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瓦礫なら、なんとでもなる
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──ガギガギギギギギギギィ
ゆっくりと、そして確実に周囲の建物を飲み込んでいく瓦礫ゴーレム。
ミヅチは玄白に頼み込まれ、ゴーレムの体の部位の改修のために剣を振り落とす。
だが、ショートソードでは致命傷にもならず、抉り取ることもできない。
「ちっ。理論的には刃よりもハンマーの方が有効なのかよ」
──クルッ
両手のショートソードを手の中でくるりと回す。
そして腰の鞘に収めると、右手を横に伸ばして。
「アルデア、ハンマーだ!!」
「姉御、これを使ってください!!」
背後から聞こえる副官の声。
そして音を立てながら真横に飛んでくるハンマーの柄をガッチリと握りしめる。
「ふん。これならいけるかもね……どっせぇぇぇぇぇい!!」
──ドッゴォォォォォォン
ミヅチ自身を敵と認定した瓦礫ゴーレムは、触手を鞭のように伸ばして彼女を撃ち据えようとする。
だが、それを軽く躱して触手が地面を殴った瞬間、ミヅチは触手目掛けてハンマーを撃ち落とした!!
もしも瓦礫ゴーレムに声帯器官があったなら、悲鳴をあげているだろう。
振り落とされたハンマーは触手を潰し、粉砕し、千切り落とす。
それを全力で後方に蹴飛ばすと、待機していたアルテアがそれをガッチリとキャッチ。
「アルテア、それをスギタ先生に」
「任せてくだせぇ、だけだけどけぇぇぇぇ」
傍に瓦礫ゴーレムの触手の先端を抱えて走るアルテア。
まだ触手自身は生きてあるらしくビチバチと脇の下で蠢いているのだが、アルテアは落とさないように抱えたまま、後方で待機している玄白の元までそれを届けた。
「先生、お願いします!!!!」
「どぉ~れ」
片手に解体新書を携え、玄白が瓦礫ゴーレムに触れる。
──キィィィィィン
すると、ページがどんどんと開いていき、瓦礫ゴーレムが登録されたページに辿り着く。
「瓦礫ゴーレムの弱点は……強酸?」
玄白の周囲に集まっている冒険者たちを見るが、誰もかれも頭を左右に振る。
「強酸ってなんだ?」
「酸……魔法じゃ無理だし、そもそも酸を吐き出すのがスライムだからなぁ。魔の森に行かないと無理だわ」
「そんなことをいきなり言われても、無理じゃないか?」
「ふむ、そういうことか。次!!」
急いで説明文を読んでいく。
分かったことは、ゴーレムコアから生まれたゴーレムは、最初に触れた物の特性を身につける。
だが、その後で別の属性を身につけることができない。
「瓦礫ゴーレムの属性は、創造物の取り込み。他属性は取り込めない……ふむ。重量が重いため飛ぶことは不可能……壁面も登れない? ほう?」
──パタン
解体新書を閉じて、瓦礫ゴーレムを見る。
そこではミヅチら闇ギルドの精鋭たちが、必死に瓦礫ゴーレムの侵攻を止めようとしている。
「試しに……」
地面に手を当てて、頭の中で念じる。
──ボコッ
すると、玄白が触れていた地面が消える。
その場にあった地面がアイテムボックスの中に収納されたのである。
「魔力を多めに注げば、収納できる範囲が増えるか。よし」
スックと立ち上がり、ミヅチの方に向かって走り出す。
