一ヶ月の入院~私の場合~

よしき

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一ヶ月の入院~私の場合~ 4

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 さて、「閉鎖病棟」に個室に入院しました。
個室には...
ベッド(布団)・ポータブルトイレ・洋服ダンス・胸くらい高さのところにある窓(ほとんど開かない)・カーテン・洗面所・感染ゴミの段ボール箱しかない殺風景な部屋でした。
   しかも24時間施錠がされ、トイレも一回一回ナースコールをして片付けてもらわないといけません。(自分より若い男性の看護師さんもいるので、おばさんの私もさすがに恥ずかしかったですw)
それでも、仕方ないか、と、諦めました。
  さらに食器は、全てディスポの使いすて皿。
  今どきMRSAの食器は普通に回収して、他の患者さんのものとは、分けて洗う事はありますが...
  私は、まだMRSA(+)。まるで、バイ菌扱いでした。
  『それでも、ここの病院も、突然MRSAだと言われて、混乱しているんだろうな。其れにしても、勉強してないのかしら?』
 そう、思って我慢しました。

  しかし、私は、しばらくしてあることに気がつきました。
「あれ?入院してから、一度も自分の荷物を触った事がない?」
   そうです。荷物は入院するときに中身を確認しますと、言われたのです。
  しかし着替えから何から、全てがないのです。
   夕方になり食事を終えた時、寝巻きに着替えたいと思った時の事でした。
  私は、普通にナースコールを押し、
「すみません、私の荷物が届いていないんですが?」
と、たずねました。すると、
「今日一日は、荷物を預かることになっています」
そう言われました。
   正直、前の病院では、一般だったのですが、自分の荷物は自由に扱っていました。
  なのに何故、今ごろ⁉ 疑問だらけの私。
  でも、せめて、下着は変えたいし、顔も洗いたい...その事を伝えると
「じゃあ、小さいタオルとパンツだけあればいいですか?それなら今お持ちします。」
そういわれました。
  そして、少しして、看護師の方(男性)が、何も隠さずに、下着を手に持って個室にやって来ました。
  私は、羞恥心でいっぱいの心を隠しながら、
「何故荷物を返してくれないんですか?」
  そう聞きました。すると、
「この病棟の決りです。明日まで我慢してください」
その一言。
  仕方なく下着とタオルをもらって、パジャマにも着替えられずに、その夜は過ぎました。

  次の日(日曜日)。日勤の看護師さんがやって来ました。
私は、同じように荷物を返してほしいと、言いました。すると、
「ああ、そうですか?おかしいな?今確認してきます」
と、部屋を退室していきました。少しすると、ナースコールで返事がきました。
「ハゼミさんは、明日まで荷物は返せません」
え?
私は、驚きました。だって、夜勤の看護師は「明日まで」と、確かに言っていたのに。
  また「明日」の言葉が出てきたのです。
 おかしいではないか?と、話をすると
「...今夜担当のS看護師が来るのでそれまで待ってください」
と、言うのです。
  私は、何回か確認しましたが、同じ返答しか返ってきません。仕方なく我慢しました。(もちろん、部屋から一歩も出ないし、トイレも毎回呼んでもらって構わないとのことだったので、毎回ナースコールをして片付けてもらいました。  その時は、『え?』『なんて言われていますか?』など、男性の看護師に毎回言われました。辛かった。)

  唯一の救いは、昼間はヒコちゃんが来てくれて、少し愚痴を言えたり落書きちょうと、ボールペンと、おやつ代わりに飴を持ってきてくれたことです。
  私は、嬉しくって、日記をかくこてにしました。(さすがに、これらは看護師も没収しませんでした)
  
