結果として分かったのは、本体は刀の部分であり、それを破壊すればマスタ・クロサワは停止する。
もっとも、その刀自体がとんでもない能力の塊ゆえ、今のレムリアの装備では歯が立たないことも理解している。
「リカイシタトシテ、タイサクハアルノカネ?」
「ある。けれど最後の手段なので、こっちも切り札を使う」
「キリフダ?」
レムリアの言葉でクロサワも少し下がり様子を見る。
だが、その瞬間にレムリアは転送デバイスを背後に召喚すると、両手をパーーーーンと叩いて合図を送る。
――ブゥン
転送デバイスが作動し、レムリアの目の前にフルプレートの騎士が姿を現す。
それはクロサワを確認するや否や、手にしたハルバードを振るいつつクロサワに向かって攻撃を開始した。
――ギン、ガギン
「…………」
ハルバードの攻撃を、クロサワは必死に刀で受け止める。
レムリアの倍はあるであろう攻撃速度、しかも一撃一撃はかなり重い。
そかも、その攻撃を受け止めるたびに刀の中に眠る魂が、少しずつ削られていくのが判る。
「キサマ、ソノプキハナンダ?」
「エリオン特製対アンデット特攻兵器・ソウルイーター。刀に封じられている魂を喰らう、まさな鬼悪魔畜生の所業。これで切られたものは魂が削りとられ、やがてソウルイーターの一部になる……」
――ボロッ
レムリアの言葉の最中、クロサワの持つ刀がボロボロと崩れる。
「キ、キサマァァァァァ」
「うん。私もこれが来るとは思っていなかった。だから、とっとと死んで、私もこいつを相手するのは面倒くさいから」
レムリアの言葉の意味を理解できず、やがてクロサワの持つ刀はボロボロに崩れ、やがて停止する。
だが、クロサワが動かなくなるのを確認すると、騎士はハルバードを構えてレムリアに向かって襲い掛かっていった。
「ふぅ。バーサーカーアーマーとソウルイーターの組み合わせは最悪。確かにこの転送デバイスは、その時々において最も有効な装備をオールレントの兵器庫から転送するけれど……いきなりこいつが来るなんて、聞いていない」
左腕を盾のように構えるレムリア。
その彼女に向かって騎士はハルバードを振り回しつつ突っ込んでくるが、彼女の目の前まで近寄った瞬間に転送デバイスが起動し、騎士を元いた場所へと送り返してしまった。
「……うん、誤作動したみたい。あとはエリオンが何とかしてくれる……はず」
冷汗をぬぐいつつ、レムリアは落ちているクロサワのカタナの柄を拾い上げる。
すると、ゆっくりと奥にある扉が開き始めた。
そこから噴き出す粘液のようにドロドロとした瘴気を見て、レムリアも眉をひそめてしまう。
手元のデバイスを加倉人するとこの場の瘴気濃度が急激に上昇。
ダンジョン最下層レベルの濃度まで上がっているのを確認した。
「うん、この次が最下層。さて、どうしようか思案」
ドロドロの粘液から人型の姿がいくつも発生すると、やがて獅子の顔を持つ6腕の化け物が次々と生まれ始める。
「……ゲートキーパー。うん、この下にダンジョンコアがあるということで正解だけど。エリオン、ダンジョンコアを破壊していいの?」
デバイスを通じてエリオンに問いかけるも、まだキノクニの返答はない。
それ故に、レムリアの言葉に対してエリオンが出した解答は一つ。
『8階層を封鎖、7階層まで戻ってエネルギーフィールドを展開しておいてくれ。すぐに転送するから』
「了解、どれぐらいで転送可能?」
『送り返されたバーサーカーナイトを倒したらすぐだから、5分だ』
「遅い、40秒で終わらせて。そうでないと、こいつらが完全活性する」
徐々に広がる粘菌、そしてそこから生まれるゲートキーパーを牽制しつつ、レムリアは少しずつ後方へと下がり始めた。
ダンジョン5層、そのボス部屋の外では、攻略のためにやってきたパーティーが列をなして待機している。
一度討伐すると、ボス部屋は次に扉が開くまで最低10分のクールタイムが発生する。
この原理はいまだ不明であるが、王都魔術師協会の統一見解では、『ボス部屋の内部に瘴気がたまり、ボスクラスのモンスターを再構築するのに必要な時間である』という公式発表がある。