全身に闘気を循環させ、脚力を限界近くまで強化し、回避率を高めていく。
「スギタ先生、ここは危険ですから下がれ!!」
「なあに、勝算なくてこんな危険なことはせんわ」
瓦礫ゴーレムの手前で停止し、両手を地面に添える。
そして残りの魔力を解体新書に集めて、アイテムボックスを開いた。
「広範囲収納!! これでも喰らえ」
──ボッゴォォォォォォッ
瓦礫ゴーレムの足元がボコッと消える。
そのまま落下していくゴーレムは、落ちてなるものかと必死に触手を伸ばして地面に突き刺す。
だが、ミヅチたちがそこに向かってハンマーを降りおとし、触手を次々と叩き潰している。
「こんな大規模なアイテムボックスが使えるなんて、スギタ先生の魔力はどれだけ多いんだよ」
「知らん!!」
そんなことを話しつつ、最後の触手を潰したとき。
瓦礫ゴーレムは穴の中に落下し、やがで轟音を上げる。
「やったか!!」
「さあ。調べた感じじゃと、やつは自力で出てくることができないようじゃからな。あとは酸を用意して注ぎ込み、溶かして仕舞えば良い」
「そ、そうなのか」
恐る恐る穴に近寄って底を見るミヅチたち。
深さにしておよそ200メートル、自重が重すぎる瓦礫ゴーレムでは、触手を壁面に突き立てて上がってくることができないようである。
しかも周囲は地面、ゴーレムの部品として吸収することができない。
「酸か。これから用意するとなると、かなり時間が掛かるだろううな」
「それよりも姉御! ゴーレムのヤロウ、横穴を掘り出しましたぜ」
「なんだと!!」
アルテアの叫びで、全員が中を見る。
すると確かに、ゆっくりではあるが瓦礫ゴーレムが横穴を掘り始めた。
「遅いが、ありゃあ逃げられるな」
「逃すわけないだろうがぁ!!」
玄白が呟くと、背後から何者かが駆けてくる。
そして背中の聖剣を引き抜くと、それを構えて穴の中に飛び込んでいった。
「……今のは誰じゃ?」
「勇者タクマですよ。それに彼のパーティメンバーと騎士団まで集まってきましたが……」
そのミヅチの言葉で、玄白はこれ以上はここにいても仕方ないと判断。
「なら、後は任せて良いな。わしは怪我人の治療に戻るので、説明は頼む」
「あ……え? この騒動を収めた功績は、スギタ先生ですよね?」
「面倒ごとは任せるわ、それじゃなあ」
手をひらひらと降りながら、玄白はスラムの大広場へと戻っていく。
そして集まっている怪我人の手当てを始めることにした。
ゆっくりと、そして確実に周囲の建物を飲み込んでいく瓦礫ゴーレム。
ミヅチは玄白に頼み込まれ、ゴーレムの体の部位の改修のために剣を振り落とす。
だが、ショートソードでは致命傷にもならず、抉り取ることもできない。
「ちっ。理論的には刃よりもハンマーの方が有効なのかよ」
──クルッ
両手のショートソードを手の中でくるりと回す。
そして腰の鞘に収めると、右手を横に伸ばして。
「アルデア、ハンマーだ!!」
「姉御、これを使ってください!!」
背後から聞こえる副官の声。
そして音を立てながら真横に飛んでくるハンマーの柄をガッチリと握りしめる。
「ふん。これならいけるかもね……どっせぇぇぇぇぇい!!」
──ドッゴォォォォォォン
ミヅチ自身を敵と認定した瓦礫ゴーレムは、触手を鞭のように伸ばして彼女を撃ち据えようとする。
だが、それを軽く躱して触手が地面を殴った瞬間、ミヅチは触手目掛けてハンマーを撃ち落とした!!