  そして、夜勤の看護師が申し送りを終わった頃に、再びナースコールをして、Sさんを呼んでほしいと言いました。
  やっと荷物が来る。私は、喜びに震えました。
  しかし、返ってきたのは、
「Sさんは、忙しいので行けません」
との返答でした。
  仕方なく、ご飯を食べ、そのあと、トイレをしたあとにコールし、排泄物をCW(介助)さんに片付けをしていました。
  わたしは、CWさんに何気なく、
「何で、荷物を返してもらえないのでしょう?」
と、聞いてみました。
  すると、驚くべき返答が帰ってきました。
「あなたは、自殺起動(ジサツキト?漢字が違っていたらごめんなさい。発音は、これであっていると思います)の可能性があって、いつ自殺するか解らないからです!」
と、言われたのです。
   私は、『自殺起動』と言う一言で、全部の自由を取り上げられていたのです。
  そう思った瞬間、昼間に来てヒコちゃんが置いていってくれた、飴も、ボールペン・落書きちょうも、全てCWさんに差し出しました。頭がおかしくなりそうでした。
  そんな大事な事を、医者や看護師でもないCWさんが、当たり前のように言い切る、この病棟のおかしさに腹がたったのです。    
  そして、私は、CWさんが、部屋を後にしたとき、声を圧し殺し、布団に顔を埋めず泣きました。
  
  つまり、誰も私を「ハゼミ」と言う人間としては見ていない。自殺をするかもしれない怪しい人。
  もしくは、MRSAの感染者としてしか頭から見ていないと言う事実を叩きつけられていたということだったのです。
  だから、信頼関係が微塵もない私は、全ての人権を奪われたのです。
  こんなにも悲しかったのは、久しぶりのことでした。

  そして、涙も枯れてから二時間後。20時の就寝薬の配付を待ってから、再度コールしました。信頼関係がないわたしでも。それでも、看護師のSさんと、話をしたかったから。(その人しか名前を知らなかったこともあります。)すると今度は、
CW:「Sは、忙しいので手が離せません」
私 :「何時ぐらいまで忙しいですか?」
CW:「22時半くらいまでです。」
私:「それでは、私は、就時間ですよね。そこまで大変なのは、急変者でもいるのでしようか⁉」
CW: 「...お待ちください」
こんなやり取りが続きました。
  すると、5分くらいで看護師Sさんがきました。私は、、これまでの事をできるだけ、気持ちを押さえて話をしました。
「私は、ただ早くに退院したいだけです。ちゃんと、皆さんのとの約束は全て守っているじゃないですか。...中略...私の自由は、全て奪っておいて、誰一人私をハゼミとして。一人の人間としては見てくれない!お願いですから、私を人間として見てください。」
と。
心の奥からの叫びでした。
すると、Sさんは、
「すみませんでした。」
と、初めて私を「ハゼミ」として、人間として、言ってくれたのです。そして、こう話してくれました。
「荷物の事は、医師の指示なんです。明日必ず返すようにします。あと、主治医のI先生(アラブの商人)が夜勤できますので、そこで種々な指示が出ますので、それまで待ってください。」
  看護師Sさんが、私と同じ目線で話を聞いてくれました。そして、状況は変わらなくとも、初めて人間として扱われた時でした。こんなにも嬉しかったのとは、やはり久しぶりでした。
「よろしくお願いします」
  私は、涙ぐみながら、Sさんに正座して、頭を下げました。


  さて、入院して3日目の夜に、わたしはやっと主治医(アラブの商人)と会うことができました。
  で、アラブの商人曰、
今回MRSAが鼻腔から出ており、隔離していて不自由をかけること。
事の発端である服薬多量の内服による、カフェイン中毒からくり肝機能障害(まだ3桁台の値もある)等々から、やたらに薬が使えない。
と言うものでした。
  さらに。今までうつ病だと思って約2年半治療をしてきたが、どうやら違って『双極性障害のⅡ型』かもしれないとの話もされました。

 『双極性障害』は、昔から言われているところの『躁鬱病(そううつ病で、Ⅰ型)』    
と、分かりにくい『Ⅱ型(うつとそうが、毎回繰り返しなるのではなく、不定期にそうがでるのて、本人や回りも気が付かず、医師も診断を間違えやすい)』があります。
詳しくは、ググって下さい。説明をするのが難しいので(笑)

  そこで、とりあえず、一週間、そのまま安定剤と、不眠時のお薬で、様子をみましょうと、言われました。
  私は、主治医のアラブの商人の説明に納得して、入院生活を続けることとなりました。
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