これについてはエリオンやレムリアも同じ回答に至っているのだが、今回のように目的がダンジョンコアのはかいというパターンでは、このクールタイムすら惜しい。
それ故にボス部屋の前で臨時パーティーを組むものもいるのだが、中には報酬の配分でもめるパーティーも少なくはない。
結果として自分たちのパーティーを信じ、臨時を組まないという冒険者の方が圧倒的に多かった。
「……それじゃあ、そろそろ行く」
その5層ボス部屋の手前では、順番を待つレムリアの姿がある。
そのすぐ後ろは4人パーティーであり、彼女と臨時を組んで入った方が効率的ではないかと提案した結果、ボス部屋のみの臨時パーティーを組むことになった。
そして扉が開き4人は慎重に内部へと入っていくのだが、レムリアは奥に出現した巨大なサソリ型のモンスターに向かって走り出した。
「待て、まだバフを掛けていない!!」
「必要ない。このモンスターの素材は巣へ出貴方たちにあげるから。私は時間が惜しい」
――ドコドコドコドコドコォォォォッ
両手持ちハンマーを左右に一本ずつ持つと、レムリアは巨大サソリに向かって乱撃を打ち込む。
反撃とばかりに振るわれた鋏や尻尾の攻撃もハンマーでカウンターアタックして弾き飛ばすと、その分厚い外骨格を砕くかのようにハンマーを振り落とす。
ボス部屋が開かれてから僅か4分、奥にあった下層への扉が開かれると、大量に積み上げられた素材を無視してレムリアは先に進んでいった。
「……え、あ、あの……この素材とかドロップ品……」
「あげる。じゃあね」
今のレムリアの戦闘を見て呆然とする冒険者たちは、とりあえずは目の前の素材などを回収、このまま奥へ進むか地上へ一旦戻るか考え始める。
アイテムボックスを持たない彼らにとって、カバンに収まりきらない素材を持って先に進むことはできず、結果として地上に戻ることを選択した。
そしてこの後も、7層のボス部屋に至るまでレムリアは同じようなことを繰り返す。
何もせずにボスのドロップ品を入手したものの、あまりにもばつが悪くて手を付けずらい冒険者たちをあとにして、ようやく未踏破の8層までたどり着いた。
――ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
巨大な大空洞。
回廊型であったこれまでの階層とは異なり、この階層はこの大空洞一つしかない。
階段を降りてすぐに大空洞、その奥に巨大な扉。
どう見ても、ここがボス部屋直結であることは間違いがないとレムリアは確信したものの、その扉の前に立つ東洋風の鎧武者を見て、武器を片手剣と盾に持ち替えた。
「……確か、黄泉路の主人。マスター・クロサワとこんなところで会うなんて、今日の運勢は最悪」
この世界のアンデットとは異なる、異界の不死者。
それらを統べる不死将軍と呼ばれるものが、このマスター・クロサワである。
黒光する鎧と巨大な刀、そして全身に纏う青い闘気。
それらの特徴が、レムリアの知るマスター・クロサワと一致する。
「……イザ、ジンジョウニ、ショウブ!!」
――シュンッ
一瞬で100メートル以上の間合いを踏み込んでくるクロサワ。
瞬歩という体術によって間合いを詰めてくると、両手で構えた刀をレムリアに向かって振り落とす。
――キン
その一撃を盾て受け流そうとするが、まるでバターを切断するかのように盾の下部が斜めに切断される。
さらに刀は大きく弧を描いてレムリアに向かって振りぬかれるのだが、それは魔力を通した片手剣で受け止め、弾き飛ばされた。
「クックックッ、ナカナカヤルナ、ナヲモウセ」
「レムリア。いまは、ただのレムリア」
「ナルホド、デハ、ソノカラダ、セッシャガモライウケル」
――ヒュンッ……ガギィィィィン
一瞬で4撃叩き込まれるも、レムリアはすべてをガード。
だが、3撃目を受けて片手剣の刀身に亀裂が入り、4撃目で砕け散った。
「……アダマンタイト製の剣が砕けるとは……それに分かった、貴方の本体はその刀」
「イカニモ……セッシャノタマシイハ、コノカタナノナカニアル」
「倒した相手の体を奪い、その力を糧として扱うことが出来る……つていうところ?」
「サッシガイイ」
そのまま距離を取ったレムリアに向かって剣を振るうと、真空の刃がレムリアを襲う。