もしも瓦礫ゴーレムに声帯器官があったなら、悲鳴をあげているだろう。
振り落とされたハンマーは触手を潰し、粉砕し、千切り落とす。
それを全力で後方に蹴飛ばすと、待機していたアルテアがそれをガッチリとキャッチ。
「アルテア、それをスギタ先生に」
「任せてくだせぇ、だけだけどけぇぇぇぇ」
傍に瓦礫ゴーレムの触手の先端を抱えて走るアルテア。
まだ触手自身は生きてあるらしくビチバチと脇の下で蠢いているのだが、アルテアは落とさないように抱えたまま、後方で待機している玄白の元までそれを届けた。
「先生、お願いします!!!!」
「どぉ~れ」
片手に解体新書を携え、玄白が瓦礫ゴーレムに触れる。
──キィィィィィン
すると、ページがどんどんと開いていき、瓦礫ゴーレムが登録されたページに辿り着く。
「瓦礫ゴーレムの弱点は……強酸?」
玄白の周囲に集まっている冒険者たちを見るが、誰もかれも頭を左右に振る。
「強酸ってなんだ?」
「酸……魔法じゃ無理だし、そもそも酸を吐き出すのがスライムだからなぁ。魔の森に行かないと無理だわ」
「そんなことをいきなり言われても、無理じゃないか?」
「ふむ、そういうことか。次!!」
急いで説明文を読んでいく。
分かったことは、ゴーレムコアから生まれたゴーレムは、最初に触れた物の特性を身につける。
だが、その後で別の属性を身につけることができない。
「瓦礫ゴーレムの属性は、創造物の取り込み。他属性は取り込めない……ふむ。重量が重いため飛ぶことは不可能……壁面も登れない? ほう?」
──パタン
解体新書を閉じて、瓦礫ゴーレムを見る。
そこではミヅチら闇ギルドの精鋭たちが、必死に瓦礫ゴーレムの侵攻を止めようとしている。
「試しに……」
地面に手を当てて、頭の中で念じる。
──ボコッ
すると、玄白が触れていた地面が消える。
その場にあった地面がアイテムボックスの中に収納されたのである。
「魔力を多めに注げば、収納できる範囲が増えるか。よし」
スックと立ち上がり、ミヅチの方に向かって走り出す。
全身に闘気を循環させ、脚力を限界近くまで強化し、回避率を高めていく。
「スギタ先生、ここは危険ですから下がれ!!」
「なあに、勝算なくてこんな危険なことはせんわ」
瓦礫ゴーレムの手前で停止し、両手を地面に添える。
そして残りの魔力を解体新書に集めて、アイテムボックスを開いた。
「広範囲収納!! これでも喰らえ」
──ボッゴォォォォォォッ
瓦礫ゴーレムの足元がボコッと消える。
そのまま落下していくゴーレムは、落ちてなるものかと必死に触手を伸ばして地面に突き刺す。
だが、ミヅチたちがそこに向かってハンマーを降りおとし、触手を次々と叩き潰している。
「こんな大規模なアイテムボックスが使えるなんて、スギタ先生の魔力はどれだけ多いんだよ」
「知らん!!」
そんなことを話しつつ、最後の触手を潰したとき。
瓦礫ゴーレムは穴の中に落下し、やがで轟音を上げる。
「やったか!!」
「さあ。調べた感じじゃと、やつは自力で出てくることができないようじゃからな。あとは酸を用意して注ぎ込み、溶かして仕舞えば良い」
「そ、そうなのか」
恐る恐る穴に近寄って底を見るミヅチたち。
深さにしておよそ200メートル、自重が重すぎる瓦礫ゴーレムでは、触手を壁面に突き立てて上がってくることができないようである。
しかも周囲は地面、ゴーレムの部品として吸収することができない。
「酸か。これから用意するとなると、かなり時間が掛かるだろううな」
「それよりも姉御! ゴーレムのヤロウ、横穴を掘り出しましたぜ」
「なんだと!!」
アルテアの叫びで、全員が中を見る。
すると確かに、ゆっくりではあるが瓦礫ゴーレムが横穴を掘り始めた。
「遅いが、ありゃあ逃げられるな」
「逃すわけないだろうがぁ!!」
玄白が呟くと、背後から何者かが駆けてくる。
そして背中の聖剣を引き抜くと、それを構えて穴の中に飛び込んでいった。
「……今のは誰じゃ?」
「勇者タクマですよ。それに彼のパーティメンバーと騎士団まで集まってきましたが……」
そのミヅチの言葉で、玄白はこれ以上はここにいても仕方ないと判断。
「なら、後は任せて良いな。わしは怪我人の治療に戻るので、説明は頼む」
「あ……え? この騒動を収めた功績は、スギタ先生ですよね?」
「面倒ごとは任せるわ、それじゃなあ」
手をひらひらと降りながら、玄白はスラムの大広場へと戻っていく。
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