だが、それは左腕の巨大な籠手を装着すると、彼女はそれで飛来する刃のすべてを弾き飛ばした。
「……クックック、マジンノヒダリウデカ。キサマ、マサカ【忌ミ子】ナノカ」
「残念。これはエリオンが作ってくれた装備。ということで、貴方の攻撃は大体解析できた」
攻撃を繰り返し技を受け止めつつも、レムリアはマスター・クロサワを解析し続けていた。
結果として分かったのは、本体は刀の部分であり、それを破壊すればマスタ・クロサワは停止する。
もっとも、その刀自体がとんでもない能力の塊ゆえ、今のレムリアの装備では歯が立たないことも理解している。
「リカイシタトシテ、タイサクハアルノカネ?」
「ある。けれど最後の手段なので、こっちも切り札を使う」
「キリフダ?」
レムリアの言葉でクロサワも少し下がり様子を見る。
だが、その瞬間にレムリアは転送デバイスを背後に召喚すると、両手をパーーーーンと叩いて合図を送る。
――ブゥン
転送デバイスが作動し、レムリアの目の前にフルプレートの騎士が姿を現す。
それはクロサワを確認するや否や、手にしたハルバードを振るいつつクロサワに向かって攻撃を開始した。
――ギン、ガギン
「…………」
ハルバードの攻撃を、クロサワは必死に刀で受け止める。
レムリアの倍はあるであろう攻撃速度、しかも一撃一撃はかなり重い。
そかも、その攻撃を受け止めるたびに刀の中に眠る魂が、少しずつ削られていくのが判る。
「キサマ、ソノプキハナンダ?」
「エリオン特製対アンデット特攻兵器・ソウルイーター。刀に封じられている魂を喰らう、まさな鬼悪魔畜生の所業。これで切られたものは魂が削りとられ、やがてソウルイーターの一部になる……」
――ボロッ
レムリアの言葉の最中、クロサワの持つ刀がボロボロと崩れる。
「キ、キサマァァァァァ」
「うん。私もこれが来るとは思っていなかった。だから、とっとと死んで、私もこいつを相手するのは面倒くさいから」
レムリアの言葉の意味を理解できず、やがてクロサワの持つ刀はボロボロに崩れ、やがて停止する。
だが、クロサワが動かなくなるのを確認すると、騎士はハルバードを構えてレムリアに向かって襲い掛かっていった。
「ふぅ。バーサーカーアーマーとソウルイーターの組み合わせは最悪。確かにこの転送デバイスは、その時々において最も有効な装備をオールレントの兵器庫から転送するけれど……いきなりこいつが来るなんて、聞いていない」
左腕を盾のように構えるレムリア。
その彼女に向かって騎士はハルバードを振り回しつつ突っ込んでくるが、彼女の目の前まで近寄った瞬間に転送デバイスが起動し、騎士を元いた場所へと送り返してしまった。
「……うん、誤作動したみたい。あとはエリオンが何とかしてくれる……はず」
冷汗をぬぐいつつ、レムリアは落ちているクロサワのカタナの柄を拾い上げる。
すると、ゆっくりと奥にある扉が開き始めた。
そこから噴き出す粘液のようにドロドロとした瘴気を見て、レムリアも眉をひそめてしまう。
手元のデバイスを加倉人するとこの場の瘴気濃度が急激に上昇。
ダンジョン最下層レベルの濃度まで上がっているのを確認した。
「うん、この次が最下層。さて、どうしようか思案」
ドロドロの粘液から人型の姿がいくつも発生すると、やがて獅子の顔を持つ6腕の化け物が次々と生まれ始める。
「……ゲートキーパー。うん、この下にダンジョンコアがあるということで正解だけど。エリオン、ダンジョンコアを破壊していいの?」
デバイスを通じてエリオンに問いかけるも、まだキノクニの返答はない。
それ故に、レムリアの言葉に対してエリオンが出した解答は一つ。
『8階層を封鎖、7階層まで戻ってエネルギーフィールドを展開しておいてくれ。すぐに転送するから』
「了解、どれぐらいで転送可能?」
『送り返されたバーサーカーナイトを倒したらすぐだから、5分だ』
「遅い、40秒で終わらせて。そうでないと、こいつらが完全活性する」
徐々に広がる粘菌、そしてそこから生まれるゲートキーパーを牽制しつつ、レムリアは少しずつ後方へと下がり始めた。
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